凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
ここは、このサブタイトルが適してるんじゃないですかね。
それでは、本編どうぞ。
~遥side~
美海との約束もあり、次の日、俺は駅の近くの公園に来ていた。
「お、もう来てんのかよ」
「おはよう、遥」
次いで、潮留家に居候している光と、美海がやってきた。二人は特別驚いた様子もなく、俺の方を見ている。光に至っては、どこか心配そうな瞳だ。
「てか、本当に大丈夫なのかよ、お前。そうは言っても、結構歩くぞ?」
「大丈夫だと思うんだけどなぁ・・・。杖も無理言って別のタイプに変えてもらったわけだし」
「痛かったりはするのか?」
「変にぶつけたりしなきゃ痛くはないな。腫れの痛みも一晩寝てだいぶ引いたし。それに、美海の願いとあっちゃ断れないんだよ」
なんて俺が言うと、美海は少々頬を赤らめて俯いた。恥ずかしくなるようなことを言った分、当然か。
そうこうしていると、遠くから声が聞こえてきた。
「おはよー! ひーくん、はーくん、美海ちゃん」
「おはよう、皆」
「おはよ。みんな早かったね」
まなかとちさきと要が合流して、これで全員そろったことになる。海村の連中には、昨日のうちに光が根回しをしててくれたらしい。
「うし、これで全員だな」
光が鼻を鳴らす。昨日の今日でどうなるか少々心配な点もあったようだ。そして今、それを振り払うように鼻を鳴らしている。
そんな光を見て、俺が思うことは一つだった。
「・・・それにしてもお前」
「・・・なんだよ」
「おしゃれとか、考えない人間なんだな」
俺が気になったのは、光のその服装だった。
本人は何も気にしていないようだが、それは光のサイズにしてはあまりにも大きすぎた。ダボダボなんてよく言ったもんだ。
あるものを着る。ただ、それだけのように見える。
「はぁ!? なんでそんなこと」
「てかその服装、至さんのやつだろ。お前にはまだ大きすぎるな」
「うっせえ!」
「ひーくんひーくん! おしゃれは大事にしなきゃダメだよ!」
挙句の果てにはまなかにまで突っ込まれる。かくいうまなかは、さすがに女子という事もあり、それなりに服を丁寧に選んできていた。
では男が悪いのか、と言われればそうでもない。俺も要も、服装はそれなりに意識している。
「これしかなかったんだよ。海から出るとき、そんなに荷物持って出なかったからよ」
「理由にはなってるけど、光。それじゃモテないよ?」
「まあ、なんだ。今度俺と要でお前に見合う服探してやるよ」
「だからいらねえって!」
和気あいあいとしているうちに、時間は過ぎていく。
けれど、当の俺たちはそんなこと気づくこともなかった。
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それから、切符売り場についたのは五分ほど過ぎた後の事だった。わちゃわちゃとおしゃべりをしたせいか、時間もあまりない。
けれど、小さいころから何度も街に繰り出していた俺や美海はともかく、他のメンバーは街に行ったことなどないようで、当然、切符の買い方も知らない様子だった。初めて見るものに目を丸くしている時点で、事の重大さが伺える。
だったら、ここは俺が先に金をまとめて払った方がいい。そう判断して、切符の券売機に手を伸ばした。
その時、誰かの手にこつんと当たった。
「っと、すいません・・・。って」
「ああ、遥か。お前も、街へ行くのか?」
ぶつかったのは紡だった。どうやら、紡はちょうど別の用事で街に行くようだった。
「まあ、ちょっと用事があってな」
「なるほど。・・・せっかくだし、俺の用事が終わったらついてっていいか?」
「ああ、そうしてくれ。それに、街を知らないやつの方が多いからな、ついてきてくれるとむしろ助かる」
一応、今回のリーダーは名目上美海ということになってるが、まあ、承諾してくれるだろう。
さて、ここで長話しては俺が率先して切符を買いに来た意味がなくなる。
俺は、さっさと人数分の切符を購入し、光たちの下へ戻った。そして、買った切符を各々へ配る。
「ほい」
「え、いいの? 遥」
「一応俺がまとめて買った方が効率がいいし、まあ、金を徴収しないのは、普段の感謝とでも思ってくれ」
「あ、ありがとう・・・」
そうは言っても、他のメンバーの反応も、いまいちパッとしないものだった。けど、変に気遣われるよりはこうして振舞った方が楽だ。
そして俺たちは、間に合わなくなる前に急いで電車へと乗った。
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ガタゴトと揺れながら、電車は街へ進んでいく。
