傭兵の戦場   作:舌百

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第一章
『AVENGER』前篇


ある日俺は家族を失った。

それは今から十数年前、小学生の頃に遡る。

 

あの頃は幸せだった。

決して裕福とは言えない家庭ではあったが毎日両親と平和で幸福な日々を過ごしていた。

しかしそんな日常はある日を境に音を立てて崩れ去った。

 

今でも忘れない、あの太陽照りつける夏の日のことを。

友と大休憩を遊んで過ごした後の三時間目、授業も聞かずぼんやりと窓の外を眺めていた。

授業終わりのチャイムが鳴る寸前の空気感になり、自分も窓から目を外して正面を向いた。

そして授業が終わるチャイムが鳴りクラスが騒々しくなる…はずだった。

だが、チャイムはならずその代わりにけたたましい音が教室に鳴り響いた

それは、時折避難訓練で聞く敵による強襲のときになるアラート音、つまるところ自分の住む所…三國所属でない機体による襲撃を受けたということだ。

そして、教室は地獄と化した。

多種多様な反応を示す同級生達、泣き叫ぶ者、廊下に逃げ出す者、先生のところに泣きつく者等々。

かくいう自分も狼狽えてただ、呆然としていた。

 

そんな地獄に静寂をもたらしたのは、先生の怒号ではなかった。窓の外から訪れた一瞬雷かと思うほどの白い光を伴った爆音だった。

それが終わったあと、アラートは止まった。

だが、窓の外には教室の地獄がぬるいものと思えるほどの地獄が広がっていた。

あちこちから立ち上る煙に崩壊した街、それはまるで歴史の教科書で見た大戦当時の街のようになっていた。

ふと、視界の端に山の麓の村から煙が上がっているのが見えた。

そこは私の生まれ育った家があるところの近くだった。

なんとなく嫌な予感がして、私は教室を飛び出した。

混迷を極める廊下の人混みをかき分けて街に出ると二階から見ていたのとは違う、細部まで見れる地獄があった。

道の端で倒れた人の手を握りながら泣いている親子に火に焼かれた人の形をした肉塊等々。

そんな悪臭と叫び声で溢れた町中を吐き気を抑えながら全速力で駆け抜ける。

たまに喉の奥から溢れ出してくる吐瀉物を飲み込みながら我が家の前に立ったとき絶望した。

私が生まれ育った家は崩れ去っていた。

さらに付近には両親のかげもない、家に潰されたのだろうか。

 

そしてフラフラしながら家に近づくと何かが頭を撫でる感触に出会った。

ハッとして見上げるとそこには細く白い手が家の瓦礫の隙間から伸びていた。

その手が母のものだとすぐにわかった。

そして私は瓦礫をどかそうとした、だがすぐにそれは無意味だとわかった。

なぜならその手は、既に肘より少し上で切れていた。

撫でられたと思ったのはただ瓦礫がずれただけだった。

それがわかった私はその場に泣き崩れた。

その後、敵機の接近によって再びアラート音が街を包んだそのとき爆音を聞いて空を仰いだ。

その音の主である自分の直上を通ったあの機体…そのボロボロの機体が自分の心の拠り所を壊したことはなんとなくわかった。

そしてそのときに私はその機体への復讐を誓った。

 

その日からというものの、私は毎日のように各企業が生産しているウトガルドの資料を闇市から仕入れては読み耽った。

だがどのカタログを漁ってもあの日見た機体は載っていなかった。

すべてのカタログを漁った私はより深い闇市…闇市の道端で耳にした『書店』の噂を頼り町中をさまよった。

その書店には世界各地の軍事関連の機密資料があるという。

だが探しても探してもその書店は見つからなかった。

 

自分の街の闇市を一日中歩き回り、さらには危険地帯と言われる街の郊外にあるゴースト街にまで出向いて探し回ったが見つからなかった。

あまりにも見つからなかったので、書店を探すことは諦め、せめてあの機体の情報を手に入れようと闇市にいる情報屋と呼ばれる男に情報を求めたが、「詳細は私にもわからない、ラップランドかはたまたブリリアンスの仕業か。まあとりあえずわかることとしては未だ市場に出回っていない機体ということ、そしてあの機体のパイロットは凄腕ってことだ。なんでも、本社から派遣された精鋭部隊を3部隊同時に相手取って殲滅したらしいからな…そんな凄腕、企業所属だったら単騎突撃なんてさせる企業はいない。まあ十中八九傭兵だろうな」

という返答だけが帰ってきた。

 

傭兵…ならばMRSに登録しているランカーの可能性が高い。

MRS所属であればデータベースに出撃記録が残っているはずなのであの日の履歴を見ればわかるはずだと踏んだ私はMRSに入社するための勉強を始めたのだった。

 

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