「気マッマ〜ニッ♪」
「オサッン〜ポッ♪」
雨上がり。北方棲姫、港湾棲姫が手を繋いで歌を歌いながら歩いている。買い物へ行くのだ。
「アッ。」
「?」
しかし、すぐに港湾棲姫が立ち止まり、北方棲姫が見る。
「山田サンノ 草ガハミ出テル。」
「ホントナノ!」
山田さん(隣のおばちゃん)の家から葉っぱが玄関先まで出ている。
ピンポーン
『はーい。』
「コ、コンニチハ。隣ノ港湾ト…。」
「ホッポナノ!」
『はーい。』
ガチャリ
「コンニチハ。」
「コンニチハ!」
「はい、こんにちは。」
北方棲姫たちの挨拶に、山田さんが笑顔で応える。
「アノ、コノ草ガ玄関外マデ…。」
「あ〜、笹の葉がね。知らせてくれてどうもありがとう。」
山田さんは玄関外まで出ていた笹の葉の位置をずらした。
「今日は七夕だからね〜。」
「七夕?」
「タナバタ?」
「え?あっ、そうだ、港湾さんたちは知らないんだったわね。七夕って言うのは、おりひめさまとひこぼしさまが天の川を渡って、1年に1度だけ出会える日のことよ〜。」
「オリヒメ?」
「ニボシ?」
2人は首を傾げるばかりだ。そこに…。
「ナンダ、マダ出発シテ…コンニチハ。」
「レ級ちゃん、こんにちは。」
レ級が家から出ていた。
「レ級ナノ!今日ハ、オ姫様トニボシガ年ニ一度ダケ会エル日ミタイナノ!」
「ニボシ?オ姫様?」
レ級も聞いて首を傾げた。
「七夕…。」
「アァ、七夕カ。」
「知ッテルノ!?」
「七夕ハ昔カラノ伝統デ、織姫ト彦星ガ 天ノ川ヲ渡ッテ 会エル日ダロ?」
「あら、レ級ちゃん知ってるのね。」
レ級がナチュラルに話し、驚く2人。
「今日港湾棲姫ガ、丸ヲツケタ セール品ノ広告ニ 『七夕』ト書イテアルゾ…。」
「アッ、本当…。」
港湾棲姫が丸がついてある広告の紙を見て納得した。
「ソレト、ソロソロ山田サンノ 迷惑ダ。買イ物行クゾ。」
「あら〜。迷惑だなんて…。」
「サッキカラ、洗濯機ガピーピー言ッテルカラ。」
「あら、なら先に失礼するわね。また話しましょう。」
「サヨナラナノ!」
「さようなら。」
山田さんは最後まで、ドアを閉める直前まで手を振ってくれていた。
「…レ級来ルノ?」
「マタ寄リ道シナイヨウニナ。」
「一緒ナノ!」
北方棲姫が嬉しそうに、港湾棲姫とレ級を見る。
「買イ物…。」
「!」
家の扉から覗いている何者かが…。
「駆逐棲姫モ来ルカ?」
「…良イノカ?」
「断ルワケナイダロ…。」
駆逐棲姫が港湾棲姫たちに混ざる。
「駆逐オネーチャンモナノ!」
北方棲姫が嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
「ソロソロ本気デ行クゾ。マタ誰カ来タラ、ホッポガ飛ブカモシレナイ。」
「ソレハナイト思ウケド…。結構時間ガ カカッチャッタカラ行ク。」
港湾棲姫たちはお馴染みのスーパーまで歩いて行く。北方棲姫は港湾棲姫と駆逐棲姫の手を繋いで、レ級は港湾棲姫の隣を歩いている。
「アッ、テコトハ、バイト先モ笹ノ葉飾ッテンノカ…。」
「ソウ思ッテミレバ、レ級ノバイト先ッテ ドコヨ。」
「ンー…。内緒。」
「駆逐オネーチャンノ手、柔ラカイノ!」
「……。」
それぞれ話しながら、赤くなりながら歩く。段差もあったが、北方棲姫は2人の手を繋いでいたため、夢だった大きなジャンプが出来た。駆逐棲姫はフワフワ浮いているため、転ぶこともない。そのうちに商店街に入った。
「コノ先ガ スーパー。」
「品揃エハ ココデモ良イガナ。」
