深海棲艦のゆるい日常   作:とある組織の生体兵器

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拾玖話 氷ノ味ナノ

ガーーーー…!

 

「ノー!」

 

ここは『深海棲艦 五島支部』。北方棲姫がキッチンで、目の前の機械を物珍しそうに、ワクワクして動いているところを見ている。

 

「オ?買ッタノカ?」

 

「ウウン。商店街ノ福引デ。」

 

レ級もその機械を見て聞き、港湾棲姫が嬉しそうに答える。

 

「今年ノ夏ハ、暑クナリソウダカラナ…。」

 

「…一等ノ、エアコンガ欲シカッタケド…。」

 

ここ、五島支部ではエアコンどころか扇風機すらない。あるのはうちわと扇子だ。

 

「アレハ何等ダ?」

 

「…六等。」

 

「マァマァッテ トコロカ。」

 

「当タルダケ良イ…。」

 

「…欲深ジャナイトコロガ、港湾棲姫ラシイナ…。ダガ、エアコンガ良カッタナ…。」

 

「ウン…。」

 

「ホッポモ、子供ナノニ エアコンノ無イ部屋ダトナ…。出来ルダケ我慢サセタクナイシ…。」

 

「…本部ノ経費削減…。」

 

「ナンダカ、毎年削減サレテルナ…。コノママイクト、ドウナルノカ…。ホッポクライハ、負担シテホシイナ…。」

 

港湾棲姫とレ級が難しい話をしている。そこに…。

 

「レ級!オネーチャン!出来タノ!」

 

北方棲姫がお皿に入っているものを持ってきた。

 

「…シャリシャリシテ、冷タイノ。」

 

「美味シイ?」

 

「ウーン…。」

 

港湾棲姫の問いに、北方棲姫が困った顔をする。

 

「マァ、氷ヲ削ッタダケダカラナ…。」

 

「氷ノ味ナノ…。」

 

「ウーン…。何カ足リナカッタノカシラ…?」

 

港湾棲姫が説明書を読む。が、そんなことは一言も書かれていない。当然と言えば当然だが…。

 

「…!閃イタノ!」

 

「「?」」

 

北方棲姫が何か閃いた。

 

「ペットボトルノ、飲ミ物ノ中ニ 入レルノ!」

 

「アー、ナルホド。氷ガ大キクテ入ラナイカラナ。」

 

「手デモ砕ケルケド、飛ビ散ルカラ…。」

 

三人が納得してしまう。そこに…。

 

「アレ?カキ氷機?」

 

「駆逐オネーチャン!」

 

駆逐棲姫が2階から降りてくる。

 

「ドウ?部屋…。少シ狭クテゴメンナサイネ…。」

 

「エ?ウウン。ソンナ事ナイ。トッテモ嬉シイ。」

 

あの七夕の日以来、こちらに所属になった元『怒和島出張所』の駆逐棲姫。

 

「コレデ、ペットボトルノ氷ハ何トカナルノ!」

 

「ペットボトル…?」

 

「ホッポガ天才的ニ考エタンダ。」

 

「エ?何ヲ…?」

 

駆逐棲姫は3人から事情を聞く。

 

「…多分、シロップヲ カケテナイカラ…。」

 

「「「シロップ?」」」

 

三人が首を傾げる。駆逐棲姫は丁寧に説明してあげた。

 

「時々、テレビトカデ…。…ブラウン管ダッタ…。」

 

駆逐棲姫がブラウン管TVをみる。地デジ放送などに繋いでない、アナログしか映らないもの…。テレビをつけて、映るのは砂嵐だ。

 

「ソウ思ッテ見レバ、エアコンハ?」

 

「オ金ガ無クテ…。」

 

「……。」

 

駆逐棲姫がその言葉を聞いて、真面目な顔をした。

 

「組織ノ給付金…。」

 

「削減デナ…。」

 

「削減…。」

 

駆逐棲姫が少し悲しそうな顔をした。そして、帽子の中をゴソゴソ探して…。

 

「コレ、少ナイケド。」

 

「エ…?」

 

駆逐棲姫から渡されたのは、2万円。駆逐棲姫のへそくりだろう。港湾棲姫は手を伸ばし…。

 

「…ウウン。受ケ取レナイ。」

 

その駆逐棲姫の持っていたお金に手を添えて、首を横に振る。

 

「エ?ドウシテ…?」

 

「ダッテ、駆逐棲姫ノモノ。貴女ガ貯メタンダカラ、貴女ノ好キニ使ッテ。ソノタメニ、貯メタンデショウ?」

 

「……。」

 

港湾棲姫が笑顔で言い、駆逐棲姫が驚いたような顔をしていた。

 

「ソレニ気持チハ嬉シイケド、ソコマデ落チブレテナイ。」

 

