凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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50話投稿に際して。
UV件数が1000件を突破しました。ありがとうございます。
知名度が大手作品に比べてそこまででもなく、かつ放送からもうずいぶんと経った作品の二次創作ともあり、なかなか認知されないところではありますが、それでも目にしていただけたこと、感謝しております。(2021年4月終わりごろ)

本作品は、まだまだ終わりには程遠いです。これからも精一杯書かさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします。

それでは、本編どうぞ。


第五十話 そこはまだ遠い世界

~遥side~

 

 お舟引き実行の協力関係の締結が決まってからは、目まぐるしいほど時が早く進んでいった。

 陸の大人が協力してくれることにより、全体の作業スピード、船や機材の根回しなどが瞬く間に進んでいった。悔しいが、これが大人の力、なのだろう。

 

 そして、全体の進捗は95%ほどを迎えた。あと四日ほど経てば、お舟引き当日は来る。

 

 ただ、海側の協力は得れそうになかった。もっとも、もう批判の声が上がらなくはなっていたが。

 また、聞いたところによると、冬眠の実行日とお舟引きの実行日がどうも一緒の用だ。それによって何か影響があるか分からないが、どことなく嫌な予感はする。

 

 ・・・いや、止めよう。こんな想像、誰も幸せになんてならない。

 

 俺は、迫りくるその時を待ちながら、今を一生懸命生きた。

 

 そして、今日はというとあいにくの雨。俺たちは、教室でおじょしさまや付属のものの細かい調整に入っていた。が、しかし俺個人にやることはなかった。

 そんな中、どうもちさきと要の様子がおかしいことに気づいた。どこかぎくしゃくしているというか、見ていて気味悪く思う静けさ。

 

 その合間合間、要から俺に視線が送られてくる。これもまた、どこか気に入らなかった。

 あの一件以来、必要事項以外は要と言葉を交わさなかった。互いにそうしたかったのか、俺だけのエゴなのかそれは知らないけど。

 

 何かを訴えているのは分かる。

 けれど、それを本人の口から聞かない限り、俺は答えないことにした。

 

 

 そして、ある程度時間が経つ。

 

 特にすることもなくて、俺はぼーっと窓から雨降る外をただ眺めていた。ほかのメンバーが呑気におしゃべりをしているのが、全く耳に入ってこない。

 

 ただ、目の前の景色がどこか嫌に思えていた。

 あと数日後に迫っているのに、こんな雨でどんよりした空気になるのが嫌いだ。先往く不安の暗示に思えてしまう。

 

 ・・・やめよう、今は。

 

 そしてくるりと振り返ると、要にポンと肩を叩かれた。

 

「・・・ちょっと、お話付き合ってくれないかな?」

 

「分かった」

 

 作られた笑顔の裏の感情を知ろうとはしない。多分、この後吐き出すのだろう。

 だから俺は、教室の外へと速足で逃げていくその背中を追うだけにした。

 

 

---

 

 

 誰もいない、静まりかえった非常口付近で、その足は止まった。本当に、誰にも聞かれたくない話のようだ。

 

「悪いね、こんなところまで来てもらって」

 

「・・・言いたいことがあるなら、そう言えよ。多分、笑ってられるような話じゃないんだろ?」

 

 いつでも笑顔でいることが優しさじゃない。そこをはき違えてはならない。

 俺がそう言うと、要は顔色から笑みの要素を抜き取った。どうやら、この表情に真意があるらしい。

 

 気を抜けばすぐに悪態をついてしまいそうだったが、必死にこらえて、要の言葉を待つ。

 

 

「僕さ、ずっとちさきが好きだったんだ。・・・なんて、いまさら言っても、遥はもう気づいてるよね?」

 

「・・・まあな」

 

 ずっと見てきたのだ。気づかないはずがない。

 全体の俯瞰者のようでありながら、こいつの目線はいつもちさきにあった。それをうまく悟られないようにしてきただけで。

 けど、ひねくれた人間なら、感情の裏の裏まで探ってしまう。だから、気づいていた。気づいてしまっていた。

 

