凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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ここら辺は基本ノー編集で行きたかった・・・。
が、流石に増さねばなるまいて。

本編どうぞ。


第五十一話 たどり着く答えは

~千夏side~

 

 放課後。

 今日は雨が一際強く降りしきっていた。外での作業はまず不可能。かといって、教室の中でできることなんてほとんど残っていなかった。

 

 熱心な何人かは小物の調整とかしているけど、ホント数人だけ。それ以外、皆は雑談などなんだのに花を咲かせていた。

 

 といっても、私はそういうことが似合う人じゃない。

 ちょっと空気に耐えれなくなり、私は人気の少ない校内をぶらぶらと歩いた。

 そして、屋上に続く階段付近で、人に出会う。

 

「あれ、千夏ちゃん?」

 

「ちさきちゃん、どうしてこんなところに?」

 

「・・・うん、本当は、屋上に出たかったんだけどね。今日、こんな天気だし」

 

 私も、導かれるようにここに来たのかもしれない。だったら、なるほど。私とちさきちゃんは似た者同士だ。

 私は、階段に居座っているちさきちゃんの隣に座った。

 

「それにしても、なんでこんな人のいなさそうなところに?」

 

「うん、ちょっと一人になりたくてね」

 

「何か、嫌なことが?」

 

「ううん? 違うの。・・・そうじゃなくて、ちょと色々、悩んでるの」

 

 ちさきちゃんの声音はよろしくなかった。本当に、心の底から悩んでいて、今にも崩れそうな声音だ。

 

「私ね、この間告白したんだ。・・・その返事が返ってこない間に、別の子から告白されて・・・」

 

「それの返答に迷ってるの?」

 

「それもあるし、ちょっと違う。・・・私ね、告白した時、変わってしまっても、壊れてしまってもいいって思ってたの。・・・でも、いざ冬眠の話が出ちゃって、みんなと離れたくない。変わりたくないって思っちゃって」

 

 変わりたくない。

 それはちさきちゃんからよく聞く言葉だ。事あるごとに、そう呟いてる。いつか島波君も、そんなことを言ってたような気がする。

 

 ・・・でも、そうなんだ。

 冬眠に入っちゃったら、変わってしまう。もう、これまでと同じような生活は出来なくなるかもしれない。

 

 それは確かに怖いし、嫌だ。

 

「私、今が楽しい。・・・だから、答えが欲しいのに、欲しくない。・・・そんな矛盾抱えてて、悩んでるの。・・・なんて、贅沢な悩みだよね」

 

 ちさきちゃんの言葉を聞くにつれて、だんだんと分かってくる。

 ちさきちゃんが好きって言った相手は、きっと島波君だ。

 

 島波君は、もし全てがダメで、何があろうとも陸に残ると公言している。

 だからこそ、ちさきちゃんは今こうして思いゆれてるんだ。

 

 私は、心の中で一つ小さくため息をついた。

 

 ・・・私も、島波君が好きなんだ。

 

 そして、想いを伝えようとして、今ここまで来ている。もう一歩が踏み出せないところまで。

 

 ・・・私は、島波君に告白していいんだろうか?

 

 そもそも、なんでこんなに私はのうのうとしてるんだろう?

 

 島波君が陸に残るって言って、私にも冬眠はなくて、一緒に陸で生きられるって余裕があるから?

 

 ・・・違う。そんなのじゃない。気持ちは中途半端じゃない。分かってる。

 そんな生半可な気持ちじゃない。

 

 いなくならないなんて、確証はない。

 島波君は海の人間だ。いつ海が恋しくなって、気が変わるかだって分からない。

 

 だから私は、はぐれないように彼の傍にいたい。

 

 ・・・うん、これが私の気持ち。私の答え。

 

 だから、言わなきゃならない。

 

 誓いを立てるように、私はちさきちゃんに告げる。

 

 

「ちさきちゃん・・・。私ね、告白しようと思う」

 

 唐突に私が話し出したことに、ちさきちゃんは一瞬だけ驚きの表情を見せたが、やがてそれは柔和な微笑みへと変わった。

 

「・・・うん、頑張ってね」

 

 この時、ちさきちゃんはきっと私が告白しようとしている相手が島波君だという事に気が付いた。けれど、それ以上に言葉はなかった。

 

 でも、そのおかげで勇気が湧いてきた。

 一歩踏み出す勇気を得て、私の心はどんどん奮い立つ。

 

 ここまできて、もう戻ることは出来ない。

 

「ありがとう。・・・それじゃ、私、行くね」

 

 そう言って立ち上がり、私は勇み足でその場を離れていった。

 

 目指す場所は、ただ一か所だけだ。

 

 

---

 

 

 教室へ戻る途中、今度は庭に水色の傘を持った人影を見た。美海ちゃんだ。

 

「何してるの? こんなところで」

 

 ドアを開けて、美海ちゃんに声を掛ける。

 

「手伝おうと思ったんだけど、なんか入りづらかったから・・・。外から見てただけ」

 

「雨降ってるし、体冷えるよ? 中入ろ?」

 

 私の提案で、美海ちゃんは雨宿りをすべく校舎内へ入った。けれど、それ以上は動かない。美海ちゃんの意地だろう。

 

 そして、立ったまま、美海ちゃんは唐突に告げる。

 

「千夏ちゃん、好きになることって、いいことだと思う?」

 

