凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
書き換え後のここから先は、ぜひその目で確かめてください。
それでは、本編どうぞ。
~遥side~
「「
「「「で、出来たぁーーー!!!」」」」」
歓喜の声が工作室中に響き渡る。あれから右往左往しながら、ようやくおじょしさまが完成したのだった。
壁にぶつかるたびに人は強くなる。
なんてカッコつけた言い方はあまり好きではないが、今回こそそう言えるだろう。だんだんと我は広がり、気が付けば陸と海の垣根はとっくになくなっていた。
今回のおじょしさまは人生で見た中でなかなかのできだろう。俺の知る中ではトップだ。
「こ、これは・・・いい出来だよ! よく頑張ったね!」
先生は目を輝かせていた。
この先生は、生徒を引っ張ることこそうまくはないのかもしれないが、生徒と足並みを揃えるのが上手なのだろう。
だからこそ、みんなでここまで頑張れた。堅苦しい言葉なしにしても、嬉しい。
「これも美海と私が来たお陰だな!」
「うるせえ! お前の言えることじゃねえだろ!」
調子に乗るさゆを、光が懲らしめる。
それは、一度おじょしさまを壊したやつと、怒りっぽいリーダーの会話には到底思えなかった。
「しかし、これはまあなかなかの出来だよなぁ・・・」
自分たちで作っておいてなんではなるが、思わず声が出てしまう。
そんな独り言を拾ったのは水瀬だった。
「今まで何年もおふねひきを地上で見てきたけど・・・ここまでクオリティが高いおじょしさまはなかったよね」
「ああ、クオリティが段違いだな!」
狭山もいつになくテン上げに声を上げる。
そんな中で、先生が呑気な声を上げる。
「そうだ! みんな、アイスを奢ってあげるよ! ホームランバーがガリレオ君、どっちがいい?」
「えー、両方安いじゃん!」
「しょうがないだろう? こんなにいっぱいいるんだから」
とはいっても、この人は労働に対しての対価をちゃんと払ってくれる。前に至ってはラーメン奢ってくれそうだったしな。
まあ、単に奢りたいだけなのかもしれないが。
どこからか声が飛ぶ。
「先生、プールもなくなるほど寒いのに、アイスはないと思います」
その正論を受けて、先生は肩をすくめる。
確かに、ここ最近やけに寒い。夏なのに、最高気温が体感20度ない日もある。はっきり言って異常だ。
横にいた水瀬が、俺に耳打ちする。
「確かに最近、肌寒いよね?」
「ああ。・・・なんか嫌な予感がするけど・・・。いや、考えすぎだな」
仮にそれを知ったところで、俺には何も出来ないから、この話はやめておこう。
俺は改めて目の前のおじょしさまに目を向けた。細部こそ学生ならではの粗さが少々目立つが、全体的な目で見るとやはりクオリティが高いだろう。
そんな俺の付近で、まなかと紡が共に声を上げた。
「「お舟引き、やりたいな」」
周りの声が凍り付いたようにシンとなる。
それからこぞってあちこちで茶化しの声が上がった。
「・・・被った」
「おうおう、仲いいねお二人さん」
「どこまでやってる? いっちゃってる?」
あちこちから茶化しの声を受けて、まなかの顔がどんどん赤くなっていく。光も、耐えてこそいるもののうずうずしているようだ。この状態は少し良くない。
割って入るように、俺はまなかに問う。
「はいはい、茶化すのはいいから。・・・それでまなか、お前はどうしたいんだ?」
「えっと、だからお舟引きをやりたいって・・・」
「いや、そうじゃなくて・・・。まあいいよ」
とりあえず、揺るがない熱意があるのは確かだった。とりあえず話をそこで切って、俺の言葉で書き換える。
「つまり、今まで、いや、今まで以上の大掛かりなお舟引きをやりたいってことだろ?」
「う、うん」
「なるほどな・・・」
正直、難題な話ではある。
陸、ましてや海双方から『やらない』と声が上がっている中で、たかが一中学校からの声明が果たしてどれだけ生きるだろうか。
・・・けれど、それが諦めていい理由にはならない。
「紡も、そう思ってるんだな?」
俺の問いかけに対して、紡は一度うんと頷いた。
「俺も、昔のようなお舟引きがしたい。昔は汐鹿生と鴛大師で、すごいお舟引きをしてたってじいちゃんに聞いた。それを俺たちで、もう一度みんなでやりたい」
