換骨奪胎   作:メラニンEX

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今回のお話は主に「妊娠」「想像妊娠」及び若干の癌にまつわるワードが出てくるお話です。かなりセンシティブな部分を含んでおりますので、もしこの時点で無理だと感じられた方はブラウザバックをお願いいたします。大丈夫な方のみお進みください。



第四話「郭公の垂乳根ども 壱」

 

 

この度は当敷鳥心霊相談サービスをご利用いただき誠にありがとうございます。当サービスでは、お客様の身に起こる怪奇現象のよりスムーズな解決を目的として、実際の調査を行う前の段階としてこのアンケートにお答えいただいております。お客様が分からない、あるいは答えたくないという質問がございましたら、「分からない」または空欄でも構いません。事件解決後間もなくお客様の個人情報は破棄され、特定の個人が識別できる情報として、公表されることはありません。また、ご希望があればこのアンケートをお客様自身に返却も可能ですので、お気軽にお申し付けください。

 

ご氏名 伊滝 月人

 

質問1 怪奇現象が身の回りで起こっているのは、アンケートの回答者さまご本人でしょうか?

 

いいえ。私も何度か見たことはありますが、体験したことはほとんどありません。

 

質問2 質問1でいいえと答えた方は、怪奇現象が起こっている方のお名前、回答者さまとの関係をお答え下さい。

 

伊滝あや子。続柄は妻です。

 

質問3 現在起こっている怪奇現象について、体験したものを下記の選択肢からお選び下さい。

①ラップ音・家鳴り

②幻覚・幻聴

③姿を見た・声を聞いた・触られた

④病気、怪我をした

⑤悪夢

⑥ものが無くなった

⑦身に覚えのない番号からの電話

⑧その他  ↓下の空白にお願いします。

 

①、②、⑤、⑧。

妻は半年ほど前から妊娠の初期に近い症状、3ヶ月ほど前から腹部が大きく膨れる症状が出ていますが、これが怪奇現象に端を発するものかどうかは不明です。また、妻は2年前に癌の手術で子宮を摘出しており、術後経過につきましてカルテを添付しております。ご一読下さい。

 

質問4 怪奇現象の始まった時期はいつ頃ですか?

 

妻に妊娠初期の症状が出始めたのは半年ほど前です。腹部の変化、ラップ音や原因不明の声を聞き始めたのは3ヶ月ほど前になります。

 

質問5 怪奇現象の発生原因に心当たりがありますか?

 

いいえ。

 

質問6 質問5であると答えた方は、原因についてお答え下さい。

 

 

 

質問7 怪奇現象の解決方法に指定がありますか?

 

ありません。なるべく早期の解決を希望します。

 

質問8 質問7であると答えた方は、ご希望の解決方法をお答え下さい。

 

質問9 最後に、宗教・財産・病気・ご家族など特に留意すべき点やご質問がございましたらご自由にお書き下さい。

 

上記の通り、妻のカルテのみ添付させていただきました。その他特に留意すべきことはありません。こういったオカルト方面に関わるのは私も妻も初めてですが、どうぞよろしくお願いします。また敷鳥心霊相談サービスを紹介していだいた花田先生にもよろしくお伝えください。

 

 

アンケートにお答えいただき誠にありがとうございました。速やかな解決に向けて活用させていただきます。アンケートの提出はWordまたはPDFのファイルにして、メールアドレス××××@gmail.comへ送信お願いいたします。

 

敷鳥心霊相談サービス

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

かちり、というクリック音が鳴って、ここ4年ほど使っているパソコンの画面には「送信が完了しました」の表示が浮かび上がっている。1日の間に、嫌というほど目にするその表示は会社で取引先に送るときと何一つ変わることなく、画面をもう一度クリックするとあっけなく消えた。

 

その変わらなさが、ことこのメールに関しては何だか妙に感じてしまって、伊滝月人 はしげしげと画面に見入った。しかし何秒見たって、彼が想像していたような劇的な変化―例えば履歴が勝手に消去されているだとか宛先が文字化けするとか、画面が突然ノイズ交じりになったりだとか―は一切することなく、送信履歴を見ても、今しがた送ったメールも添付したPDFファイルも相変わらず冷然としてそこにあった。

(そりゃ、そうだよな)

今年で34を迎えても己の中には残っていたらしい、未知の世界に対する好奇心や理由なき恐怖に彼は苦笑した。少年の心など、働き始めた12年の間に窒息しそうな通勤電車や、吐くまで飲んだ忘年会のトイレに置いてきたと思っていたのに、意外とその生存能力は侮れないものがある。

 

「あれ。持ち帰りの仕事あったの、月人くん」

ひょい、と背後から声をかけられて、月人は椅子から5ミリ飛び上がった。机に膝をぶつけて思わず「いてっ」と呻けば、かすかに笑いながらあや子が部屋の中に入ってきた。敷居の近くに置いてある皿に足を引っかけないかひやひやしたが、今日の彼女の足取りはいたって軽い。パタパタと鳴るスリッパの音も心なしか楽し気だった。

