ドンドン!
ピーピー!
「オー!」
鎮守府の外まで聞こえる賑やかどんちゃん騒ぎ。お祭りだ。最近の流行り病のせいで、五島の地元民による神社のお祭りがなくなってしまったから、鎮守府の艦娘と深海棲艦だけなのだ。
「あのー…。提督なんすけど…。ちょ、閉め出すのヤメテ…。ねぇ、聞いてる?」
そう、だけなのだ。
「えー。だって、提督さん男っぽい。ここは、女の子だけでやるお祭りっぽい。」
「男っぽいんじゃなくて、男なの。でも、心は乙女よ。」
「気持ち悪いっぽい…。」
「どうすりゃいいんだ…。」
提督が閉め出されている所を、港湾棲姫たちが見て、なんとも形容しがたい顔をしている。
「オネーチャン、ナンカ可哀想ナノ…。」
「ソウダナ…。捨テラレタ犬ミタイダ…。」
「惨メスギル…。」
本来なら敵である、深海棲艦たちに同情される。
「ホッポ、ドウシタイ?」
「仲良クシタイノ。」
「ウン。分カッタ。」
北方棲姫が答え、港湾棲姫が艦娘と話をする。
「なら、提督さん一名、特別に入れてあげるっぽーい!」
「ありがとうございます…。港湾さん…。」
「オ礼ハホッポニ。…トイウヨリ、イツモコンナナノ…?革命起キテナイ…?」
「いえいえ、そんな風にからかいあえるほど、仲が良いんですよ。上司と部下では無く、あくまでも友人的な扱いです。」
提督が苦笑いして、港湾棲姫たちが疑う顔をした。
「屋台…オ祭リ…。」
「屋台カ。別名、ボッタクリノ店。」
「集積地棲姫ハ、ドウシテソンナニ心ガ荒ンデルノ…?」
艦娘が屋台をやっている。まぁ、値段は少々張っているので少し高い。北方棲姫はワクワクして、レ級も少し楽しみたそうな顔だ。集積地棲姫はいかにも面倒そうな顔をしている。無理矢理連れてこられたのだ。
「光ッテルノ…!イイ匂イガスルノ…!」
北方棲姫はお祭りで目を輝かせている。まぁ、屋台も客も艦娘だけだが…。
「先月浜茶屋で金を取られたのに、また取られるのか…。」
「絞リ取ル気ネ…。」
提督は財布の中身を見る。
「…この先3日間飲まず食わずで…。…行けるか…!?」
「…ソコマデ落チブレテルノ…!?」
港湾棲姫は、提督の発言に驚愕した。
「オネーチャン!タコ焼キ!タコ焼キ!」
「オ、落チ着キナサイ。ホッポ。」
港湾棲姫の手をぐいぐい引っ張る北方棲姫。
「いらっしゃーい。て、ほっぽちゃんやんけ。」
「タコ焼キ!タコ焼キ!」
「アッ、ホッポ、払ウカラ…。二ツ。…イヤ、ウーン…。」
港湾棲姫が連れてきた人数を見る。
「…五ツ。」
「五つね。」
いつの間にかいない戦艦棲姫と防空棲姫を除いた、集積地棲姫、駆逐棲姫、レ級、北方棲姫、そして自分の分を購入した。
「ほな、熱いうちに食べて〜な。」
「アリガトウ。」
艦娘に熱いたこ焼きを渡されて、配る港湾棲姫。
「あっ!司令はん、うちで食ってく?」
「いや、もう金がない…。黒潮、奢って?」
「儲けがへるやん。」
「辛辣ぅ…。」
「しゃぁない。ちょっと待っとって。」
そうは言いながらも、くれるのだから根は信頼しているのだろう。
「ホッポ、火傷シナイヨウニネ。フーフーシテ。」
「フー!フー!」
「燃エル!燃エテシマウ!」
「チャント冷マサナイカラ…。」
「出来立テハ美味イナ。」
「たこがない…。」
港湾棲姫は北方棲姫に注意をして食べさせ、集積地棲姫は口の中が火傷している。駆逐棲姫はそれを心配して、レ級はたこ焼きの感想を言っている。提督は、どうやらハズレを引いたらしい。
「ところで夕立。ずっと後ろをついてきて、たこ焼き勝手に食べてるけど出店してたんじゃないの…?」
「夕立のお店はこっちっぽい。港湾棲姫さんたちも、来るっぽい。」
艦娘が港湾棲姫たちを案内する。
「あっ、いらっしゃい。提督と…港湾棲姫さんたちだね。」
「時雨、店番ありがとうっぽい。」
艦娘がもう一人の店番をしていた艦娘の隣に座る。
「エット…金魚スクイ…?」
「ヤリタイノ!」
ビニールプールに水が貼ってあり、茶碗と何かをすくうようのポイがある。
「金魚…?それにしては、何もいないけど…。」
「ちっちっち…。夕立は、そんな金魚なんてマンネリ化したもの出さないっぽい。」
「エ?ナラコレハ…。」