「ソウダ。港湾棲姫ハ、コウ見エテ立派ナ支部長ダ。ドンナ時モ、ドンナ切羽詰マッタ状況デモ乗リ越エテ来テンダ。」

 

「オネーチャンハ スゴイノ!」

 

レ級と北方棲姫も港湾棲姫を信頼しているのが分かる。

 

「ネ?」

 

「…ウン。」

 

駆逐棲姫はへそくりをまた帽子の中に入れた。

 

「シロップ…。」

 

「……。」

 

北方棲姫が呟くのを見て、駆逐棲姫は何やら台所へ行く。

 

「…砂糖ト水、アト鍋使ッテイイ?」

 

「イイケド…。何スルノ?」

 

「内緒。」

 

駆逐棲姫は砂糖と水を混ぜて、鍋で煮る。

 

「出来タ。」

 

駆逐棲姫がその煮た液体を別容器に入れて、しばらく待つ。

 

「何シテルノ?」

 

「シロップ。」

 

北方棲姫に答えて、かき氷の上にかける。

 

「食ベテミテ。」

 

「?」

 

シャリシャリ…

 

「!」

 

北方棲姫が一口食べて、目を輝かせた。

 

「美味シイノ!」

 

「良カッタ。」

 

喜ぶ北方棲姫を見て、駆逐棲姫が笑顔になる。

 

「……。」

 

「結果ハ良イナラ、万々歳ダロ…。怖イゾ…。ソレニ家ガ傷ツク!」

 

レ級が、その様子を見ていた港湾棲姫に言う。無意識に手の力が強まり、鉤爪が柱に食い込んでいた。

 

「アッ、港湾オ姉サン、食ベ…アッ!」

 

「オネ…!」

 

駆逐棲姫が無意識に港湾棲姫をお姉さんと言ってしまった。

 

「べ、別ニ深イ意味ハナイ。ソレヨリ、失礼ナコトヲ…。前ノ支部ノクセデ…。」

 

「ウウン!イイ!オ姉サンデイイ!」

 

「ノ!?オネーチャン!」

 

駆逐棲姫の言葉にすごい反応をした港湾棲姫。先程の顔が嘘のように輝いている。北方棲姫は取り乱している港湾棲姫を止めようとしているが…。

 

「…賑ヤカダナ。」

 

レ級はそんな三人を遠くからほのぼの眺めている。平和の証拠である。

 

「ト、トニカク食ベルカ!?」

 

「顔ヲ赤クシテ可愛イ…。」

 

「可愛イノ!」

 

「〜!」

 

港湾棲姫と北方棲姫が言って顔を隠す駆逐棲姫。

 

「食ベルワ。」

 

「食ベテルノ。」

 

「アッ、頼ム。」

 

「ワ、ワカッタ…。」

 

沢山の氷を使って、駆逐棲姫が港湾棲姫とレ級の2人の分を作った。そして…。

 

「「「オイシ〜!」」」

 

4人で仲良く縁側に座って食べる。

 

「オッ、カキ氷。」

 

そこに、集積地棲姫がやってきた。

 

「ドレドレ…。…氷ガナイ…。」

 

集積地棲姫がシュンとする。しかし…。

 

「集積地棲姫ナノ。」

 

「ン…?ホッポカ。美味イカ〜?ソレ。」

 

「トッテモ美味シイノ!」

 

「ソッカ。」

 

北方棲姫に笑顔で返している。北方棲姫に罪悪感を持たせたくないのだろう。

 

「…ハァ…。仕方ナイワネ。」

 

港湾棲姫が立ち上がり、冷凍庫の中をガサガサ探した。

 

「コレ。」

 

「コレ?」

 

港湾棲姫が、冷凍庫から箱を渡す。

 

「従姉妹ガ送ッテキタ、純氷。向コウデハ、冬ニ作ッテ夏ニ売ッタリシテ資金ヲ稼イデイルカラ。…トテモ美味シイカラ、大事ニ使ッテ…。」

 

「オ、オウ…。」

 

集積地棲姫は慎重に氷を削り取った。

 

「コレクライデイイヤ…。」

 

純氷を削り取ったが、僅かしか作らなかった。

 

「ン〜。ウマイ。」

 

集積地棲姫はシロップをかけて、美味しそうな、涼しそうな顔をした。

今年の夏は暑くなりそうです。

『深海棲艦 五島支部』は今日も平和です。

 


おまけ 1

 

「カビ…。」

 

北方棲姫がカビのことを考えている。現在、集積地棲姫が絶賛皿洗い中だ。

 

「ホッポ…。」

 

港湾棲姫がその様子を見ている。

 

「ヨソ見シナガラダト、失敗スルゾ。」

 

「アラ、ゴメンナサイ。」

 