「沢山オ店アルノ!」
「……。」
4人が歩いていると…。
「おっ!港湾ちゃん!寄ってかないか!いい品入ったんだぜ〜。」
「イイ品…?」
「オット、早速引キ寄セラレテルナ…。」
港湾棲姫が肉屋のおっちゃんに呼ばれて、吸い寄せられるように行く。
「どう?少し高級な鳥もも肉20%オフ。七夕だし。」
「少シ高イ…。」
「おおっと、ならなら大特価!30%オフなんてどうよ?」
「ウーン…。」
港湾棲姫が悩んでいると、ふと何かを感じたレ級。
「…悪イ顔シテルノ…。」
「ホントダ…。」
北方棲姫と駆逐棲姫がレ級の顔を見て呟く。
「港湾棲姫、早ク行コウ。セール品買エナクナルゾ。」
「アッ、ソウネ…。」
港湾棲姫が行こうとしたが…。
「おっと、待ちな。七夕なんで景気も良くなきゃ、出血大サービスだ。40%オフにしても良いぞ!」
「40%…。」
「イイヤ港湾棲姫、少シ品質ハ劣ルガ スーパーノ10%オフノガ全然安イ。」
「頑固だねそっちのお方…。財布の紐が硬いねぇ…。仕方ない!ご、ご…。」
「ゴ?」
「50%オフ!」
「半額!?」
「オー!…テ、怪シ過ギルダロ…。訳有リダナ…。」
レ級は下げさせたにも関わらず、そんな感想を述べる。
「…港湾さんたち、実はこれ前から出しているんだけど全く売れなくて…。カミさんに怒られちまってな〜。さっさと値段下げて売れ!ってさ〜。買ってくれなきゃ実質利益は大赤字だし…。」
「…消費期限大丈夫ナノ…?」
「…なぁに、あと一週間は持つさ。要冷蔵だけど。…頼む!港湾さん!今度きた時何か割引するから!港湾さん以外に買ってくれそうなお客さんいないんだ!」
「マァ半額ト言エド、600g2500円ハ高イカラナ…。」
レ級も難しい顔して悩んでいると。
「買イマス。」
港湾棲姫が出してくれた。
「港湾…イイノカ…?」
「港湾ちゃん、本当に大丈夫なのかい…?」
「エエ。」
「すまんなぁ…。」
肉屋のおっちゃんが申し訳なさそうにして、港湾棲姫は笑顔で買ってあげた。北方棲姫がそれを見ていて、微笑んでいる。北方棲姫が港湾棲姫を他の者より慕っているのは、そういうところなのだろうと駆逐棲姫は実感した。
「ヨク来テイルノカ?」
「エエ。一週間ニ4回以上。」
「オ得意様ッテ、訳カ。ソレニ目立ツシナ。」
港湾棲姫とレ級が話しながら歩く。人々が笑顔で挨拶してくれたり、名前覚えてくれているところを少し嬉しく思う港湾棲姫と北方棲姫。そのうちに、スーパーのセール品より安くしてもらえたり、話し合ったりして買うはずだったものをここで買って行く。
「結局、スーパージャ ナクナッタナ。」
「ウン。」
港湾棲姫は本当にスーパーへ行く必要が無いくらい買いものをした。もちろん、北方棲姫のお菓子も含めて。
「帰ルノ?」
「ウン。」
「帰ルノ!」
そう言って、歩いていると…。
「ワッ…。」
「大キイノ!」
大きな笹の葉が目に入る。短冊が沢山吊るしてあった。
「誰でもご自由にどうぞ〜。」
笹の葉近くにいた、管理しているような人が北方棲姫にペンと短冊を渡す。
「ノ?」
「これに願い事を書いて、笹の葉に吊るすんですよ〜。あっ、お名前も書いてね〜。」
「ノノ?」
北方棲姫は管理している人に教えられて、用意されていた折りたたみ式机で書いている。
「出来タノ!」
北方棲姫がそれを掲げる。
『皆ンナト、ズーット一緒ニ仲良ク ナリマスヨウニナノ! ホッポ』
書いてある文字を見て、管理している人まで微笑んだ。しかし、その短冊に『ゼロ オイテケ』の絵が書いてあるあたり、どっちが願いなのか…。
