凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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久しぶりの更新ですね。さぼっててすいません。
気を取り直して、本編どうぞ。


第六十八話 海へ・・・

~遥side~

 

 それからまた海沿いをのんびりと歩いて、数十分、ようやく俺はたどり着いた。

 何一つ変わらない、俺の大切な場所。

 

 一つ息を小さく吸って、俺はいつか渡された鍵を差して回す。

 

「ただいま帰りましたー」

 

 一つ大きな声を出すと、奥の方からおかえりの声が聞こえた。夏帆さんだ。

 

「あら、おかえり」

 

 それからリビングに入ったところで、保さんも声を掛ける。

 

「おう、帰ったか。どうだ、調子は?」

 

「俺自身はぼちぼち。足の方はまあ・・・不完全にリハビリを終えた分、まだ違和感があります。先生とも話がついているので、また病院の方に行くと思います」

 

「そうか。今度は投薬、だったか」

 

「はい。これで金属と肉体が同調してない部分を解決させるとのことらしいです」

 

 ここに帰ってきた理由の一つとして、あの日の大吾先生との約束もある。それに、それで海に帰れるようになるのなら、俺はそれだけで嬉しく思えるから。

 

 保さんは俺の言葉を聞いて安心してか、またいつものごとく新聞に目を落とす。そして俺がソファに腰かけようとした瞬間、電話が元気良くなりだした。

 

「あ、俺取ります」

 

「お願い」

 

 洗濯物を畳んでいる夏帆さんに変わって、俺は受話器を取った。

 俺が帰ってくる日程が割れている以上、俺を知る誰かからだろう。そう思って俺はその受話器を取る。

 聞こえてきた声は、やはり俺の知る人間だった。

 

「はい、もしもし」

 

「ああ、遥か。ちょうどよかった」

 

「やっぱり紡だったか」

 

 紡は俺と同じ高校を卒業した後に晴れて大学に入学した。互いに夢を語ったあの日の通り、俺たちは同じ大学にいる。

 学部こそ違うが、俺は数少ない海村に関係する人間なため、時々紡の学部へお邪魔することがある。それくらいにはまだ親密な関係だ。

 

 研究の意味も兼ねてこっちに帰ってきてる分、今回もその件に関してだと思うけど・・・。

 

「んで、何の用だ?」

 

「ああ、今日確か巴日だっただろ? 先生と観測に向かうんだが、遥に手伝って星って先生が言ってるんだが、どうだ?」

 

 やはり、口から零れた言葉は巴日だった。

 美海との約束がある分、行こうとは思っていた。そこにこの言葉が重なり、ますます行こうとする気力がわく。

 

 本当は、みんなで見るもの、なんだけどな。

 

「りょーかい。先生の頼みとあっちゃ、流石に断れないからな。20:00くらいにつくようになるって言っておいてくれるか?」

 

「先生にか。分かった。それじゃあ後で」

 

 そして俺は紡が電話を切ったことを確認して、受話器をもとの場所に戻した。

 その機を待っていたのか、夏帆さんが俺に確認をしてくる。

 

「この後も、お出かけするの?」

 

「すいません、帰って初日なのに」

 

 怪我の有無にかかわらず、俺は結構いろいろなところへ飛んで行ってしまっている。それがあってか、俺はもう鷲大師の中でほとんどの人に認知されているらしいけど。

 

 ・・・特別、有名人になりたいってわけでもないんだけど。

 

「いいのいいの。悪いと思って言ってるわけじゃないから。私はただ怪我に気を付けてほしいだけよ。そうは言っても、自分が一番だからね」

 

「無茶なことはしませんよ、流石に。痛い思いをするの、もう嫌ですし」

 

「そう。それならいいの。あとはもう、遥くんの生きたいように生きて。私たちが望んでいるのはそれだけだから」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 いままでそうしてもらったように、今回もまた、この二人に甘えさせてもらおう。

 

「それじゃ、行ってらっしゃい!」

 

「あ、今じゃないです」

 

 

---

 

 