「それで、この間ちさきに告白したんだ。・・・返事は、返ってこなかったけど」

 

「へぇ、なるほど」

 

「なるほど、じゃないよ」

 

 要は、この時初めて心からの怒りを見せた。瞳が、燃えている。

 

「遥、僕は知ってるんだよ。ちさきに好かれてることも・・・告白されていることも!!」

 

 珍しく、要は一際大きな声を上げる。

 けれど、俺の感情は揺さぶることはなかった。

 

 ・・・それはきっと、こいつへの感情がどこかで冷めてしまっていたから。

 

 心の底から嫌っているわけでも、憎んでいるわけでもない。けれど、一線を画してしまった俺たちは、多分、もう分かり合えなかった。

 

「なんだそれは。嫉妬か?」

 

「・・・」

 

 自分でも恐ろしく思ってしまうくらい、冷めた言葉しか出てこない。こんな言葉しか口に出来ないような自分に腹が立ってくる。

 

「嫉妬だよ。・・・でも、こんなことをしても意味ない事、分かってるよ」

 

 要は怒りを涙に変えようとしていた。けれど、その雫が零れることはない。

 

「遥。・・・君は、ちさきに答えを返してないんだよね。・・・雰囲気だけど、そんな気がする」

 

「あの時は、時間も時間だったし・・・。・・・なにより、俺が俺自身の気持ちを分かってなかった」

 

「だったらさ、せめてちさきに答えくらい返してあげてよ・・・。答えがないのって、きっとそれは、一番つらいことだからさ」

 

「・・・分かってる」 

 

 

 理解はしている。けれど、本能に染みついていない。

 

 進むべきか、止まるべきか、そのはざまで、俺はずっと迷い続けている。・・・そうして迷い続けたまま、ここまで中途半端に大きくなってきたんだ。

 

 ちさきのことが嫌いな訳じゃない。けれど、それが恋愛感情における好きにつながるのか分からないし、何より好きになることに恐怖を覚える。失う感覚は、そう簡単には消えてくれないから。

 

 ・・・全く。俺は、どうしたら怖がりをやめれるのだろう。

 

 とはいっても、俺はあのころとは違うと思えていた。

 今は少しずつ自立に向かってきている。だんだんと自分という存在を磨き上げて、少しは力が付いたと言えるくらいまで成長した、はずだ。

 

 今の俺に、守る力があるのだろうか。

 失わずに済む力が、あるのだろうか。

 

 

 その答えが出るまでは、告白に答えることが出来ない。

 今はまだ、答えは出なかった。

 

 だから、これが今持てる最大の答え。

 せめて、これを要に伝えるとしよう。 

 

「要。こうしよう。・・・お舟引きが終わったら、俺はちさきに答えを出す。今はただ、時間が欲しい。好きの感情は、昨日の今日の話じゃないだろ」

 

 要は俺の言葉を聞いて、一つため息をついた。どうやら気に食わないところがあるのだろう。

 けれど、もうそれ以上文句の言葉はなかった。

 

「・・・分かった。約束、守ってもらうよ」

 

「ああ。ちゃんと答えは出す」

 

 俺がそう言うと、要は一人、先に教室へ帰っていった。残された俺は、非常口の扉の窓から、またさっきのように景色を眺める。

 

 ・・・今日の雨は、また一段と強い。

 

 

 




『座談会コーナー』

こう考えてみると、前作ホント尺管理がばがばっすね・・・ビビりました。
そういう時は、もういっそ割り切って短くする方がいいんじゃないですかね。というわけで今回は今作過去最低文字数だと思います。

はてさて、内容を見てお分かりになると思いますが、私は『要』という人物に好感を持ってません。こういうタイプの人間がどこか苦手というか・・・。
もちろん、嫌いではないです。物語的にも重要ではあるんで。

---

といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

また会おうね(定期)
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