博麗の呪縛   作:こーくへぃ

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09:魔本と図書館とメイド

 阿典の依頼をうけ、霊羽は早速鈴菜庵にきていた。事件解決に向けて弥鈴に詳しく話を聞くも、当然ながら得られる情報はかなり少なかった。 

 

 たまに本を借りるため見慣れている光景、今日もいつもと変わらないのだが一点だけ目に止まるものがある。

 

 入り口付近の本で立ち読みをし、時々色々とメモをしている少女がいる。その少女は磨かれた銀の様な美しい髪にダークサファイアの様に引き込まれそうな青い目、白い肌を包む服はいわゆるメイド服であった。

 

「そういやあの子、この間のミミズクとかがいた変な集まりにいた気が……」

 

 別に疑うつもりもないが、しばらく本棚の影に隠れて銀髪メイドを観察していると、瞬きをしたそのほんの僅かな暗転の間に彼女の姿が消えていた。

 

「!!」

 

 冷たく硬いものが首に押し付けられる感触。この冷たさは金属特有のもので、さらにこれが刃物であることは容易く想像できた。戦いのスイッチを完全に入れてなかっため、反応が遅れてしまった。

 

「何か用?私の事を見てる割には気を抜きすぎよ?」

 

(完全に気を抜いてた……!)

 

「巫女服……あんた……博麗霊羽じゃない。

 ……で、私に何のよう?」

 

 冷たい物が首にヒタリヒタリと触れる度に体ピクリと反応してしまう。

 

「あ、あなたが!えっと……!この前の怪しい集まりにいて……!その……えぇと……最近事件が起きた鈴奈庵にいたから……!」

 

「事件?」

 

「危険な本が盗まれたのよ!!」

 

「はぁ〜?何で私がそんなもの盗まなけりゃならないのよ」

 

 銀髪メイドはため息をつきながら震えている霊羽の体を解放し、ナイフを太もものホルスターしまった。

 

(わ、私の背後をとるなんて……)

 

「あ、あんた何者よ!」

 

「私?私は十六夜咲耶、紅魔館のメイドをやってる」

 

「紅魔館……あのへっぽこ吸血鬼がいるって噂の……」

 

「あ?お嬢様侮辱するの?」

 

 いつの間にか手に握られてるナイフを見て凍りつく霊羽、自らの命を守るために迅速に話を変えなければならない。

 

「ね、ねぇ!あなたの知り合いで本に関係あったりする人いない!?」

 

「いるわよ」

 

「ほんと!?」

 

* * * * * * * * * *

 

 いたずらで弾幕を放ってくる妖精を撃ち落としながら湖の上をしばらく飛んでいると、一つの大きめな建物が見えてきた。名は体を表すとはよく言った物で、紅魔館と呼ばれるその館は血に染まった様な紅い色をしていた。

 

 門の前に降り立つと、何やら中華風味のある衣装を身に纏った少女が門に背中を預けて寝息を立てていた。

 咲耶はため息をついて近づくと、思いっきりデコピンをかました。

 

「いったぁぁぁぁあ!!!!??なになに!??

 って、咲耶ちゃんか……」

 

「美鈴さん寝すぎだよ〜、姉さんじゃなくて私で良かったね」

 

「こ、この事は磐那(いわな)ちゃんには……」

 

「大丈夫、言わないよ〜」

 

「はぁ〜、よかった……あれ?そそちらは……博麗の巫女じゃない?何かあったの?」

 

「本関連でなんか事件起きたらしくてさらパチェ様に話聞きたいって言うから連れてきたの」

 

「あぁ、そういう事。まぁ……通してもよさそうね」

 

「ありがと美鈴さん。ほら、いくわよ」

 

* * * * * * * * * *

 

 門を通って廊下を過ぎると、何やら図書館の入り口であろう大きな扉が佇んでいた。

 

「ついたわよ、この扉重いから自分で押してね」

 

