凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
この作品は、基本前作『凪のあすから~心は海のように~』をなぞらえて著しています。
前回39話まで、ほとんど同じ尺で切り取ってきましたが、今回40話をもって足並みを揃えることをやめます。
(つまり、これまで内容が前作20話=今作20話だったのに対し、ここからは前作41話≠今作41話といったようになります)
それでは、本編どうぞ。
~遥side~
「私ね・・・、遥のことが、ずっと大好きなの」
それは、紛いのない告白だった。
回り道も、遠回りな言い回しもなく、ただただストレートな告白。
いつも自分はと遠慮して、大人ぶって思いをはっきり口にするのを控えていた、ちさきからの、告白。
その潔さに一種の気持ちよさを覚えた。そしてそこから、ちさきの思いが全て詰まっているのを感じた。
・・・でも。
「・・・」
俺は何も言うことが出来ず、黙り込んで俯いた。
どうやって断ろうか、どうやって受けようか。そんなことはハナから脳裏になかった。
俺は、何も考えることが出来なかった。頭が真っ白になっていたのだ。
「遥?」
そうしてフリーズしたままの俺に不安を覚えたのか、ちさきは様子を伺ってくる。
いつまでもこのままでいるわけにもいかない。どうにか言葉をつなぎ合わせて、俺はちさきに返事を行った。
「・・・ちさき、先に謝らせてくれ。・・・振るとか、受けるとか、そういうのじゃない。・・・俺は、この告白を受け取れないんだ」
「え?」
「好きになれないんだ。・・・誰も、かれも。今告白されて分かった。・・・俺、どうしようもなくダメだ。心の底から誰かを好きなろうとしたら、怖くなって仕方がない。・・・今だって、こんなに震えてる。だから・・・」
自分でも、何を言っているのか理解できなかった。
けれど、一つだけ言えることがあるとすれば、俺はこの告白を受け取ることは出来ないという事。告白を受けたものとして、最低な行動を俺は今行おうとしている。
それでも、逃げてしまう。
「だから、ごめん。・・・今は、返事を返せない。考えさせてほしい。・・・いつか、絶対に、答えを出すから」
それを聞き終えて、ちさきは泣き出すこともせず、何かを達観したように小さく微笑んで呟いた。
「やっぱり、遥は優しいんだね」
その言葉の意味を考えることはしなかった。
なぜなら、その声音は美しく、脆く、悲しいものだったから。
気持ちの悪い無言の時間が続く。
さっきの今で、何を言い出していいのか分からない。
でも、とりあえず何か話さなければ。
口先に力を込めた瞬間、遠くから少し間の抜けた声が聞こえてきた。
「なんだ、二人ともここにいたのか」
そこでやってきたのは、自分の用事を済ませたのであろう紡だった。
「ああ。エレベーターがさっき混んでいてな。次の便を待ってたんだ。・・・そろそろ来るようだし、乗るか」
さっきまでの無言を切り裂くように、俺は口数多く紡に返事をした。
ちさきも、言葉はなくとも作り笑いでうんうんと頷いてくれている。
そして、エレベーターが付くなり、俺たちは乗り込み、無言のままで昇っていった。
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~ちさきside~
『その告白を受けることは出来ない』
それが遥の答えだった。
特別、OKを言っているわけでも、NOを言っているわけでもない。好きになることを怖がっているという理由に、きっと嘘はない。そう信じれる。
・・・でもね、分かっちゃうんだ。
そんなことを言っても、遥は私を見ていなかった。もっと別の誰かを思って、私の質問に答えていた。
それが過去の人か、今の人か、なんてのは私じゃわからない。
でも、その瞳の世界に、私はいない。それだけは分かった。
だから、言葉を濁さなくても分かる。
私は、きっと振られたんだ。
もちろん、遥は自分が振った、なんて意識はないと思う。だから、遥には自分を責めないでほしい。
私のこの恋は、告白は、自己満足だったと割り切ってほしい。
だから、私は言う。
「遥は、優しいんだね」
無意識のうちに、私の恋心を遠ざける言葉を放った遥。
それでも、ああ・・・。
やっぱり、好きだったんだ。私。
涙はないけど、やっぱり寂しかった。
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~遥side~
それからは、しらみ潰しに街を回ることになった。
金はないが、時間はまだある。目ぼしい店をどうにか探そうと、俺たちは手分けして行動することになった。
その提案をしたのは、俺だった。
・・・そう、俺にも一つだけ、『用事』があった。
誰にも公言できない、俺だけの用事。誰の力も借りてはならない、俺だけの償い。
