清鈴堂、うさぎ2匹が経営する団子屋である。人里の団子屋でもトップクラスに人気があり、霊羽も常連になる程通っている。
「いらっしゃいお客さん。おや、これはこれは博麗の巫女さんではございませんか。そちらは……?」
「こっちは神苗ちゃん。山の神社の巫女よ」
「ど、どうも……」
mgmgと団子を頬張りながら話しかけてくるのは鈴瑚、金髪の玉兎である。神苗はかなりの人見知りのようで、鈴瑚との間に霊羽を挟んで隠れている。
「いつもの奴を2人分お願い」
「かしこまりました〜」
いつもは気怠げに接客している鈴瑚が今日は妙にテキパキとしている。そういえば昨日、四季映姫にここを紹介したのだった。恐らく説教を食らったのだろうか。
ふと、霊羽は何か妙な気配を感じ取り上を見上げる。天井自体に何も問題はなさそうだ。
「はい、お待たせしました〜。って霊羽じゃない」
ここのもう1人の兎、清蘭が団子を持ってきてくれたが正直上が気になってそれどころではない。
「ねぇ、清蘭?上って何かある?」
「え?えっと……う、上は倉庫と私達の住居くらいしかないわよ!」
どうも嘘をつくのが苦手なようで、勘の鋭い方である霊羽ではなくとも簡単に見破れるほど動揺している。
「………ふぅん」
めちゃくちゃ怪しいが、とりあえずはお団子を食べ終えてから動く事にした。
* * * * * * * * * *
一方、清鈴堂の2階では数人の人ならざる者達がテーブルを囲っていた。メンバーはどれも錚々たる人物達で、いつもの黒魔術師や光輝なる聖徳王、深紅の悪魔とその従者に動かない(はずの)大図書館、そして妖怪寺の僧侶、化け狸、人形使いに先ほどまで神社に居たはずの坂の神までいる。
「……なぁ、何で少し薄暗らい中テーブルを囲ってるんだ?」
最初に発言したのは霧雨魔理沙、それに対して隣の席の白蓮が声を顰めて答える。
(神子さんですよ。紅魔館の本に秘密結社の事が記されているものがあって、それに影響されたのです)
(えぇ?そんな馬鹿みたいな理由でこんな馬鹿みたいな会に集まったのか私は?)
「君たち、私の前でコソコソと話しても意味がないのわかっててやってるだろ……」
「そうだぜ」
「相変わらずだな君は……まぁ、影響されたのは事実だが、いずれ集まってもらうつもりだった。その時期が早まっただけさ」
「で、何の集まりなんだい?ウチの神苗に新しい友達ができるってのにわざわざ分霊に向かわせるハメになったんだけど。あと他のメンバーもそんなに乗り気じゃないみたいよ」
神奈子の言う通りレミリアは従者が淹れた紅茶を上品に味わっており、パチュリーは本に夢中、アリスはつまらなそうに人形を操って暇つぶし、マミゾウはなにやら帳簿みたいな物を見てブツブツと何か言っている。恐らくちゃんと話を聞く気があるのは神奈子と白蓮くらいだろう。
神子はため息をつくと、今回の目的について語り始めた。
「集まったことに意味がある。幻想郷は少しずつ変化してきた。しかし、その“少しずつ”が積もりに積もって大きな変化となっているのはわかるだろう?……少なくとも私がここに来た時は人里の人間が食われる事も、人間達が自分たちの権利という物を強く認識するなどもあり得なかったね。
そして管理側の動きがあからさまに目立たなすぎる上に、数十年空白だった博麗の巫女というポストに、今頃になって新しい巫女が就任した。まるで何か準備が一つ整ったかの様に。そもそも幻想郷の在り方として巫女の不在がそもそも不自然すぎる」
「……まぁ、確かにあなたの言ってることも一理ありますね。で、結局この集会の目的は?」
「表向きは変わりゆく幻想郷のパワーバランスの中でも協力し合おうという物だ」
「実際のところは?」
「管理側を逆に監視、そしてもしもの時に協力しあって対抗する事だ。管理者対抗同盟って所かな?」
「流石にそんな名前だと何もなくとも向こうから疑いの目がかかるのでは?そうですね……団子同盟なんていかがですか?」
「えー、まぁ……かっこよくないけどいいや」
真剣なのかそうで無いのかよくわからないノリの中、魔理沙が心配そうに質問を投げかける。
「そんなこと私に話しても良いのか?私は管理側じゃないが、管理側とかなり近い関係にあるんだぜ?
そもそも、こんな密会をアイツらは快く思わないんじゃないか?」
「それに関しては問題ない。この空間は私の仙術、聖の法力、パチュリー嬢の魔術、これらを組み合わせた結界を張っている。流石にここまでやれば河勝___摩多羅隠岐奈や八雲紫ですら感知できないだろう」
神子は「それに」と付け足す。
「君の欲の声はこの事をばらす気なんてない様だ。とりあえず、この同盟でまず情報収集をしようと思っている。
……で、君たちはこの団子同盟に乗るのかい?乗らないのかい?」
「私とパチェはそれに乗るわ。色々とやりたい事もあるしね」
「私は……そうですね……乗らせていただきます。ですが、少なくとも今は寺としてではなく、私個人だけが組みさせて頂きます」
「守矢としてその同盟に乗りましょう」
「まぁ、私としてはそこまで首を突っ込むわけじゃないけど、情報共有くらいはしてあげるわ」
「儂も組もう。もちろんある程度は自分の好きにさせてもらうぞ?よいな?」
集まった者たちは魔理沙以外この同盟に入る様だ。
「私は……少なくとも今回は降りるよ」
神子はクスリと笑うと、お茶を一口啜った。
「わかってたよ。だが一つだけ欲の声を聞いてもはっきりしない事がある。それを聞いておきたい。
君は最近色々と行動してるみたいだが……何のために、何を目的ににそれをやってるんだい?」
「私は……」
表情を隠すために帽子を深く被る。
「私は『あんた達何してんのよ!』の為に……」
突然の怒号は魔理沙の言葉をかき消してしまった。そちらの方を見てみると霊羽が仁王立ちしてプンスカと怒っていた。
「なーんか感じたから登ってみたらやっぱり怪しいことしてたわね!ほら!はやく散りなさい!妖怪が人里で集まっちゃダメでしょーー!!」
「博麗の巫女、そんな法は」
「うるさーーーい!」
霊羽がそういうとそれぞれの者たちは帰りだした。
その中でも神子は管理者達からすら隠れられる結界を勘だけで見破った霊羽に対して少し残念そうに、少し感心しながら部屋から出ていく。
「ほら霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド、あんた達も早く帰りなさい!」
* * * * * * * * * *
いつの間にか日は沈みかけており、逢魔が刻特有の薄暗さが滲み出している。
人里から魔法の森へと帰る道中、魔理沙とアリスは共に飛んでいた。
「魔理沙」
「なんだ?」
「結局何のためって言ってたの?」
「そういえばアイツに邪魔されたんだったな」
魔理沙はクスリと笑い、風で飛ばされないように帽子に触れる。
「私は目的は霊夢、博麗霊夢だ。全ての事は霊夢の為に動いてるんだぜ」