 

妻であるあや子とは、出会って九年、結婚してから七年になる。初対面から多少痩せて髪が短くなったことを除いて、さほど変わっていない。もとから童顔気味の容姿だったことも相まって、病を患った後でも不健康そうに見えないのは数少ない美点だ、というのが彼女の言である。肩につくくらいに伸びた、くすんだ鳶色のような、日本人には珍しいあや子の地毛はまっすぐで艶々とした天使の輪を浮かばせていて、月人は彼女のその髪を好ましく思っている。

 

 

「そんな感じかなあ。あ、でも、ちょっとメール送ってただけでもう終わったから大丈夫。」

 

疚しいことなどまるでないのだが、一応パソコンの画面を閉じて曖昧に笑うと、あや子はふざけたようにぴし、とパソコンを指さして宣言した。

「あやしいね、月人くん。誰にメール送ってたか言ってごらんなさい。こういうの、昼ドラではアレと連絡とってるとこだよ?」アレ、というときに彼女はぴん、と小指を立てた。

「えぇー┈それなら俺、もっと狼狽えてないとダメじゃない?」

 

 

あや子にしても本気で考えているわけではないのだろう、追及することもなかったが、月人にしても見せてそこまで困ることでもない。閉じたばかりの画面を再び開いてメールの送信履歴を見せると、昨日月人が洗った彼女の髪の毛から、覗き込んだ時にふうわりと、爽やかで甘い香りが鼻腔をくすぐった。画面の中には、取引先の名前や会社の上司、同僚らの宛先に交じって、ひときわ奇妙なものが一番上にきており、それを目にしたあや子が、ちょっと首を傾げた

 

「シキトリ┈でいいのかな?これ」

「うん、そうだって聞いた」

「敷鳥心霊相談サービス┈アンケートの返答┈?」

 

オウム返しに読み上げた彼女は首を逆側に傾げた。彼女に月人が、そのサービスの話をしたのもずいぶん前のことだったので、どうやら忘れてしまったらしい。クリックして、当たり障りのない挨拶文とアンケートを添付する旨を書いただけの文面をさっと見せて、月人は、ほら、と切り出した。

 

「前に話したやつだよ。花田先生が、もしよければって紹介してくれた」

そこまで言うと合点がいったように、あや子はうなずいた。

「あれかな、先生の知り合いで、こういうことを専門にしてる人って言ってた?」

「そうそう」

 

 

ふーん、と微妙なトーンで相槌をうったあや子には、気分を害したような素振りはない。もとより度が過ぎるほど温厚で寛容な妻ではあったが、「この話題」に関して言えば普段とはやはり異なって、多少神経質になることもある。ただでさえ不安の種が多い今、余計な心配を増やすかもしれない、という考えが頭をよぎって、メールのことははぐらかしてしまったが、どうやら月人のそれは杞憂に終わったらしい。

 

「でもなんか意外かも。こういう除霊とかする人ってさ、アンケートとかメールなんか使わないイメージあったよ。こう、神社にいったときに『あんた、なんてもんにとり憑かれてるんだ!』とか神主さんに顔真っ青にされて、紹介された人から謎の電話がかかってくる┈みたいなのじゃないんだね」

「俺もそれは思った。オカルト業界も進んでるのかな、最近はネット上のお化けの話とかもあるし」

あや子が『とり憑く』と何気なく口にしたことに、月人は内心でどきっとした。その、動揺は彼女に悟られはしなかったけれども、反射的に動いた指が意味のないクリックをしてしまった。

 

(とり憑く、かあ┈┈)

月人は、最初の目的はどこへやら、メールの送信履歴をスクロールしながら「あ、この人見覚えある」などと楽しそうに眺めている、ブルーライトに縁取られたあや子の横顔を複雑な思いで見て、それから下へと目線をやった。

妻の腹部は、ゆるく結ばれただけのエプロン越しにも分かるほどはっきりと膨らんでいた。熟れた果実のように、ふっくらとまろやかな曲線を描いたそれを、無意識なのだろう、ゆっくりとした調子であや子の手がなでさすっている。骨ばった細い手が、上から下へ、また下から上へ。穏やかに、慈しみ深く。その姿は、ともすれば(夫の欲目もあるが)静謐で、女性にしか持てない美しさを湛えていた。ずっと子供を欲しがっていたあや子の姿は、これ以上ないほど幸せそうで、月人はこれが真のことで、普通の妊娠であったのならどれほどよかっただろうか、とここ半年間ずっと思っていた。

 

