戦国時代に憑依TSしたと思ったらトンデモ戦国だったでござるの巻   作:翔々

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第九幕 雑賀孫一(後)

 

 

8-5

 

 

 雑賀衆の拠点の片隅に設けられた牢屋。劣悪な衛生環境と、数日に一食与えられればマシという最低限にも届かない待遇の掃きだめにも、何やら外で異変が起きたらしい事は伝わっていた。

 

「……いつも以上に騒々しくなったわい。どこぞの忍軍が襲撃でもしてきたか?」

 

 鼓膜にビリビリと響くような爆発音が、先程からひっきりなしに届いてくる。火薬の研究と称した爆発実験が日常茶飯事の雑賀衆とはいえ、明らかに異常だった。震動でパラパラと木屑が落ちてくるのを払いながら、男────破戒僧玄ノ坊は隣の牢屋を見やった。

 

「松吉よ、心当たりはあるか?」

「わからん。この辺りで雑賀衆に喧嘩を売るような忍軍といったら、根来衆か土蜘蛛衆ぐらいのもんだが、何年か前に停戦が結ばれたはずだ。お前はどうだ、雷太? 最近まで外にいたんだろう?」

「ああ、何だったかな……」

 

 松吉と同じ牢屋に放り込まれた雷太が、頭をゴツゴツと叩きながら思い出そうとする。

 

「……思い出したぞ。ありゃあ確か、京をふっ飛ばす前だ。伊賀忍軍が甲斐まで攻め込んだのに、ろくに戦果も上げずにおめおめ逃げ帰ったって噂が立ったんだ。その内に越後の軒猿まで潰れたってんで、お前が調べてこいって探りに行かされたっけな」

「わりと最近じゃないか。お前、えらく物覚えが悪いな?」

「こんなところにいたら、学者だって猿にでもなるわ。ええと、確か、透波忍軍……じゃない。似たような名前の……は、は、はぐれ透波! そうだ、はぐれ透波だ! そこが新型のからくりを盗みにくるってんで、孫一が息巻いてた気がする」

「そ、それはほんまでっか!?」

 

 向かいの牢屋からひときわ大きな声をあげて、囚人の男……花火師伝八が格子を掴む。

 

「ここから出られる機会があるっちゅうんなら、()()()でも()()()でも大歓迎や! こうしちゃおれん、動けるようにせんと! いやぁ、ひっさびさにええ話を聞いたわ!!」

「あ、いや、まだそうと決まったわけじゃ……」

「やめておけ。もう聞いてないぞ、あの様子だと」

 

 ゴキゴキと肩や膝の関節を鳴らし出した伝八を見て、寝転がっていた松吉と雷太も苦笑しつつ起き上がる。まったくの暗闇に一筋の光明を見出したのは伝八だけではなく、ふたりも同じだった。

 

 脱出の準備を始める三人を眺めていた玄ノ坊は、静かなままの方の牢屋に視線を移す。

 

「ゆりな。名無しの。そういう事になるらしいぞ」

 

 そこには二人の女がいた。彼女達は捕虜ではなく、雑賀衆の中忍以上が共有財産として弄ぶ奴隷である。人権もなく、自由もなく、あらゆる命令にいっさいの拒否を許されずに過ごしてきた。下忍である松吉や雷太とはこれまで面識がなかったが、彼らが囚人として放り込まれて以来、一度も会話をした事がない。彼女達の境遇を知るふたりもまた、傷ついた心に土足で踏み込もうとはしなかった。

 

「本当でしょうか」

 

 “名無し”と呼ばれた少女には名前がない。呼び様がないので、玄ノ坊も嫌々ながらそう口にするしかなかった。僧になる前にあらゆる悪行を働いてきた自分には、彼女の名付け親になれるほどの徳も無ければ資格もないのだ。

 

 それが出来るのは、彼女を苦界から救い出す弥勒の如き存在だろう。

 

「もし、助けが来るのなら、私も外に出られますか? 出てもいいのですか?」

「もちろんじゃ。人は誰に縛られるでもない。そなたはそなたの生を生きるために、この世にある。それにはまず、ここから出なければ始まらぬ」

「ああ、それは……とても、楽しみです」

 

 ぐすっ、と鼻をすする音が松吉達の牢屋からするのを、玄ノ坊は聞かなかった事にした。

 

