人里を出てすぐの道、日は暮れて辺りは影が目立たなくなっている。買い出しを終えた霊羽は何となく飛ばずに歩いていた。
ただ何もない道が続き、特に何も考えずほぼ無の状態が続いている中、ふと道の端に何かを見つけた。それは漬物石程度の大きさの石に座る少女、腰まで垂れる金色の髪、見た目は妖精程度の幼さだ。
この時間帯、この場所。ほぼ人間ではないのは確かだし、特に用もないので無視して通り過ぎる事にした。
「お姉さん」
呼び止められ、霊羽は動きを止めた。少女はクスリと笑うと話を続ける。
「鍵は大事にしないと。鍵がないと箱は開かないし、箱がないと鍵の意味なんてなくなっちゃうから」
クスクスといくつかの笑い声が聞こえたあと、背後で“パタン”という音が聞こえた気がした。
* * * * * * * * * *
〜翌朝〜
「……で、結局恐る恐る振り返ったけど何もいなかったのよ」
「へー、なにそれ」
「朝っぱらから怖い話されてもあんまり怖くないですね」
食卓を囲み、先程の恐怖体験について話しているのは霊羽、萃香、あうんのいつもの三人である。
「なんであんたがいつものって括りに入ってるのよ」
「もうここに居候して一週間だし入っててもいいじゃないか。
文句はここに居座る理由になった魔理沙と飯がうまいあうんに文句を言いな」
「あうん〜〜!」
「いや、無駄にノらないでくださいよぉ」
くだらない会話をしながら食卓を囲むというのは実は霊羽の憧れであった。幼き頃から巫女として選ばれるための修行をしており、自分は孤児だと聞いている。家族(に近い集まり)という贅沢なものに囲まれている今、文句を言いつつも少しだけ幸せを感じていた。
「それにしてもその子は何者だったんですかね?」
「うーん……見当もつかないわ。雰囲気も妖怪の様なそれ以外の様な……何やらごちゃごちゃしててイマイチ掴めなかったというか……」
「ふむ、最近は幻想郷のパワーバランスにかなりの変化が起きているからな。多少は警戒した方がいいんじゃないか?この聖徳王に任せてくれれば悪い思いはさせないが」
「なーにが聖徳王よ、何とも胡散くさ……ってあんた誰よ!!?」
いつの間にか食卓にミミズクのような髪型の少女が加わっていた。
「ここの団欒に勝手に加わるのが流行ってるんですかねぇ」
あうんは呆れながらもいつの間にかミミズクの前にお茶を出し終えていて、慣れてしまっているのがよくわかる。
「はぁ……この神社、人間は私しかいないじゃない……」
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「……で、そのすっごーいしょーとくおーさまがなんのよーでーすかー?」
「……キミ、もしかして私の事を尊敬してないな?」
「まずアンタのこと詳しく知らないし」
「……はぁ、まぁいい」
ミミズクはお茶をひと啜り、コホンと軽く咳払いした。
「私は豊聡耳神子、天資英邁の全能仙人とも呼ばれている」
「……で、その仙人様が一体何のようで?」
「君と話がしたいと思ってね。
今、私はとある目的のために動いているのだが……端的に言うとアレだ、邪魔をしないでもらえないかと言うことだね」
「邪魔?私が邪魔をする時ってのは幻想郷のルールを破ろうとした時よ!博麗の巫女は中立でないとダメなの、アンタが邪魔をされるようなことをしなければでしょ?」
「そう、中立だ。中立だからこそ邪魔をするべきではない。パワーバランスの
「……どういう、事よ?」
「そのままさ。そのまま……おっと、お客様がお越しになられたようだ」
そういうと神子は指をパチンと鳴らす。するとバチィッと何かが弾けるような音が聞こえ、いつの間にか縁側に橙が立っていた。一瞬キョトンとしていた橙はすぐに神子の方へと視線を向ける。
「……相変わらずすごい仙術、尸解仙のレベルなんて遥かに超えてるわね」
「子猫を締め出すのなんて朝飯前さ。そもそも力量不足、この程度の結界なんて河勝やスキマ妖怪なら5秒で入ってこれるだろう」
「あの御二方に5秒も掛けさせる結界を即席で作れる時点で力量なんて関係ないでしょ」
「で、私に何のようだい?」
橙はクスリと笑った。その瞬間、彼女の瞳孔が細まり、体を霊力が包み込む。
「私の
「おやおや、あのスキマ妖怪は躾もできないのか。私が変わりをつとめてあげようかな?」