「なら、その願いが必ず叶うように、なるべく高いところに吊るしましょう。」
「ホッポ。」
「オネーチャン!」
北方棲姫は港湾棲姫に持ち上げられて、高いところの笹を手に取る。
「…大丈夫?」
「大丈夫ナノ!」
吊るし終わる北方棲姫。
「ありがとうございま〜す!」
「コチラコソ。」
そうして、港湾棲姫たちはその場から去った。管理している人が笑顔で軽く手を振ってくれていた。
「七夕…。」
「?」
家に帰ってから早々、港湾棲姫が呟く。
「七夕…。」
「ヤリタイノカ?」
「ソ、ソンナワケナイ…。」
「本当カ?」
「……ヤリタイ。」
港湾棲姫が笹のことを考えている。
「…オネーチャン、七夕ヤリタイミタイナノ…。」
「ソウダナ…。」
襖からちょこんと、港湾棲姫のため息と呟きを聞く2人。
「困ッタ時ノ猫サンナノ。」
北方棲姫は鎮守府に電話をかけようとしたが…。
「……。」
『ホッポ、電話ハ詐欺トカ危ナイカラ、使ッチャダメ。』
北方棲姫は電話機を見たまま動かない。姉の約束を守っている。
「…ドウシタ?」
「鷺トカ危ナイカラ、使エナイノ…。」
「鷺?出テクルノカ?」
「…分カラナイノ…。」
そんなことを話していたら…。
ピンポーン
『ハーイ。』
「バレチャウノ!行クノ!」
「オ、オォ。」
北方棲姫と駆逐棲姫は電話機から離れた。港湾棲姫が玄関へ行き、扉を開けると…。
「こんにちは。港湾さん。」
「提督?」
鎮守府の提督がいた。後ろに大人の艦娘もおり、大きな笹を持っていた。
「何ノ用…?」
「いや、七夕にちなんで鎮守府で笹を飾って願い事をしようと思ったんですが…。夕張と明石がスペースをめちゃくちゃにしちゃって…。」
「ドウヤッテ?」
「いやなに、七夕を夏祭りと勘違いしていたらしく、花火を作っていたらしいんですよ。」
「ウン。」
「それが引火して大爆発。工廠の屋根が吹っ飛んで、その他諸々破片などが飛んで、スペースと一緒に資材や装備がもうめちゃくちゃ。皆んな無傷の無事でしたけどね!はっはっは!笑うしかないですよ!」
「笑ッテル場合ジャナイ…。」
鎮守府では大惨事が起きたらしい。
「そこで、そんな鎮守府だと縁起が悪いので、ここでやらせてもらおうかと…。」
「クルナ…ト…イッテイル…ノニ…。」
「こんな時だけそのセリフ言わないでください…。あっ、もちろん、港湾さん達も参加して良いですよ。と言うより、招待する予定でしたし。」
「……。」
港湾棲姫が考える。
「…デモ、ホッポヤ他ノ皆ンナガ…。」
港湾棲姫が自分の気持ちを我慢しながら言ったが…。
「七夕ナノ!ヤルノ!」
「ヤル。」
「即答カヨ!他ノ皆ンナドウシタ!?」
北方棲姫が望んだ途端に港湾棲姫が即答した。レ級はそんな支部長にツッコミを入れる。
「あっ、そうだ。色々持ってきたものもありまして…。」
艦娘たちと北方棲姫らが庭に笹を立てる中、提督が持ってきた大きな袋をガサガサ探して港湾棲姫に渡す。
「ソウメン…?」
「七夕には縁起が良いらしくて。あっ、あと皆んなにはあとで渡そうと思うので内緒ですが…。」
「…ゼリー、団子…コンペイトウ?」
「はい。ちなんでいるとか。」
「栄養ガ偏ッテル…。ソンナモノ、夕食トシテ逆ニ体ニ悪イ気ガ…。」
「いいんですよ。今日くらい。そういう日であり、縁起ものです。それが七夕です。」
「…ン。」
港湾棲姫がそう言われて、そうめんを艦娘たちの分も茹でる。とんでもない量だ。
「…ソレニシテモ、鎮守府全員ニシタラ、嫌ニ人数少ナイケド…。」