「法師様」

 

 もうひとりの女、ゆりなが口を開く。

 

「私は、不安だ。どうしようもなく」

「……」

「村では迫害され、拾われた芸人一座でもそれは同じだった。常人をはるかに凌ぐ忍軍でさえ、私は人として見られなかった。この世ならざる者として扱われた。雑賀衆に勝てる忍軍であろうと、それは同じではないのか」

 

 ゆりなは生まれつき『超術』と呼ばれる異能の使い手だった。もし彼女が歩き巫女として生まれていたら、かなめ同様に稀代の才の持ち主として望月千代女が育成しただろう。ゆりなが不幸だったのは、彼女の生まれ育った村が異能とはまったく無縁の人里であり、超術を用いるゆりなは悪霊に憑かれたとして村八分にされたのである。

 

 彼女の容姿もまた、悪評に拍車をかける一因だった。韋駄天風子と同じ金髪であり、薄暗い牢屋の中でもきらきらと輝いている。切れ長に濡れた目や、白粉を塗ったように透き通る肌と相まって、若い時分には数えきれないほどの女郎を抱いてきた玄ノ坊でさえ見た事がないほどに美しい。

 

 絵巻物に描かれた天女が現実に現れた時、それを見た人間は魅了されるのではなく、強烈な違和感を抱く。あまりにも常識とかけ離れた存在を脳が理解するのを拒み、いないものとして無視するか、異分子として排除するのである。ゆりなの人生はまさしく天女の受難だった。

 

「もし、私を受け入れてくれるのなら。私など、比べるのもおこがましい人間がいるのなら。きっと、そこが私の生きられる世界なのだろうな」

 

 ゆりなの独白に、玄ノ坊は返す言葉を持たない。だが、願わくば、と胸中に念じるのだ。

 

 やがて訪れる者達が、彼女の救いにならん事を、と。

 

 

 

 

8-6

 

 

 硝煙と血煙が戦場を埋め尽くしている。

 

「玉ぁ! 弾丸持ってこい! 何でだ! 何で持ってこない!?」

「駄目だ、銃がもう撃てん! 冷却班はどうした!? くそっ、転がってる奴から持っていけ!」

 

 孫一の代になってからの雑賀衆が、いまだ経験した事のない長期戦。二〇〇以上の銃口に狙われても仕留められず、大砲、グレネード、ロケットミサイルまで持ち出しても足さえ止められない。

 

 高火力・広範囲の火器になるほど大量の火薬が要る。火縄銃とは比較にならない大口径となれば、目を灼きかねないほどの衝撃である。おまけに着弾点から煙幕を噴き上げてしまうため、ただでさえ神出鬼没の目標を視認できなくなる。戦場にランダム発生した隆起と合わさって、凶悪な地形効果をもたらしていた。

 

「がっ……!」

「う、うわ、あああああああああ!」

 

 スモークの中から現れた貫手が、中忍の背中を突き抜けた。人外の化生に接近された恐怖から周辺の下忍達がショック状態に陥り、ろくに狙いもつけず発砲する。そんな弾丸が当たるはずもなく、ひとり、またひとりと始末されていった。

 

「怪物め!」

 

 孫一の悪態は止まらない。戦闘開始から既に一時間が経過し、雑賀衆の死者は半数を超えた。軍隊なら壊滅といっていい。鍛え上げた戦闘員のほとんどが地面に横たわり、修行の終わっていない半人前まで投入する羽目になった。

 

 それでも、無駄ではない。確かに人外じみた肉体の持ち主だが、血も流すし負傷もする。何人目かの自爆特攻では避けきれずに火傷を負い、流れ玉が右角にヒビを入れていた。完全無敵の存在ではなく、いつかは殺せるのだ。

 

 だが、それまでに払った犠牲が大き過ぎる。無尽蔵に用意したはずの玉薬は闇雲に消費され、部下全員に持たせた火縄銃のほとんどが放熱で故障。中には暴発によって火薬樽に引火し、大爆発を引き起こした者までいる有様だった。

 

「たったひとりで、ここまでやる。はぐれ透波ってのは全員こんなのばかりか? たまらんな」

 

 99%が火薬で埋め尽くされた孫一の脳内で、残りの1%が算盤を弾く。部下の手前もあって桔梗の抹殺を叫んだが、この状況でそれは現実的か? いたずらに損害を出した現状、仕切り直しを図るべきではないか? いまの自分に求められる選択は?

