凪のあすから~ heart is like a sea~【新装版】   作:白羽凪

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尺管理ガバガバガバナンスのせいで多分今SS以上、一番文字数が少ないのがこの話かもしれません。


第七十五話 目覚めの波動

~遥side~

 

 あり得ないことと言えばそうなのだろうか。それとも、これも予定調和なのだろうか。

 俺の目の前にいる美海は、エナを手に入れていた。これまでそんなそぶりは一度も見せなかったあたり、本当に今、この瞬間に手に入れたのだろう。

 

 ハーフの人間がエナを手に入れるというイレギュラーな事例は水瀬のこともあってまだ納得がいっている。しかし、後付けのように手に入れるなんて、しかもこの年齢で・・・。

 

 でも確か、水瀬も・・・。

 

 まとまらない答えを探すよりは美海を連れて陸に上がる方が先決だった。

 

「ねえ遥、陸にいた三人の・・・」

 

「ああ、全部寝かせといたから心配しなくていい。とにかく今は上がろう」

 

 そうして美海を引き連れて俺は陸へと昇る。先ほどクレーンが倒れたところまで戻ると、美海を追っていた三人の男がぐてーッと伸びていた。

 

「・・・生きてるよね?」

 

「まあ、流石に殺す勇気はない」

 

「・・・遥から、手を出した?」

 

 美海は心配げな表情で俺の顔を覗きこんでいる。それはきっと、俺が責任を被るのを嫌ったのだろう。それに対して、俺は心配ないと告げる。

 

「一応、向こうから手を出すように誘っといた。少しやりすぎになるかもしれないけど正当防衛ってことで片付くだろ。一体全体、なんでこんなことになったかなぁ・・・」

 

「ごめん・・・」

 

「被害者の言うセリフじゃないだろ。というか、この街にもこんなチンピラがいたんだな」

 

 田舎だから治安がいいと勝手に思い込んでいたらこれだ。・・・治安か。言えば俺の両親の話だってかなり物騒なものかと言えばそうか。

 

「まあ。とりあえず警察も呼んだし、面倒だけど付き合ってくれ。・・・っと、一人目覚ましたか」

 

 伸びていた男連中の一人が目を覚ましたみたいで、俺は美海をその場に待機させてその男の首根っこを掴んで声を掛けた。

 

「理由なんてないと思うけど・・・なんで美海を襲おうとしただけ聞いとこうか」

 

「だ、誰でもよかったんだ・・・最初は。けど、道端で出会った中坊のガキにあんな子がいるってそそのかされて・・・」

 

「ちっ、中途半端に愉快犯じゃないだけ質が悪いな。名前とかは?」

 

「お、俺は知らない・・・」

 

「そうか。まああと少しすればお迎えが来るだろうから反省していな」

 

 掴んでいた首根っこを放すと、男の顔面は地面へと勢いよくぶつかった。ケースがケースなので気の毒に思うことも無い。

 それより・・・。

 

「恨みでも買ったのか?」

 

 俺は傍らにいる美海に問う。濡れた服をちょっとずつ乾かしながら美海はそっぽを向いて弱弱しく答えた。

 

「この間、告白されたのを振ったことくらいしか心当たりはない・・・。でも、それが答えなら、理不尽だと思わない?」

 

「そりゃそうだ」

 

 人に好きと言うのは自由だ。誰にだって権利がある。しかしその一方でそれを拒むことだってまた自由な訳だ。きっと。それによって生じる逆恨みは理論として正しさが証明されないだろう。

 とすると、そいつが真に殴り飛ばすべき相手になるわけか・・・。相手が中学生というのを考えると少々気が引けるけど、こればかりは許せるものではない。

 

 そんな風に感情が先走る俺を美海は袖を引っ張って止めた。

 

「やらなくていい。これ以上、事を大きくしない方がいいかもしれない」

 

「それで美海は納得できるのか?」

 

「・・・」

 

 美海は黙ったまま何も言わない。ただ瞳のまっすぐさだけが俺の心に訴えかけてくる。

 一つため息を吐いて、俺は観念して答えた。

 

「分かったよ。この話はこれ以上無しな。ただ、何かあったらまた言えよ? その時こそ俺は絶対に行動に起こす」

 

「うん。分かった。ありがとう」

 

 自分では冷静でいたつもりだったが、どうやら頭にかなり血がのぼっていたみたいだ。大切な人が傷つこうとするのはいつになっても許せるものではないから、当然と言えば当然か。

 けど、俺もそろそろ大人にならないといけないから・・・この話はここでおしまいだ。

 

 としても、もう一つだけ聞いておかないといけないことがある。

 

「美海、確認だけどエナを手に入れたのは今日・・・なんだよな?」

 

「うん。間違いないと思う。海に飛び込んだ時、最初は苦しかったから多分その時はまだ・・・」

 

「何があったとか、覚えてるか?」

 

「何か、音が聞こえたのは覚えてる。ピキピキって感じかな。・・・何か、心当たりとかある?」

 

「いや、ない。・・・とにかく言えることがあるとすれば、海で何かが起こってるってことだと思う。それがいい事なのか悪い事なのか全然見当がつかないけど」

 

「でも私は、エナを持つことができて嬉しいよ。・・・やっと、同じ景色が見れるんだから」

 

「それは・・・そうだな」

 

 きっと美海は一人だけ取り残されたような気になっていたのだろう。それはそうだ。美海にとって大切な人は、大概皆エナを持っていたのだから。同じ土俵に立てて嬉しくないはずなんて、ない。

 

「とにかく、後で病院に行くか。診断と言うか、状態の確認も兼ねて」

 

「うん、そうだね」

 

「さてと・・・んじゃそろそろ・・・あれ?」

 

 立ち上がろうとしたとき、足に急に力が入らなくなった。それだけではない。身体から体温が徐々に奪われていく感覚が俺を襲ってくる。めまい、吐き気、底知れない気持ち悪さ、胸の痛み、明らかに異常だ。

 

「遥・・・!?」

 

 そして、体が倒れてようやく思い出す。今、海に入ってはいけない状況だったという事を・・・。

 

 あー・・・死んだなこりゃ。

 

「悪い・・・先に病院行くの・・・俺だわ・・・」

 

 情けない言葉をその場に残して、俺は目を閉じ、そのまま意識を失った・・・。

 

 




『今日の座談会コーナー』

そうは言っても、後半にはいってからまだ一度も前作と違う展開を書いてませんね・・・。それじゃリメイクしている意味がないだろうと。
まあ、全ての始動パートなので焦る必要はないと思いますが。
にしても、前作よりも主人公の遥が感情的に行動するようになったと思います。流石に冷淡な機械人間じゃ面白みがないですしね。変に最強設定もとりあえず変えておきました。


といったところで、今回はこの辺で。
感想、評価等お待ちしております。

また会おうね(定期)
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