勤務先の検診で伊滝あや子に癌が見つかり、若さゆえか進行が速かったことで、子宮を摘出したのはもう2年も前のことだった。子供が欲しかった彼女は、ずいぶんと摘出を嫌がったけれども、主治医の懸命な説得や、月人の意見を最終的に取り入れて手術を行っている。摘出手術、抗がん剤治療、ホルモン剤治療、放射線治療と、終わりの見えない治療も根気強く受け続けて、およそ半年前になるまでは何の異常もない健康そのものだったのだ。もう、今の彼女には子供を産むことはもちろん、妊娠そのものが不可能になったという彼女の悲しみはあったにせよ。

けれども半年前を期に彼女の体は妊娠のような兆候を表し始めており、あや子の腹部は妊娠中期ごろのように膨らんで、ときどき「動いたかも」と言い、白米が食べられなくなっていた。

 

 

病院で診察を受けてみれば、手術や妊娠にまつわる精神的不調を発端にした「想像妊娠」という判断が下された。ようはストレスのかかった精神状態が、肉体の変化を引き起こしている、ということだ。本当に中に胎児がいるわけではない。超音波検査や妊娠検査薬の進んだ現代では、過去と比べても減少傾向にあり、医師から「想像妊娠である」と告げられて妊娠兆候が減退することが多い、と説明されたが、あや子の場合は医師からそれを宣告された後も一向に症状は改善されず、それどころか悪化している節すらあった。

 

結局は、精神に負担をかけないようにしながらの通院と経過観察、ということに現在は落ち着いていて、それはつまるところ打つ手がない、ということの現れでもある。少なくとも現代医学の分野においては。

 

 

親交のある医師、花田翼からオカルトに携わる、このサービスの存在を教えられたのはずいぶん前のことだったが、ダメもとで頼ってみようと思ったのは最近だ。料金が良心的であったこと、治療行為を実際にするわけではないので失敗したとしてもあや子の体に負担はかからないなどの利点はあった。月人自身、どちらかというと幽霊だのなんだのは迷信だと思う性質だったので、「敷鳥心霊相談サービス」と連絡を取った自分に驚いていたが、少なくとも今の彼の中には、そういった物事を笑い飛ばせるだけの余裕や、不信心はほとんどなかった。

 

―ぽとん。ぴちゃん。

 

どこかで水音が鳴って、月人の首筋が強張った。まただ。今日はまだ二人とも風呂など使っていないし、そもそも今鳴っている水音は、普通の、どこからか漏れ出した雫が垂れるような、そんなものとはまるで違っていた。ものすごく、よく響くのだ。雫が落ちる瞬間の音を、ボリュームを最大限にして、そのうえでビブラートをかけたような、複雑な反響を伴った音だった。当然、階下や隣室から苦情が来たのも、この半年間で既に両手の指より多かった。

 

一度、音の出どころを探ろうとして、月人が家中を歩き回ってもまるで見つからず、家の中のどこかで、この奇妙な水音がしていることしか分からなかった。

分かっているのは、この水音がするのはいつも夜だ、ということだけ。それも今のような、夜がとっぷりと暮れたころに、その静寂を破るようにして音は鳴り始める。

 

「┈あやちゃん、水音が」

つぶやくような月人の言葉に、視線をこちらに向けたあや子が、うん、と軽い調子で頷いた。

「そうだね。またお隣さんから怒られちゃうかなあ」

 

どこか他人事のように、重みのない、ふわふわした言葉だった。いつものことだ、とでも言うように。

あや子は、ここ半年の間、家の中で頻発する怪奇現象に一度も驚いたことも怖がったこともない。ドアが勝手に開くことも、閉めた蛇口が出しっぱなしになることにも、だれかがはい回るような足音にも、自分が見えない誰かと喋っている、と聞かされたときでさえ「そうなんだ」の一言だけだった。

 

 

分からない。少なくとも半年前とはまるで様子が異なってしまっていることだけが確かで、それがいつからなのか、どうしてなのかは、ちっとも月人には分からなかった。だから、ずっと怖い。自分があや子の何か大事な変化を見逃して、それが致命的な欠落につながりはしないか、大切な妻がこれからどうなってしまうのか、何一つ分からなくて、怖い。

(┈何か、取り返しのつかないことが起こってる気がする)

 

―ぴとん。また、どこかでよく響く水音が鳴って、階下から文句がわりに床を叩かれた。風のない部屋のドアが、ひとりでに勢いよく閉まり、その風に煽られて部屋の隅に置いた盛り塩が床にさらさらとこぼれた。

 

月人は、あや子のマウスを握っていない方の手をぎゅっと握った。ほっそりと、乾いて骨ばった妻の手と、じっとり汗ばんだ己の手。汗の一滴も分泌しない、その落ち着きようが羨ましくもあったけれど、妊娠の兆候が出ているのに浮腫みもしていないその手がわけもなく物悲しくて、月人は、揃いの結婚指輪をそうっと撫ぜてやった。

 

―ぽちゃり。まだ、水音は止まないままだ。変えたばかりのLEDライトが点滅し、部屋が暗転してからまた元の明るい状態に戻る。部屋の隅に、血塗れの女の幻影がよぎった気がして目をこするも、瞬きの間にそれは消え去っていた。

