ある日、世界は光に包まれた。
世界中の学者達が調査しても光についてはなにも分からず、神の光と言い出す者達もいた。
しかし、あの光が放たれてから世界には未確認生命体と呼ばれる怪物が現れるようになり人々を襲い、世界は恐怖に包まれた。
しかし、そんな未確認生命体のうちの一種『グロンギ』と呼ばれる種族に立ち向かっていく者が現れた。
その名は未確認生命体第4号。
同じ未確認生命体とされながらも人々を守るために勇敢に戦った。
そんな彼に続くように
そして4号はグロンギの首魁と見られる0号と闘い、0号は死亡。4号は行方不明となった。
これが闘いの終局。
これ以降、人間には理解の及ばない所謂『不可能犯罪』は
そう、全くなくなったわけではない。
特にここ、
つまりまだ、闘いは続いているということ────。
閑静な住宅街。
市内中央から外れ、近年開発の進んだベッドタウンを歩く主婦がいた。
買い物帰りでエコバッグには今日の夕飯の食材などが詰まっている。
そんな彼女を狙う、異形……。
「視えたんですね」
女性の声で目を覚ます。
目の前には声の主であり自分の上司である『
「視えました。神田方面に向かってください」
そう言うと沢澄さんはこのトレーラーの運転手に指示を飛ばした。
サイレンの音がこのコンテナの中にも響く。
「Gユニット出動。チームカルナ先行します」
市内全隊に無線を飛ばす沢澄さんの隣には神田の監視カメラの映像を収集し詳しい地点を洗いだそうとする男性隊員『
もう、見慣れた景色である。
「さあ行きますよ鹿島君」
「はい」
沢澄さんに促され自分も準備を始める。
精神を研ぎ澄まし、自身に眠る力を呼び起こす。
力の源たるベルト『オルタリング』と呼称されるものが現れ両サイドのスイッチを押すことで俺は
「変身」
光に包まれる。
沢澄さんが目を背けた。
強すぎる光は、目を潰してしまう。
そして光が収束していくことで変化した身体が現れる。
大きな夕陽のような複眼。
赤いクワガタを思わせるような二本の角。
レッドダイヤモンドのような紅い身体。
これが俺の
変身は完了した。
だが、まだ装備が必要なのである。
所定の位置に立つと沢澄さんが各部に装甲を纏わせていく。
Gシリーズという警察の開発した強化外骨格及び強化外筋システム。
4号を元にして造られたこれは本来普通の人間が未確認生命体に対抗するために造られたシステムである。
だがこれを人を超越した存在に纏わせてはどうかと理論を提唱し、改造を施し、実戦投入させるまでに至らせたのが天才沢澄小夜であった。
身体に装着される青と銀の装甲達。
最後に頭部を守るためのヘッドギアという仮面を装着させられて装備は完了である。
仮面ライダーカルナ。
それが、自身に与えられたコードネームである。
「まもなく現場近くに到着します」
藤尾さんの報告を聞き、沢澄さんは俺に向かって頷いた。
出撃である。
コンテナの中央に鎮座するガードチェイサーと呼ばれる高性能白バイに跨がるとオルタリングが光を放ち、ガードチェイサーまでも変化させる。
『マシンストームチェイサー』
白バイとは思えぬ青と赤のカラーリング。
それでもパトランプは残っているのはオルタリングという俺の力が判断して残すようにしてくれたのか。
「ストームチェイサー離脱します。鹿島君頑張ってくださいね」
「はい」
コンテナが開き、ストームチェイサーがゆっくりと後退し公道へと降りた。
パトランプを鳴らし、トレーラーを追い越して駆ける。
普通のバイクとは比べ物にならないスピードを出して、現場へと急行するのだ。
自分が視た、最悪の未来を変えるために。
閑静な住宅街を歩く主婦がいた。
買い物帰りでエコバッグを抱えて歩く主婦が。
そんな主婦を狙う異形、ジャガーロード。
その異形の脚力で茂みから飛び出たジャガーロードは主婦に向かい魔の手を伸ばす。
響く悲鳴。
なす術はないと思われたが……。
「ッ!?」
ジャガーロードに一発の弾丸が命中。
異形は獲物には届かず硬い地面に叩きつけられた。
「逃げてください! ここは危険です!」
主婦に避難を促すカルナ。
彼は、自分が視た最悪の未来をひとまず変えることは出来たのだ。
誰にも助けられず異形の手にかかる彼女を助けることが出来た。
ならばあとは、あの異形……アンノウンと呼ばれる存在を討つのみ。
GM-01スコーピオン突撃銃を右腰のホルスターに収納しジャガーロードと向かい合うカルナ。
住宅街というのもあって、流れ弾で被害が出たなんてことは避けたいという意思がカルナにはあった。
守るために闘っているというのにそれで誰かを傷つけてしまうなんてあってはならない。
だからこそ、身体を張る。
この身体で迅速に倒す。
それが、カルナの闘い。
「アギト……」
アンノウンの呟きを逃さぬ耳ではない。
アギト。
光が放たれたあの日から現れた超越者。
自身もその一人であるが、人を越えたとは思っていない。
力は得た。
だが、何も変わらない。
何も変わらないのだ、自分という人間は。
そうした自分に仮面を被り、装甲を纏い戦う。
それが、カルナ。
睨み合い、間合いを測り、じりじりと近付いていく。
最初に動いたのはジャガーロードであった。
爪で切り裂こうと振るわれた腕。
しかしそれを受け止めたカルナはジャガーロードの勢いも合わせてジャガーロードを投げ飛ばす。
「リミッター解除を要請します」