美海の用事とか言っておきながら、私利私欲のための時間として費やしたんだな、俺は。なかなかに最低だ。
けれど、一人になれたのはありがたかった。その用事を果たすことも出来れば、・・・色々と悩んでいたことを忘れることが出来る。
そうして俺は自分のやるべきことを果たした。
そして集合。再び店を回るに回ったが・・・、最適解は出ずに街を離れることとなった。
帰りの電車の雰囲気は、当然ながら暗かった。
特別誰のせい、というのもない。確かに美海が落ち込んでこそいるものの、単純に疲労で寝ていたり、何かを思いながら窓の外を眺めていたりと各々が勝手にやっていたのもある。
けれど、俺の周りの雰囲気が暗いままなのは美海が落ち込んでいるからである。それだけは間違いなかった。
「・・・結局、ダメだった」
美海は今にも泣きだしそうな表情でポツリとこぼす。その言葉が耳に届いていたのは俺だけだった。
こういう時、どうやって声を掛けるべきだろうか。
心理学を勉強している、などとのたまっていながら、結局こうしたものは人付き合いの果てだ。
一時それを失っていた俺は、まだまだ経験不足である。だから、言葉の一つひねり出すことが出来ない。
慰め? 違う。励まし? これも違う。
そして気づく。
言葉なんていらない、と。
そんな思考に行きついた俺に助け船を出すかのように、紡が口を開いた。
「なぁ、そのプレゼントは、お金で買えるものじゃないとダメなのか?」
「どういうこと・・・?」
「魚のウロコ。・・・小さいころ、魚のウロコを瓶に貯めて、じいちゃんに渡したことがある。『こんなもの、いらん』って言われたけど、今でもじいちゃん、その瓶を大切に持ってる」
俺の思考に、紡の具体例が内容となって重なる。
結局、美海が送るべきものは『プレゼント』じゃない。美海の『好き』の気持ちだ。プレゼントなんて結局、それの道具、手段でしかない。
美海は、好きな貝殻のネックレスがいいと言った。
じゃあ、作りに行こうか。
「美海、これから作りに行こう」
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そして、俺たちは鴛大師で降りるなり、すぐに海岸へと向かった。もう夕暮れ、ぼーっとしていれば、あっという間に夜になってしまう。
波打ち際を隅から隅までくまなく探す。美海の望む貝殻を見つけては拾って、糸に通していく。
結局、それは二時間ほどで作り上げられた。流石に皆疲れたようで、潮留家に寄る用事がある俺と光を除いて皆帰っていった。
そして、アパートに着く。あかりさんは、至さんと二人して美海の帰りを待っていた。
少々心配した様子のあかりさんが近づいてくる。
そして、その距離がゼロになるころ、美海はたじたじと手を差し出した。
「これ・・・」
「—————・・・私に、くれるの?」
あかりさんの問いかけに対して、美海はうんと頷いた。
「お店でも沢山探した。・・・でも、見つからなくて」
「それで、頑張って作ってくれたの?」
「うん・・・。みんなに手伝ってもらって、作った」
そして美海は、大切な言葉をちゃんと口にする。
「美海の好きを、あかちゃんにあげたくて・・・」
その言葉を聞いて、あかりさんは表情をほんのり明るくした。涙はないが、嬉しそうなのは間違いない。
けれど心配性な美海は、それでも尋ねてしまう。
「これじゃないのがよかった・・・?」
あかりさんは優しく首を横に振り、ネックレスを持つ美海の手を取った。
「ううん・・・。これがいい。これが一番いいよ、美海」
「・・・えへへ」
美海は半泣きになりながら、くしゃりと顔を歪ませて笑う。そのほほえましい光景を目にして、俺と光も笑った。
・・・ああ、温かいな。
俺が何度も失って、一時は投げ出した家族の愛が、今、目の前にある。同じ悩みを
抱えていた、美海のもとに。
今だけは、好きの気持ちに対する恐怖を、忘れられた気がした。
『今日の座談会コーナー』
このシーンは、確か前回、割とうろ覚えの知識で書いていた気がするんですよね・・・反省。というのもあって、今回は出来るだけ原作の展開をなぞらえるように書きました。
本音と言いましょうか、ぶっちゃけた話なんですが、私凪のあすからの最初6話くらいまで好きじゃないんですよね。それこそ、前半内容は中盤以降がミソなので。
当たり前っちゃ当たり前なんですが、いかんせん幼さが目立ちすぎて、見るにきついんですよね・・・。そのせいで切っている人も中々多いようで、私的にはちょっと残念です。
言えばこの作品、割と賛否両論型ですから。
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といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。
また会おうね(定期)