凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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ここからオリジナルの展開をするだけあって、流石に書く手が・・・。
頑張るっきゃない。

本編どうぞ。



第五十九話 マダトオイミライニ

~遥side~

 

 正式に水瀬家に住まいを映すようになってから、四か月ほどが過ぎた。夏はとっくに過ぎ去り、いよいよ本格的に冬の訪れ。夏が夏だっただけに、今年の冬は一層寒かった。

 

 それからというもの、俺は病院通いを続け、とりあえず片足で動けるだけのリハビリを続けていた。そしてようやく、その過程が終わる。

 しかし、終わったところで失った左足が帰ってくるわけじゃない。学校との往復でやっとの生活が続いていた。

 

 冬休みに入る。あれからの皆は、ようやく一歩を踏み出した状態だった。

 ちさきはいまだに表情が曇ったままだが、時折紡と打ち解けたような会話をしているのが目立った。居候して一つ屋根の下というのが大きいのだろう。

 

 美海は、そこまで心に深い傷を負っていなかったのか、表情は比較的穏やかに見えた。弟がもうすぐ誕生する、というのも一つ大きな理由かもしれない。

 

 そんなこんなで俺はというと、保さんと夏帆さんのもとで、穏やかに過ごすことが出来ていた。

 

 

 とある朝。今日は夏帆さんは夜勤とのことで、料理担当は俺、そして男二人の朝食となっていた。

 

「・・・そう言えば、今日から冬休みだったか」

 

「はい。といっても、特にやることはないんですけどね」

 

「ああ。・・・それについてなんだが」

 

 保さんは、俺になにやら提案がある様子だった。もちろん、その話を聞いてみる。

 

「義足、作ってみてはどうだろうか」

 

「・・・正直、言いだそうかどうかは悩んでいたんですけどね。でも、世話になっている身でおめおめとそんなことを言い出していいのかどうか気になっちゃって」

 

「構わん。・・・むしろ、やせ我慢されている方が、親代わりの身分としては辛いものだ」

 

 保さんの瞳は、いつになく真剣だった。この提案が、いかに本気のものかが伺える。

 

 

「金銭の面は気にするな。最大限の助力はする。・・・それに、長い間拘束されることを考えると長期休暇が最高のタイミングだと思うんだ。どうかね?」

 

「・・・ありがたいです。そう言ってもらえること」

 

 優しさを見せてくれている相手に対してその提案を無下にすることが失礼であることは学んでる。俺は、その提案を飲むことにした。

 

「まあ、いずれにせよ、まずは病院でその手の話を聞きましょう。数か月前なんですけど、担当医の先生がなにやら義足の話をしていたので、当てはあるのかもしれませんし」

 

「分かった。この後向かおう。いいかね?」

 

「何もないですし、構いませんよ」

 

 そうして、完全に世話になり終わったはずの病院へ向かうことになった。

 

 

---

 

「で、義足を作る気になったって?」

 

 病院の診察室では、大吾先生がだるそうにカルテとにらめっこしていた。

 

「その方向で行きましょうという話になったんですけど」

 

「それで、俺の下へ来たわけだ」

 

「俺が目覚めた日でしたっけ。あの時先生言っていたじゃないですか。何かそういう当てがあるんじゃないかって」

 

「よく聞いてたな、あんな精神状態の中でよ」

 

 大吾先生は俺との話に集中するためか、カルテとのにらめっこを終えて椅子をくるりと回転させ、俺の方を向きなおした。

 

「当て、か・・・。あるにはあるんだが、ちとずいぶん長い間連絡を取り合ってなくてよ。多分、電話は繋がらないかもしれないから、街で探す必要があるかもしれん」

 

「それでも、当てはあるんですか?」

 

「まあな。そうは言っても俺は大人だ。同級生の進路だとか、誰が何をやってるかくらい、ちょっとは把握してるからな。・・・で、どうなんだ?」

 

「その方向で進めましょう」

 

「分かった。・・・つってあいつ、本当に何してるんだろうな」

 

「先生の同級生なんですか?」

 

「ああ? まあ、そうだな。最後に会ったのがもう10年くらい前の話だけどな」

 

 先生は窓の外を遠い目で見つめる。その先に、例の知人を思い浮かべているのだろうか、知らないけど。

 が、それも一瞬。先生は首をぶんぶんと振った。

 