「だから言ったじゃないですか〜。屋根が吹っ飛んで破片がばら撒かれたと。皆んな片付けですよ。はっはっは。」
「……。…マァ、ソレハソウト手伝ワナクテ良イノ?」
「交代交代で来る予定です。」
「…場所ヲ変エル?」
「いえいえ、変えるって言ったって…何処へですか?」
「鎮守府…。流石ニ家ガ狭イ…。」
港湾棲姫の言った通り、少数だとしても艦娘の数はいかんせん多い。五島支部も人が多くて溢れ返りそうだ。
「でも、流石に鎮守府では…。片付けを手伝ってもらうのも悪いですし…。」
「笹ト短冊ト団子ト金平糖ト素麺ヲ ホッポタチノ分マデ持ッテ来テクレタカラ。」
「港湾さん…。」
そんなこんな話して、鎮守府へ行く支度をしていると…。
ピンポーン
「マタ誰カ…。」
ガララララ…
インターホンが鳴り、港湾棲姫が玄関を開けた。
「姉貴!」
「セイマイ、大キナ声ヲ 出スナ。」
「我々兄弟が、港湾水鬼の従兄弟とやらを見に来たぞ。」
「兄者、もしやこの清楚な感じの者ではないのか?」
「あれ〜?元帥兄弟もここに?」
「アラ〜、港湾水鬼モイルノ〜?」
「コンニチハ。」
「……。」
港湾棲姫は困った顔をする以外ない。扉を開けた途端、北の国の従姉妹と、南の国の姉がいるのだ。しかも、それぞれ戦っている提督付き…。
「港湾さん、なんか騒がしいけど何か…姉ちゃん!?」
「や。会いにきたよ。かわいい弟に。」
「何してんの!?南の方はどうしたの!?てか男いないの!?」
「ははは…。」
女提督はナチュラルに提督の頬をつまみ…。
「最後のは余計だったかな〜。うん〜。」
「いたたたたた!!!千切えうって!」
「良いぞ。女提督。大した余興だ。」
「兄者よ、男のいない女提督には逆効果だと思うぞ。」
「あん…?」
女提督は提督の頬を離した。
「コッチハ、七夕ガ良ク見レルラシイカラナ。」
「七夕ダ!」
「女提督サンノ、男探シ…ジャナカッタ、観光デネ〜。」
「ツイ、憐レニ…。」
港湾棲姫に従姉妹や付き添いたちが言う。しあし港湾棲姫は、後ろで女提督にボコボコにされている筋肉モリモリマッチョ元帥兄弟に気を取られて耳に入ってこない。
「エット…。ツマリ、七夕ヲシニ来タノ?」
「「「ウン。」」」
港湾棲姫はその答えに少し戸惑ったが、それぞれが一応艤装を持っていることに気がつく。
「…シタイナラ、色々準備ガ必要。」
「「「?」」」
「コレヲ片付ケル?」
「ソレダケデ、七夕出来ルノカ?」
「ウン。」
「仕方ナイワネ〜。艦載機ヲ使ウケド、イイカシラ?」
「コチラモ、少シ危険ナ 手ノ艤装ヲ使ッテモ良イデスカ?」
「ウン。」
「我々兄弟も、この大きな瓦礫を一箇所に集めればよいのだな?」
「兄者よ、すぐに終わらせるぞ。」
「ウン。」
「私たちは、小さな破片とかを運んだり、箒で掃けば良いのかな?」
「ウン。」
それぞれが仕事をして、港湾棲姫が頷く。自身たちもレ級たちを引き連れて手伝っている。
「港湾さんも、元帥兄弟さんも、港湾さんの従姉妹さんも、姉さんも、お姉ちゃんも…色々すみません…。」
「「「ありがとうございます!!!」」」
提督は港湾棲姫たちに頭が上がらない。
「今度、港湾さんの家が台風で潰れたら、全力支援しますね!」
「縁起デモナイコト言ワナイ!」
そんなことを話していると…。
「眠イ…。」
「五島沖海底姫サンハ イイノニ…。」
五島沖海底姫まで手伝っている。
「ホッポチャンガ、一緒ニ来テッテ…。」
「一緒ニ七夕ナノ!」
