凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
本編どうぞ。
~美海side~
ずっと仲良くしてたはずの千夏ちゃんは、ある日突然いなくなった。
そして、大好きなママも、どこかいなくなった。
それが理由で、遥も・・・。
好きになった人ばかりが、私の前からいなくなっていく。
パパはずっとそばにいてくれたけど、パパだって、いついなくなっちゃうか分からない。そんなことを思うと、また怖くて。
・・・ずっと、寂しかった。
そんな時、私のところに来てくれたのはあかちゃんだった。ママがいなくなった分を、どうにか自分で埋めようと優しさをもって。
嬉しかった。ずっと寂しかったのが、だんだん薄れていくような気がした。私はまた、誰かの大切になってるんだ、そんなことを思って。
・・・それなのに、これまで抱いてきた恐怖心が日に日に膨れ上がっていく。
私が好きになっちゃえば、近づいちゃえば、あかちゃんだっていなくなってしまう。
だからもう、好きになるのはやめよう。そう思った。
そうしたら、本当に私が好きな人は不幸にならずに済む。
でも、遥にまた会って、全てが変わった。
抱きしめられた腕の中で、昔ママが遥かに言った言葉を聞かされる。
そして、千夏ちゃんが前を向こうとしていることも。
「逃げたくない」
私は、ずっと逃げてきたんだ。そうする方が、みんなのためだって。
けど、苦しまない未来が幸せだなんて、今はもう、そんなことは言えない。
苦しくても進んで、痛みを知って、それでもまた進めたら、きっといつか、幸せになれる。・・・なぜか分からないけど、そんな気がした。
だから、私ももう逃げない。好きの気持ちは、間違いじゃないって信じたいから。
・・・だから、遥。私は、最後まで遥の・・・。
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~遥side~
それからの日々は目まぐるしく過ぎていった。・・・ような、そうでないような。
ただ、あの日を境に全ての歯車がかみ合って動き出したのは確かだった。
あの後、あかりさんは至さんにまっすぐな思いをぶつけた。相思相愛なんだ。こんなことで・・・こんなことで切れていいような、そんな関係じゃない。きっとみをりさんだってそう思うはずだから。
美海だって、あかりさんのことを好きだって言った。その気持ちを裏切る真似は、きっとしないだろう。
ただ、これで全てが終わったわけじゃない。進めば進んだ分だけ、次の壁が見えてくる。それを乗り越えていく。その意味が、やっと分かった気がした。
それと、それからの学校生活もだいぶ変わった。
先日の調理実習とおじょしさまの一件で、江川や狭山をはじめとした、クラスの連中がおじょしさまの制作を手伝いに来ることが増えた。雨降ってなんとやら、とはよく言ったものだ。
光も光でそれなりに成長したのか、そんなあいつらを不器用なりに迎え入れていた。
俺とは違って、光は独特のムードを持っている。
あいつの機嫌次第で雰囲気が変わるもんだから、不思議なものだ。
そうして、良化した関係の中、今日も作業が進む。
その片手間で、トントンと俺の肩を誰かが叩いた。振り返ると、水瀬がいた。
「ね、島波君」
「なんだ?」
「今晩・・・どうかな。空いてたりする?」
水瀬は周りに関係を悟られないように、最低限の言葉とボリュームで話しかけてきた。その効果あってか、誰もこちらを気にしていない。
まあ、恋人になってる、なんて変な噂立てられないほうがいいに決まってるけど。
「ああ、空いてるぞ。・・・そうだな、何回かお邪魔させてもらったし、今日は俺が・・・」
「え、私作る気満々だったんだけど」
「じゃあ、勝負でもしてみるか。多くならなきゃ問題ないだろ」
「いいね。そうしてみようか」
あれから、度々水瀬家に遊びに行くようになった。といっても、一週間に一、二回、あるかないかくらいだが。
それほどまでに、あの人たちのもとにいると安心できた。自分の家はさながら、潮留家にも劣らない安らぎを感じるようになっていた。
会話に熱中しすぎるあまり、作業の手がだんだんとペースダウンしているのに気づいた。ここから先は周りに迷惑をかけかねないので、一旦話を打ち切る。
「悪い、今は作業中だからな。この話は後にしないか?」
「ああ、うん。そうしようか」
話を打ち切り、作業に再び集中する。
その前に、ふと窓の外に美海が見えた。相方のほうは今同室でガヤと作業を両立させているが、美海はまだここには来ていないのだ。
・・・どうせ、美海のことだ。千夏のことがあって、うまく入れないのだろう。
しばらくして、俺は先に作業を上がった。そして、美海がいなくなる前に、美海を捕まえる。
「何してるんだ、こんなところで」
美海は急に後ろから声を掛けられたことにびっくりして、こちらを恐る恐る振り向いた。
「待ってただけ。たまには、一緒に帰りたかったから」
その言い草は、相方のさゆではなく、俺に向けられていた。
けれど、俺には一応先約があった。しかもしれは、美海が現在一番困っているラインでの話だ。
・・・なら、今がチャンスじゃないか?