「ま、忘れてくれ。とりあえず、行ってみないと分からない。連絡は取ってないからな」

 

「そうですか・・・」

 

「でもまあ、名前は教えておくから探してみろ。名前は日野鈴夏ってんだ」

 

「その人を、俺が街で探せばいいわけですね」

 

 と言っても、片足を失った今、それが簡単にできるわけではない。保さんの世話になるしかないだろう。全力でサポートしてくれるとは言ったものの、少々気が引ける。

 

 大吾先生はカルテを放り投げて、グーっと体を伸ばした。

 

「うし、本題は終わり。・・・んじゃ、おしゃべりでもするか」

 

「はぁ?」

 

「大の大人に向かって『はぁ?』ってなんだよ。暇なんだよ、俺も。見ただろ? 今この病院ガラガラでよ」

 

 確かに、先生の言うようにここに来るまで患者の一人とすれ違うことも無かったけど、だからといってそれは職務怠慢にならないだろうか。

 なんて、この人に言っても無駄か。今は付き合おう。

 

「まあ、いいですけど・・・」

 

「うっし。まあ、あれだよ。お前の経過観察ってのも含めて、な」

 

 適当な理由付けだけれど、この人なりの配慮だろう。はっきり言ってありがたかった。だからこそ、息を吐くように自分の話をできることが出来た。

 

「随分と楽になりましたよ、ホント。フラッシュバックも最近はあまり起きなくなりましたし」

 

「お前、強がってても結構精神にダメージを受けてたからな。それこそ、あの時の少女。あの子がいないとやばかったんじゃないのか」

 

「美海ですか。はは、そうですね」

 

 あの時、美海に声をかけてもらえなかったら、俺はどうなっていただろうか。それを考えただけでゾッとする。今となっては、美海はかなり心の拠り所となってる。

 最近でも、定期的に俺のいるところへ遊びに来ては、様子を伺ってくれている。本当に、強くなった。

 

「・・・だからまあ、皆には感謝してますよ。ずっと一人だと思ってた俺は、もういないんですね」

 

「そうだな。少なくともお前はもう一人じゃねえよ」

 

 大吾先生は、俺の言葉をちゃんと肯定してくれた。それだけで、一人じゃないことを実感できる。大吾先生も、もうその大切の一人なのだ。

 

「・・・それにしても、変わっちまったな、海」

 

「はい。・・・さすがに、まだ見るに堪えないですね」

 

 それでも俺は、あの光景を受け入れることはまだできない。きっといつかは、なんて言っても、そのいつかはまだ先の話だろう。

 今は辛いまま、進んでいくしかない。背中を押してくれる人はいる。大丈夫だ、きっと。

 

 と、雑談でもするつもりだったが、ここで大吾先生は思い出したように「あっ」と声を上げた。

 

「ああ、そうだ。さっきの義足の件なんだけどな。一つ提案があるんだけど」

 

「なんすか?」

 

「紹介は出来ないけど、街に行くときは病院に声かけてくれ。車、出すからよ」

 

「いいんですか?」

 

「お前はうちのお得意様、だしな」

 

 サムズアップして、大吾先生は二ッと笑う。頼もしい限りだ。

 だから精一杯、今は甘えることにする。誰に頼る、甘えることが間違いではないと、今はもう分かってるから。

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

「おう、任せとけ」

 

 快く、大吾先生は引き受けてくれた。

 

 

 それにしても、街に行くのは久方ぶりになるな。

 ただ遊びに行く程度だと思っていた場所に、こんな世話になるなんて思ってもなかった。

 いや、そうは言えないか。

 

 今はまだ分からない将来、俺がどうするかによってかかわり方もまた変わるのだから。

 ただ、どれだけ遠く離れることになろうと。

 

 

 ・・・心でつながる海との距離だけは、離れたくないな。

 

 




『今日の座談会コーナー』

悩んでおります。非常に悩んでおります。
前作では、大吾先生と日野鈴夏の関係は五年後にはっきりしたんですよね。なので、そこの展開を変えるかどうか・・・。まあ、これ以上はネタバレになりかねないのでこの話題はここまで。

あと、筆者である私は二次創作オンリーの人間ではありません。時折適度に一次創作を嗜んでいます。
そのため、パワーバランスが寄って更新が滞る可能性があるかもしれないので、ご了承ください。(2021/5/6)

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といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

また会おうね(定期)
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