凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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投降頻度を上げねば(多重タスク持ち)
本編どうぞ。


第二十三話 嘘ひとつ、心ゆれて

~遥side~

 

 人探しも楽ではない。

 やみくもに探し回ったところで、それは効率を悪くし、かえって自分を疲れさせるだけ。

 だったら、場所を絞って当たってみるのが効率的だろう。

 

 そして、その相手が見知った人間なら、その行動は読めるはずだ。

 

 だから、かくれんぼもすぐに終わる。

 

「美海」

 

 後ろからそっと声を掛ける。

 予想通り、美海がいたのはさやマートのいつもの壁のところだった。どうやら今日も今日とてサボりらしい。

 まあ、同じくサボった身として説教なんてできやしないけど。

 

 声を掛けられた美海は肩をビクッっとさせて、こちらを振り向いた。

 

「なんで、遥がここにいるの・・・?」

 

「俺も俺で色々あってね・・・。まあ、早退したってことになってる」

 

「・・・またサボったの、怒ってる?」

 

 美海は眉をひそめて怯えながら俺の顔色を窺ってくる。その様子に、俺はどこか違和感を覚えた。

 さっきのおじょしさまの件に関して、本当に美海が関与しているなら、もっとアクションがあるはずだ。

 少なくとも、こんな回りくどい言葉から入って牽制することが出来るような年齢じゃない。

 

 決め打ちは出来ないため、話に乗っかることにする。

 

「んー? いや、学校なんてサボってなんぼだろ。俺も昔そんなことしょっちゅうしてたし」

 

「・・・」

 

「なんでそんな理解したがいものを見る目で俺を見るんだ?」

 

「遥も結構、不良なんだね」

 

「おかげさまで」

 

 ほんのわずか、美海が表情を崩す。

 しかし、その柔らかかった表情は、次の一瞬で吹き飛んだ。

 

 遠くからトテトテと足音が迫ってくる。どうやら、件の犯人がやってきたようだ。

 角から出てきたところを、俺はしっかり目で追う。そして、目の前の少女としっかり目を合わせて、煽り口調で語る。

 

「やあ、おかえり」

 

「なっ! お前はタコスケの・・・!」

 

「どうよ、おじょしさまを壊せて満足か? 誰もいない教室に一人忍び込んで、やるだけやって即退散・・・。そりゃ、楽しくないわけないよな。・・・なぁ?」

 

 我ながら小学生相手に何をしてるんだと思うには思ったが、胸のうちにある怒りが自然と口先を動かしているのが分かった。

 

 そして、次は誰がしゃべるのかと思ったら、美海が肩を震わせながらぽつりとつぶやいた。

 

「・・・なんで?」

 

「え?」

 

「なんで! なんでそんな卑怯なことしたの!? さゆのバカ!!」

 

 感情のままに叫んで、美海はどこかへ走り出す。

 すぐに追いかけたかったが、俺は俺で、まだ気がすんでいないようだった。その鬱憤を晴らすべく、言葉をぶつける。

 

「さて・・・。俺も本当は光みたいに殴り飛ばしてみたいけどね。相手は女子だし、小学生ときた。流石にここで手を上げるのは紳士的じゃない。それに、殴っても直りはしないからな」

 

 相手が理解できなくてもいい。とりあえず、言葉に鬱憤を込めてただただ連ねた。

 

「だから、一言だけ言っとく。・・・昨日の今日だ。その言葉の意味位自分で考えろ」

 

 恐ろしく冷めた声音だったような気がする。

 しかし、言いたいことを全て言い切ると、もとの目的を思い出した。美海を追いかけなければ。

 

 そして俺はすぐさま美海の後を追いかけた。

 

 

---

 

 

 

 小学三年生の女子と、中学二年生の男子。

 その足の速さの違いなんてのは歴然としている。ましてや、姿が視認できている時点で、すぐに追いつけるのは明白なことだった。

 

 俺は美海にあっさり追いつき、その腕を取った。

 

「放して! 私は、私は——————!!」

 

「別に美海を怒りに来たわけじゃないからそう焦るなって・・・。多分、あの子に話は聞かされてたんだと思うけど、乗り気じゃなかったんだろ?」

 

「そう、だけど・・・」

 

 そう言って美海は抵抗をやめた。それを確認して、俺も掴んでいた腕を離す。

 昨日の光の言葉は、美海にはどうやらちゃんと伝わってたみたいだ。それをどこか嬉しく思う。

 

「・・・ま、何にせよ、美海が犯人じゃなくてよかったよ」

 

「・・・それだけ?」

 

「そのためだけに早退したからな。・・・やることが無くなった」

 