「えー、あんたメイドじゃないの?私は客人よ!」

 

「私はやるべき事はやってるわ?姉さんみたいにバカ真面目にやっても疲れるだけよ」

 

「お姉さんいるんだ……ってぐぉぉお!おっも!!」

 

「そう、お姉さんもこの館に勤めてるわ。無口で冗談通じないから注意ね〜。

 ほら、どきなさい」

 

 霊羽に変わって咲耶が扉を押すと、鈍い音を立てて少しずつ扉が開いた。華奢な体のどこからこんな怪力出るのだろうか。

 

「疑問なんだけど、最初からあんたがやれば良くない?」

 

「えー、めんどくさいじゃん。で、開かないともっとめんどくさいから開けただけ。ってかあんたが開けらんないのが悪い」

 

「ほんと幻想郷(ここ)ってアンタみたいなの多いわね」

 

 扉をくぐるとついに目的の相手との対面である。少し離れた所に紫髪の少女が座って読書をしていた。

 彼女の名はパチュリー・ノーレッジ。紅魔館の参謀的な存在で、暴走しがちな館の主を諌めるのも彼女の役割である。

 

「パチェ様〜、お客さんですよ〜!」

 

「そう」

 

「いや、興味なさすぎですよ〜」

 

「どうせ魔理沙でしょ?」

 

「いえ〜、今日は黒白じゃなくて紅白ですよ」

 

 その言葉に反応したのかチラリとこちらを見るパチュリー。しかし、すぐにその視線は手元の本へと引き戻される。

 

「そう」

 

「結局興味ないんじゃないですか!」

 

「……で、なんの用なの?」

 

「え?」

 

「何か用があってきたんでしょ?わたしに」

 

「あ、えっと!」

 

「鈴菜庵の魔本でしょ」

 

「えっ!?そ、そうよ!でもなんで……?」

 

「普段から咲耶に頼んで魔本を集めさせてるからフツーにそう言う情報は入ってくるわよ」

 

「な、なるほど。とりあえずそれについて情報とかあるなら……」

 

「ないわね、でも」

 

「でも?」

 

「探すのに協力してあげても良いわよ」

 

「ほんと!?」

 

「ホント。ただし、盗まれた本は私がもらうわ。

 悪い話じゃないはず。たかが魔本が持ってる力なんて私にとってわざわざその本を行使する必要もない物だし、何よりここに置いとけばまた盗まれるなんてほぼないわよ」

 

「えぇと……ちなみになんで欲しいの?」

 

「コレクション」

 

* * * * * * * * * *

 

 パチュリーに理があることは理解したので、取り返した本は彼女に渡すことにした。

 いま私はこの図書館でとある本を探している。パチュリー曰く、鈴菜庵においてある魔本は特に処理をされていないので魔力が少しだけ漏れており、追跡はそう難しいことではないらしい。

 そのために彼女の指定した追跡を行うための手順が記されていると言う本を探している最中なのである。 

 

(誰かに見られてる?でもなんか薄い気がするけど)

 

 霊羽はこちらに対する気配を感じているが、うまく掴めない。

 

「にしても……ここかなり埃っぽいわねぇ……。あの人こんな所で四六時中過ごしてるらしいけど病気になんないのかしら……ひっ!?」

 

 突如、冷たいものが首筋に触れて声をあげてしまった。この感触は先ほどにも味わったばかりのもので、十中八九ナイフであろう。

 

「ちょっと、咲耶ちゃん?今探してるから……」

 

 刃物を押し付けている輩の方を振り向いて身が凍りついた。端的に言うと自分の首元にナイフを当てていた存在は咲耶ではなく、メイド服に恐ろしい異形の仮面をつけた少女だった。

 




この磐那と咲耶と言う名前は小ネタみたいな感じです。
伝われば少し嬉しいです笑
東方……というより日本神話が好きなひとはわかりそうですね。
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