凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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ここら辺の感想というかコメントですが、まあ非常に文章が稚拙だったというか、軽口だったというか・・・。

加筆修正の見せどころ。
 
それでは、本編どうぞ。


第四十七話 それでも僕は

~遥side~

 

「冬眠って・・・まさか遥も、海でずっと眠るっていうの!!?」

 

 俺が真実を告げると、美海はみるみるうちに表情を変えた。

 それは、怒りだ。

 

「・・・頼むから、落ち着いて聞いてくれよ。・・・俺はまだ、全部話しちゃいないからさ」

 

 とりあえず美海を諭す。美海は聞き分けのいい子だ。俺の話に不満を示しながらも、おとなしくなってくれた。

 

 その様子を受け取って、俺は話を続ける。

 

「実際、冬眠を行うことについては反対じゃないんだ。・・・多分、このまま海も陸も温度がどんどん下がっていく。その措置が冬眠しかないなら、そうするしかないんだ」

 

「・・・うん」

 

 

 美海はなお不安そうにする。

 その不安をどうにかすべく、俺ははっきりと自分の意思を二人の前で口にした。

 

「でも、俺は陸に残るよ。・・・例え、全てがダメになったとしても」

 

「えっ・・・」

 

 驚きの声を上げたのは、ずっと黙り込んでいた水瀬だった。俺が、あいつらと離れる道を選んだことに驚いたのだろう。

 

「でも、そうしたら先島君らと・・・」

 

「・・・分かってる。分かってるんだ。でも、そうでもしても、俺はこの場所で今を生きたいんだよ。・・・それに、可能性はゼロじゃない」

 

 そう、俺はさっきまでお舟引きと海神様の関係について調べていた。

 そして、学んだ。つながりを。

 

 それにほんのわずかの可能性があるなら、俺はそれに全力で賭けたい。

 

「・・・海と陸、その両方を取れるなら、どんなに可能性が低くても俺はそれを選ぶ」

 

「それが、お舟引きってこと?」

 

 美海が小さく声を上げる。

 そう、その通りだった。

 

「言い伝えによれば、お舟引きは海神様と直接かかわりのあるものなんだ。だったら、規模の大きいお舟引きをすることが、海の安定につながるんじゃないかって、そう思うんだ。なんて、漠然的なことだけど」

 

 それの可能性が相当低いことは、俺が一番承知していた。

 それに追い打ちをかけるように、水瀬がおずおずと申し出る。

 

「でも、昔の大きなお舟引きには『生贄』がいたって、お父さんが言っていた。・・・もちろん、それで大きな事故があった、とかは聞いてないけど」

 

「そうなんだよ。だから、これはあくまでほんのわずかな可能性。忘れてくれ」

 

「とりあえず・・・遥はここに残る、っていうつもりでいいの?」

 

「最も、住む場所があれば、の話だけどな」

 

 俺だって、自分の家を有しているわけじゃない。誰かに甘える余裕がなければ、俺は陸で野垂死ぬだけだ。

 

「それは・・・、まあ、大丈夫じゃないかな?」

 

「うちも、大丈夫だと思う。遥なら」

 

 二人からのありがたい言葉を一身に受ける。この様子なら、心配する必要はなさそうだった。

 

 

---

 

 

 結局、次の日の宴会にはいくことにした。

 いずれにせよ、あいつらに説明する場が必要だった。

 

 昨晩、帰るなり保さんに頼み込む。

 

「明日、少しだけ海に帰らせてください」

 

 保さんは、やはり渋い顔を浮かべた。

 

「それを縛る権利は俺にはないが・・・。ただ、遥くん。君は今の状態で、海に帰ることは出来るのかね?」

 

「・・・出来ないことは、ないです」

 

 できないことは、ない。

 しかし、それが自身の体調にどういった影響を及ぼすのか、というのは測りかねていた。

 多分大丈夫だろう。それくらいしか言うことがない。

 

「いいじゃありませんか」

 

 奥の方から声が近づいてくる。夏帆さんが会話に参加していたようだ。

 

「・・・遥くん。異変のこと、気づいてるんだよね?」

 

「・・・はい」

 

 夏帆さんももとはと言えば海の人間だ。

 多くを語る人間ではないが、この人もまた、しっかりと瞳に海を映していた。

 だからこそ、俺の気持ちや感覚がどこか分かるのだろう。

 