「カブトガニすくいだよ。あっ、もちろん国産は天然記念物で絶滅危惧種に指定されているから、外国のだけど…。」
「密猟…。」
水槽で泳いでいるのはカブトガニだ。
※しっかりと正規ルートで購入しています。
「一回百円っぽい。」
「中々高いな…。どれ、やってみよう。」
提督が艦娘にポイを渡される。
「こう見えて、俺は昔金魚すくい得意だったんだ。」
「ダッタ…ネ。」
「ノ…。」
「ここだっ!」
提督が一番小さなカブトガニをすくう。しかし…。
「破ケチャッタノ…。」
「…流石、昔カラ『網破リ』ト言ワレテイルダケハ アルワネ。」
「…もう一回だ。」
「百円っぽい。」
またポイを渡される提督。
「俺は昔、金魚すくい得意だったんだ。」
「モウ聞イタノ…。」
しかし、何度挑戦しても一匹もすくえない。
「…やめよう。これ以上は本当にまずい。」
「やめるっぽい?」
「ああ。それに、気づいてしまってな…。」
「ぽい?」
「そんなに沢山いるのは良いが、飼えるのか?」
「…ぽい?」
「『カブトガニ』ハ成長シキルト、70cmクライニナルミタイダシ…。」
「ソモソモ、飼育スルニモ大変ダシナ。」
「沢山ノ餌ガ必要…。」
「……。」
それを聞いて、艦娘が黙る。もう一人の店番していた艦娘の顔は世話を押し付けられるのではないかと真っ青だ。
「…提督さんにやった分あげるっぽい。6回やったから…12匹っぽい。」
「やめい!そんなにいらないし、飼えない!しかも、一回2匹計算だし…。世話できる数は精々3匹だ!」
艦娘に押し付けられそうになるが、回避する提督。艦娘は焦った顔でこちらを見る。
「ヤリタイノ!スクイタイノ!」
「ホ、ホッポ、コレハ…。」
「ダメ…ナノ…?」
「ウッ…。」
北方棲姫に潤んだ瞳で見つめられる。しかし、港湾棲姫は五島支部の支部長。飼うことにより、レ級たちにも世話を頼むことになってしまうだろう。しかもこれの世話となれば、お金もかかる。それに、そもそも生き物自体飼ってはいけない。上層部になんと説明すれば良いのか…。そして、港湾棲姫は決断した。
「…一回…オ願イ…。」
「港湾棲姫!?」
「ヤッタノ!」
レ級は港湾棲姫に驚き、北方棲姫は喜ぶ。港湾棲姫は北方棲姫の瞳に完敗した。艦娘たちは少しでも減ることに安堵していたが…。
「スクウノ!」
「頑張るっぽい!絶対にとるっぽい!やれるっぽい!」
「うん!いけるよ!頑張って!うん!」
北方棲姫はポイを持って張り切っている。艦娘たちは少しでも減らすためにバンバン応援している。後ろで、港湾棲姫はレ級に叱られていたが…。
「ノンッ!」
掛け声と共に、カブトガニをすくう北方棲姫。
「初めて一匹救えたっぽい!おまけするっぽい!」
「やったね!すごいよ!まだ取れる!」
「オマケハイラナイ。」
「たった一回で…。」
北方棲姫がカブトガニを1匹すくう。
「ノン!ノンッ!」
立て続けに2匹すくった。そこで…。
「破レチャッタノ…。」
「3匹!3匹っぽい!」
「さっさと袋につめよう!」
艦娘二人は返却されないように、すぐに一つの袋に入れる。
「汚イワネ…。」
「ソレハナイ。集積地棲姫モ、ソンナ歪ンダコトハシナイ。」
「誰ガ歪ンデルッテ?…マァイイ。確カニ、最低ダ。」
「ウワー…。ソレハナイワー…。」
港湾棲姫たちから激しいブーイング。
「わかったよ…。別々の袋に入れれば問題ないね…。」
「ソウイウ問題ジャ…。」
艦娘たちは別々の袋にそれを入れる。
「デモ、1匹ダケデ…。」
「さ、ほっぽちゃんがすくったっぽい。欲しいかどうかはほっぽちゃんが決めるっぽい。」
「アッ、汚イ。」
悪い顔をする艦娘に、レ級がジーッと汚い物を見るような目で見ていた。
「……。」
北方棲姫は袋の中で泳いでいる、カブトガニを見る。
「…2匹、アゲルノ!」
「「え?」」
北方棲姫は艦娘に、それぞれ渡す。
「ど、どうして…。」
「応援シテクレタカラ、トレタノ!ホッポ1人ダケノ力ジャナイノ!」
北方棲姫は満面の…汚れの一切ない光り輝く笑顔で言う。
「え…あ、うん。…ありがとう…。」
「…ありがとうっぽい…。」
その悪意のない綺麗な笑顔を見て断ることも出来ずに、死んだ目で受け取る艦娘だった。残り、116匹。
「カブトガニ…。」
北方棲姫は袋の中で、元気に泳いでいるカブトガニを見る。