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

午前十時五十分。東京都内の私鉄駅、改札口前にて。

 

朝の通勤通学ラッシュもすでに終わり、さりとて昼食を食べにいくにもまだ早い。一日の間に人間が固まって行動する時間帯というものは限られていて、今はちょうどその隙間のような頃合いだった。何をするにも中途半端で、名前をつけづらい、ただ無意味に明るくてがらんとした、そんな時間。

私鉄の駅の中に人はまばらで、ときどき急ぎ足のサラリーマンが通り過ぎて行ったり、あるいは遅めの登校する大学生がのんびりと改札を出ていったりする程度である。オフィス街でもない立地にあるその駅で、今しも改札を出ようとした少女と、その少し後ろでもたついている青年がいた。少女の方は高校生くらい、青年のほうはもう少し年かさで大学生くらいだろうか。平日の午前にしてはちょっとこの場に似つかわしくない二人組だった。

 

「ちょっと脹相、早くして。待ち合わせに遅れちゃう」

 

むむっと、眉間に眉を寄せて美々子は、ほどけたブーツの紐を結ぶのにもたもたと手間取っている青年を、涼利そっくりの表情でにらんだ。肉体を持って一月も経っていない彼は存外に器用な性質で、今着ている服も自分で着れるし、スプーンやフォークも持てるようになったし、インスタントラーメンを作れるようにもなってはいたのだが、どうにも箸と靴だけがダメで毎回時間を取られていた。

 

 

そんな彼の服装はいつもの修験者のようなものではなく、涼利のお下がりのデニム風シャツと以前買った黒いスラックスというシンプルな恰好に、涼利がいつも使っているリュックサック型の呪具を背負っていた。ついでに目つきの悪さを誤魔化すために渡された伊達メガネをつけると、あっという間に変わった着物姿の男は大学院生っぽいカジュアルで真面目そうな青年に早変わりしていた。

いっぽうの美々子もいつもの黒いセーラー服ではなく、黒地に花柄のプリントされたシャツにキャラメル色のプリーツスカートという、かっちりとしながらも洒落た服に身を包んでいる。二人の関係性は、美々子の姉の家に住む居候同士(とはいえ美々子は自分たちのほうが先に住んでいて、その上家主の妹なのだから立場が上だと主張している)ではあるが、一般的に他人から見れば兄と妹か、はたまた年の離れたカップルといったところだろうか。

 

ようやっとのことで靴紐を結び終えた脹相は、待つ気などさらさらないと言った調子で進んでいく美々子の後ろを駆け足で追いかけていき、エスカレーターを降りて駅の外に降り立った。駅の外側には、よく見るタクシーなどが停まるためのロータリーなどがなく、歩道や交通量の少なそうな車道を挟んで大きな建物がぽつぽつと建てられていた。

 

 

脹相は訪れたことのない場所に、興味深そうにあたりを見渡した。今まで仕事で色んな場所に短期間のうちに連れまわされていたが、その内のどことも雰囲気が違う。ビルの立ち並ぶ繫華街というわけでもなかったし、かといって駅の外に直接田んぼが広がっているわけでもない。ところどころに『学生割引』のチラシが貼られた飲食店やスーパーが並ぶ他には住宅なども見当たらなかった。

脹相は知らなかったことであるが、ここら一帯は、都立や私立の大学が集まる、いわゆる学生街である。学生がよく利用するような店以外は、あまり近くにはなかった。

 

「美々子、待ち合わせは駅じゃないのか」

「違う。姉さんの大学」

大学には縁もゆかりもない二人が、そんな場所に何の用かというと、つまりはまあそういう訳である。美々子と脹相は、今日から始まる涼利の仕事を手伝う算段になっており、今は合流のために彼女の通う都立○○大学まで足を運んでいる途中だった。大学生である彼女は一限目のみ講義を受けて、そのあと依頼人と会うことになっている。

美々子がグーグルマップと睨めっこしながら着いた都立大学は、濃い色のレンガでできたがっしりした建物が密集して並んでおり、緩やかな坂の上に古めかしい門があって、その周囲をコンクリート製の塀が取り囲んでいた。受肉するときの知識として大学という存在は知っていたものの、実際に見るのは初めてだった脹相からすると「思ったよりも小さい」というところだった。大ってついてるのに。

 

緩やかな傾斜の坂の下につく頃に、ちょうど一限目の終わりを示す大きなチャイムが鳴り響き、それからほどなくして学生たちが一人、二人と坂を通り過ぎて出ていった。みな、脹相と同じくらいの見目をした、脹相とはまるで違う人生を送っている若者たちだ。呑気そうな、モラトリアムの最後を謳歌している人間たち。美々子がちょっといやそうに避けた大学生たちの、その軽やかな足取りを目で追ったところで少女があっと声を上げた。

