呪言師のヒーローアカデミア 作:エタってごめん
時は過ぎて四月から年を越し、雄英高等学校一般入学試験当日2月26日、この十ヶ月の間は色んなことが二人にあった。長期の休日ではほとんど毎日道場に行ったり、二年間道場では基礎しかやってなかった二人だが、個性の訓練にも手を出したり、土曜日しかやってなかった道場での訓練を、金曜の帰りから泊まりがけでやったりもした。
棘の場合は、個性のキャパシティが増えたり、個性の使用をメガホンや携帯電話越しにできるようになったのも大きいだろう。個性だけでなく、成長期というのもあってか個性無しでの組み手もレベルがあってきた。まだまだ身長は小柄なようだが。
唯に関しては個性の扱いもかなり精密になってきた。同じサイズのマトリョーシカをひたすらかっちりハマるサイズにするという訓練もやったのだが、これをやった唯はマトリョーシカが好きというのもあってか、恐ろしいほどの集中力で訓練に勤しんでいた。
そんなこんなでかなり成長した二人、まだまだ体が冷えて布団の住人になる季節、吐く息も寒さで白くなるような寒さの中で、見慣れない道を地図頼りに進んでいくと、巨大な建造物と大きな門が佇んでいた。そこの隣には『雄英高等学校一般入学試験」という看板が置いてある。
『倍率300倍ってほんとすごいね、人がいっぱい居る』
「ん」
さすがは最高峰、例年の倍率300倍は伊達でなく、普通の高校の入試なんて比じゃないくらいの人数がいる。
そこの中にもいろんな人がいて、少し前に起きていた『ヘドロ事件』の被害者のバクゴーとかいう金髪のトゲトゲしい少年や、緊張で震えてるもの、もはやロボットでは無いかというほどガッチガッチに固まってる者もいた。
『さっさと筆記試験終わらせるか、緊張してると普段の力も出せないし、俺らはいつものペースで頑張ろう』
「ん」
*
筆記試験を終えた棘達は、実技試験の会場へ向かう
『今日は俺のライヴへようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
ボイスヒーロー『プレゼントマイク』は、
『こいつあシヴィーーー!!!受験生のリスナー!実技試験の内容をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディ!? Yeahhhhhhhhh!!!』
返事が来ないことを悟ったのか、自問自答を始めているほどである。毎年このやり取りをしているのか、それともプレゼントマイクのメンタルが鋼鉄製なのかは知らないがあまりダメージを負っていないように見える。
『入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!OK!?』
『同中同士とか友達同士でチームアップは出来ないようになってるのかな、受験番号連番なのに唯と会場違うし』
「ん、それよりも持ち込み自由っていう方がありがたい、市街地って言ってるし、あんまり街の物を使うのはヒーローとしてダメだと思うから」
『唯みたいな個性のためかな?』
『演習場には、“仮想敵”を
「・・・・・・こんぶ?」
「ん、個性のことなら大丈夫じゃない?仮想って言ってるくらいだし、
「しゃけ!」
棘の個性の“言霊“は耳から脳へ、というのが発動条件である。機械であると
「質問よろしいでしょうか!?プリントには
「すみません・・・・・・」
『オーケーオーケー、受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつは言わば
「ありがとうございます、失礼致しました!」
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは行った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!”Plus Ultra“!!それでは皆、良い受難を!!』
*
市街地演習場に着いた棘は、まず準備運動から始める。かなり広く、それなりに走りまわることが予想される、走ってる途中で足攣ってリタイアとか笑えないので、しっかり入念にやる。
準備運動をしていると、何やら怒気を含んだ声が聞こえてくる。
「君は何だ?妨害目的で受験しているのか?」
「ひい!こちらも!」
縮毛の彼がまた注意されていた。何がこちらもか分からないが縮毛の彼はとても驚いていた。何やら周りからもクスクス話しながら野次馬をする。棘は(近寄らんとこ・・・・・・)と思いながら前に並び合図を待つ。
『ハイスタート!』
合図を聞いた棘はいち早く飛び出す。道場でも同じようなことは何度もあった為、遅れることなく飛び出すことができた。野次馬をしていた者や、例の縮毛の彼は出遅れる。
街中を走り、脇道を抜けると、1P2体、少し離れた所に3Pの仮想敵を見つける。
『目標補捉!!ブッ殺ス!!』
1P仮想敵が素早く攻撃してくるが、1Pに関しては脆いという事は見ればわかっていたので、個性なしで難なく対処する。
『標的発見!!ブッ潰ス!!』
「
離れていた場所の3Pが音を聞きつけてやってくる。3Pの仮想敵に対しては、個性を使いながら対処する。そして潰れた3Pの破片を拾い、それを1,2P仮想敵用の得物にする。
しばらく走りながら仮想敵を着々と倒していくと、3Pが意外といないのか喉はまだまだ持ちそうなようだ。さっきの得物は1P用に切り替え、2,3Pの仮想敵は個性で対処していく。
試験開始20秒、狗巻棘、敵ポイント5P、試験はまだまだ始まったばかりである。
*
『目標補足!!ブッ「
その後、ハイペースで仮想敵を倒していくと、途中で気づいた事がある。仮想敵は音で索敵をしているのか、潰すより、爆破させた方が他の仮想敵も集まってきて倒すペースが早いのだ。
いくら棘が足が速いとはいえ、試験時間は10分しか無いので寄ってもらった方が都合がいい。そう思いながら順調にポイントを稼いでいく。
ライバルの確認もしておこうと周りを見ると、目立つ受験生がちらほらと、先ほど質問をしていたガタイのいいメガネやお腹からレーザーを出している妙に輝いている者がいた。
棘は結構なライバルもいるもんだなと思いながら仮想敵を倒していく。
(これで67P!70Pくらい行っときたいなぁ・・・・・・)
Booooooom!!!