「うわー…。寿命、25年は生きるみたいですよ…。」
「エェ…。」
後ろでは、調べた提督と困惑した顔の港湾棲姫がいた。そこに…。
「射的!射的が君を呼んでいる!」
「あの出店の呼びかけすごいなぁ…。」
「射的ナノ?」
「ホッポ、マタ…。」
北方棲姫が釣られる。
「いらっしゃい!射的だよ!」
「姉さん、少し声を抑えて…。」
艦娘二人で切り盛りしているみたいだ。
「射的?」
「あそこにある景品を、この銃で撃ち落とせば景品を貰える仕組みだよ!」
「オー。」
「一回百円!…でも、初めてみたいだから、一回無料!やってく?」
「ヤッテミタイノ!」
「はい!銃と弾!」
艦娘に渡されるおもちゃの銃とコルク栓。港湾棲姫は、北方棲姫が銃で指を挟まないかしっかりと見ていた。
「ノ!」
パンッ
流石は子供で北方棲姫とは言え深海棲艦。真っ直ぐ柔らかそうなぬいぐるみ目掛けて飛んで行く。しかし…。
カンッ
「「「カンッ!?」」」
「あちゃ〜。落ちなかったね〜。」
「ノン…。」
「でも、まだあと4個弾があるよ!」
艦娘が元気づけようと励ます。
「イヤイヤ、ヌイグルミデ ソノ音ハオカシイダロ!」
「おい川内、本当に不正とかしてないんだろうな!?」
「してないって〜。神通に準備してもらったんだから…。ね?神通。」
「え…あ…。は、はい。」
もう一人の艦娘が北方棲姫たちが来るとは予想外だったとでも言いたそうな顔をしていた。つまるところ、焦った顔だ。
「取レナイノ…。」
もう弾が一個しかない。
「…ホッポ、貸シテミロ。」
「レ級…。」
北方棲姫はレ級に渡す。
「…イイカ?コウイウノハナ…。引イテカラ弾ヲツメテ…。」
ググググ…
「ノ?」
レ級が景品のぬいぐるみを狙う。
「弾道ト風ヲヨム…。」
一切手振れのない照準。
「落チ着イテ、引キ金ヲ引クト…。」
ボンッ!
「「「ボンッ!?」」」
ガァン!
「「「ガァン!?」」」
ゴトッ!
「「「ゴトッ!?」」」
「スゴイノ!」
レ級が1発でぬいぐるみ?を落とした。
「な、なに?今の音…。」
流石に艦娘も不審に思ったらしく、落ちたぬいぐるみ?を拾う。が。
「重っ!?何これ!?」
艦娘が持ち上げ、異変にすぐに気づいた。
「これ、鉄の塊入ってるじゃん!神通!」
「ご、ごめんなさい。姉さんがお金に困っているのを見かけてつい…。」
「ついじゃないよー!詐欺だよ!これ!今までやった子たちに謝らなくちゃいけないじゃん!それに、今回は駆逐艦の子達も楽しめるようにしようとしたのに!」
艦娘がもう一人の艦娘に言っている。
「ごめんねっ!今度はしっかりしてるから、もう一回ほっぽちゃんがやって!あとで、今までやってた子たちにお金返すから…。」
「ノ?」
艦娘に、さらに一回分渡される。他の景品は全部取り替えたようだ。
パンッ
「ノンッ!」
ポスッ
今度はしっかりしたぬいぐるみの音がしたため、本物だろう。
「ウーン…。倒レナイノ…。」
「マサカ、マタ『インチキ』ヲ…。」
「違うよ!今度は本物!」
また不審がられたため、艦娘が言う。
「ホッポ、レ級ノ言葉ヲ思イ出シテ…。」
「ノ…。」
北方棲姫はレ級と同じように準備して構えた。
「風…。」
北方棲姫は目を閉じた。そして…。
「ノン!」
ボンッ!
スパァン!
ポトリ
「ヤッタノ!」
景品が落ちた。
「じゃ、これはほっぽちゃんの景品ね!」
艦娘に景品のぬいぐるみをもらう北方棲姫。
「喜ンデルナ。」
「ソウネ。」
「…デモ、アンナノノ何ガ良インダロウナ…。」
「…ソウネ…。」
北方棲姫がとったのはホヤのぬいぐるみだった。顔もない、本当のホヤのぬいぐるみ。ちょっと細かく作られている。レ級と港湾棲姫は北方棲姫の好きなものとは何かと考えるのだった。
『深海棲艦 五島支部』は今日も平和です。
余ったカブトガニはどうなるんでしょうかね。
シリアスだー!!!!
次回は、やっぱり2週間後に後編をやります。
誰を登場させたいか
-
集積地棲姫
-
戦艦棲姫
-
駆逐棲姫
-
南方棲姫
-
空母棲姫
-
軽巡棲姫
-
重巡棲姫
-
水母棲姫
-
潜水棲姫
-
離島棲姫
-
船渠棲姫
-
護衛棲姫
-
防空棲姫
-
泊地棲姫
-
飛行場姫
-
その他