凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
UV件数が1000件を突破しました。ありがとうございます。
知名度が大手作品に比べてそこまででもなく、かつ放送からもうずいぶんと経った作品の二次創作ともあり、なかなか認知されないところではありますが、それでも目にしていただけたこと、感謝しております。(2021年4月終わりごろ)
本作品は、まだまだ終わりには程遠いです。これからも精一杯書かさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします。
それでは、本編どうぞ。
~遥side~
お舟引き実行の協力関係の締結が決まってからは、目まぐるしいほど時が早く進んでいった。
陸の大人が協力してくれることにより、全体の作業スピード、船や機材の根回しなどが瞬く間に進んでいった。悔しいが、これが大人の力、なのだろう。
そして、全体の進捗は95%ほどを迎えた。あと四日ほど経てば、お舟引き当日は来る。
ただ、海側の協力は得れそうになかった。もっとも、もう批判の声が上がらなくはなっていたが。
また、聞いたところによると、冬眠の実行日とお舟引きの実行日がどうも一緒の用だ。それによって何か影響があるか分からないが、どことなく嫌な予感はする。
・・・いや、止めよう。こんな想像、誰も幸せになんてならない。
俺は、迫りくるその時を待ちながら、今を一生懸命生きた。
そして、今日はというとあいにくの雨。俺たちは、教室でおじょしさまや付属のものの細かい調整に入っていた。が、しかし俺個人にやることはなかった。
そんな中、どうもちさきと要の様子がおかしいことに気づいた。どこかぎくしゃくしているというか、見ていて気味悪く思う静けさ。
その合間合間、要から俺に視線が送られてくる。これもまた、どこか気に入らなかった。
あの一件以来、必要事項以外は要と言葉を交わさなかった。互いにそうしたかったのか、俺だけのエゴなのかそれは知らないけど。
何かを訴えているのは分かる。
けれど、それを本人の口から聞かない限り、俺は答えないことにした。
そして、ある程度時間が経つ。
特にすることもなくて、俺はぼーっと窓から雨降る外をただ眺めていた。ほかのメンバーが呑気におしゃべりをしているのが、全く耳に入ってこない。
ただ、目の前の景色がどこか嫌に思えていた。
あと数日後に迫っているのに、こんな雨でどんよりした空気になるのが嫌いだ。先往く不安の暗示に思えてしまう。
・・・やめよう、今は。
そしてくるりと振り返ると、要にポンと肩を叩かれた。
「・・・ちょっと、お話付き合ってくれないかな?」
「分かった」
作られた笑顔の裏の感情を知ろうとはしない。多分、この後吐き出すのだろう。
だから俺は、教室の外へと速足で逃げていくその背中を追うだけにした。
---
誰もいない、静まりかえった非常口付近で、その足は止まった。本当に、誰にも聞かれたくない話のようだ。
「悪いね、こんなところまで来てもらって」
「・・・言いたいことがあるなら、そう言えよ。多分、笑ってられるような話じゃないんだろ?」
いつでも笑顔でいることが優しさじゃない。そこをはき違えてはならない。
俺がそう言うと、要は顔色から笑みの要素を抜き取った。どうやら、この表情に真意があるらしい。
気を抜けばすぐに悪態をついてしまいそうだったが、必死にこらえて、要の言葉を待つ。
「僕さ、ずっとちさきが好きだったんだ。・・・なんて、いまさら言っても、遥はもう気づいてるよね?」
「・・・まあな」
ずっと見てきたのだ。気づかないはずがない。
全体の俯瞰者のようでありながら、こいつの目線はいつもちさきにあった。それをうまく悟られないようにしてきただけで。
けど、ひねくれた人間なら、感情の裏の裏まで探ってしまう。だから、気づいていた。気づいてしまっていた。
「それで、この間ちさきに告白したんだ。・・・返事は、返ってこなかったけど」
「へぇ、なるほど」
「なるほど、じゃないよ」
要は、この時初めて心からの怒りを見せた。瞳が、燃えている。
「遥、僕は知ってるんだよ。ちさきに好かれてることも・・・告白されていることも!!」
珍しく、要は一際大きな声を上げる。
けれど、俺の感情は揺さぶることはなかった。
・・・それはきっと、こいつへの感情がどこかで冷めてしまっていたから。
心の底から嫌っているわけでも、憎んでいるわけでもない。けれど、一線を画してしまった俺たちは、多分、もう分かり合えなかった。
「なんだそれは。嫉妬か?」
「・・・」
自分でも恐ろしく思ってしまうくらい、冷めた言葉しか出てこない。こんな言葉しか口に出来ないような自分に腹が立ってくる。
「嫉妬だよ。・・・でも、こんなことをしても意味ない事、分かってるよ」
要は怒りを涙に変えようとしていた。けれど、その雫が零れることはない。
「遥。・・・君は、ちさきに答えを返してないんだよね。・・・雰囲気だけど、そんな気がする」
「あの時は、時間も時間だったし・・・。・・・なにより、俺が俺自身の気持ちを分かってなかった」
「だったらさ、せめてちさきに答えくらい返してあげてよ・・・。答えがないのって、きっとそれは、一番つらいことだからさ」
「・・・分かってる」
理解はしている。けれど、本能に染みついていない。
進むべきか、止まるべきか、そのはざまで、俺はずっと迷い続けている。・・・そうして迷い続けたまま、ここまで中途半端に大きくなってきたんだ。
ちさきのことが嫌いな訳じゃない。けれど、それが恋愛感情における好きにつながるのか分からないし、何より好きになることに恐怖を覚える。失う感覚は、そう簡単には消えてくれないから。
・・・全く。俺は、どうしたら怖がりをやめれるのだろう。
とはいっても、俺はあのころとは違うと思えていた。
今は少しずつ自立に向かってきている。だんだんと自分という存在を磨き上げて、少しは力が付いたと言えるくらいまで成長した、はずだ。
今の俺に、守る力があるのだろうか。
失わずに済む力が、あるのだろうか。
その答えが出るまでは、告白に答えることが出来ない。
今はまだ、答えは出なかった。
だから、これが今持てる最大の答え。
せめて、これを要に伝えるとしよう。
「要。こうしよう。・・・お舟引きが終わったら、俺はちさきに答えを出す。今はただ、時間が欲しい。好きの感情は、昨日の今日の話じゃないだろ」
要は俺の言葉を聞いて、一つため息をついた。どうやら気に食わないところがあるのだろう。
けれど、もうそれ以上文句の言葉はなかった。
「・・・分かった。約束、守ってもらうよ」
「ああ。ちゃんと答えは出す」
俺がそう言うと、要は一人、先に教室へ帰っていった。残された俺は、非常口の扉の窓から、またさっきのように景色を眺める。
・・・今日の雨は、また一段と強い。
『座談会コーナー』
こう考えてみると、前作ホント尺管理がばがばっすね・・・ビビりました。
そういう時は、もういっそ割り切って短くする方がいいんじゃないですかね。というわけで今回は今作過去最低文字数だと思います。
はてさて、内容を見てお分かりになると思いますが、私は『要』という人物に好感を持ってません。こういうタイプの人間がどこか苦手というか・・・。
もちろん、嫌いではないです。物語的にも重要ではあるんで。
---
といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。
また会おうね(定期)