Side 雨
神琳が私なんかのために考えた、私の実力を証明する方法。
でもなにも教えてもらえなかった。
【でもそれは神琳さんが雨嘉さんの実力を信じているからではないですか】
〔そ、そうだといいな〕
【まあ、すぐにわかりますよ、雨嘉さんの実力は】
サヨはサヨで、いつもみたいに励ましてくれるけど、やっぱりね…
ピロッー
うん?神琳からメールだ。
「屋外訓練場に来てください、そこで証明します」と書かれていた。
屋外訓練場か、レアスキル的には相性がいい。
【神琳さんが待っているかもしれませんので、そろそろ行きましょう、雨嘉さん】
〔そうだね、行こうか〕
相棒である"アステリオン"を持って、訓練場に向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここは、屋外訓練場。緊急事態にはここでヒュージ迎撃にも使用される場所でもある。
私は今、レアスキル"天の秤目"で約1km離れた神琳が指定する目標である、指す指先を狙っている。
そこが偶然にも、神琳の眉間に当たる場所。
その目標に向かって、私のCHARM"アステリオン"の総弾数10発分を寸分の狂いもなく命中させられたなら、この試練は合格とするらしい。
さっき、神琳からの連絡で教えてもらった。
【なるほど、よく考えますね、神琳さんは】
〔どうしてそう思うの、サヨ〕
【理由はいくつかありますが、一番大きいのは最大限に雨嘉さんの実力を証明できるかと】
〔そうなんだ、でも神琳は私ができないことをできないというし、これは私ができると思うから、この試練を用意してくれたよね。〕
【そうだと私も思いますよ】
〔ならせめて神琳の期待だけを裏切れないね〕
【そうですね、それと私もそばにいますから、雨嘉さん(前より成長しましたね)】
〔うん、ありがとう、サヨ〕
そう思いつつ、ここまでに至った経緯を思い出す。
―――――――――――――――――――――
「─────私、やってみる・・・・ううん、やらせて欲しい」と私が言った
でもどうすれば、と考えていたら。
「ふふふ・・・♪確かに、大事なことですね。では、証明する方法は私にお任せいただけますか?」
と神琳が提案してくれた。
―――――――――――――――――――――
「私の姉も妹も、今もアイスランドに残ってヒュージと戦っているの。一人だけ故郷を離れるよう言い渡されて…私は必要とされてないんだって思った」
神琳の提案でやって来たのがここ、屋外訓練場。
私と一緒に来たのは一柳さん。
「ごめんなさい。百合ヶ丘は世界的にもトップクラスのガーデンよ。ただ、故郷を守りたいっていう気持ちは特別、っていうか…」
「うん。それ、分かるよ」
一柳さんが笑顔で答える。と、その時。私の携帯が鳴る。神琳からだ。
神琳はここには居ない。そういえばさっき、一柳さんに何かお願いしてたみたいだけど、何だったのかな…?
『雨嘉さん、こちらがわかる?』
「え…あ、うん」
視界を巡らせ、神琳を探す。
居た。
離れた廃ビルの上から電話をかけている。その隣にも誰かいる。誰だろう?
『そこから私をお撃ちなさい』
「…え」
唐突に、神琳からとんでもない事を言われ、理解するのに少し間が空いた。
『訓練弾なら大丈夫よ』
「そんなわけ・・・」
『総弾数10発、きちんと狙えたら、私からはもう何も申しません』
それだけ告げて、神琳は通話を切ってしまった。
「・・・・どうして」
戸惑う私のところに、一柳さんがやってきて訪ねる。
「雨嘉さん、猫好きなの?」
「え?う…うん」
なんで今、そんなことを…?と思っていると、一柳さんは、私の携帯に付いてる猫のストラップを指して言った。
「この子、可愛いね♪」
「!……うん」
この子に、気付いてくれた…!
私は、昔から感情表現が苦手で困るとすぐに黙ってしまう。そのせいか、いつも“怒っている”と勘違いされてきた。
【よかったですね、神琳さん以外に気付いてくれた人がいて】
〔うん!でも…〕
【でも…なんでしょう】
〔でもサヨも気付いてくれたんだよ〕
【あ、そうでしたね。まあ伊達に神琳さんよりそばにいますからね、私】
このストラップは、そんな私の、精一杯のアピールだ。私だって、普通にみんなとおしゃべりがしたい。みたいな・・・
一柳さんは、そんな思いの籠ったこの子に、気付いてくれた。
そんな一柳さんとなら、私も戦いたい…!