レ級に言われて、キッチンで作業を開始する。港湾棲姫は毎度お馴染みの赤いチェック柄のエプロンを着て、レ級は黒い迷彩柄のエプロンを着ている。

 

「コレハスピード勝負ダカラナ。」

 

「ウン。」

 

2人並んでキッチンに立っている。…正確には、隣に皿洗いしている集積地棲姫もいるが。

 

「…水ガ飛ンデルカラ、モウ少シ勢イヲ 下ゲテクレ。」

 

「……。」

 

返事はしないが、従う。

 

「…後デオヤツニスルカラ、我慢シロ。」

 

「…ワカッタ。」

 

レ級が言い、集積地棲姫が素直に頷いた。

 

「…随分素直ネ。ドウシタノ?」

 

「…言ウコトヲ聞ケバ、早ク美味シク作レンダロ?」

 

「…マァ…。」

 

「ホッポガ ガッカリシテイル…。ナントカシテアゲタイ。」

 

集積地棲姫が言った。

 

「…貴方モ、素ッ気ナイフリシテ、心配シテイルノネ。」

 

「…マァナ…。」

 

港湾棲姫が少し笑顔で言い、集積地棲姫が小声で答えた。

 

「ソンナコンナデ、下準備ハ出来タゾ。」

 

「アリガトウ。」

 

港湾棲姫は出来たものをオーブンで焼く。

 

「コレデ、後ハ待ツダケ。」

 

港湾棲姫がそう言って五分後…。

 

ジー…

 

「ドウシタノ?集積地棲姫。」

 

出来上がるにはまだ早すぎる時間。

 

「……。」

 

「ウン?」

 

ブツブツ集積地棲姫が呟いていることに気づき、耳を傾けてしまった。

 

「熱イ…。燃エル…。ギャァァァ…。燃エル…。熱イ…。集メタノニ…。膨ラム…。」

 

「……。」

 

中に入っているものの気持ちになってブツブツ呟いていたのだ。港湾棲姫は集積地棲姫の抱えている闇の一部を見てしまった気分になり、すぐさまどこかへ行った。

 


 

「ホッポ。」

 

「ノ…?」

 

港湾棲姫が北方棲姫を笑顔で呼ぶ。

 

「オヤツノ時間。」

 

「…ノン…。」

 

北方棲姫がテーブルの椅子に座り、シュンとしていたが…。

 

「ハイッ。ホッポノ大好キナ『クッキー』。」

 

「!」

 

目の前に焼き上がりのクッキーが。北方棲姫の大好物であり、零戦の形(勝手に北方棲姫がそう思い込んでいるだけ)をしているものが沢山あった。

 

「食ベテイイノ…?」

 

「ウン。ソノタメニ焼イタノ。」

 

「イタダキマス!」

 

北方棲姫はなるべくほんのり温かいクッキーを手に取り、食べる。

 

「美味シイノ…!美味シイノ…!」

 

目を輝かせて一口噛み、目を閉じて美味しそうに頬張っている。

 

「幸セソウ。」

 

「食べテイイカ?」

 

「モチロン。集積地棲姫モ、食べテイイノヨ。」

 

「ナ、ナラ…。」

 

サクサク…

 

港湾棲姫たちがクッキーを食べる。

 

「…本当ニ美味シイ…ナンデダ…?」

 

「タダノクッキート違ウ…。甘イ…。」

 

レ級と集積地棲姫が食べて、いつもより甘く、美味しく感じる。

 

「ソレハ、ホッポノタメニ色々シテクレタカラヨ。」

 

「…ナンカ入レタカ?」

 

「イイエ。何モ。ホッポノタメニシテクレタカラ、友情デ美味シク感ジルダケ。」

 

「ソウナノカ…?」

 

「ウン。」

 

「…友情…カ。」

 

集積地棲姫とレ級が移動して考えていると、北方棲姫が嬉しそうに2人に話しかけていた。まぁ、レ級も集積地棲姫も幸せならそれで良いかと思っていたのだった。

 

「…砂糖ヲ 多メニ入レテ、水ヲ少ナクシタ?」

 

「シー。」

 

しかし、戦艦棲姫に1発で見抜かれた。港湾棲姫は内緒にするように、口に人差し指を当てて悪戯な笑みをこぼした。

『深海棲艦 五島支部』はいつも平和です。




遅くなってすみません…。
コメディはシリアスに勝る…。
次回は、夏真っ盛りです。

誰を登場させたいか

  • 集積地棲姫
  • 戦艦棲姫
  • 駆逐棲姫
  • 南方棲姫
  • 空母棲姫
  • 軽巡棲姫
  • 重巡棲姫
  • 水母棲姫
  • 潜水棲姫
  • 離島棲姫
  • 船渠棲姫
  • 護衛棲姫
  • 防空棲姫
  • 泊地棲姫
  • 飛行場姫
  • その他
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