「姉さん、やっと来た」

視線の先を追うと、坂の下から見上げても縦に長い女が、手を軽く上げた。涼利である。いつものレインコートや防弾ベストやキャップは纏っておらず、てろんとした素材のカーキ色のドレスシャツに、白のライン入りの黒いスキニーという恰好である。ぺたんこの帆布のトートバッグを携えた涼利は、脹相のよく知る剣呑な呪詛師の空気など微塵も感じさせない風で、同じ年ごろの学生たちの間に違和感なく溶け込んでいた。もしかすると、学生である彼女のほうが、素の顔なのかもしれない。

家の外で素顔をさらしている彼女は珍しい。脹相がそのことに驚いているよりも早く、涼利はすたすたと坂を下って二人の方へと近づいていた。

 

「時間通りだな。迷わなかった?」

「うん」

こっくりと美々子が頷いた。その返答に満足したらしい涼利は「ならいい」とだけ言ってさきほど来た駅とは逆方向に歩き出した。

「ここからJR乗って二十分くらいだから、病院にはまあ十一時半過ぎにはつくか」

「病院?」

 

今回の行先や仕事の詳細を聞かされていなかった脹相が聞き返すと、涼利はああ、と首肯した。

「病院つっても正規のところじゃないけどな。いわゆる闇病院ってやつだ。保険証がなくても診察してくれるから、お前も怪我したときのために覚えといて損はないと思うぜ」

そう言って涼利は脹相のリュックサックがしっかりしまっているか、確認してから一度、大きく叩いた。ぱん、という衝撃に、一拍おいてから内側からも返事をするかのようにもう一度、音が鳴った。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

大学から歩いてすぐのJRに乗って、三人が降りた先は閑静な住宅街だった。学生街とは打って変わって、ファミリー向けのマンションや団地(どれもこれも若干古びている)が折り重なるように立ち並んでいる。テナント募集中の張り紙や、シャッターの閉まった店が多いことが、生活感とともにどこか寂れた雰囲気を醸し出していた。

 

 

改札を出て線路沿いに少し歩き、涼利が足を止めたのはやや横長の、五階建てのビルの前だった。病院やクリニックの看板はどこにもなく、それでなくても病院というものから連想される機能的や無機質な印象はまったくない。小洒落た雑貨店や洋服屋、値段の張る美容室が入っていそうな建物である。クリーム色の外壁は半円状の模様が規則的にいくつか並んだ、変わった塗装で飾られており、深い赤色で塗られた窓枠も相まって苺入りのショートケーキを彷彿とさせていた。

 

よどみなく自動ドアをくぐった涼利に続いて脹相も中に入っていくと、内部はさすがに病院らしく、清潔で開放的な待合室にはミントグリーンのソファーが並べられており、診察や会計を待っている患者らしき人間が思い思いの場所に座っていた。消毒薬の匂いがつんと鼻をつく。室内の壁に埋め込まれた大きな水槽と、貼られた『乱闘・決闘・その他の暴力行為をする前に思いとどまりましょう』というポスターと、その表面に書き足された『※宗教勧誘、違法ドラッグの売買、銃火器及び爆発物の持ち込みもダメです!』がやけに周囲から浮いている。

 

 

知らないが、座っている患者たちは柄の悪そうなものが多く、異様なほど筋肉が盛り上がったもの、派手なアロハシャツを羽織った袖から入れ墨が見え隠れしているもの、目の焦点が合わないまま一人でげらげら笑っているものなど枚挙に暇がない。

 

「あれ、トシヒサだ」

中に知り合いでもいたのだろうか、美々子が驚いたように呼ぶと、ちょうど会計を済ませるところだったらしい青年が振り向いて、げ、と顔を歪めた。

涼利とそう変わらない、二十歳前後くらいの男である。街中では大層目立ちそうな着物を片肌脱ぎで着ており、上半身はぴったりとした黒のインナーで覆われていた。精悍な顔立ちの半分近くは包帯で隠されており、陰鬱そうな空気を纏っていた。そして脹相の目には、青年のそこかしこに残った残穢がはっきりと見えたので多分呪詛師なのだろう、と見当をつけた。

「なんでこんなところに、お前らがいるんだ」

「仕事だよ仕事。悪いか?」

 

涼利はしれっとした調子でそう答えた。まるきり青年を舐めきっているのが、短い応酬の中にも露骨に表れており、青年は気分を害したように目を細めて涼利を睨んだ。

青年―もとい祢木利久は涼利や美々子、菜々子がかつて所属していた盤星教後継団体の呪詛師のひとりである。夏油傑がどこからか拾ってきて、彼を『家族』の一員として育てていたころからの知り合いなので、涼利らとも付き合いは長かった。が、三人のように姉妹として親交を深めるわけでもなく、むしろ涼利はこの青年から嫌われていたといっても過言ではない。夏油を盲信せず、非術師排除にもまるで興味もないくせに実力と態度のでかい彼女は、彼以外にもだいたいのメンバーに嫌われていたのだが。

 

 