「これ、持っててくれる?」
「え…?うん」
梨璃に携帯を預けて、私は愛機“アステリオン”をシューティングモードに切り替えて構えると、レアスキルを発動させる。
「へぇ・・・・!それで、目標は何?」
「神琳」
梨璃からの問いに静かに答え、離れた神琳の指す指先を狙る。そこは丁度、神琳の眉間に当たる場所。
一呼吸、心を落ち着かせ・・・・引き金に、指をかける。
「これは、貴女がくれたチャンス・・・・・だから私も貴女を信じてみる・・・・!」
そしてなによりサヨがくれたチャンスでもあるから。
.
..
...
一瞬生じた静寂の瞬間、私は、引き金を引いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Side 夢
『雨嘉さんのレギオン加入試験に立ち会ってください!!』
そんな連絡がシルトである梨璃から届いたのが、ついさっき。
どうやら、梨璃のレギオンメンバー集めはかなり順調に進んでいるようだ。
なんというか…シュッツエンゲルとして喜ばしいような…当初の予定と外れて残念なような…
とにかく、頼まれたのだから務めを果たすべきね。
それで、何処に行けば良いのかしら?
―――――――――――――――――――――
二水さんと連絡を取り、どうにか場所を聞き出した私は、試験会場である屋外訓練場までやって来た。
「雨嘉さん、こちらがわかる?」
指定の場所には一人のリリィがいた。確か…郭神琳さん…だったかしら?二水さんの話によると、彼女も梨璃のレギオンのメンバーとなったらしいけど…
「そこから私をお撃ちなさい」
なるほど、それがこの試験の内容なのね。
目を凝らして対岸の廃ビルを見れば、その屋上に二人の人影が見える。恐らく、あの中の一人が件の雨嘉さんなのだろう。
「訓練弾なら大丈夫よ。総弾数10発、きちんと狙えたら、私からはもう何も申しません」
それだけ告げて、神琳さんは電話を切ってしまった。
「大丈夫、貴女ならできるわ」
「…直に言ってあげたら如何?」
通話を切った後の携帯に向かって喋る彼女を見て、思わず話しかけてしまった。が、特に気にする様子もなく、神琳さんは私に返事を返した。
「お立ち会い御苦労様です、夢結様」
「お構い無く、梨璃に頼まれましたから」
必要最低限の挨拶を済ませ、私達は押し黙る。
長く続くかの如き沈黙。それを破ったのは、神琳さんの独り言だった。
「撃ちなさい雨嘉さん。撃って、貴女が一流のリリィであることを証明なさい」
それに応えるように、向こうから訓練弾が飛来してきた。直撃コースだ。
正確に、神琳さんを狙って放たれた弾丸は──────
「ふっ・・・・!」
神琳さんの振ったCHARMに弾かれ、彼女に命中することはなかった。
「雨嘉さんとの距離は約1㎞。アステリオンの弾丸の初速は毎秒1,800mだから、瞬きするくらいの時間はあります。狙いが正確なら、かわせます」
「なるほど、正確ね…いつものCHARMは使わないのね」
今更だが、彼女は普段使用している自身のCHARM“媽祖聖札マソレリック”ではなく、雨嘉さんと同じ“アステリオン”を使用している。
「対等の条件にしておきたいので」
…対等、ね。そう想っているということは、神琳さんは今の雨嘉さんを下に見ている、という風に思えるわね。
なんて考えている間に、六発目の弾丸が弾かれた。
あと、四発。
と、その時だった。
「…!風が──」
海から強風が吹く。これでは弾が逸れてしまう。
私なら、ここは一度やり過ごして機会を伺うだろう。
しかし、雨嘉さんは撃った。
風速と方向を計算し、先の六発とまったく同じ場所に、見事七発目を命中させてみせた。
続けて八発目・・・・命中。九発目・・・・命中。
いよいよ最後の十発目となった。
ここで更に風向きが変わる。
それでも彼女は、諦めることも、やり過ごすこともなく、撃った。
瞬間、神琳さんが徐にアステリオンから媽祖聖札へと持ち替え、訓練弾を弾き返した。
まるで巻き戻しされるかのように、訓練弾は雨嘉さんのもとへと飛んで行き・・・・雨嘉さんは自身のCHARMで、それを防いでみせたのだった。
想定外の事態は起きたが・・・ともかく、彼女は見事、十発の訓練弾を当ててみせた。
「お見事でした、雨嘉さん。貴女が優秀なリリィであることは、これで誰の目にも明らかだわ」
雨嘉さんへ電話する神琳さん。その表情は、どこか憑き物でも落ちたかのように、すっきりしていた。
「ありがとうございました、夢結様」
「いえ。貴女も見事だったわ」
お礼を言う彼女に、世辞ではなく、心からの称賛を贈る。