五島沖海底姫は連れ出されたようだ。しかし、北方棲姫が無理矢理頼んだり我儘を言ったわけではない。五島沖海底姫の善意だ。
「ホッポハ、七夕ニ何ヲオ願イスルノ?」
港湾棲姫が聞く。2回目だが、気にしない。
「前ハ、仲良クナルヨウオ願イシタノ。今度ハ…。」
北方棲姫が悩んでいる。そして、答えはすぐに出た。
「友達ガ沢山欲シイノ!」
「……。」
北方棲姫のお願いに港湾棲姫が心底困ったが、その表情を顔に出さないように抑える。港湾棲姫はそれは叶わぬ願いだと分かっている。港湾棲姫自身、北方棲姫に同年代の友達ができて欲しいと考えているが…。叶うとしても、とても難しいのだ。一方、北方棲姫は同年代の友達が皆無に等しい状態で、憧れている。絶対に叶えたい夢でもあるのだ。そのうちに、北方棲姫は他の艦娘たちに呼ばれて、そちら側を手伝う。
「…ヨク耐エタ。」
「少シ…悲シイナ…。」
「ソウネ…。」
レ級、港湾水鬼、港湾夏姫が港湾棲姫に言う。
「叶エサセテアゲタイ…。」
「気持チハ アルンダガナ…。」
「ドウシテモ 心配ヨネ…。」
「…ウン…。」
そんなことを呟くレ級と支部長たち。そんなことを悩んでいる間に片付けが終わった。
「では、皆さんお待ちかねの七夕に入りましょう。」
提督が言い、艦娘たちや提督たち、深海棲艦まで喜ぶ。
「短冊に願い事を書く…前に、そうめんが伸びてしまいそうなので、そちらからいただきましょう。港湾さんが作ってくれたそうめんを。」
提督が言い、艦娘や深海棲艦、提督たちに割り箸とつゆの入った紙椀を渡された。近くのテーブルには薬味などが置いてある。セルフサービスのようで、中心に麺が置いてある感じだ。
「美味シイノ!」
「ツユモ作ッタカラ。」
「栄養価ハ、アマリ良クナサソウ…。」
「マァナ。」
港湾棲姫たちがそうめんをすする。
「…アッ!ソウ思ッテミレバ駆逐棲姫、明日帰ルンデショウ?荷物ノ支度ハ出来タノ?」
「……。」
港湾棲姫が聞き、駆逐棲姫の手が止まる。
「ノ!?」
「…オイ、初耳ダゾ。」
突然知らされた北方棲姫とレ級。
「エ…言ッテナカッタノ…?」
「…ウン…。」
駆逐棲姫は別れが悲しくなると踏んで、わざと言わなかったのだ。
「ソレニシタッテ、ソノママ黙ッテ行クノハ 酷イダロ…。」
「別レ会スルノ!」
レ級と北方棲姫に言われるが、首を振る駆逐棲姫。そして、思い出しながら呟く…。
「レ級…今マデ、梅雨ノ間ダッタガ 楽シカッタゾ…。」
『カビダー!』
『カビ祭リナノ!』
『カビ…。』
「ソンナ時モアッタナ…。」
「カビナノ…。」
「ホッポチャン…。「オネーチャン」トシテ、慕ッテクレテ本当ニ嬉シカッタ…。」
『オッキイノ!』
『デカイッテ!デカスギルッテ!』
『あらあら〜。』
「アノ時ハ驚イタナ…。」
「カタツムリサン…。」
「港湾棲姫ニハ、ピクニックデ色々助ケテモラッタ…。」
『ホラ、ココツイテイルワ。』
『手ガ脂デ汚レタラ、ビニール袋デ拭クノガ 良イノヨ。』
『ホッポ…。』
「ソンナ時モアッタナ…。豆知識ダナ…。」
「アッタノ…。」
「アト、支部デ枕投ゲ大会シタコトモ…。」
「アー、ソンナ時モ…イヤ!ネーヨ!」
「捏造ナノ!」
「ソレカラ、海デ溺レカケタコトモ…。」
『ギャーー!』
『オニギリガ波ニ乗ッテルー!』
『リヴァイアサンダー!』
「…アァ、スマン。最後ノハ違ッタ。」
((最後ノ回想ハ一体…。))
「トニカク、本当ニアリガトウ…。」
駆逐棲姫は丁寧にお辞儀をした。
「オイ、ソレデイイノカヨ…。」
しかし、レ級は認めないようだ。