 

 そんなもの、とっくに決まっている。

 

「上等だ! 撃っても当たらないなら、当たるまでいくらでも撃てるって事だ! 当たっても死なないなら、死ぬまで風穴を空けてやるだけよ! 日本全土を爆破するために集めた火薬、残らずご馳走してやる!!」

 

 雑賀孫一という車にあるのはアクセルだけである。ブレーキなどという軟弱な仕様は設計段階から存在しない。そんなものがあったら京の町を焼いてはいないのだ。いっそ清々しいまでのトリガーハッピーである。

 

 そもそも頭領として、お行儀よく腰を下ろしていたのが間違いだったのだ。これでは最高のエサを前に「待て」をされた犬ではないか。一番偉い自分が我慢しているのに、部下達は景気よく銃をぶっ放している。こんな事が許されるのか。自分だって思う存分撃ちたい。当てたい。爆破したい!

 

「ええい、もう我慢できん! 全員突撃!! 貴様ら、俺に続けぇ!!!」

 

 秘蔵の銃火器で全身武装した孫一が最前線へと雪崩れ込む。彼に従う精鋭達もまた、火縄銃、爆弾、単装バズーカ、それぞれの愛する獲物を抱えながら死地に突貫する。全員とびっきりの笑顔である。孫一の側近になる時点で、どいつもこいつも硝煙で脳を完全に灼かれているのだ。

 

 まともな思考の持ち主は、とっくの昔に死んでいなくなった。後に残るトチ狂った連中も、眼前の鉄火場へと突き進んでいく。ここにいるみんなが前だけを見ていた。おかげで誰ひとりとして気づかない。

 

 背後の拠点が音もなく制圧され、虐げられてきた被害者達が立ち上がった事に。

 

 

 

 

8-7

 

 

 雑賀衆。単独で日本一の火薬量を保有し、最先端のからくりである火縄銃を忍軍の主力として運用する、近畿随一の戦闘集団。その戦力と凶暴性は凄まじく、京の都を単独で焦土に変えるなど、いずれは三大忍軍でさえも一目置く存在になっただろう。中堅に届くかどうかの規模でしかなかった組織をそこまでに育て上げた雑賀孫一は、まぎれもなく非凡な才の持ち主である。

 

 だが、彼はあまりにも性急に過ぎた。火薬を独占したいがために暴力をふるい、無辜の民からあらゆる財産を奪い続けた。流した血の量は淀川を赤く染め、熊野の自然は見る影もなく破壊された。

 

 急拡大によって積もりに積もった、幾千万の恨みと嘆き。いま、報いのすべてが振りかかる。

 

 

 

『ありがてぇ! わいを助けてくれるんか。わいは、メッチャすげえ花火を作る伝八ってもんや。忍者にあこがれて雑賀衆に入ろう思たんやけど、ひどいもんや。飯はださねぇ、薄暗くて狭い部屋に閉じ込められる、それで延々こきつかわれるんや。あれじゃ奴隷やで。ほんま、助けてくれてありがとさん! あんたらのために、ええ働きしまっせえっ!!』

 

「おのれら、よくもわいをこき使ってくれよったな! 挙句の果てに京を焼いたやと!? わいはなぁ、そんな事のために火薬を作っとったんやない! 花火師の名にかけて、おのれらだけは許さん!! 絶対にぶちのめしたる!!」

 

 花火師伝八。雑賀衆の爆弾を量産してきたこの男は、孫一にも知られずに大量の爆発玉を隠していた。すべてはこの時のためである。ろくに後ろを見ずに突っ込む敵の背中に向けて、腕も折れよとばかりに大遠投で投げ込んでいく。

 

 

 

『俺に鉄砲を扱わせれば、雑賀衆でも右に出るものはいない。それなのに、たった一度の失敗で孫一の野郎は俺を殺すといったんだ。それも孫一の策略に嵌められてのヘマさ。頼む、俺を救ってくれ。俺は絶対に裏切らない。信用してくれといっても難しい話だ。だから、裏切れば遠慮なく殺してくれて構わない。どうか、俺を助けてくれ!』

 

「狙いは外さんぜ」

 