「それで、異変に対応するために、海は冬眠を選んだんです」

 

「冬眠・・・。それはまた、大したことを」

 

 夏帆さんは笑顔を崩さないが、その慈愛の表情が少々歪み始めているのが分かった。

 

「・・・もし、実行されても俺は、陸に残るって決めてるんです。あいつらと別れても、それを選びます。・・・ただ、その説明を、したくて」

 

「・・・そう、分かったわ」

 

 夏帆さんは全ての心配、不安を取り除いたのか、より一層穏やかな表情を輝かせて、俺に声を掛けた。

 

「私は、行かせてあげたい。・・・いいですよね? あなた」

 

「・・・そういうことなら、仕方があるまい」

 

 保さんが渋い表情を崩すことはなかったが、一度承諾して、それ以降は何も言わなかった。

 

 

 そうして、今、俺は海に飛び込む。

 

 久方ぶりの海は、震えるほどに冷たかった。もう時間がないのだと、改めて再確認させられる。

 

 まるで、暗い未来を暗示しているようで・・・。

 

 ・・・いや、やめよう。今は悲観しても意味がないんだ。

 

 

 俺は、まずは誰もいない自宅へ寄り付いた。

 あの喧騒のあとだ。少しくらい嫌がらせを受けているのではないかと心配はしていたが、何も起こってはいないようだった。

 自宅がそもそも汐鹿生から少しだけ離れているところにあるというのが幸いしているのだろうか?

 

 そんなことはどうでもいい。俺は真っ先に家の中へ入った。

 

 家の中は、ひどく埃っぽかった。誰も手入れしてなかったのだから、当然と言えば当然だけど。

 ・・・でも、それでも、やはり悲しかった。胸の奥がチクリと突かれる。

 

 昔は確かに温もりがあった場所。けれどここにはもう、温もりはない。

 

 そんな俺に、せめてもの救いがあるとすれば、こことは違う場所に、温もりを見つけたこと。

 

 だから俺は、陸に残ることを決めたんだ。

 もっとも、全てがダメになった、なんてまだ決まったわけじゃないけど。

 

 そんなことを思って、埃のたまった窓から外を眺めていると、コンコンと玄関のドアが叩かれる音が家中にこだました。

 

 ドアを開けると、要が立っていた。

 

「や、元気?」

 

「まあ、な。悪いな。どうすることもできなかった」

 

「それはいいんだ。・・・とりあえず、皆のところ行こうよ。学校で待ってるから」

 

「・・・そうだな」

 

 言葉を捻りにひねり出して、どうやって要に説明しようかなどと考えていたが、今は行動することがなによりだった。

 

 

---

 

 学校につくと、皆退屈そうに待っていた。

 

「はーくん、なんか久しぶりだね」

 

「うす、待たせたな」

 

「というかお前、怪我はもういいのかよ?」

 

「帰れないことはない。だからここに来たんだ。・・・それに、今回ばかりはこっちに帰ってこなきゃいけないだろ」

 

 皆冬眠のことはもう知っていたようで、深刻そうな顔つきで俯いた。

 

 そんな中、ちさきが俺の名を呼ぶ。

 

「それで? 本題があるんでしょ? 遥。じゃなきゃ無理して降りたりしないだろうし」

 

 そう。皆は俺の真意を待っていた。

 俺が伝えようとしているように、ここにいる皆は俺の答えを聞こうとしていたのだ。

 

 それを、どこかありがたく思う。

 それでも、俺の行動に変わりはなかった。

 

「ああ。・・・といっても、腹の内は決まってるんだ。それをここに伝えに来たんだ」

 

「・・・どうせ、陸に残るんでしょ」

 

 

 俺の言葉を遮るように、要はそう小さく吐き捨てた。

 けれど、神経を研ぎ澄まして聞いていた皆の耳にはしっかりと届いていたようで、真っ先に光が俺の胸倉をつかみに来た。

 

「お前、どういうつもりだよ! そんなことして、平気でいられるってのかよ! こんな・・・裏切りみたいなもんだろ!」

 

「・・・離せよ」

 

「あ!?」

 

