凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
数字が出ないくそ雑魚作者ですが、まずはこの場を借りて御礼を申し上げます。
さて、本編行きましょうか。
~遥side~
両親が死んだと分かったあの日から、もう数週間がたった。
心が別のところにある以上、時が経つのは早いもので、葬式も家についてのごたごたも意外とあっさり終わってしまった。
あれから、俺はどうにか一人暮らしをすることに決めた。
理由はまあ・・・いくつかある。
まず、父が一通りお金を残していたのだ。どこからそんな金がとは思ったが、それ以上の感情はなかった。
なぜ、なんて言葉はなかったが、ありがたくも思えなかった。
それとは別のもう一つの理由は、みをりさんや美海のもとへ遊びに行くことを考えたとき、先島家にお世話になっていては迷惑になるだろうと判断したからだ。
ただ、今でも傷跡は残っている。
~過去~
みをりさんや美海に出会ってから二日経った。
まだ立ち直るには至らなかったが、少しばかり心に余裕が出来たという事で、俺は両親が住んでいた陸の家に向かった。
がらんとした家に入る。が、済んでいた痕跡がほとんどないくらいまで部屋は綺麗に片付いていた。
衣服は綺麗にしまってあり、家具家電もまとめてある。
それはまるで、いなくなることを示していたかのようで・・・。
「・・・父さん、母さん。・・・なんでだよ」
やり場のない心を虚空へ吐き出す。返事は当然かえってこなかった。
去り際、机の上に一枚の手紙が置いてあったのを見つけた。手に取り裏返すと、遥宛とだけ書いてある。
・・・警察、昨日来たのにな。なんで持っていかなかったんだろう。
気にしてもしょうがないのでそこは放っておくことにした。
(・・・まあ、これは後でみをりさんの計らいだってわかったけど)
ともかく、俺は中身が気になった。
自分宛に何が残されているのか。親が何を記したのか。それは俺の知りたいことなのだろうか。ぐちゃぐちゃになった感情だけが先走った。
開けてみると、そこに記されていたのは淡泊な文字だった。
『遥へ』
迷惑かけてばかりですまなかった。
後悔なんて遅いが、せめてもの償いだ。
よければ使ってくれ
そして、手紙と共に、俺の通帳の口座が書いてあった。
かえって確認したところ、相当な額が入っていた。少なくとも、向こう十年生活には困ることはない。
ありがたいことだ。・・・普通なら。
でも。
・・・違う。俺が知りたかったのは、こんな無機質なことじゃない。
二人が何でこんな結末をたどってしまったのか。そこに愛はあったのだろうか。そんな些細なことが知りたかった。
・・・でも、結局それは、誰も知ることが出来なくなってしまった。
~現在~
そして現在に至る。あれからというもの、不慣れながら一人暮らしを何とかしている。時折、陸で至さんやみをりさんのお世話になりながら。
・・・本当に、みをりさんにはお世話になってしまった。あの人にはもう一生、頭は上がらない。
そんな俺に出来ることは、これまで通りみをりさんのところに遊びに行くことくらいだろう。子供に出来ることと言えばそれくらいだ。
・・・代償として、海にいる光らと遊ぶことが少なくなってしまった。言葉を、態度を尖らせながら光が寂しそうにしていたが、事情を知っている灯さんやあかりさんにどうにかしてもらった。
・・・悪いな、光。
例えば、の話だが。
もしあの時、みをりさんがあの場所にいなければ俺はどうなっていただろうか。
別の誰かが通っていただろうか。通りすがりの警察に保護されていただろうか。・・・はたまた、そのままエナが完全に乾いて死んでしまっていただろうか。
いずれにせよ、俺は心を失っていたかもしれない。
実際のところ、今の俺も最初は心のない受け答えがほとんどだった。
でも、みをりさんや至さんと言葉を交わして、美海と遊ぶことになって、そんな自分は消えていった。俺という人間をつなぎとめてくれた。
だから今はこう言える。
やはりあの時、俺はみをりさんに出会えてよかった。
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本当に楽しいと思える時間はあっという間に過ぎてしまう。
気が付けばまた、あの日から一年ほど経っていた。
