凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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 なんかモヤモヤしてるんですよね・・・。
 失踪しないようには頑張ります。


第三話 ひとつめのキズ

~遥side~

 

「おい・・・何やってんだよ・・・!!?」

 

 俺は声を絞り出した。が、ショックのあまりそれは掠れて音にならない。

 これまで感情をせき止めていた何かが音もなく消失する。

 

 そうすれば、後は早かった。

 

「っ!!」

 

 駆ける。駆ける。駆ける。

 一刻も早く逃げ出したくて駆ける。目の前の光景を信じたくなかった。

 

 そして、気が付けばどこか分からない遠くまで走っていた。

 

 ・・・もう、何も信じたくなかった。

 

 

 限界を迎えて、足が止まる。 

 すると今度は、脳が嫌と言うほどに早く回った。

 

 両親の間に、確かに愛はあった。

 だったら、なんであんな光景が生まれたのだろうか。

 

 好きなら、殺す必要なんてどこにも・・・。

 どこにも・・・!

 

 

「ははっ・・・なんだよあれ」

 

 信じれなくて、言葉をもらす。そこからは、自分を制御することは出来なかった。

 

「うぅ・・・うああああああ!!」

 

 さっきの場面が頭に深く焼き付き、離れない。

 大粒の涙が、ただ零れ落ちるだけだった。

 

 

 二人が家を出ていったときはなかった涙。

 それは、またいつか会えると心のどこかでそう思っていたから。

 

 けど今は、そんな淡い願いが二度と叶うことはない。

 その事実という絶望だけで、俺の心が壊れるには十分だった。

 

---

 

 

 やがて出尽くした涙が枯れ始めると、異様な眠気が襲ってきた。

 

 ・・・瞼が重たい。・・・もう何も考えたくない。

 

 俺の心は明らかに疲弊しきっていた。もはや動こうとする気力すらない。

 

 ・・・もういっそ、ここで尽きてしまおうか。

 眠ってしまえば楽になるだろう。

 

 俺はそっと、目を閉じた・・・。

 

 

 

---

 

 

~???~

 

 

「あら、こんなところで寝るなんて・・・」

 

 遥が眠ってしまった後、一人の女性が遥の目の前で立ち止まった。

 すると、遥の肌は特有の光を発した。それを視認して、女性は顔色を変える。

 

「エナ・・・!?」

 

 女性は、エナの存在を知っていた。そのため、この状態がどれほど危険な物かも分かっていた。

 

「・・・エナを持ってるなら、こんなところで寝てるのはまずいよね・・・」

 

 よろしくない状況だと判断したその女性は、とりあえず遥を背負い、近くにある安静出来る場所まで運ぶことにした。

 

「んしょ・・・! 美海よりは重たいけど、まだまだ、これくらいなら・・・!」

 

 遥を背負って、女性はとりあえず海村を目指して歩いた。

 

 

「遥君ー! どこにいるのー!!」

 

 その女性が数分歩いたころ、遠くから声が聞こえた。

 声の方へ向かい、女性は歩調を早める。

 

 

「遥君ー! ・・・あっ、みをりさん! ・・・と、遥君!? なんでここに・・・」

 

「あれ、あかり・・・。ちょっと待って・・・」

 

 声の主である先島あかりと合流したその女性、潮留みをりは近場のベンチに背負っている遥をゆっくりと下ろして、ようやく一息つくことができた。

 

 

---

 

 

 

~みをりside~

 

 

 私とあかり、互いに息を落ち着かせ、状況確認が始まった。

 

「みをりさん・・・。これって、どういう事なんですか?」

 

「私もよく分からないけど・・・。遥君、だったっけ。一人、人気のない道で倒れるように眠ってて・・・。明らかに不自然だと思ったし、エナが乾いてそうだったから、とりあえず海村の近くまで運んできたんだけど・・・」

 

 その言葉の最中、私は遥君の目元が赤くはれていることに気が付いた。

 

「目元、赤いね・・・。さっきまで泣いていたのかな?」

 

「海にいたときはそんなことなかったはず・・・。家にいたときはいつも通りだったし、私がお使い頼んだ時もなんなりと受けてくれたし・・・。きっと、陸に上がってから何かあったんだと思うけど」

 

 ・・・あれ? ちょっと待って。

 家にいたとき・・・? お使い頼んだ時・・・?