しかし、現実は残酷だ。それを俺たちが一番分かっている。
「でもね~、そうはいかないんだよ・・・。みんなも知ってると思うけど、お舟引きがなくなったのは海と陸の喧嘩だからねぇ・・・」
先生の残念そうな声。
意地と意地がぶつかり合って、互いに分かり合おうともせず、それが対立へとなって今がある。俺たちの声でそうそう変わるものではない。
俺も、お舟引きをやりたい。ここにいる誰よりも思っている。
けれど、目の前の壁を前にして、一歩踏み出せないで・・・。
そんな時、光が叫んだ。
「やろう! お舟引き!!」
「でもねぇ光、それには陸と海の協力がないと出来ないんだよ」
「だったら説得すりゃいいんだよ! 頭でっかちな大人連中の考えをぶっ壊してやらぁ!」
そして勢いのまま、光は紡を思い切り指さした。
「汐鹿生の連中は俺が説得する! だから紡! 陸の連中はお前がリーダーになって説得してくれ! そんでもって、俺たちでお舟引きをやるんだ!」
先生の困った顔をよそに、教室内の士気が格段に上がる。みんなの気持ちがまとまっているからこそだ。
光の言葉には、みんなをまとめる不思議な力がある。
けど、言葉が足りないのは相変わらずだ。そこでサポートするのが、俺の役目だ。
「そうだな、やろう。お舟引き」
「遥まで・・・」
「先生、子供にも意地ってものがあるんです。精一杯の反抗期、見せてやるんですよ」
不敵な笑みを先生に向けて、光の言葉を付け足した。
「さて、お舟引きを本気でやるならまずは交渉の場を設けるところからだな。・・・喧嘩してるとは言えど、みんながみんなそうじゃない。まずは署名だ。みんなの声を集めりゃ、取り持ってくれるだろうさ」
保さんや、至さんだっている。
あの人たちみたいな考えの人だっているんだ。そんな人たちの思いを無駄には出来ない。
「海の連中は正直みんな頑固だからな・・・。光、骨が折れるぞ?」
「分かってらぁよ。けど、やんなきゃダメだろうが」
「ああ。やらないとダメだ。・・・頼むぞ」
「任せとけ!」
乗せられて、光は元気よく腕を組む。どこからその自信が満ち溢れてくるのかは知らないが、行動力は確かだ。仲間なんだ。信じよう。
先生はため息を吐くが、心のそこでは俺たちに期待しているのか少々笑みが零れていた。この人も、どうにもならないことを分かっていながらどうにかしたい人なんだ。
だから・・・そんなみんなの思いを、絶対に叶えたい。
そうすることで、一歩進めるなら。
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帰り道、今日はまっすぐ家に帰ることにしたため、俺は光と二人並んで歩いていた。
「なあ遥、なんでお前、俺の意見をすんなり認めてくれたんだ?」
「なんだ藪から棒に」
「いや・・・。いつものお前なら、大体文句の一言二言から入って大体ケチをつけてたからさ」
「お前は俺を何だと思ってるんだよ・・・」
そんなにくどい人間ではないと俺は信じている、
「・・・俺もお舟引きをやりたい、そう思ったから賛同したんだよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「なんか理由でもあんのか?」
「大したことじゃないけどな・・・。俺は、陸が好きだからな。海と同じくらい。今までも、これからも。だから、繋ぎ留めたいんだよ、陸と海を」
それに、嫌な予感が加速しているから、あまり時間がないかもしれないから。
言いたい思いはまだあったが、光の不安感情をあおりたくないので俺は黙っておいた。
「・・・んじゃ、成功させねえとな。がんばろうぜ」
「ああ」
そして光はその場から海へと飛び込んでいった。
後を追うように俺も海へと飛び込んでいく。
あがいてもあがいても溺れそうなほど、無理難題の待ついばらの道へと。
やはり人物像の歪曲が気になる・・・気になる。
あまり変えすぎても前作の本筋に影響が出ちゃうので、そこら辺の兼ね合いが難しいですね。
リメイクと言っていますが、結末を大きく変えるつもりはありません。
ただ、その道中のエピソードや小話、そう言ったものをここから増やしていこうかなと考えております。
それでは、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。
また会おうね(定期)