博麗の呪縛   作:こーくへぃ

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01:新人巫女と妖怪達

 博麗の巫女、それは幻想郷の象徴、中心、全てであり、厳しく選別された少女が代々この役職につく。その名が表す通り、博麗神社にて神事を行うのだ。

 その博麗神社にてせっせと庭掃除をする少女がいた。名は博麗霊羽、そう博麗の巫女である。

 博麗の巫女が掃除をするという光景はとても新鮮で、まるで雹でも降ってきそうな予感がする者も多いだろう。おそらくそれは先代の巫女が巫女としての職務をほとんど遂行する事がなかった所為だと思われる。

 

「ふぅ、これで終わり!あうん!手伝ってくれてありがとう!」

 

「いえいえ〜ここはわたしの庭でもありますので〜」

 

 あうんと呼ばれた少女はこの神社を護る狛犬の化身である。しかし、彼女の“博麗神社の守護”という役割はもはや形骸化したものだ。なぜならば幻想郷に住む者は、博麗神社を襲ったり陥れたりする事はほとんどないからだ。

 

 前述した通り、博麗の巫女及び神社は幻想郷の中心かつ最重要な存在である。神社の崩壊は“博麗大結界の崩壊”、言わば“現実と非現実を隔てる境界の崩壊”と同義であり、そうなれば現代におけるオカルトの否定の波に飲み込まれて妖怪達は殆ど消え去る事になるだろう。故にあうんの現在の実質的な職務は巫女のお手伝いなどである。

 

「よし、博麗の巫女として今日も頑張らなきゃ!早速幻想郷をパトロールよ!」

 

 その目はやる気や自信満ちていて、同年代のどの者達よりも輝いているだろう。

 そんな彼女のもとに、空から1人の客人が訪ねてきた。

 黒い帽子に黒い服、長袖の袖の先に白いフリルが施されている。髪の色は恐ろしいほど美しい金髪で、気だるそうな目も髪と同じような金色をしていた。

 

「……でたわね真っ黒ババア」

 

「おいおい、わたしはこう見えて100才にもなってないんだぜ?」

 

「100才が視野に入ってる時点で十分ババアよ。で、何のよう?」

 

「別に用なんてないさ。ここに来るのにそんなもんが必要かい?」

 

「必要に決まってるじゃない。あんたらみたいな妖怪に無意味にうろつかれたら参拝者が増えないわ」

 

「おいおい、ジョークか?数十年通ってるが妖怪や神、いわゆる人外だな。そんな奴ら以外の客なんて見た事ないぞ?」

 

「だからこれから人が来るように近づくなって言ってるのよ霧雨魔理沙!!」

 

 霧雨魔理沙、その少女はそう呼ばれていた。元は人間との事だが、そんなの関係なく魔女は魔女である。

 

「はぁ、あんたらみたいなのの出入りを許可してた先代の意図がわからないわ」

 

「逆に私はお前がここから妖怪を排除したい理由がわからないんだぜ」

 

「私は博麗の巫女で、ここは博麗神社なのよ?そんな立場なのに妖怪が集まってたらまるで私が妖怪の味方みたいじゃない!」

 

「そうかい?霊夢の時は妖怪だらけだったけど、あいつはキチンと“博麗の巫女”をやってたんだぜ?」

 

「レイム……先代のことね、先代は掃除やらパトロールやらの仕事をサボってたらしいじゃない。よくそんなんで巫女としてやっていけたわね!」

 

 プンスカと霊羽が怒っていると、また別の来客が訪れた。背はとても小さくて体もかなり華奢だが、大きな角と只者じゃない雰囲気を醸し出している。

 

「幾年ぶりに正式や巫女が決まったと聞いてやってきたけど、霊夢の時よりも随分と元気そうじゃないか」

 

「お、萃香!久しぶりだな。しばらく見かけなかったけどどうしてたんだい?」

 

「誰かと思えば魔理沙じゃないか。んー、まぁ鬼の国とか地底をぶらぶらしてたくらいかな。それにしてもアンタイメチェンかい?服装の白成分が少なくなったね」

 