 

「ちょっと待って、あかり。あなたの家族って、両親と弟さんだけよね?」

 

「はい。・・・ああ、そういうことですか。それがですね・・・、訳あって遥君、今うちに居候しているんです」

 

 その説明を聞いて私はようやく納得がいった。

 そして同時に、遥君が泣いていた理由を少し掴んだ気がした。

 

 それがどうやら顔に出ていたようで、あかりが尋ねてきた。

 

「あの、みをりさん・・・? ひょっとして、なにか分かったんですか?」

 

「えっ!? ・・・ああ、うん。ちょっとね・・・」

 

 まず、訳ありで居候となると、家族となんらかの問題があったなんて考えることが出来る。

 だったら今回もきっと・・・。

 

「遥君は、両親に関係するところで、何かあったのかもしれないね」

 

 それがもし陸上での話なら・・・。

 遥君の両親も、私と同じような人間なのかもしれない。

 

 そんなことを思っていると、遠くからパトカーの音が聞こえだした。近づいていく音と同時に、嫌な予感がだんだんと広がっていく。

 

「・・・あかりは一旦家に帰りなよ。遥君はとりあえず、今日はうちで面倒見ておくから」

 

「え・・・、大丈夫なんですか?」

 

「パトカーの音、するでしょ。・・・多分、何か厄介事が絡んでるのかもしれない。だったら、地上にいる人間の方が対応しやすいでしょ? だから、大丈夫」

 

 おそらく、私も話を聞かれることになるかもしれないと考えると、一人の方がいいはずだ。

 

 それに・・・。この件、あまり大きくしない方がいいかもしれないから。

 

「・・・分かりました。とりあえず、お父さんには伝えておいてもいいんですかね?」

 

「宮司さんだっけ。・・・そうだね。そうした方がいいと思う。・・・でも、弟さんには伝えない方がいいと思う」

 

 多分、あかりの弟さんは遥君と年齢が近い、もしくは同じだろう。

 だったらなおの事知られてはまずい。今後に爪痕が残りでもしたら、きっと大変なことになる。

 

 それはあかりも分かっているようで、小さく頷いた。

 

「分かってます」

 

 あかりはここまでで一番真剣な顔をしていた。ここまでの反応となると、弟さんは相当行動が早いんだろう。

 

「では、また連絡をください。みをりさん」

 

 そう言ってあかりは踵を返し、海へと飛び込んでいった。

 

「さてと・・・」

 

 改めて時計を見る。時刻は18:30。そろそろ私も動かなければならない時間だ。

 

 ・・・いったん、家に帰ろうか。美海も至さんも待たせているだろうし。

 

 そんなことを思って、私はもう一度遥君を背負って歩き出した。今度は住み慣れた自分の家を目指して。

 

 

 今後の事なんかを考えていると時間はあっという間に過ぎるもので、いつの間にか私は家についていた。

 塞がって両手でどうにかしながら玄関のドアを開ける。

 

 ・・・さて、どんなリアクションされるんだろうな・・・。

 

 なんて、「誰?」なんて言われるのは想像ついている。

 

 

「ただいまー」

 

 

 

 

 

 

「「おかえり(なさい)! ・・・え、誰?」」

 

 二人からは、予想していた通りの答えがばっちり返ってきた。

 

 





 尺に関しては前回基準で進めようと思いますが、新規ストーリーをまたこの度入れようと考えていますので、110話だった前回からさらに伸びるかもしれません。 
 ですので、改変も考えます。途中まで原作に沿いますが。

 今回はここらへんで。
 感想、評価等お待ちしております。

 また会おうね(定期)
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