『分かりました。カルナ、リミッター解除』
沢澄からリミッター解除の許可が出たことによりカルナの両腕、両足の装甲が展開する。
装甲から発する熱が身体に伝わる。
仄かに熱くなっていくのを感じながら自身の力も解放した。
展開される角『クロスホーン』。
「ふっ……はぁぁぁぁぁ……」
足元に浮かび上がるアギトの紋章。
赤い光となって身体に収束していき、全身の力が高まるのを感じる。
そして一気に駆け出す。
立ち上がったジャガーロードの顔面に思い切り拳を放つ。
一発だけではない。
二発目、三発目。
蹴りも追加し反撃を許さない。
そして一連の格闘の中に加わる斬撃。
いつからその手に武器を持っていたと驚愕に目を見開くジャガーロード。
カルナがその手に持つはGX-06 ユニコーン。
Gシリーズの共通装備のひとつであるコンバットナイフである。
右腕の装甲、ちょうど袖の部分に当たる場所に収納されておりカルナはこれを攻撃の最中に取り出し、攻撃の中に組み込む戦法を得意としていた。
そして止まらぬ斬撃。
相手に攻めを許さない。
一気呵成。
まさにその一言。
『鹿島君! 限界時間まであと十秒!』
沢澄の声が限界時間を告げる。
だが、もう終わる。
その場で跳躍。
そして、ジャガーロードの頭部をボレーキック。
ジャガーロードは数歩後退ると頭頂部に天使の輪のようなものを浮かべて爆発。
それと同時に展開していた装甲は閉じ、排熱。
白い煙が各部から立ち上っていた。
「状況終了。帰投します」
『お疲れさまでした。あの……』
何か、憂い気な声で訊ねようとした沢澄。
どうかしましたか?と問うたカルナであったが沢澄はなんでもありませんと言って会話を切った。
トレーラーに帰投しアーマーを取り外し、変身を解除する。
「お疲れさまでした。これ、どうぞ」
「ありがとうございます」
スポーツドリンクを受け取って口をつける。
疲れた身体に染み透る。
「どうでしたか? カルナの調子は」
「あ、それが……」
言い淀む。
実は、戦闘中に感じていたことがあったが……。
「言ってください。システムに問題があるなら早急に改善すべきですから」
「そう、ですね……。実は、なんだか身体が重いようなというか反応が鈍いようなそんな気がして」
「反応がって、カルナは一流スポーツ選手以上の反応速度に追い付けるように設定してるのにですか!?」
藤尾さんが驚愕の声を上げる。
確かにカルナは元となったGシリーズを人間ではなくアギトが纏う前提で造られたのでそれなりの調整が施されている。
それが追い付かなくなるというのは想定外だったのだろう。
「……アギトの力は進化の力だと言われています。人だってトレーニングを積むことで反応速度や動体視力が上がりますから。分かりました、各部の反応速度を上げる調整をします」
「すいません余計な手間かけさせてしまって……」
「いえ! 鹿島君が気にすることじゃありません。むしろこうやって強くなっていくことで未確認生命体の脅威を退けることが出来るならそれに越したことはありません」
沢澄さんは励ますように言ってくれた。
彼女には頭が上がらない。
上司だからというわけではなく、彼女が作ってくれたカルナシステムのおかげで僕は戦える。
感謝しても、しきれないのだ。
アパートに帰り、ドアノブを回してみると鍵が開いていた。
泥棒?
いや……。
「おかえり誠一君」
「ただいま涼菜さん」
出迎えてくれたのは恋人の涼菜さん。
同じバイト先で出会い交際に至った。
「来るときは連絡してって言っただろ。泥棒だと思っちゃうじゃないか」
「私だからいいじゃ~ん。それに、合鍵持ってるし誠一君の部屋だし」
それを言われてしまうと弱い。
まあ、いつものやり取りだし怒っているわけでもないので深く追及はしないが。
「それより、部屋来て何してたの?」
「うーん別に~。なにもしてないよ~」
まあ、自分が住んでるところは六畳一間の単身者が暮らすのにありきたりなアパートである。
特に面白いようなものが置いてあるでもない。
ちょっと普通よりは調理器具が揃ってる程度の部屋である。
……あ。
「涼菜さん」
「なに?」
「なんか、布団が畳んであったはずなのに敷かれてるんだけど。あと寝てた形跡も」
「……」
「涼菜さん?」
「あ、あはは~。眠くてちょっとお借りしただけだよ~」
まったくこの寝坊助さんは……。
「歳上なんだからもっとしっかりしてほしいなぁ」
「ふふ~ん誠一君甘いね。恋人の間では年齢差なんて関係ないんだよ」
胸を張ってあたかもすごいことを言い放ったかのような雰囲気を醸し出す涼菜さんであるが単に甘えたいだけなのだ。
外ではしっかり者で真面目なクールビューティーなんて言われているがそんなものは嘘である。
実際は自堕落で甘えん坊。
前はここまでじゃなかったと思うのだが。
「ねーご飯は?」
「作りおきしてるやつでいいなら」
「文句なし!」
そう言ってもらえるとやはり嬉しいものである。
もともと料理は好きでその道を志し、専門学校を出てから実際にその道で働き出したのだ。
しかし……。
「誠一君」
「あ……。な、なに?」
あの時のことを思い出してしまい頭の中がそれ一色となっていた。
いけないいけない。
「今日、泊まっていい?」
「もちろん。いいよ」
「やった」
小さく喜ぶ彼女を見て癒された。
やはり、彼女と共にあれて自分は幸せだ。
だからこそ……。
この幸せを、自分は守りたいのだ。