凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】 作:白羽凪
結構長いんですよねここから・・・。
まあ、言ってもキリないのでどんどん行きましょう。
~遥side~
俺は、中学二年生になった。
もう、あの日々から三年ほど経つ。
光やまなか、海のみんなと疎遠になりかけてまで陸との関りを持ったあの頃。
みをりさんを失って、陸に居づらくなって戻ってきた海にも、もう以前のような温かさは感じなかった。それこそ、温水雪が降りだした汐鹿生のように。
海に戻ってからというもの、家でずっと勉強しかしていなかった。そんな日々が続いた。
勉強内容は、教科書は書いてないようなことばかり。
特に、心理学を専攻して独学することを選んだ。
理由は簡単である。
みをりさんが亡くなったあと、いよいよ俺は一度も涙を見せることは無くなった。
涙だけではない。複数の感情が欠落、あるいは薄いものとなってしまった。
喜ぶことも、怒ることも、泣くことも、笑うことも。
そして何より、俺は『人を好きになる』という感情が分からなくなってしまった。
・・・好きになった人から、いなくなってしまった。
そうしていつか、自分の居場所がなくなってしまいそうで。
だから分からない。怖い。・・・そして、知りたいと思ってしまう。
『好きになる』というのは一体どういうことかを。
それと真正面から向き合い、自分なりに答えを得たいと思って今に至る。
・・・欠落した感情のままでは、掴めそうにもないが。
そんな現在まで、光たちは疎遠になりかけた俺を放っておくこともなく、半ば強制的ではあるが一緒に登校したり、遊びに連れ出してくれた。
ありがたい話だった。見捨てたようになっていたのはこっちのせいなのに。
ただ、こいつらとの縁も深まってしまえば切れてしまうと考えると怖くて仕方がない。
一緒にいて楽しいと、この場所が好きだと思ってしまうと、また辛いことが起こってしまうんじゃないか、と。
『好き』という感情は恋愛的なものだけじゃない。
知人にしろ、友人にしろ、この気持ちのせいで周りが変わってしまう。それは肌を持って実感した。
だから、友人であれどその先へ行くことができなかった。
・・・別に越えなくていいのかもしれないが。
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「行ってきます」
誰もいない部屋に向かって言い放つ。
行ってらっしゃいの声はもう帰ってこないが、ここで立ち止まっても仕方がない。
あれからというもの、人数の関係で、俺たちが中一まで通っていた波中は廃校になった。
つまり、陸の学校へ合流することになったのだ。
というわけで、今日から新しい制服に腕を通す。
・・・はずだったんだが。
『いいか! 陸の学校へ上がっても波中魂は消えねえからな! 明日は波中の制服着て来いよ!!』
なんて光が強気で言い放つもんだから、制服は仕方なく着替えないでおいた。
そして、当日の朝になる。
一番最初に視界に入ったのは要だった。
「・・・んっ、おはよう、遥」
「おう」
「おはよう」
ついでにちさきもいたようで、要のあとに声がした。
そして視界をぐるっと回すと・・・。
浜中の制服を着ているまなかがいた。
・・・正気か? まなか。
「おはよう、はーくん!」
「おはよう・・・。あのなぁ、まなか。お前・・・光に絶対に怒られるぞ。悪いこと言わねえからさっさと着替えてこい」
「うーん・・・。でも変な目で見られちゃうだろうし、やっぱり陸の人とも仲良くしたいし・・・」
「言いたいことは分かるんだけどね・・・」
ちさきがさりげなくフォローを入れる。
確かに人間は、一部分違うだけで人を異分子扱いする。ただ、ことの大概はあくまで最初のみ。内心が見えるからこそ人は仲良くなれるのである。であれば・・・。
そんな取り繕った見た目なんて、いらないよな。
「まあ、スタートダッシュに失敗しても仲良くなれないなんてことはないだろ。仲良くなりたいなら、ちゃんと話して、分かり合えばいい。・・・それよりも今は光にどやされる方が面倒だろ」
「遥、本音漏れてるよ・・・」
最後の方は小声にしたが、どうやら要には聞こえていたようで、小さくため息が漏れた。
「そう・・・だね! ちょっと着替えてくる!」
決心したのかまなかは元気よく家の方へ走っていった。
その後、入れ違いで光がやってくる。
「よーし全員そろっ・・・てねえな。まなかのやつ、どうしたんだ?」
要とちさきが一瞬だけこちらに目配せしてきた。
・・・なるほど、うまく言えってことね。
実際、このメンバーの中なら一番光をうまく諭せる自信はある。・・・伊達に居候したわけじゃない。なら、それに応えよう。
「ああ。まなかもさっきまでいたんだけどな。忘れ物したみたいで家に帰ったぞ。なんなら俺が待っとくから、三人は先に行っててくれ」
「ふーん。そっか。遥が待ってくれるならまあいいか。行こうぜ」
光は特別感情を荒げることもなく、すんなりと受け入れた。
そして、三人はそのまま上っていく。
「じゃあな遥、先上がってるぞー!」
はいよ。
内心でそう呟いてまなかを待つ。さて、俺も忘れもののチェックでもしておくか。
確か今日は・・・体育があったような・・・。・・・ってことは。
・・・あ。
どうやら、本当に忘れ物をしたのは俺の方だったようだ。
はぁー・・・冴えねぇ・・・・。
『すまん、まなか。忘れ物した。先に行っててくれ』
どうしようもないので、こうとだけ置手紙を残してダッシュで自宅へと向かった。
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「くっそ、結構時間かかったな」
少し息を切らして元の場所に戻ってきたころには、置手紙も人もいなかった。どうやらまなかももう行ったらしい。
・・・さて、急ぐか。
時間はまだ少しあるが、ちんたらしてると遅刻になる可能性もある
俺は両足にしっかりと力を入れ、陸へ泳いでいく。
泳ぎだして数分経った。陸まではまだ距離がある。
・・・さてと、光がどうでるか心配なんだよなぁ。
新天地で波中の制服着ていく時点で明らかに喧嘩を売っている。そんな奴が、学校に行って何もしないわけがない。
考えただけで頭が痛くなるようなことを考えながら進む。
だからこそ、目の前から迫ってくる何かを避けれなかった。
ゴンッ!
「っ・・・! ・・・何に当たったんだ、俺は・・・!?」
2~3秒痛みに支配された後に、目を開けて周りを見回す。
そこには、俺と同じように頭を押さえている。俺がこれから向かう浜中の制服を着た一人の少女がいた。
今回は文字数少なかったですね。
どこか釈然としない日々です。
うぐぅ・・・。
また会おうね(定期)