「そういうお前は?何か病気でもしたのかよ」

「お前に答える義理はない」

「あ、そ。毎回思うけど、こういう時にお前ら非術師アンチは、猿の医者しかいない病院には行けないって言うんだから、不便だよな」

「┈あぁ?」

 

 

揶揄うような言葉に、後ろ側にいた美々子が「ちょっと」と涼利の服を引っ張ったが、彼女はまるで意にも介さなかった。

非術師嫌いは術師の内でも持っているものは多いが、彼女の師である夏油同様、祢木青年もまたその苛烈さは折り紙つきだ。普段の食生活から衣服、住むところに非術師の手が入らないよう極限まで切り詰めている。なので、もし自然に治癒しない怪我や病気になった場合は回復する手段がかなり限られてしまうことになる。非術師の医者に診てもらうのは嫌、しかし術師もしくは呪霊を見ることができる人間を探すことだけでも難しいのに、さらにその中で医師を見つけるとなると、さらに難易度があがる。このクリニックのような特殊な存在はまさに天からの助けだっただろう。

 

二人の間の雰囲気がややぴりつき、周りの患者たちが面白そうに、あるいはつまらなさそうに見つめた雰囲気を裂くように、声が割って入った。

「待合室で騒いでる方!どなたかは知りませんが、ここは病院ですよ!喧嘩なら死なない程度に外でやってくださいって張り紙が見えないんですか!」

まったくと言っていいほど迫力のない声だったが、このクリニックにいる誰もが従わなければならないそれがだんだんと近づいているのを察知した涼利と祢木は、若干気まずい雰囲気で距離をとり、舌打ちした祢木青年は乱暴な手付きで代金を置いて出て行ってしまった。言うまでもないが喧嘩を売ったのは涼利のほうだ。青年の対応のなんと大人なことか。

 

 

祢木青年と入れ替わりになるように、ぱたぱたと安っぽいスリッパがリノリウム張りの床を叩く音はすごい速さで待合室に迫り、とうとうガチャリ、と勢いよくドアが開いた。

「止めてください、止めてくださーい!ここのローンまだ払い終わってないんですよ!なんだってみんな、目の前のポスター無視するんで┈┈あれ?式盗りちゃん?」

開いたドアから顔(らしきもの)を出して驚いたように待合室を見渡した白衣の人物こそ、このクリニックの院長を務める男―花田先生こと、花田翼 医師であった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「だいたいですよ、うちのクリニックで揉め事起こさないで下さい、式盗りちゃん。病院は暴力ともっともかけ離れたところにあるものなんですよ!」

「うるさくして悪かったって言ってるだろ┈」

 

ぷんぷん、と蒸気が出そうな勢いで涼利に文句を言い立てているのは、声からして若いであろう男性だった。男にしては細い、オーボエのような木管楽器を思わせる声音はくぐもっていて、苛立たしそうな色を纏ってこそいたが、威厳や威圧という言葉からは程遠い。およそ人を怒るという行為が向いていないことが、一音目から滲み出ていた。

 

男性の背は涼利よりもやや高く、くたびれた白衣に包まれた肢体は骨っぽく痩せていて、縦幅と横幅があきらかに釣り合っておらず不健康そうな具合である。そのせいか、中に着ているストライプのシャツや黒いスラックス、歩きやすそうなグレーのスニーカー、どれもこれもが少しばかりだぶついていて、余った状態だった。首から下げられた安っぽい名札には「花田翼」というでかでかとしたゴシック体の上から、可愛らしいシールでデコられており、更には押し花の栞が下にぶら下がっている。

 

いかにも人よい医者、という空気が全身から発されているような男である。涼利は見るたびに彼が、こんな裏社会で闇医者なぞをやっているのか首を傾げたくなる。もっともそれは、彼の首から下を見ているときだけに限定されはするのだが。

 

彼の首から上は、初見であれば五度見必至の珍妙なものである。現に後ろ側にいる脹相などは、クリニックの廊下を進みながら不審そうに花田を見つめていた。

 

寝ぐせだらけの飴色の髪に縁取られた花田の顔は、外気に晒されることなくお面に覆われていた。それも普通の、夏祭りの屋台で売っているような、プラスチックのキャラクターものではない。木製の古びた、それでいて禍々しい能面だった。女を表す面で、細かく区別すると「増女」と称されるものであり、白い瓜実顔は年代物特有の光沢を帯びて、歴史的価値が高いのは誰の目にも明らかな代物だった。天井から放たれる白熱灯の光を柔らかく反射して、不思議な光沢を帯びたそれの、横から伸びた紫の紐を頭の後ろ側でくくり、余った部分が背中について垂れ下がっている。能面のせいで、素顔の造形も、詳しい年齢も何もかもが隠れており、穏やかな声音や所作の医師はそれをつけているだけで一気に不審極まりない、怪しげな人物へと変貌していた。

 