「…元々、ソウイウ約束ダッタ…。」
「ソウ…。レ級、ワガママヲ言ワナイデ…。」
駆逐棲姫が悲しそうな顔をして、港湾棲姫がレ級を宥める。
「レ級…。」
北方棲姫もレ級を見た。
「…少シ熱クナッタ。スマン。ソウダッタナ…突然デ、少シ驚イタダケダ。駆逐棲姫ノ、感謝ノ気持チハ本当ダシナ。」
レ級が冷静になった。そこに…。
「おや?港湾さんたち、何してるんですか?」
「何ッテ、ソウメンヲ…。」
「もう短冊書いていますけど…。」
「早ク言イナサイ。ト言ウヨリ、残ッタソウメン…。」
「あぁ、大丈夫です。冷蔵しておくつもりですし。しっかり食べますよ。港湾さんたちは戦時中のことを知っていますからね。無駄にはしません。」
「ソウ…。良カッタ。」
提督が深海棲艦たちに短冊を渡す。
「願い事を書いて、あそこにある笹に吊るしてください。」
「大キイ…。」
「結構デカいですよね。後輩の提督から届いたんです。」
「ヘェ〜。」
結構大きい。商店街のものより二回りほど大きい。
「書ケタノ。」
「書ケタ。」
北方棲姫と駆逐棲姫が短冊を持ってきた。
「なら、それぞれ高いところに吊るしてくださいね。」
2人がなるべく高いところに吊るす。
「…私ガ去ッテモ、ドウカココノ支部ガ元気デイルヨウニ…。」
「駆逐棲姫さん、声に出てますよ…。と言うより、とても良い願い事ですね。ほっぽちゃんは…。」
「見セラレナイノ!」
「お、おう。分かった。見ないよ。」
北方棲姫の願い事を見ようとしたが、拒否された。それから、深海棲艦ほぼ全員から見るのを拒否された。
「我々は強くなることだ。」
「流石兄者。俺もだ。」
「男に出会うこと…。」
「港湾さんたちと、こんな関係がずっと続きますように…。」
提督たちが笹に短冊を吊るして行く。艦娘たちも全て短冊を吊るしたようだ。
「さ、吊るし終わった人からこれを受け取って。」
「こ、これは…!ぜりー?と金平糖と団子!」
「美味しそう!」
提督たちに群がる艦娘たち。港湾棲姫たちは事前に渡されているため、座る場所を探すだけだが。
「ココニシマショウ。」
「ノ!」
港湾棲姫たちが鎮守府の外階段の場所に座り、天の川を見る。
「七夕ニ何ヲオ願イシタノ?」
港湾棲姫が聞く。
「百戦錬磨ニナルコトダ。」
「レ級ハ、モウ叶ッテイルワネ…。」
「皆ンナ、健康デイルコト。」
「戦艦棲姫ハ、大人ネ。」
「新作ゲーム一式…。」
「集積地棲姫ハ、夢ガナイワネ…。」
「痛クナイ、楽シイコトガ続キマスヨウニ。」
「防空棲姫モ、良イ願イネ。」
「従姉妹ト姉ト、ズットコンナ関係ガ続クヨウニ。」
「姉貴トモット遊ビタイ。」
「港湾水鬼ト棲妹チャンノ願イ、叶ウトイイワネ。ウウン、叶ウ。キット。」
「提督サンガ、早ク結婚デキマスヨウニ…。」
「流石ニ可哀想デスシ…。コチラハ、緩イ関係ガ 人間タチト続クヨウニ…。」
「姉サンタチモ、スゴイワネ。」
港湾棲姫が一人一人の願いを聞いて、そんな感想を述べる。天の川を見ながらそんなことを言っていると…。
「流レ星ナノ!」
「本当ネ。」
大きな流れ星が通過した。
「いえ、あれは彗星ですね。珍しい…。」
「提督!?」
いつの間にか、提督が後ろから天の川を眺めていた。
「今来たばかりですけどね。天の川に彗星って、すごいですね…。」
そんなことを言っていると…。
「…イヤ、アレ落チテキテナイ?」
「エ?」
段々と近づいてくる。
「イヤ!来テルッテ!」
「大災害!」
そんなことを言っているうちに、ものすごく近づき…。
ガサガサ!