今日も学校が終わると、俺はすぐに家に戻った。理由は一つ。みをりさんの元へ行くためだ。
「じゃあな光。先に帰るわ。悪いな」
「はぁ・・・、もう何も言わねえわ」
あれからというもの、俺が疎遠になっていることをなんだかんだ受け入れたのか、光はもう怒りもしなかった。ひょっとしたら、呆れているのかもしれない。
けれど気にすれば苦しいだけ。割り切ってお手は真っ先に自分の家へと向かって進んでいった。
「最近、はーくん帰っちゃうの早いよね」
「なんか忙しいみたいだし・・・。しょうがないわね」
「なにも負荷がないならいいけど・・・」
去り際に聞こえる言葉に耳をふさいで、俺はさっさと家へ戻った。
そのまま支度をして、いつものように陸へ上がる。そこにはまた変わらない景色が広がっていた。
「あ、遥くん」
さやマート近辺で俺に気づいたみをりさんが、手を高く上げ左右に振る。
「あ、どうもです」
軽く会釈。親しき中にも礼儀ありとはよく言ったものだ。
俺がそうこうしていると、みをりさんは苦笑して俺の瞳を覗き込んできた。
「別に、無理して毎日こっちに来なくてもいいんだよ? ウロコ様、呪ってくるでしょ?」
・・・うん。手遅れなんだ。そっちに至っては。
「あー。言ってませんでしたね。この間呪われたので、累計二桁突破しました」
「・・・マジか。あとそれ、威張ることじゃないからね」
みをりさんも経験者なのだろう。遠い目で海を見つめていた。
それと、まだだった先ほどの問いへの回答を俺は行う。
「あと、大丈夫ですよ。俺がこうして毎日ここに来てるのも、俺がやりたくてやってることですから。楽しいんですよ、こうしていることが」
「・・・そっか。そうならいいんだ」
みをりさんは少し伏し目がちな様子でいたが、すぐに表情を切り替えて俺の方を向きなおした。
何か言われる前に、俺は右手を差し出してみをりさんの荷物を先に受け取った。
「悪いね、持ってもらっちゃって」
「いえいえ。・・・それで? 今日はどんな料理にするんですか?」
「ふふん・・・それは出来てからのお楽しみだよ」
思わせぶりな口調。合わせるように俺も笑った。
「じゃあ、俺が知らないようなものならまたレシピお願いしますね」
「うん、おーけーおーけー。みをりさんに任せといて!」
他愛ない話を交えながら、家路を行く。
そんな時間はあっという間で、瞬く間にみをりさんの住んでいるアパートについた。
が、みをりさんはその場に立ち止まったまま一向に動かない。
少しばかり、額に汗をかいているようにも見えるけど・・・。
「どうしたんですか? みをりさん」
「ん・・・? んーん、何でもないよ」
「そうですか。荷物持ってるんで先に行きますね」
そうして俺はインターホンを鳴らす。中からてこてこと美海が走ってきた。今思えば、美海ももうすぐ小学生だ。本当に時が経つの早い。
「おかえり、遥!」
「ただいま、美海」
出迎えに来てくれた美海の頭にポンと手を当て、軽くなでる。まんざらでもない様子だ。
すると、異変に気付いたのか美海は心配そうな表情で声を上げた。
「あれ・・・? ママは?」
「外にいるよ。そろそろ来るんじゃないかな? 一緒に中で待ってようか」
「分かった!」
元気よく返事をして、美海は俺の傍から離れていった。
しかし。
数分経ってもみをりさんは部屋に入ってこない。美海も動揺ではないが不審そうな表情をしていた。
・・・おかしい。嫌な予感がする。
それを確かめるために俺は立ち上がった。
「遥?」
「みをりさん呼んでくる。ちょっと待っててくれるかな?」
「うん」
・・・本当に、元気の良い返事だ。
「みをりさーん! 入らないんですかー!」
ドアを開けてまず呼びかけてみる。が、返事はない。
「みをりさーん! います・・・か?」
階段を下りながら声を掛ける。そして、俺の瞳はその姿を焼き付けてしまった。
みをりさんは道に倒れていた。
心臓を抑え、苦し気な表情で。
確実に地の文は向上出来ているはずなんです。
もっともそれが、果たしてうまく生きているのかなんてのは知りませんが。
原文の方が面白いなんてあったら、それこそ本末転倒ですしね。
なのでこれは、若干作者の自己満足的な部分もあります。
しかし、そんな自己満足を許していただけるなら、作者としてもありがたいです。
それでは今回はこの辺で。
また会おうね(定期)