 霞打ちの松吉。火縄銃の扱いにかけては雑賀孫一を上回る天才である。その腕に嫉妬した孫一は、松吉に無実の罪を着せて投獄し、死ぬまで飼い殺すつもりだった。

 

 彼の手にはいま、愛用の銃が握られている。霞打ちの異名の通り、スモークで埋め尽くされた戦場であろうと敵を見逃さず、的確に後頭部を撃ち抜いていく姿からは、いっさいのブランクを感じさせない腕の冴えがあった。

 

 

 

『俺を助けてくれ。絶対に損はさせねぇから。俺は、異常に目がいいんだ。まず、狙った獲物は逃がさねぇ。なぁ、頼むよ。雑賀衆を抜けようとしたら、捕まっちまって、あとは死刑を待つだけなんだ。雑賀衆はひでぇところさ。頼むよ、助けてくれよ。仲間にしてくれたら、死ぬほど働くぜ』

 

「梟よ、行け! ひとりも逃がすな!!」

 

 夜目の雷太は鷹匠である。中でもフクロウをこよなく愛し、一度に数十羽を飼育して忍鳥の訓練を施すのを生業にしてきた。一族は諜報員として重用されてきたのに、孫一の代になってからは冷遇され、雷太の頃には冷や飯食いの下っ端以下にまで落とされる。嫌気がさして抜け忍になろうかと思い出したところに、同僚の失敗を防げなかったなどと言いがかりをつけられて牢屋送りにされた。

 

 もはや古巣には何の義理もない。高台から戦場の隅々まで視界におさめた雷太は、主の元に戻ってきた愛鳥達に爆弾を持たせるや、彼らを空中からの恐るべき刺客として解き放つのだった。

 

 

 

『どうか、私をお助けください。私は、さる村が全滅にあった際、赤ん坊だったときにさらわれてきたのです。名前もつけられず、いろいろな奉仕を強制され続けてきました。もう、耐えられません。何でもいたします。この地獄から抜け出したいのです。お願いでございます。どうか、助けてください。そして、私に名前をつけてください!』

 

「怪我をした人は、私を呼んで! みなさんが私にくれた名前、『茜』を呼んでください! 絶対に治してみせます!!」

 

 名無しの少女は、自分だけの名前を得た。過酷な人生が育んだのか、彼女にはわずかながら巫女の才能が発露していた。かなめの指導のもと、茜は新たな人生を歩み出す。

 

 

 

『私を助けてくれるのか? 私は、超術を使うゆりな。生まれつきの能力のため、異能力者として村では忌み嫌われていた。そこを雑賀衆に見出され、連れてこられたのだが、ここでの扱いはひどいものだ。私を人間として扱ってくれるのならば、ともに戦わせてもらいたい。必ずや、力になることを約束しよう』

 

『お前達が雑賀衆に挑んだ忍軍か? わしにはどうでもいい事……しかし、ゆりなは別じゃ。わしはこれまで、あらゆる悪行を働いてきた生臭坊主よ。わしがどんなに酷い目に遭おうが、それは因果応報じゃ。いまさら文句をいう資格はない。だが、ゆりなは違う。あんなに悲しい目をした娘を、わしは見た事がない……ゆりなをこれ以上悲しませぬために、わしも行かせてもらうぞ』

 

 

 

「ぐ、うお、おおおっ!?」

 

 トリガーハッピーによる恍惚から目覚めた時、雑賀孫一は戦場のド真ん中で孤立していた。前線にいた兵隊は桔梗が潰し、後詰めに送った人員は合流した藤丸達がまとめて撫で切った。わずかに残っていた手勢も、松吉や雷太達によって全滅しつつある。

 

 抱えていたバズーカは撃った端から投げ捨てており、とっておきのグレネードや大口径銃はとっくに撃ち尽くして空である。ならばと近場に設置していた大砲を見れば、跡形もなく潰されて使用不能に陥っていた。

 

 戦おうにも火器は尽きた。逃げようにも、彼の足は沼地に引きずり込まれたように重く、指一本動いてはくれない。けして疲労のせいではなかった。おどろどろしい形相の張り付いた青白い魂魄が、孫一の全身へ何重にも巻き付いて離れないのだ。

 