 それから、また吸う時間が経って・・・。

 気が付けば、病院にいた。というより、先生の話そっちのけで俺はずーっとボケっとしていた。

 

「おい、聞いてんのかお前」

 

「え、あ、はい。・・・なんでしたっけ」

 

「はぁ・・・。お前な、そうやって医者の忠告を聞かないと早死にするぞ。特にお前みたいなタイプはな」

 

 先生は手を頭に当てて、はぁ・・・と一つため息を零す。

 

「まあ、早死にするならその時です。今までも俺ってそういう人間だったでしょう?」

 

「そうやって割り切る人間見たことねえよ・・・」

 

「まあ、それはそれとして、本題をお願いします・・・」

 

「・・・2度目はないからな」

 

 話の内容は、春先に変えた義足の影響への投薬についてだった。

 慣れない金属が皮膚に当たり拒否反応を起こしたせいで痛い目を見た春先。それからリハビリを行い、何とか普通の生活に戻ることは成功したものの、まだ不完全な状態であるというのが現状。

 しかし、大吾先生はどうにか対処法を見つけてくれていた。曲がりなりにも、ちゃんと俺の担当医なのだ。

 

「投薬治療がちゃんと終了するまでは海に浸かるな。最低2週間弱だな。それが過ぎたらたぶん海水に浸かるのは問題なくなるはずだ」

 

「それを破ったら、どうなりますかね」

 

「知らん。俺はエナ持ってないんだよ。まあ一つ言えることがあるとすれば・・・覚悟はしておいた方がいいな」

 

 目を細めて大吾先生が俺に忠告する。つまり、そういう事らしい。

 さすがに俺も何度もポカをする人間じゃないと、一度しっかり首を縦に振った。別に迷惑をかけたくてかけているわけではないのだから。

 

「説明は以上、質問は?」

 

「ないです」

 

「それより、またあいつと縁が結ばれるなんてな。もうずいぶん長いこと会ってないから、あいつが俺のことどう思ってるか知らないけど」

 

「鈴夏さんっすか」

 

「あいつのとこに通い詰めてたお前なら分かるだろ、あいつの性格。もうなんてったって大雑把で大胆。あんなやつと幼馴染だったってのが信じらんねえよな」

 

 俺が鈴夏さんに出会えたのはこの人のおかげだ。そうでもしなければ、今海に帰る希望すらなかったわけだから、本当にこの人には感謝しかない。

 

「あいつはすげえよ。街でビックになる、なんて叫んで本当に街で生計を立ててんだからな。しかも、あいつしかできない、技師って仕事で。・・・ホント、すげえよあいつは」

 

 そう言う大吾先生の眼は遠くを見据えていた。その方角は、多分街の方だ。

 でも、その人にしかできない仕事と言えば、先生だってそうだ。

 

「・・・先生も、十分すごいですよ」

 

 思わず、消え入りそうな声でそう呟く。

 が、それを取りこぼすのがまたこの人。悪気のない様子でもう一度尋ねる。

 

「ん? なんて言った? もう1回言ってくれ」

 

「嫌ですよ2度はないって先生言ったじゃないですか。・・・それじゃ、今日はこれで失礼しますね。これから予定がありますし、先生の診察待ちの人がいてもいけないですし」

 

「了解。んじゃ、忠告は守れよ?」

 

「分かりました」

 

「いい返事だ。それじゃあな」

 

 先生のニカッとした笑いをあとに俺は診察を出ていく。結局、廊下に待機している人はいなかったけど。

 

 

 

 

 そしてそのままその足で、俺は皆の待つ海へ向かう。

 

 

 

 




『今日の座談会コーナー』

このコーナーも結構久しぶりですね。前回までどんな内容を書いていたか忘れそうになりますね・・・。
ここら辺、文章をふくらませたせいでいかんせん尺の切り方が悪い。せめて3000字は欲しいんですけどね。
あと、前作とは結構文章変わってると思います。鈴夏さんとのエピソードが追加されたことにより、記憶がおぼろげでない、という設定変更もあります。

---

といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

また会おうね(定期)
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