俺の隣には美海が、向かいには紡が座っている。ほかの面々もやれ菓子を食べたり、談笑したりと悠々と過ごしているようだ。
ただ一人、浮かない顔をしているのはやはり美海だった。
「・・・本当に、喜んで貰えるのかな?」
「何をいまさら。・・・大丈夫だって。あかりさんは美海のことが好きだからさ、絶対に裏切らない」
「遥は信じれるの?」
純粋な美海の問いかけ。けど、俺は言いよどんでしまった。
分かっている。自分の中に、好きという感情に抵抗が産まれていることを。
信じて、裏切られて。同じことを俺と美海は味わっている。
口先だけで言っておきながら、本当に信じきれてないのは・・・俺のほうだ。
それでも、嘘はつかなければならない。ここで美海を不安にさせるほうがもっとひどい局面に陥るだろうから。
「信じるさ。あの人のことは、ずっと見てきた」
なんて、自分でも生意気に思えることを言って美海を宥める。美海は、それ以上はもう何も言わなかった。
と、その時対面している紡が手をちょいちょいとこまねいているのが見えた。俺は音を立てずに、紡の隣に移動した。
「で、なんだよ」
「ちょっと、話し相手が欲しかったから」
「話し相手って・・・。何の話だよ」
俺がそう尋ねると、紡は表情一つ変えずに答えた。
「遥の話だよ」
「・・・俺の? なんでまた」
「・・・昨日の事。遥があれだけ本気で怒ったの、初めて見たから」
「はぁ・・・。言っとくが、面白くない話だし大した理由もないぞ」
「だとしても、聞きたい」
紡は譲らなかった。どんな理由があるのかは知らないが、ここまで本気で思っている相手に、不誠実なことは出来なかった。
「両親がいなくなってから、陸に上がることが増えた。・・・そうして、陸という場所が俺にとって特別な場所になっていった。・・・そんな海と陸がまたすれ違って、繋がりかけた糸がほどけるのが嫌だったんだよ」
「・・・というか、どうして両親はいなくなったんだ?」
大前提、俺は紡に俺の両親の話をしていなかったみたいだ。
「そう言えば、お前に俺の両親の話をしたことなかったな」
「ああ」
「・・・俺の両親はな、揃って海を出たんだよ。そして一年か。二人とも、死んだ」
「それはどうしてだ?」
「理由的なところなら、俺も分からない。一応、父さんが母さんを殺して、後追いで父さんが死んでってことになってるけど・・・」
「えらく淡泊に言うんだな」
「もう小さかった時のことだし、それに今更実感込めて言っても何にもならないだろ。過去を振り返るのはやめてるって決めてるんだよ」
それがおかしい行動だとしても、俺は引かない。
紡もその意図をくみ取ったようで、それ以降のコメントはなかった。
代わりにと言わんばかりに、俺は紡に質問する。
「そう言えば、お前もじいさんと二人暮らしだよな。・・・その、両親がどうしてるのか、とか、聞いていいのか?」
「・・・本当はあまり言いたくないことだけど、相手が遥かだからな。・・・生きてるよ。けど、一緒には住んでいない」
「決別、したのか?」
「それに近いかも」
なるほど、であれば境遇的には俺に近いところがあるのかもしれない。
けど、俺の決別は、本当に俺の望んだものだったのだろうか。
確かに二人のことが好きで、本当は離れたくないなんて思ってた。・・・それなのに、俺はなんであの日。
いや、止めよう。過去は振り返らないようにしてるはずだ。
「両親のことは、好き・・・なのか?」
「・・・さあ、今の俺に、その感情の整理は出来ない」
紡も紡で淡泊に答えた。どこか、本当に心の底で冷え切っている部分があるのだろう。
・・・なんだ。やっぱり俺とお前は、一緒じゃねえか。
「案外似た者同士なんだな、俺達って」
果たして、それがいいことかどうかなんて、知る由もないけど。
そうして電車は進んでいく。まだまだ、街までは時間がかかりそうだ。
はんぺん!
今回から、あとがきに座談会コーナーを設けます(気まぐれ)
というわけで、挨拶は先に済ませておきます。
『今日の座談会コーナー』
SSを書くにあたって、前作を基本はなぞらえているのですが、今回は前回曖昧だったのを踏まえて、原作により触れています。
とはいえ、毎回毎回アニメを見るのは時間がかかる。
そこで愛用しているのがコミカライズです。
内容は少々カット等の影響もあり薄くなっているのですが、大概の流れやセリフはこちらから流用しています。といっても、カットがやばいですが。
大人になったちさき好きです。
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それでは、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。
また会おうね(定期)