「呪念法・霊界。そなたの殺した人の魂が多いほどに、身動きを縛る。いやさ、これほどの数の人魂は見た事がないわい……さぁ、ゆりな。目の前にいるのは雑賀孫一じゃ。おぬしの半生に泥を塗った、因縁の相手ぞ」

 

 玄ノ坊の背からゆらりと姿を現した少女が、頭上高くに丸鏡を掲げ持つ。超術使いであるゆりながこの丸鏡を使えば、あらゆる不浄と欺瞞を見抜き、真実を露わにする。温かみのかけらもない、闇を切り裂く非情の光である。幼いゆりなに対してよこしまな内心を抱いた村人達はみな、この光を浴びて狂ったのだった。

 

「鏡念法・閃光────私の超術でこなごなになるがいい! 雑賀孫一、覚悟!!」

「ゆりな! 貴様のインチキごときで、俺を殺すか! この、クソッタレがぁ────!!」

 

 太陽を反射させる鏡から、一筋の巨大な光矢が放たれる。五体の自由を奪われた孫一に成すすべはなく、全身が光の渦に呑まれるように浮き上がり、はるか先の瓦礫に激突した。

 

 

 

 

8-8

 

 

「……畜生。俺の負け、か」

 

 積み上がった瓦礫を残らずふき飛ばし、クレーターの底で横たわる雑賀孫一は酷い有様だった。極大の光矢、神力とでもいうべき光の渦に呑まれた全身は焼けただれ、血液さえ蒸発しかけていた。彼の愛する火薬と違うのは、脳を灼く硝煙の香りがまったくしない点である。孫一にはそれが何より気に入らなかった。

 

 地上から自分を見下ろしてくるはぐれ透波、そして反逆してきた者達の顔を、ギロリと睨みつける。すでに霞んだ視界には誰の判別もついてはいない。それでも、自らの野望を砕いた張本人と、とどめを刺しにやって来た女の方を見た。

 

「煉釖藤丸、桔梗、それにゆりな。てめぇら、覚えてろよ。地獄に来たら、この何倍も返してやるからな。く、ククッ、せいぜい、あの世でも火薬を集めなきゃ、な────っ!」

 

 倒れた孫一の背中が盛り上がるように膨らんだ瞬間、轟音とともに吹き飛んだ。玉切れに見せかけておきながら、特攻用の爆弾を残していたのである。それでも穴底からでは届かず、藤丸達の顔をわずかに風が撫でるだけに終わった。

 

 名指しされた藤丸が嫌そうに唾を吐きながら、朱雀刀を納めてぼやく。

 

「……ったく、とんでもねぇ爆弾魔だったな。どうしてこんな野郎が野放しになってやがんだ? あー、胸糞悪い。とっとと連中の武器を奪ってトンズラしちまおう」

「おっ! なら、わいがとっておきの部屋ぁ知ってます! 孫一の野郎が研究に使うてたんで、きっとええもんありまっせ!!」

「そうか? なら案内してくれや。話が早いのは助かるぜ」

 

 まくし立てる伝八に引きずられるようにして、藤丸達が雑賀衆の拠点に向かっていく。弾丈からのおつかいを果たすため、極力施設には手を付けずにいたので、あとは内部をよく知る者の手引きがあれば完璧である。からくりに火薬、そして設計図と、よりどりみどりに違いない。

 

 

 

 

 賑やかに遠ざかっていく仲間達の背中を、疲れ切ったような半目で眺めていた桔梗だったが、やがてベシャーンと音を立ててひっくり返った。ボフッ、と黒煙の混ざった息を噴いて、

 

「戦国時代にランボーやらせるんじゃないよ……ああ、マジで死ぬかと思った……」

 

 大の字になって寝転がりながら、今日おそらく一番頑張ったであろう自分を労わるのだった。

 

「驚いた。世の中には角を生やした人間もいるのだな、法師様」

「いや、わしも初めて見たが……ううむ、長生きはしてみるものじゃなぁ」

 

 なお、一行から距離を置いていた天女と法師によって、治療は受けられた模様。

 

 






人物紹介


◇霞打ちの松吉
 年齢  24歳
 身体  5尺6寸(169.7cm)
 体重  24貫(89.9kg)

 雑賀衆の鉄砲使い。火縄銃の扱いにかけては頭領以上の腕前の持ち主であり、嫉妬した雑賀孫一に捕らえられていた。ゲームでは才蔵の説得によって仲間入りする。優れた才能の持ち主同士、気が合ったのかもしれない。