「…ねぇ、あんた普通に話してるけど…そ、そいつ鬼じゃないの?」

 

「ありゃ?ねぇ魔理沙、元気かと思えばこの巫女はかなり弱気じゃないかい?」

 

「鬼を前にすりゃこれが普通だよ。霊夢が特別なだけさ」

 

 また“霊夢”だ。

 

 私たち巫女は、生まれた時に霊力が一定の基準に達していると巫女候補として選ばれ、育てられる。その後、ある程度成長して神降し等の巫女としての能力を測られ、最も適性がある者が博麗の巫女として博麗霊○の名を与えられるのだ。

 

 しかし、数十年前の先代巫女である“博麗霊夢”は産まれた時から他とは格の違う類稀なる強い霊力を持っていて、巫女候補という過程を飛ばして最初から“博麗霊夢”として育てられたらしい。

 

「そういや霊夢は今なにしてるんだい?人間は寿命が短いしもうくたばっちまったかな?」

 

「あー、霊夢は___」

 

「まーりさっ」

 

 また新しい来客、この声には聞き覚えがある。白を基調に(だいだい)色の前掛がかかった道士服の少女、“八雲”橙である。

 

「伊吹萃香は基本的に幻想郷の部外者よ。知ってる事や知らない事、その中でもソレに関する事を話す必要はないわ。」

 

「おやおや、別嬪狐のところのニャンコじゃないか。それにしても仲間外れかい?数十年振りにあったかと思えば大分大きくなったじゃないか?その中の最たるものが態度だね」

 

「アンタは小さいままね、色々と。自身の能力で心の器を弄ったらいいかもよ?」

 

「はっはっは!ビクビク震えてた子猫が喧嘩を売るようになったじゃないか?」

 

 

 一触即発、この状況でこの言葉以上に当てはまるものを私は知らない。続々と勝手に現れた大妖怪(バカ)同士に勝手に火花を散らされてどう対処すれば良いか分からず、オロオロしてしまう。

 

 そんな状況を破ったのは魔理沙だった。

 

「まぁまぁ、霊羽も怖がってるしおちつけよお前ら?萃香、お前はなにしにきたんだ?喧嘩か?橙、お前は管理する側なんだからこの神社がどう言う立場なのかわかるだろ?」

 

 彼女の説教に2人は言い返すことはしなかった。

 

「ちぇ、わかったよ魔理沙。新顔を見れただけで十分、私は勇儀か華扇のところにでも行ってくるよ」

 

 そういうと萃香ふわりと浮かび上がり、そのままどこかへ飛んで行った。

 彼女が飛び去ったのを見て橙はホッと肩を撫で下ろした。

 

「ありがとう魔理沙。つい喧嘩ふっかけちゃったけど、相当キツかったのよね……いたっ!」

 

 萃香が去って一安心してた所へお祓い棒が飛んできて橙の頭に直撃した。投げた犯人は霊羽だろう。ちらりとそちらを見ると、ぷるぷると震えていた。

 

「あ、あんた達!さっきからわちゃわちゃされても!め、迷惑なのよ!」

 

 目尻に涙を浮かべて抗議する博麗の巫女、先代の巫女ならばまず見られない光景であろう。

 

「えっと、ごめんね?霊羽」

 

「私もだ、そもそも私の口が滑りそうになったせいだな。ごめんな霊羽」

 

 あうんが心配そう霊羽の背中に頬擦りしている。多少の効果があったのか、少し落ち着いてきたようだ。

 

「うん…もう大丈夫……ね、ねぇ」

 

「ん?どうした?」

 

「その……先代の……レイムって人は……何かあるの?」

 

 先程の小鬼の時と同様、あまり聴かれたくないことのようだ。一時の重い沈黙が流れるが、橙が口を開きその静寂を破る。

 

「貴女に教えるにはまだ早い……とでも言っておこうかな。もう少し、もう少し博麗の巫女として成長できれば…ってところかな?」

 

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