「まったく。それに、今日は式盗りちゃん以外も連れてくるなんて聞いてませんでしたよ。事前に教えてくれてたなら、おいしいお菓子でも準備したのに」

「言ったところで花田さんが出すの、どうせおからドーナツとか五穀ビスケットだろうが」

「失礼な。おからドーナツは糖質も低いうえに美味しいじゃないですか。ねっ、美々子ちゃんもそう思いますよね」

「私、あんまり好きじゃない」

 

ばっさり否定されて、能面に手を当てて大げさに嘆いてみせた花田は、すたすたとクリニックの中を迷いなく歩いていく。招かれた待合室の奥はいくつかの検査室が並んでいた。途中の廊下にはやたらと曲がり角や分かれ道が多く入り組んでいて、まるで迷路のような作りになっていたが、涼利はもちろん美々子も慣れた様子で進んでいく。二人とも、この面をつけた奇妙な医師とは懇意のようで、会話にも親しい空気が漂っていた。

 

「そういえば」

能面がにゅっと、脹相のことを見てきたので彼は内心でぎくっとした。

「君とは初めまして、ですよね?クリニックに以前いらしてるのなら、顔と症状を絶対に覚えてると思うんですけど」

「┈脹┈じゃない、長男だ。こいつの家の居候をやっている」

うっかり名前を言いかけた脹相の、言葉少ない紹介に花田医師は嬉しそうに頷いた。顔を能面が隠しているので表情は変わっていないのだけれども、雰囲気が何だか輝いている。

 

 

「なるほど、ご丁寧にありがとうございます。僕はこのクリニックの院長の花田翼と言いまして、専門は心臓外科です。もっとも僕の患者さまたちは専門を聞いちゃいないひとしか来ないので、最近は自分が小児科なのか産婦人科なのか肛門科なのか耳鼻科なのか、分からなくなってきたんですけどね┈。まあ色々あって、今回のケースのような呪霊や呪物がらみの患者さんがきたときに、式盗りちゃんにはいつもお世話になってるんです」

 

 

明るい笑い声を上げた花田医師は、いわゆる「視える側」の人間である。と言っても術式は持たず、術師として活動しているわけでもない。(医師免許をもっているのに)ヤクザだの指名手配犯だの呪詛師だのと裏社会の人間が主にやってくるクリニックを経営しながら、ときどき混じる呪われた患者が来た際には涼利や、あるいは他の術師に紹介をする仲介業者の真似事をしている人物であった。

 

多種多様な犯罪履歴を持つこの病院の患者たちは、ごく普通に生きている人間に比べて人の怨念渦巻くような場所に行ったり、人の恨みを買う機会も多い分、呪いに遭遇する確率も上がる。花田を通した仕事の中で、今回のように依頼者が完全な一般人のケースはかなり稀である。およそこのクリニックほど患者の治安が極悪な病院は、涼利の長い呪詛師経験の中でも他になかった。

 

 

建物の中央にある階段を上ってすぐのところにある部屋に、どうやら今回の依頼人はいるらしかった。一階のような検査室や手術室などが並んでいた光景とは違い、二階には入院するための個室と思わしき部屋がずらりと廊下の両側を埋め尽くしていた。壁にはパステルカラーの静物画や、待合室にも貼られていたポスターが適温の空調にはためいている。淡い黄色や、橙がかった電灯の光もあって、柔らかで心を落ち着かせるような色調がフロア全体を満たしている。

「伊滝さん、式盗りさんをお連れしました。入っても大丈夫ですか?」

四人の中で一番前にいた花田が、白いスライド式のドアをノックしてそう呼びかけると、室内からどうぞ、と声が聞こえてきた。花田が開けたドアから中に入っていき、続けて帽子とマイクをいつの間にかつけた涼利が入っていき、それから脹相も中に足を踏み入れようとしたところで、目に入ってきた信じられない光景に彼はひゅ、と息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

「―な、」

 

 

 

部屋の内側をびっしりと覆っていたのはピンク色の脈打つ肉壁だった。踏み出しかけた足裏にぷにん、という触感が伝わる。慌てて見渡した室内だった場所には誰の姿もなく、そこはまるで巨大な生き物の体内に迷い込んだようになっていた。規則正しく拍動が鳴る、暖かいその場所はまるで―。てらてらと光る天井から何かが滴り落ちる。

どくん。肉壁全体が意思を持つかのようにうごめいた。

靴を熱くどろりと粘度の高い液体が浸してゆくのにも関わらず、脹相の意識は、この不可思議な現象を前にして無意識のうちにフラッシュバックしていた。百と五十年以上も前に離れた、今もなお恋しい場所。暖かく快適で、いつまでだっていたかった懐かしいあの場所に、目の前の光景はあまりにも似通っていた。

(ちがう、これは┈┈なんだ?何が起こって)

 

いきなりのことに戸惑いを隠せず、混乱の最中にあった脹相を、後ろから軽い衝撃が襲った。慌てて振り返れば、眉をぎゅっと寄せた美々子が怒ったように「早く中入って」と、もう一度彼の背中を叩いた。