「俺はまだちゃんと自分の意思を自分の口で言ってないだろ。・・・仮に結論がそうだとしても、話位おとなしく聞けよ、なあ?」

 

 俺を掴んでいる先の光をきつくにらみつける。それでひるんだのか、光はパッと手を放した。

 それから間もなく、俺は要との間を詰める。特別どうこうしようとするつもりはなかったが、無性に腹が立っているのは事実だった。

 

 だから俺は、お前のことが・・・嫌いなんだよ。

 

「・・・もし、このまま冬眠が実行されるっていうなら、俺は陸に残る。その気持ちに間違いはねえよ。でも、俺たちには可能性があるだろうが。海と陸が、共に生きていける可能性がよ」

 

「はぁ? そんな都合よくことが収まるなら、大人たちだって今更こんな苦労なんてしてねえよ」

 

「その大人たちが、遠ざけているものが答えだとしたらどうする?」

 

「そんな・・・。何があるってんだよ」

 

 

 ここまで来ても、頭に血が上った光は分からなかったようで、俺は事の流れを説明した。

 

「いいか。伝承によると、この海と陸の異変は海神様が力を無くしていることが原因とされている。・・・海の意思は、海神様の意思。繋がってるんだよ。状態が」

 

「つまり、どういうこと?」

 

「お舟引きだよ。・・・昔はお舟引きで、海神様への感謝を伝えていた。そのお舟引きに、力があるんじゃないかって思ってんだよ」

 

「でも、それはちょっと強引すぎない?」

 

「昔のお舟引きは、おじょしさまなんて『偶像』はなかったんだ。ただ、おじょしさまという『生贄』がいた。なんで海神様が生贄を必要としていたか分からない。でも、そこにヒントがあるんじゃないか?」

 

 一通り説明を終えたものの、皆難しそうな顔をしていた。理解できなくて当然の話と言えば、そうなのだが。

 

 けれど俺の伝えたかったことはこれで終わり。言えば、もうここにいる理由もなかった。

 要のせいで、少しばかり印象も悪くなっている。ここで喧嘩するよりはさっさと退出する方がいいだろう。

 

「・・・んじゃ俺は家に戻るから」

 

 誰の返事も待たず、俺はその場をあとにした。

 

 しかし、真っすぐ家の方向には帰らなかった。

 人間の脳内には、いつ見たかは覚えてないものの、記憶に残る場所というものがある。

 

 俺にとってのそれは、まだ幼かったあの日に見た謎の空洞だった。

 ダメもとで、俺はそこに向かっている。もう海に帰れなくなるかもしれないことを考えると、最後にその光景の確認をしたかった。

 

 

 そして、例の場所へ着く。

 昔閉じられていたはずの大きな空洞は、すっかり開いていた。

 

 暗闇に飲まれている奥へと進んでいく。

 だんだんと近づいて行くにつれ、何かが俺の目に映り始めた。

 

 一定数進んだところで、俺は足を止める。俺の目に映った物体が何かを確認できたからだ。

 

 それは、これまでのお舟引きで作られたおじょしさまの残骸だった。

 一つや二つじゃない。百、下手すれば千を超えるほどの数だ。

 

 

 ・・・つまり、この場所は。

 

「・・・なんだ、そういうことかよ」

 

 海神様とお舟引きのつながりが明確になる。説が現実味を帯び始める。

 やはり、お舟引きに意味はあるのだった。

 

 思わず笑みが零れる。人に見せたくないくらい、汚い顔をしているだろう。

 

 けれど、希望が見えたのは事実だ。

 もっとも、実現する可能性は限りなく低いけど。

 

 でも、今はそれだけでよかった。

 

 満足して、俺は踵を返そうとする。

 けれど、その先に一人の人物が待ち構えていた。

 

 

「やっぱり、お主は大した男よの。遥」

 

 

 

 




『今日の座談会コーナー』

今作では、夏帆さんにスポットライトを当てたいかなと思っています。特別大したことじゃないですけど、前作はあまりにモブ感がひどかったので。
それこそ、元海の人間であり、みをりさんのことを知っており、などなどステータス的に捨てるに惜しい部分がめちゃくちゃあるので、今回みたいに会話を増やしたり等を考えています。

こういうおっとりマザー大好き(大声)

---


それでは、今回はこの辺で。
感想、評価等よろしくお願いします。

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