「なにそれ」

 

 ジト目で美海が迫る。うるさい、心配してきたんだから別に動機はこれくらいでいいだろ。

 

 ・・・さて、と。

 

 ふと、俺はみをりさんの顔を思い出した。美海が近くにいるからだろうか。

 ・・・あれから、もう何年も経ってるもんな。

 

「なあ、美海」

 

「何?」

 

「今から家・・・行ってもいいかな。みをりさんがいなくなってから、一度も顔、出せなかったから。せめて、線香の一つくらいあげさせてほしい」

 

「・・・分かった」

 

 美海も何か思うところがあったのだろう。即答とまではいかないものの、俺の提案を承諾してくれた。

 

 そして俺たちは無言のまま進んでいく。俺のもう一つの居場所だった、あの家へ。

 太陽は少しずつ西に進んでいる。いつの間にか暗くなりそうな、そんな天気だ。

 

「「・・・」」

 

 沈黙が流れる。気まずいったらありゃしない。

 

 

 そんな中、先に口を開いたのは美海だった。

 

「・・・ねえ」

 

「ん?」

 

「千夏ちゃんは・・・今、学校に行ってるの?」

 

「水瀬のことか? ああ、最近は元気にしてるよ。というか、学校来た時見なかったのか?」

 

「教室の方まで行っちゃうと、バレちゃうから・・・」

 

 

 確かに、水瀬は基本教室にいることが多い。引っ込み思案、と言うわけでもなさそうだが、そうする方が好きなのだろう。

 だから、教室の方に来ないことには分からない。それが美海の言い分だった。

 

 

「まあ、なんだ。特別変な様子もなく、今は元気にしてるぞ」

 

「そっか。・・・千夏ちゃん、元気になったんだ。・・・、また、会ってくれるのかな? 私の事、ちゃんと覚えてくれてるのかな?」

 

「美海が望めば、きっと会ってくれるだろうさ。・・・結局、なにもかも自分次第だ。・・・っと、そろそろか」

 

 見慣れたアパート。美海の家は二階にある。

 

 鉄の階段を駆け上がり、ドアの前に立つ。

 そしてドアを開けようとした瞬間、向こう側からドアが開いた。

 

「えっ?」

 

「はっ?」

「はーくん?」

 

「なんで、家の中に入ってるの・・・?」

 

 部屋の中には、先に学校から出ていったはずの光とまなかがいた。その奥で、至さんが少々苦し気に眠っている。

 キッチンの方から焦げ臭いにおいがする。何か一悶着あったのだろうか。

 

「えーっとだな、光。・・・とりあえず、何があったのか教えてくれると助かる」

 

「ああ。あの後帰ろうとしたんだけどよ、そしたらこいつが海に飛び込んできて・・・。あかりにでも会おうとしたんだろうな。最近、陸に上がってねえみたいだしよ」

 

「道具を使っても、それは無理があるだろ・・・。汐鹿生、だいぶ深いからな」

 

「そして、意識を失っちゃってて・・・。一応、私たちの方で看病って形で家にお邪魔したんだけど・・・」

 

「というか、お前はお前でなんでここにいるんだよ」

 

「さぼりみたいなもんだな、ははっ」

 

 などと重要事項とジョークを織り交ぜて話していたところ、美海は何かを言いたげに震えていた。

 

「おじょ・・・」

 

「ん?」

 

「おじょしさま、私が壊したの! 私が、悪いの・・・!」

 

 唐突な叫び声に、光は少しばかり驚いていた。が、そんな美海に怒りを見せることなく、俺と美海の間を割って、まなかと廊下に出た。

 

「・・・そっか。それじゃあしょうがねえな。帰るぞ、まなか」

 

「うん、そうだね。あまり長居しちゃってもまずいし」

 

「遥、お前はどうするんだ?」

 

「まだ帰らないな。ここに来た用事が、まだ終わってないんだ」

 

「そうか。あまり遅くなるなよ。ウロコのやつうっさいんだからな」

 

 

 気の利いた言葉をいくらか吐いて、光はまなかを連れて帰っていった。

 そして二人きりになる。部屋のドアを開ける前に、俺は美海に尋ねた。

 

「なあ、なんで嘘ついたんだ? どうせバレるって、明確だろ」

 

「なんでだろう、私にもよくわからない」

 

 じゃあ、何だというのだろうか。反射とでもいうのだろうか。

 

 

 ・・・やっぱり、『心』っていうのは、分からないものだ。

 

 




会話文を変えると、前作とキャラが変わってしまいそうで難しいところ。
やるっきゃないのはそうなんだけどね。

と言ったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

また会おうね(定期)
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