ふと、そんなことを思った。そしてそれは、すぐに言葉になる。
「・・・あのな、美海。俺、この後水瀬の家に行くんだけど・・・。一緒に来るか?」
「え・・・、千夏ちゃんの家?」
「そ。んで、そこで晩飯にするつもりなんだけど・・・」
水瀬の名前が出ると、美海は一瞬困ったような瞳をした。しかし、その戸惑いは覚悟へ変わり、それが言葉になる。
「・・・行きたい。けど、もうずいぶん話してない。・・・千夏ちゃん、私の事変わらず接してくれるかな?」
「してくれるだろ、きっと。それがあいつの・・・。・・・なんでもない」
それがあいつのいいところだ。
なんて、ベラベラ語れるほどの人間でもないな、俺は。
「それじゃ、水瀬に話をつけてくる。きっと快諾してくれるだろうから、ちょっと待ってろ」
俺は美海をそこにいさせたまま、水瀬を探しに出た。
そしてほんの数秒後、美海の姿が見えなくなったところで水瀬に遭遇する。
「あ、いたいた。探したよ島波君」
「悪い。ちょっと色々あってな」
「ダメ・・・とか?」
色々、と言葉を濁したせいで、水瀬は変に探って不安げな顔をする。その誤解をすぐに解くため、俺はさっきの話をすることにした。
「・・・美海も、連れてっていいかって聞きたかったんだ?」
「え、美海ちゃん? 来てるの?」
「いるさ。本人、ちょっと照れ屋になって出てこないけど」
「そっか。そうなんだ・・・。・・・うん、いいよ。私も、会いたかったから」
時間が空いても、二人の仲は思ったより変化していなかったようだ。むしろ、近づいたのではないだろうか。
いずれにせよ、そんなこと俺には判断しかねる。とりあえず、OKという返事がもらえたという事が大事だった。
「んじゃ、帰りにさやマート寄っていかないとな」
「だね。美海ちゃんとも合流しようか」
そして、俺たちはそろって美海の前に出た。
「お待たせ」
「あ、・・・千夏ちゃん、久しぶり」
「うん。久しぶり」
互いに少し緊張した様子のまま挨拶を交わす。空いた時間が多かったためか、二人とも次の言葉が出てこないようだ。
埒が明かないので、咳払いして俺が話を進める。
「・・・んんっ、それじゃ、日が暮れてもなんだしさっさと行こうか」
「あ、そうだね」
「分かった」
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それからというもの、俺たちはささっとさやマートで買い物を済ませた。
あかりさんは少し煽るように『両手に花』などと言ったが、そういうのには極力耳を傾けなかった。一緒に行動しているのが汐鹿生の人間じゃない異性二人なんて考えると、どうにかなりそうだった。
そして、あっという間に水瀬家に着く。美海はまだ緊張しているのか、道中の口数は少なかった。
「お邪魔します」
「おじゃま・・・します」
そして、俺と美海は水瀬家の中へと入っていく。二人とももう何度かお邪魔になっているような人間だが、ケースがケースなだけあっていつもより緊張感があった。
リビングに入ると、保さんがソファに腰かけていた。今日は新聞を読んでいない。
保さんは俺の隣の美海を一目見るなり、声を上げた。
「・・・美海ちゃんか、大きくなったな」
「お久しぶり・・・です」
美海はぺこりと頭を下げる。礼儀の正しいようでなによりだ。
「んじゃ、適当にくつろいでて。私が先にキッチン使うから。島波君、覗いちゃダメだからね」
「分かってるって」
「どういうこと?」
「ああ。話してなかったな。一応、対決するってことになってるんだ。んでもって、食べてくれる人は多い方がいいだろ?」
「なるほど」
美海は納得したようで、座り込むなり自分のランドセルから本を取り出して読み始めた。合わせるように俺も自分の本を取り出して読み始める。
・・・さてと、どうなることやら。
最近こっちしか書いてないですね・・・。
まだ半分も行ってないあたり真っ青になります。ほぼ毎日投稿しても半年近くかかるってどういうこと・・・。
といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。
また会おうね(定期)