 特技『雑賀砲術』の使い手。三人に分身して同時射撃したり、ロケットミサイルを撃ったり、雷属性を付与した弾を撃ったり、マップ兵器を撃ったりと結構な手数がある。




◇夜目の雷太
 年齢  22歳
 身体  5尺5寸(166.7cm)
 体重  17貫(63.7kg)

 松吉と同じく、雑賀衆所属の梟使い。雑賀衆のやり方が気にくわず、待遇の悪さにも辟易して抜けようとしたが失敗、虜囚の身となっていた。ゲームではかなめ、もしくは仲間になったゆりなの説得で仲間入りする。忍者の説得は受けないあたり、忍者そのものに嫌気がさしたのだろうか。

 特技『梟操術』を使う。自分で斬りかかる等はせず、すべて梟による突撃である。特技はすべてマップ兵器で、梟に爆弾を持たせての爆撃のみ。




◇花火師伝八
 年齢  23歳
 身体  5尺6寸(169.7cm)
 体重  17貫(63.7kg)

 忍者に憧れて雑賀衆に入ったが、あまりの劣悪な環境に幻滅していた花火師。ゲームでは誰の説得でも仲間入りするが、はぐれ透波の資金の半分をよこすように要求する。

 特技『花火秘法』の持ち主。覚える四つの技中三つがマップ兵器、最後に覚えるマップ兵器は全マスが攻撃対象という破格の性能、と見せかけて、このゲームでは不遇の火属性なのでダメージソースになりにくい。また大量の術力を消費するので、技を使うのにも相当鍛えないといけない。このゲームの男性キャラ中最弱かもしれない。

 ……という、真面目な解説が一切不要なネタの塊でもある。

・声優:某人間賛歌の吸血鬼orガンダムの不可能を可能にする男
・仲間になる次のマップで高火力・紙耐久のギャンブルを迫られる
・下半身が ふ ん ど し 一丁のため、戦闘画面で 男 の ケ ツ を見せつける

 エンディングがしれっと衝撃的な男。




◇ゆりな
 年齢  21歳
 身体  5尺2寸(157.6cm)
 体重  不明
 胸囲  2尺8寸(84.8cm)
 腹囲  1尺9寸(57.6cm)
 尻囲  2尺8寸(84.8cm)

 生まれながらの異能者であったために迫害の人生を送り、雑賀衆に拾われてからは最前線で使い潰された女。人として扱われる事を望み、ゲームでは賽天太の説得を受けて仲間になる。

 特技『鏡念法』を使う。鏡から光の矢を放つ、マップ兵器で石を飛ばすほか、巫女としての術も使用可能。かなめと使い分けてもいいし、併用するのもアリ。




◇破壊僧玄ノ坊
 年齢  60歳
 身体  5尺7寸(172.7cm)
 体重  20貫(75kg)

 若い頃にあらゆる悪事を働き、それを悔いて僧になった老人。自らの背負った業からの解放のために旅をしていたが、ゆりなと出会った際に彼女の抱えた業を気にかけ、少しでも助けになりたいと仲間入りを願う。ゲームでは九幕ではなく、次の十幕で登場する。

 特技『呪念法』の使い手。光属性のイメージの巫女達とは違い、悪霊や怨念といった闇属性的な術を行使する。二つのマップ兵器持ち。いちおう法師らしく、回復の術も使う事ができる。




◇名無しの巫女

 雑賀衆に襲われて全滅した村の生き残りで、幼い頃から奴隷としてあらゆる奉仕を強要されて育った。仲間入りの際、自分だけの名前が欲しいと願う。

 第一幕で仲間になる夕霧達とほとんど同じ能力の持ち主である。通常攻撃のセリフが「お前たちのせいで……」と攻撃的。




◇雑賀孫一

 雑賀衆のトップ。日本中を爆弾でふっ飛ばす野望を抱き、からくりを狙って侵入してきたはぐれ透波と対峙する。奴隷を使役したり、不満を溜めた部下が離反したりと、組織運営にかなり問題がある。

 ゲームよりそこそこ強化された中ボス。八幕で京を焼いたのは小説のオリジナル展開です。

 十一幕に登場する中ボスとビックリな秘密がある。

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