「七夕ニ!」
笹の葉に衝突した。
「あ、あれは…。……。ね、願いを叶える特別な彗星ねー。」
女提督が言う。しどろもどろだが…。
「つまり、願いを叶えるのか?」
「兄者よ、口を挟まない方が…。」
元帥兄弟は少し遠くにいた。
「……?」
「つまり、短冊の願いが叶うんですよ。」
「断言…。」
港湾棲姫はなんとなく気づいたが、レ級たちはてんやわんやしている。
「さ、ほっぽちゃんの願いは?」
「ドンナオ願イデモ、叶ウノ?」
「叶う。」
「ホッポハ…。」
少し考えた後。
「駆逐オネーチャント、一緒ニイタイ!」
「!」
北方棲姫が大声でお願いした。駆逐棲姫はその言葉を聞いて、嬉しそうな顔をして、少し泣いていた。北方棲姫は、自身の友達が欲しいという最大の願いを捨てて、駆逐棲姫をとったのだ。それほど、駆逐棲姫が大切な存在であるということなのだ。すると…。
「アッ、怒和島出張所カラ メール…。」
港湾棲姫に送られた一通のメール。
「エーット、駆逐棲姫宛ネ。」
「?」
「…言ッテイイノカ悪イノカ…。」
「?」
「言ウワネ…。『駆逐棲姫ガ、居ナクテモ コッチハ人員ガ回リソウ。梅雨時期ハ軽イ鬱ニナルカラ、逆ニ面倒カモシレナイ。ダカラ、ソッチニ移籍サセタイ。』ダッテ。」
それを聞いて、会場が静まる。駆逐棲姫、まさかのいらない子宣言。
「……。」
駆逐棲姫は形容し難い顔になった。
「「「良カッタネ(ノ)!」」」
「ソレハソレデ悲シイ!」
レ級、北方棲姫を含めた深海棲艦全員が言うが、駆逐棲姫は納得できなさそうな顔。
「叶ッタノ!叶ッタノ!」
「ほらね。叶ったでしょ?」
提督が優しい笑顔で言う。しかし、港湾棲姫は分かっていた。
「…何モ嘘ハ、ツイテイナイノネ。」
「?」
すると…。
「北方棲姫ちゃん。」
「ノ?」
艦娘が北方棲姫に話しかける。
「お願いが叶って良かったのです!」
「良かったじゃない!」
「ウン!」
「ハラショー。」
「ハラショーナノ!」
「友達より家族をとるなんて、立派なレディーよ。」
「アリガトウナノ!」
北方棲姫と、幼い艦娘たちが仲良さそうに話す。
「…ツイデニ、港湾棲姫ノオ願イマデ叶ッテイルナ。」
「ウン。」
それらを見て、レ級が言い港湾棲姫が頷く。港湾棲姫の願いは、北方棲姫に友達が出来ることだ。
「さ!皆んなで団子とか食べましょう!まだまだ沢山ありますから!港湾さんも手伝ってくれましたし!」
「ウン。」
「美味シイノ!」
「美味だな。弟者よ。」
「こんな風に、男も見つけられたらなぁ…。」
「喉ヲ詰マラセナイデクダサイネ。」
「上手イ!」
「美味しいのです!」
皆が美味しそうに食べている。そんな中…。
「…隼鷹、良くやった。」
「提督も、怒和島の提督が後輩なんてね〜。態々電話してお願いしてたの知ってるよ〜?」
「見られていたか。でも、隼鷹の『彗星』もあんなに発光させて、上手く笹に当たってくれて助かった。」
「良いって別にさ。…でも、そこまでお礼をしたいなら…。」
「分かってる。明日休みだから、今日は呑みまくれ。」
「うひょー!」
提督と艦娘が話していた。その言葉は港湾棲姫のみに聞こえていて、港湾棲姫は心底、提督を良い人だと思っていた。
その日の天の川は、毎年見るものより、より一層幻想的で綺麗だった。提督も深海棲艦も艦娘も、その天の川を忘れることはないだろう。願いの叶った奇跡を。
『深海棲艦 五島支部』は今日も平和です。
勢揃い。
この、こみあげて来る吐き気…間違いない、これは…シリアスの匂い!
次回は、夏に関するものかもしれません。
誰を登場させたいか
-
集積地棲姫
-
戦艦棲姫
-
駆逐棲姫
-
南方棲姫
-
空母棲姫
-
軽巡棲姫
-
重巡棲姫
-
水母棲姫
-
潜水棲姫
-
離島棲姫
-
船渠棲姫
-
護衛棲姫
-
防空棲姫
-
泊地棲姫
-
飛行場姫
-
その他