キリよく70Pを越しておきたいなぁと考えていると突然爆音が鳴り響く。爆音と共に、地震のような揺れがやってくる。何が起きたのかと、音のなる方を目指す。ビルの隙間の道を抜けると、そこには棘の身長の何十倍かというほど巨大なロボットがいた。これが説明されていた0P仮想敵だと棘が理解するのに少々タイムラグがあった。流石にデカすぎるし、ビルを崩しているところを見るとかなり頑丈なんだろう。これは個性を使うと吐血したり、最悪跳ね返ってきそうなので逃げの一択。
その場から離れようとすると、「いったぁ」という少女の声がする。棘はその様子を見て助けようかと迷いながら、決断するが棘よりも早く飛び出すものがいた。
先程から注意されて凝縮していた縮毛の彼が棘より先に飛び出し、追いかけるように棘も飛び出す。すると突然縮毛の人が地面にを抉りながらと上空へと飛び出し、0P仮想敵の顔面を殴り飛ばした。その様子に驚き、呆気を取られていると、縮毛が手足をぶらんぶらんさせながら落下してくる。急いで持ち前の足の速さを活かしながら落下地点に入ろうとし、ギリギリ間に合いそうという所で先程の転んでいた少女が縮毛の少年にビンタする。ビンタに驚きながらも少年を抱える。そのビンタされた少年を棘が抱えると違和感がする。異常に軽いのだ。着ているジャージの重さしか無いのではというほど。それについて考えていると、少女が話しかけてくる。
「その人、個性で無重力にしたんだ。でも私の個性、キャパ超えると吐き気が・・・・・・ウプッ・・・・・・オロロロロ」
自分の個性を説明した後、個性のキャパが超えたのか嘔吐する。少女が嘔吐すると抱えていた少年が突然重量を取り戻す。棘はその説明に納得し、平坦な場所に少年を下ろす。
容態を確認する。見た感じは落下の恐怖で気を失っており、片腕と両足はありえない方向に曲がっている。応急処置の知識を知らない為、あたふたしていると、おばあさんの声が聞こえてくる。
「ほら、ハリボーをお食べ。他に怪我人はいないかい?」
「ツナ!!ツナ!!」
その声を聞いた棘が、両手をぶんぶん振りながら必死に声を出す。
「ハイハイ、今行くよ・・・・・・おやまあ、自分の個性でここまで怪我するかい、まあ任せなさい、チユーー」
頭に団子を作った背の低いおばあさんが頭にチューすると、ボロボロだった縮毛の少年の体が治っていく。
リカバリーガール 個性を『治癒』。
対象者の治癒力を活性化させ、重傷もたちどころに治癒できるが、それには傷に応じた対象者自身の体力が必要。
傷に応じて対象の体力を使い活性化させるため、重症が続くと体力消耗し過ぎて逆に死ぬらしい。また、回復箇所の上限を超えると対象部位が使用不可になる。
そのため小さな傷は治さずにおいたり、時間や日をまたいで回数を分けて治癒することもある。
*
試験が終わり、近くのカフェで待ち合わせをしていた唯と棘。もう唯は中に入って席を取っていたようで、店に入ると手を振ってアピールしてくる。
『お疲れ様、実技試験どうだった?ポイントどれくらい取れた?俺は67P取れたよ』
「ん、お疲れ様、ポイントは45P、仮想敵の可動域に適当になんか差し込んで大きくさせて倒してた」
『そっか、こっちは唯の言う通り、個性が効いたから3Pを個性で倒してそれ以外を得物使って倒してたよ』
「ん、20Pって言ってる人も居たし、結構二人とも稼いだんじゃない?」
『そうだね、筆記の方も自信あるし、後は通知を家に帰って待つだけ、今から待ちきれないや』
「んふふ、楽しみだね?」
「しゃけしゃけ」
かなりP稼いで、ほとんど合格出来るという事実から、基本まったくと言っていいほど表情を崩さないポーカーフェイスの彼女が、珍しく表情を綻びる。
その後、市街地演習場には他にこんな受験者が居たよという話で、例の縮毛の人の話を棘がすると、唯が目を見開く。流石に自分の個性の反動で、腕だったり足がありえない方向に曲がるというのは、聞いたことがない。個性が発現したばかりの幼児ならまだしも、中学三年生の人がそんなことが起きるとは考えられない。血を吐くレベルなら目の前にいるからわかるし、自分に返ってくるのもかなり不思議だが分かる。最近まで、体が持つように個性にトリガー掛かっていたのでは?という考察を棘が落とす。中学3年生の腕が腫れ上がってありえない方向に曲がるのなら、小学生は腕が爆発してもおかしく無いだろうという考察。それについては考えても分からないので、二人して不思議だねという話をしながら帰路についた。