霊羽が仮面の少女に出くわしている頃、伊吹萃香は暇という強敵に苦戦していた。
「はぁ〜〜〜〜!」
「ちょっと萃香さんうるさいですよー。普段あれだけ執着してる霊夢さんの事とか調べればいいじゃないですかー」
「お前はバカだなぁ。いくら私とはいえ賢者らに目をつけられてる今、簡単には動けはしないよ。それに幻想郷中に探知型の結界が張り巡らされてる」
「そうなんですか?」
「ああ、そうさ。そこら辺に見えない鳴子だらけになってるようなもんさ。すぐ行動がバレちゃう」
「えー、鬼って意外と大したことないんですね」
「鬼を、しかも四天王が壱の伊吹童子を前にしてそんなこと言えるアンタは大した奴だよ………あ、いいこと思いついた」
萃香は上体を起こしてパチンと指を鳴らすと、目の前に角のないひとまわり小さな萃香が現れた。
「何ですかそれ?」
「これは私の能力さ。私の分身、こいつに探らせる」
「そういや萃香さんって霧になることが出来るんじゃないですか?それやれば簡単なんじゃ」
「そうもいかない。確かに霧散すれば
逆に私が結界を欺く為の術をかけりゃ結界そのものには引っかかりはしない、だが直接その術を感知されちまうのさ。
だからこれがちょうどいい。
「へぇー、よくわかりませんがすごい術ですね」
「そうだろうそうだろう!よし!では言ってこい!」
萃香が指示を飛ばすと、小さな萃香は宙を舞って空へと飛んでいった。
「ちなみに私か分身自信がこれを解除するか、あれが分身としての形を失う……まぁ、死に近いね。それを迎えた時にあいつが手に入れた情報が私にフィードバックされるのさ」
「どこかで見たような設定ですね。……あれ?そういや萃香さん」
「ん?なに?」
「いやぁ、あの小さい萃香さんを使役するだけの術なら結局オリジナル?のあなたは暇なのでは?」
「…………暇な時は……寝るのが1番さ」
* * * * * * * * * *
小さな萃香(以下、萃香)は賑わう人里の隅に隠れ、色々と物色していた。
(あのウサギは相変わらず薬を売っているのか……)
数十年振りの人里は意外と知った顔が以前とほぼ変わらずに暮らしていた。しかしウサギの他にも以前通っていた居酒屋にて仕込みをしている座敷童と夜雀や、屋根の上でつまらなそうにしている
とりあえず情報を持ってそうなカラスを捕まえて色々と聞くことにした。
屋根に寝転がっている少女の頭あたりに立って顔を見下ろすと、彼女がこちらに気づく。その瞬間、表情がまるで嫌なものにでも出くわしたかのように歪む。
「あややややや!!??す、萃香さん!?」
「おや、この姿でも私のことがわかるのかい」
「山の妖怪が鬼を目の前にして気づかないなんてあり得ませんよ……というか、帰ってきてるって噂は本当だったんですね……」
「おや、噂を聞いておきながら噂のままに留めておくのはブン屋としてどうなんだい?」
「いやぁ……あ、相手が鬼となりますとねぇ……あはは……」
「はぁ……お前ら山の連中はなんで私ら鬼にそんなにビビってるんだい?飲み会開いたりしてむしろ仲良くやってるじゃないかい」
(それで鬼同士で酔っ払って大騒ぎするからみんな怖がるんですよ……)
「まぁいいや、なんか面白い話とかないの?私が来る前と比べて変わった点とかさ。あ、弾幕ごっこについては知ってるよ」
そうですねぇ……とメモ帳をパラパラとめくりネタを探す文。ブン屋の命であるネタを他人にさらす行為を惜しげも無く行う事がいかに天狗が鬼を恐れているかを体現していた。
「当然気付いてらっしゃると思うんですが、人里にて人ならざる事を隠さない妖怪が増えてますよね?」
「そうだねぇ、その辺の経緯はある程度知ってるよ」
「それは話が早くて助かります。
それでですね、やっぱりこのような雰囲気の中でも妖怪の事を憎む人間はそれなりにいるんですねぇ……人里から妖怪を排斥しようって団体があって、それがなにやらよからぬ事を企んでいるらしいんですよ」
「へぇ〜……で、そのよからぬ事って?」
「さぁ?なんなんでしょうね?そこがわかるなら苦労はしませんよ〜」
「アンタも意外と役に立たないねぇ」
「しょうがないじゃないですか〜。だって妖怪憎んでる集団ですよ?忍び込もうとしても対妖怪の策なんて綿密に練られてるに決まってますよ。いくら私でも危険です」
「はぁ、いつの間に山の妖怪は腑抜けてしまったのかねぇ」
「別に全く情報を手に入れてないわけじゃないんですよ」
「へぇ、たとえば?」
「そうですねぇ、やつらの中心人物とか?
ほら、あちらにいらっしゃいますよ」
文に示された方向へ視線を向ける。指は賑わう人々の中の金色の目、金色の髪の少女へと向けられている。
「え……?
魔理沙………!?」