遊戯王ZEXAL-星騎士の決闘者-   作:クロスワード

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デュエルなし


プロローグ

「主殿、本当に行くのですか?」

 

ここは人間世界よりも高次にあるバリアン世界。

全てが赤黒く染まったこの世界のとある場所、知る者からは研究所と呼ばれている建物の一室には数少ない所員とそのトップに立つ男が集まっていた。

所員の総数は僅か四名。皆が皆、心配そうな面持ちで男に詰め寄っていた。

 

「ああ、既に決めたことだ。バリアン世界、アストラル世界、そして人間世界……この三界のためにも、この戦いは終結させるべきなのだ」

 

黒い外殻に身を包んだバリアン。それはバリアン世界で賢者と呼ばれ、この世界を総べる【バリアン七皇】と同格とすら噂される。

 

「しかし先生っ、相手はあの【バリアン七皇】! いかに貴方がバリアン随一の決闘者と呼ばれていようと只の一人では……!」

「そうです。主よ、せめて我らもお供に!」

 

男の前に跪き懇願するのは【バリアン七皇】の強硬路線に着いて行けなかったり、命を救われたなど様々な理由があって男に心酔する者たちだ。

今、彼らの主である男はたった一人で七皇にとある願いを聞いてもらうべく応急へと向かおうとしていた。無謀と呼ばれようとも、そうまでしてでもやらなければならないことがある。

 

「心配するな。策士のベクターはともかく、ナッシュやドルベは話の通じる相手だ。すぐに決闘することにはならないさ」

「だけどミザエルはクロスの和平提案を嫌っています! あの傲慢な男であれば邪魔を……ッ!!」

「彼とて私と戦えば無傷では済まない。アストラル世界への攻撃に手間取っている中、強大な戦力を消耗させるようなマネをナッシュがさせぬだろうよ」

「しかしッ……」

「皆、そう心配そうな顔をするな。大丈夫だ、私は必ず帰ってくる」

 

男は目を細め穏やかに笑う。

おそらくこの男こそが今回の事の危険性を最も理解しているはずだ。絶対的な力を持つ【バリアン七皇】はアストラル世界を滅ぼすことこそを至上としており、かねてからそれに反対する男を目の敵にしていた。もしも今回、無謀にも唯の一人で顔を出せば、その場で八つ裂きにされかねないのだ……何しろ、男の唱える和平とはある意味においてバリアン世界のために散っていった命に対する裏切りに近いのだから。

 

「では行ってくる。【バリアンズスフィアフィールド】の研究に関しては予め指示しておいた通りにしてくれ……あれはもう必要ないはずだ」

「……了解しました、主殿」

 

返事をするのはこの中で最も巨体な、男よりもさらにどす黒い岩山を想像させるような外殻に身を包むバリアンだった。一番付き合いの長い彼は、もうすでに男が止まる事がないのを悟っているのか、顔を伏せて震える声で答えた。

 

「先生!」「主よ……ッ」「クロスっ!」

 

残りの三人は三者三様、皆それぞれ男を呼びながら引き止める言葉を持たないようだ。皆今にも泣き崩れそうな顔をしているだろう。

だが、男はそれを知っていても振り返る事はない。長きにわたる研究の結果、バリアン世界とアストラル世界、さらにはその中間に位置する人間世界の三界は既に限界を迎えかけているのだ。これ以上戦争を続けて消耗すれば、いずれバリアン世界とアストラル世界は互いに引き寄せあい消滅してしまう。それに人間界は巻き込まれるのは必然だった。

 

(止めなくては……私の計算が正しければ、再びバリアン世界とアストラル世界を融合させる手立てはあるはずなのだ…………互いの歩み寄りこそが、この虚しき戦争と滅亡を回避する唯一の手段ッ!私は一人の科学者として、真実に気付いた一人のバリアンとして、世界を救わなければならない……!!)

 

この戦争には必ず、その闇に潜む何者かがいる。

かつて封印された神―――【ドン・サウザンド】。彼を倒すためにはバリアン世界とアストラル世界の協力が不可欠だ。

 

(必ずやナッシュを説得し、またアストラル世界も説き伏せ、いずれくるであろう最後の戦いの準備を整える)

 

簡単な道ではないことは理解している。だが、やらなければならない。総ては三界のためにも。

 

「……では、また会おう。アルコル、ガックス、ミモザ、アクル。必ず帰ってくるぞ」

 

そう約束して、男は扉を開け、そして閉める。

後ろでは最も若きアルコルが泣き崩れる声が聞こえたが、歩みは止めない。

己の背中に三界の命運を背負っている今、既に退路は絶たれたのだ。

 

(……世界は必ず救ってみせる!)

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

その二か月後、バリアン世界では一つの事件が発生した。

かつて賢者と呼ばれ、今は和平を唱える裏切り者とされた男に仕える者達が【バリアン七皇】の居城に無謀にもたった四人で挑みにきたのだ。

戦いは熾烈を極め、しかし最後は七皇が勝利し、その四人は王城の地下深くに封印された―――彼らが仕えた男は行方不明となっており、七皇ですらその制止を知ることは出来なかった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「じゃんじゃ~~ん。今このおもしれぇ戦いが終わっちまうのは困るんだよなァ……良かれと思って、色々と試行錯誤したようだが、そんなもんは下らねェ。ヒャーハッハッハッハッハッハッ!!」

 

最大最悪のバリアン・ベクターを除いて……………。

 




バリアン世界にだってきっとバリアン七皇以外の存在がいる…………多分。
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