 

視線を前に戻せば、中に広がっていたはずのグロテスクな肉壁などどこにもなく、しんとした可愛らしい内装の部屋があるばかりだった。病院の一般的な個室とは異なり、木目調の大きなテーブルと座り心地のよさそうな椅子が何脚か、その奥には漫画のいっぱい詰まった本棚や冷蔵庫が置かれており、おそらくは入院患者が暇を潰すための部屋なのであろうか。

 

いつもにも増して青白い顔で冷や汗を流す脹相に、「体調悪い感じですか?」と花田が訪ねてきたのに首を振って部屋の中に入ると、やや高い温度の空調に彼はほうっと息を吐いた。

今しがた見た何かは現実とするにはあまりにも荒唐無稽で、いきなりの白昼夢と片付けるにはあまりにも生々しかった。現実に引き戻されたことを確かめるように脹相が湿った手を握ったり、また開けたりを繰り返していると、がたりと椅子を引く音が耳に入った。

 

脹相が正体不明の幻覚の残像に悩まされているうちに涼利はさっさと挨拶を始めていて、偽造の名刺を渡した彼女に依頼人の方がぺこりと頭を下げた。

 

「敷鳥心霊相談サービス調査員の、敷鳥と申します。今回は当サービスをご利用いただきありがとうございます。またアンケートや詳細なカルテまで添付して下さり、非常に助かりました」

ちなみにサービス云々はまったくの嘘である。自作のホームページにはちょっとした企業のように書いているが、実態として涼利しかいない。

「伊滝月人と申します。いえ、こちらこそ┈よろしくお願いいたします」

 

そんなことはつゆ知らず、緊張気味に頭を何度も下げたのは、椅子に座っているうちの片方、三十代半ばごろと見える男性だった。いかにも会社員風といったスーツ姿で、少し疲れたような空気を纏っている。優しさと優柔不断が入り混じったような、そんな風貌をしていた。

 

ようやく落ち着き始めた脹相は、もう一人の依頼人に目をやってすぐに「ああ、こっちが『呪われている方』なのだ」とすぐに判断した。呪力が一定数以上ある人間ならば誰でも同じことを一目見て理解しただろう。それほどにその女性の体のあちこちには、彼女のものではない残絵がはっきりとこびりついていた。底の平らな靴を履いた足にも、ゆったりとしたシルエットのワンピースに包まれた膨れた腹にも、それをやさしく撫ぜる指にも。ぼんやりと足元から女性を見上げていったところで、女性も挨拶をするべく立ち上がろうとして、涼利がそれを制止した。

 

「奥様はどうぞ、座ったままでいてください。お身体に負担もかかるでしょう」

「すみません、ではこのままで・・私、妻の伊滝あや子と申します。本日はどうぞよろしくお願いします」

 

柔らかな声で、呪われた女はそう名乗った。

呪われていることなど微塵も感じさせない、朗らかな表情であや子は涼利に頭を下げ、それから脹相に、そして美々子にと順につづけた。肩につく、暗い鳶色の髪がはらりと垂れて、どこか幸の薄そうな面立ちに影で縁取って行くのを、脹相は理由もなく、ただ食い入るようにじっと見つめていた。

 




郡上涼利
「敷鳥心霊相談サービス」はホームページだけ作ってる架空のサービス。さも企業のように書いているが、従業員は涼利しかいない。だいたい花田さんみたいな仲介の人か、噂を聞いて書き込んだ非術師が対象。面白そうだったら涼利が実際に会うこともあるが、割と過疎ってるサイト。

脹相お兄ちゃん
何か幻覚見てた。ちゃんと見たのにも理由がある。また涼利のおさがりの服を着せられてる。

美々子ちゃん
姉妹三人で使ってる通信料を超えたので、スマホ低速か労働か選べと涼利に言われて今回の仕事についてきた。本当はセーラー服が着たかった。依頼人が非術師なのでまぢテン下げ・・

花田先生
能面つけてるスーパードクター。大学病院勤務だったが、元患者から呪物を押し付けられて能面が外せなくなったので辞めた。呼吸も食事もなんなら入浴もできるハイテク能面だが、外そうとすると顔の皮膚が取られる。美々子や菜々子とも仲良しで、なんなら夏油さんとも会ったことはある。患者の客層がえぐい。子供好き。見えるけど術式なし。

月人さん
医療器具を扱う会社のサラリーマン。病院経由で花田先生と知り合った。久しぶりにあった友人が能面つけてるのでクソほどびびってる。非術師。

あや子さん
今回の主役。鈍すぎて全然怪奇現象にもびびってないすごいひと。非術師。

祢木くん
ちょっとだけ登場。夏油の下にいたころからの付き合いだが、態度の最悪な涼利なので不通に嫌い。ラルゥとミゲル以外大体のメンバーが嫌ってるから大丈夫だぞ。
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