「…私、雨嘉さんが妬ましかったんです。エリートの家に産まれ、才能にも恵まれて……なのに本人は自信を持てなくて悩んでいるなんて…何なのよこの子はって、腹も立ちませんか?」
「…ずっと、腹を立てていたの?」
「はい。でもこれでスッキリしました」
……なんと、言うか
「私が言うのもなんだけど・・・・貴女もなかなか面倒な人ね」
「よく言われます♪」
そう言って、神琳さんはにこやかに笑ってみせたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Side 雨
引き金を引いた。
そして神琳を狙って放たれた弾丸は──────
神琳が振ったCHARMに弾かれ、命中することはなかった。
【神琳さんもいじわるですね】
〔そ、神琳はいつもいじわるだし、ずるい〕
【あら、彼女さんが拗ねてしまいましたね、神琳さん】
〔か、かのじょじゃ…?!〕
【冗談ですよ】
〔もう、でもありがどう〕
【どういたしまして】
なんてサヨとしゃべってたら、六発目の弾丸が弾かれた。
あと、四発。
と、その時だった。
「…!風が──」
海から強風が吹く。これでは弾が逸れてしまう。
いつもの私なら、ここは一度やり過ごして機会を伺うけど。
いや、撃った。
風速と方向を計算し、
先の六発とまったく同じ場所に、
命中。
続けて八発目……命中。
九発目……命中。
いよいよ最後の十発目となった。
ここで更に風向きが変わる。
それでもやり過ごすこともなく、撃った。
【終わりまし…危ない!】
えっ
神琳が訓練弾を弾き返した。
瞬間、アステリオンをブレードモードに切り替えて、訓練弾を防いでみせた。
ハァーハァー
【大丈夫ですか、雨嘉さん!(危うく私のレアスキルがバレてしまうところだったわ)】
〔大丈夫だよ、サヨのおかげでなんとか防いだから〕
【そう…ですか】
そ、もしサヨの警告が少しでも遅かったら、もしブレードモードに切り替えるスピードが遅かったら、とついつい考えちゃ。
ピロロロロロッ
と神琳からの電話だ
「お見事でした、雨嘉さん。貴女が優秀なリリィであることは、これで誰の目にも明らかだわ」
と言ってくれた。
一緒にいる梨璃はそれを聞いて、喜んでくれた。
お礼を言わないと…
「ありがどう、梨璃」
「へ?」
「梨璃がこの子を褒めてくれて、私はあなたのレギオンに入りたいと思うから」
「それがありがどう?」
「うんっ!ありがどう」
〔ありがどうね、サヨ〕
【いえ、私はなにも】
〔ううん、サヨはいつもそばにいてくれたから、私は頑張れた、改めてありがどう。〕
【どういたしまして。でもこれからはレギオンのみなさんもそばにいますからね】
〔そうだね〕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これで試験は終わりかな。
ちょっと汗を流したいから、先にお風呂にいくことを梨璃に言って向かったら、
風呂場に神琳と会えた。
神琳にもお礼を言わないと…
「神琳……今日はありがどう」
「どういたしまして」
「…で、ごめん」
いきなりのごめんに対して、おぉーと驚いた神琳
「聞いたんだ、神琳の故郷はヒュージにのみ込まれたって」
「ええ、わたくしは故郷を知りません」
「無神経だった、私…」
私…と言いたいことを話したいけど、神琳が背中を預けてたから、止まった。
「そんなこと気にしていたの?」
そりゃあ、気にするよ、神琳のことだし
「せっかく背中に預けられる仲間に出会いんです。あなたに喜んでもらえたら、わたくしも嬉しいのよ」
神琳…うん、そうだよね
「うん、ここに来られてよかったっ!」
【よかったです、おめでとうございます】
〔ありがとう、サヨのおかげでもあるよ〕
【いえ、だいしてことはしてませんが】
〔いつも私に自信がないと言ってるけど、サヨこそ自信がない〕
【そうでしょうか】
〔そうだよ。ところで、サヨのことはみんなに言ってもいいかな〕
【でも信じる人いますかね】
〔梨璃達なら大丈夫〕
【そうですね、今でもいいですが、やはり9人がそろったときに言いたほうがいいと思いますよ】
〔じゃあそうしよう〕
サヨの存在をみんなに教えることを決めた……けど、まさにあんなことで教えることになるとは……
読んでくださってありがとうございます。
はーい、イケメン神琳さんでしたー
いやーここは神雨の大事なシーンですからね。
どうしようと思ったですけど、めちゃくちゃ悩んで書けてよかったです!
しかし、サヨの登場はどうしようと思うですが、ここはやっぱり…でいいかなと。
次回も読んでくれたらうれしいです。(がんばって書きます)
そして評価をくれた大石内蔵助さん、歩兵の紳士さん、誠にありがとうございます。