凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

13 / 237
原文が短いとどうしてもリメイクも短くなりますね・・・。
本編どうぞ。


第十三話 しょっぱい再会

~遥side~

 

 まなかの膝に居座っていた魚は結局、その日のうちに出ていった。今日も今日とて何もない朝だ。

 浜中での学校生活が始まって数日も経つと、環境にもだいぶ慣れてくるもんだ。

 

 俺はというと、ここ最近は紡と一緒にいることが多くなった。気兼ねのない相手、というのはやはりいいものだ。

 

 そして今も、机を挟んで会話中。

 とまあ、そうこうしていると珍しく客人が入り込んできた。

 

「あの、はーくんと紡くん!」

 

 普段は控えめなまなかが急に来るのには驚いた。

 ・・・お、おう。どうした?

 

「えっと、その・・・昨日はありがとう!」

 

「・・・別に今言う必要はないだろ。まあ、ありがたく受け取っておくけど。というか、昨日のことは大体紡のおかげだろ」

 

「俺は家を貸しただけだからな。力仕事は大体お前だろ」

 

 紡は一切照れくさそうなそぶりを見せない。これで昨日発したような言葉が素面で飛んでくるわけだから、つくづくかわいいものだ。

 

 

 そんな俺たちの様子を遠くから鋭い目つきで見ている奴がいる。俺はそちらに視線を配った。

 その主はツカツカとこちらに歩いてくるなり、俺の机をバンッと一度叩いた。

 

「おい、てめぇ・・・。まなかに・・・海村にこれ以上関わるんじゃねえよ。遥、お前も調子乗ってるだろ。・・・ムカつくんだよ」

 

 言いたい放題言って、光はそそくさと離れていった。その後姿が教室の外に出るのを確認して、俺はため息をついた。

 

 

「・・・はぁ」

 

 ムードブレイカーにもほどがある。

 目に見えて怒りはしなかったが、内心カチンと来たところはある。

 こういう時は冷静に、だ。

 

「待ってよひーくん!」

 

 まなかはまなかですぐに光を追いかけていく。場には結局、俺と紡だけが残った。

 俺は一度、ぺこりと頭を下げる。

 

 あいつの不始末は俺の責任みたいなものだしな。

 

 

「悪い。うちのバカ光が。あいつ、素直じゃないからな。大目に見てやってほしい」

 

「それはいいんだが・・・。それより、お前は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫も何も、もうかれこれ14年ほどの付き合いだ。これくらいの事日常茶飯事だからな。慣れないとやってけねえよ」

 

「大変なんだな」

 

「全くだ。・・・んじゃ、ちょいとまなかの様子見に行くわ。あの様子だとあいつ、光に弁明しに行ってカウンター喰らって帰ってくるからな。そっちの方も付き合っていかねえと」

 

 現に廊下では、光の尖った怒声が聞こえる。まるで進歩しねえよな。ホント。

 俺は席を立ち、廊下へと向かう。

 

 が、そこに光はもういなく、涙目のまなかだけがそこにいた。

 

 あーあ。ほらな。やっぱりだ。

 

「どうしようはーくん。ひーくん怒らせちゃった・・・」

 

 どうしようもないほど消え入りそうな声音。打たれ弱いのに行動が果敢ってどういうことだよ。全く。

 

「どう考えても悪いのは光。まなかは気にしないでいいんだよ」

 

 できる限りの言葉を尽くしてまなかを宥める。そうでもしないと泣き出してしまうから。

 

 そこに現れたのはちさきだった。はっきり言って、ナイスタイミングだ。

 

「あれ? どうしたのまなかに遥。こんなところで」

 

「それがまあ、かくかくしかじかでな・・・」

 

 俺は端的にここまでの経緯を伝える。ちさきは落ち着いて話を聞ける人間な分、こういう時すごい助かる。

 

 一通りの説明を終えると、ちさきは一度頷いて、俺の次の行動を予測した。

 

「なるほどね。・・・それで? 遥はこれから、光のところに行くんでしょ?」

 

 当たり、である。

 ちさきもちさきで、伊達に14年間付き合ってきたわけではない、ということだろう。

 

「まあ、さすがに分かるか。・・・んじゃ、まなかのこと任せるぞ」

 

 男には男にしか、女には女にしか分からないことがある。

 ならば、ここはこうするのが最善手だろう。

 

 そう言い切って俺は再び光探しを始めた。

 

 

---

 

 

 

 それから数分後、次に光の声が聞こえたのは外からだった。それと同時に、もっと甲高い、女子の声も聞こえる。

 ・・・少なくとも、中学生じゃないな。

 

 近くのドアから外に出て、遠くから様子をうかがう。そこにいたのは光と、ランドセルを背負った少女が二人。この間見かけた二人。

 

 つまりそこには美海がいた。

 

 俺は珍しく息を飲んだ。

 いざ美海を目の前にして、どう立ち振る舞えばいいか分からなくなっていた。当然だ、逃げた人間なんだから。

 

 この間とはわけが違う。向こうが逃げるそぶりは見せていない。

 

 ・・・落ち着こう。冷静さを欠いては何もうまくいかない。

 

 幸い向こうはまだこちらに気づいていないようなので、静観することにした。

 

 

 ・・・あれ? ランドセル?

 ということはサボりになる・・・けど、俺自身も常習犯だったのでコメントはしないでおこう。

 

「お前、あの女の知り合いか?」

 

 ツインテールの少女が光に突っかかる。

 

「あの女・・・って、あかりのことか?」

 

 その言葉を肯定ととらえたのか、少女が勢いよく光に突進する。

 

「やっぱりあの女の仲間か! このっ! このっ!!」

 

 腕をぐるぐる回して光に突撃するのはいいものの、光は簡単に片手で受け止める。なんなら楽しそうだな、あいつ。

 

 ・・・そりゃ、負けないと分かっている相手との勝負ほど楽しいものはないだろうな。

 

 そんな中、俺とは違うところから要が現れる。

 

「光、女の子をいじめちゃいけないよ?」

 

「いじめてなんかねーよ。ただ、なんであんなことをしたのか、それを聞いてただけだ?」

 

「あんなこと?」

 

 要は事情を知らない。・・・まあ、知らなくてもいいんだけど。

 ただ、傍から聞いている俺には重要問題だ。これについては光の行動に賛同せざるを得ない。

 

「まあ、いろいろあんだよ」

 

 光は適当に説明を済ませ、少女と美海の方を向く。

 要は少し釈然としないような表情をしつつ、光を諭すように呟いた。

 

「まあ、女の子に手を出した、なんて知ったら、遥から倍の勢いで鉄拳が飛んでくるだろうしね」

 

 ・・・おい、要。俺の事なんだと思ってんだ。鉄拳飛ばすぞ。

 

 俺がここに潜んでいるのか知らないで呟かれた一言。しかし、それのせいでいよいよ俺は居づらくなった。

 同時に心地を悪くしたのは美海も同様で、俺の名前を小さな声で復唱した。

 

「待って。・・・その、遥ってのは」

 

 美海の想像は正しい。答えを出さなければいけないとしたら、それは今だ。

 ・・・いつまでも、逃げてられないから。

 

 俺は後先考えず、思い切って美海の前に出た。

 

 

 

「そう、その遥。・・・久しぶりだな、美海」

 




ここら辺、あまりいじることがないんですよね。
なので精いっぱい文章表現や書き方にこだわって、見やすいものを作っていきます。

それでは今回はこの辺で。


また会おうね(定期)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。