「えっ? ・・・どうだろう、いい事だとか、悪い事、だとか、多分そういう話じゃないと思う。・・・なんかこう、当たり前っていうか。だからね、間違いじゃないとは思う。急にどうしたの?」

 

 私がそう聞くと、美海ちゃんは少し頬を赤らめて答えた。

 

「私ね・・・、今年になって、遥にまた出会って、一緒にいる時間が増えた。だから、多分きっと、好きだって、思っちゃってる」

 

 それは、あまりにも綺麗で清純すぎる心の声だった。

 

「でも、私が好きになった人は、みんないなくなっちゃった。だから、遥にしても、あかちゃんにしても、いなくならないってことが、信じられなくて。・・・怖くて」

 

 美海ちゃんがこういうのも無理はない。小さいころにお母さんを亡くしたことを、私は知ってる。

 大好きな人がいなくなる。・・・それはきっと、とても悲しくて、恐ろしいこと。

 

 そして気づく。私と、美海ちゃんの気持ちは一緒だという事に。

 そこから先の行動は、ちょっと違うかもしれないけど。

 

 だから、私は美海ちゃんに伝える。

 

「私もね、島波君の事好きなんだ。そして、美海ちゃんみたいに、島波君がもし眠っちゃったらどうしようって思ってる。・・・でもね、私、諦めたくない。だから、私は島波君に告白しようと思う」

 

 ちゃんと、自分の思いを宣言する。美海ちゃんだって分かってくれているはず。

 

 向こうに何か言われる前に、私は一つ付け足した。

 

「・・・ね、美海ちゃん。一つ約束事、いいかな?」

 

「?」

 

 お互いに彼のことが好きなら、私たちはライバルという事になる。

 だから、私たちは平等に戦いたい。恋仲間として、親友として。

 

「もし、私たちお互いに島波君のことが好きなら、平等に戦おう? どっちか片方しかいない状態じゃ意味がない。・・・フェアに、ね?」

 

「・・・うん。分かった」

 

 美海ちゃんは覚悟を決めた顔で、一度頷く。本当に素直で、優しい子だ。

 

 けど、そんな美海ちゃん相手だからこそ、いつまでもこんな重苦しい空気でいたくなかった。

 だから、無理にでも話を転換する。

 

「せっかくだしさ、私たちもおしゃべりでもしていこうよ。今日はどうせ作業ダメなんだし」

 

「・・・うん、そうだね」

 

 

---

 

 

 それから小10分ほど話していたところで、部屋の方から呼び出しが来た。気づかれないように、美海ちゃんは帰っていく。

 そして、残された私一人で教室へと戻った。

 

 中には先生がいた。どうやら大事な話があるらしい。

 

「みんな、作業中で悪いけどねぇ、雨が強くなるから、今日は帰れって言われちゃってねぇ・・・。続きは明日になりそうだよ。明日には止むそうだから、とりあえず今日だけ。・・・あとそう、帰り道は気を付けるんだよ」

 

 多少文句は上がったものの、この雨なら無理はない。さっきから、少しずつ雨音を強くしている。

 

 みんなぞろぞろと玄関へ向かい、靴を履き替えては雨の降りしきる外へと出ていく。私の周りからも、だんだんと人が消えていった。

 

 しかし、私は動かない。

 二人きりになるのは、今日がチャンスだと思ったから。

 

 だから、告白するなら、きっと今しかない。

 お舟引きが、運命の日が迫っている。時間がないのに先延ばしなんて考えられなかった。例え、それが今日みたいな雨の日でも。

 

 だから、私は勇気をもって、一歩を踏み出す。

 

「ねえ、島波君。・・・ちょっと、話があるんだけど、残ってくれないかな。ほんのちょっとなの」

 

「いいけど・・・。いや、分かった。すまん、みんな先行っててくれ」

 

 私の言葉の歯切れの悪さで何かを察してか、島波君は他のみんなを先に行かせた。何も言わずとも気持ちを察してくれる。そんな優しさにやっぱり私は惹かれたんだ。

 

 そして、二人きりになって私たちは空き教室へ行った。ガランとしたその部屋に、人が寄り付く気配はない。

 

「・・・それで、話ってなんだ? 帰れって言われてる以上、あまり長い時間ここにいると怒られるぞ」

 

「・・・分かってる。分かってるの。すぐ終わる。伝えたかったことが一つあるだけから」

 

 なんて言いつつも、なんて言えばいいか分からなくなった。

 用意されたセリフなんて真っ白になって消えるだけ。でも、伝えたい思いだけが暴走したようにあふれてくる。

 

 結論。口走ったのは、誰にでも言える常套句だった。

 

 

「・・・島波遥くん。私は、あなたのことが大好きです」

 

 

 

 




『今日の座談会コーナー』

展開を変えるつもりはないですが、ここから先の展開はぜひ楽しんでいただきたいのであまり内容に触れることは言いません。
しかしまあ、中学生の恋愛ってどうなんですかね。果たしてアニメで描かれるような深い付き合いになるんでしょうか。主はそうした経験がないのでよくわかりません(は?)

歳を取るにつれて、恋愛というものの見方が変わるんですよね。将来だとか、好意だとか、そうした要素がごっちゃになるので。

・・・大学生、か。

---


といったところで、今回はこの辺で。
また会おうね(定期)
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