「大キクナルノ。大キクナルノ。」
北方棲姫が呟く。祭りの時にもらったカブトガニに餌をやっていた。水槽の中で元気に泳いでいる。
「ハイ…。イエ、飼イタカッタカラトデハナク…。ハイ…。コ、コノ先装備トシテ活用デキルヨウニ育テルヨウナ…。ハイ…。イエ、ホッ…北方棲姫ニドウシテモト言ワレタカラジャアリマセン…。ハイ…。ハイ…。報告書ハ送ルツモリデス…。ハイ…。アクマデモ、装備ニサセヨウト言ウ判断デシテ…。ハイ…。ハイ…。ソレデハ…。失礼シマス…。」
電話を切った途端にため息を吐いているのが港湾棲姫だ。
「別ニ、カブトガニ一匹クライ良イト思ウノニ…。」
そんな愚痴をこぼした。そして、窓の外を見る。山が少し黄色くなった気がする。
「…ソウネ。紅葉狩リ…シヨウカシラ。」
「紅葉狩リナノ?」
「ウン。山ノ紅葉ヲ見ルノヨ。トッテモ綺麗ダシ、キノコ狩リモ出来ル。」
「行キタイノ!」
「ウン。分カッタ。レ級タチモ誘ウワネ。」
「ウン!」
「…ソレト、多分紅葉ヲ見タコトナイ、『礼文島支部』ニモ招待状ヲ送ルワ。」
「遊ベルノ!」
「ウン。」
港湾棲姫はスラスラと手紙を書き、日にちを記載して近くのポストに入れた。そして、レ級たちを誘いに話すのだった。
ここは礼文島。港湾棲姫の従姉妹の港湾水鬼がいる島だ。所属するのは主に3名。軽巡棲姫と北方棲妹、支部長の港湾水鬼である。
「郵便でーす。」
「イツモゴ苦労。」
港湾水鬼が郵便受けの中を覗く。
「…港湾棲姫…。」
港湾水鬼は宛名を見た途端にその場で内容を見る。
『礼文島支部ノ皆様へ
○月○日、コチラデ“モミジ狩リ”ヲシマス。モシヨロシケレバ、一緒ニ行キマセンカ?
港湾棲姫』
「モミジ?狩リ?」
港湾水鬼が首を傾げる。
「狩リ…。」
そこに…。
「狩リ?狩ルノカ?」
「北方棲妹。」
北方棲妹がやってきた。
「モミジ狩リッテ知ッテイルカ?」
「…?分カラナイ…。」
「ソウカ…。デモ、何カヲ狩ルンダロウ。猟銃ガ必要カ?」
「ウーン…。」
そんなこんな悩む二人。そして、とんでもない方向へ行ってしまった。
「…待テ。」
「?」
「ソモソモ、狩リダロウ?ナンデコンナ遠イ所ニ手紙ヲ送ッタンダ?」
「…友軍?」
「アリ得ル。ソシテ、ココニ友軍ヲ頼ンダト言ウコトハ、陸上型ノ相手…。シカモ、姫級三人ガ友軍デ必要ナホド強イラシイ…。」
「敵ハ強敵…。」
「…怪我ヲシテホシクナイ…。…万全ノ準備ガ必要ダナ…。」
「ウン。」
そして軽巡棲姫も呼んで、強敵と戦うとだけ伝えた。
ここは鎮守府。礼文島にある鎮守府であり、そこには元帥兄弟がいる。寝静まった夜中だ。
「「「……。」」」
足音を立てず、物音を立てずに鎮守府の中を歩き回る三人がいる。そして、陸軍元帥と書かれた部屋の前に立ち、ゆっくりとドアノブを回して開けると…。
「誰だ。」
兄者は小銃を構えて立っていた。
「撃ツナ。」
「港湾水鬼?こんな時間にどうした?」
正体が分かった途端…敵の港湾水鬼がいるのがわかった途端に銃を下ろすのだから、仲や関係は良好である。
「夜遅クニスミマセン。」
「デモ、頼レルノガオ前シカイナイ。」
軽巡棲姫と北方棲妹が言う。
「ふむ…。恐らく、艦娘たちを起こさずに何かをしてほしいと言うことか。」
「ソウ…。」
「なるほど…。ならば、その用件はここで済みそうか?」
「…分カラン。ダガ、鍛エテ欲シイ。」
「鍛える…。何故だ?」
「強敵ト戦ウ。港湾棲姫ガ友軍トシテ、要請シテキタ。凶悪生物ヲ狩ルラシイ。全員、生キテ無事ニ狩レルヨウ、鍛エテ欲シインダ。」
「…なるほど。」
兄者は考える。
「……。」
そしてふと、港湾水鬼を見る。しっかりと、ブレない真紅の瞳があった。
「…いいだろう。その仲間を想う気持ちに胸が打たれた。グラウンドへ行こう。」
「…アリガトウ。」
「…うむ。」
そして、四人はグラウンドへ…。
「で、敵はなんだ?」
「ワカラナイ。ダガ、相当強イ敵ダ。友軍ヲ呼ブホドダカラナ。」
「ふむ…。深海棲艦ですら、強いと言わせる謎の敵…。相当だな。いいだろう。陸軍の元帥として、陸上の戦い方を教える。」
「頼ム。」
そして、港湾水鬼たちは早朝3時〜5時までの限定した時間に、艦娘たちには内緒で鍛えるのだった。
『脇を締めろ!そして、しっかり狙え!』
『アア!』
たまには訓練がキツくて
『腕立て500回を連続でやるぞ!』
『ク…。』
やめたくなるが
『陸戦の基本はカモフラージュだ。ゲリラ戦法を教える。対象に気づかれないよう、または気付くように新たな訓練メニューを加える。』
『ワカッタ。』
港湾棲姫たちを守るため、自身を守るために
『近接攻撃が出来なければ、野生動物とまともに戦うことすらできんぞ!』
『ワカッテル!』
期限までになんとか間に合わせた。
「今日で最後か…。皆、よく頑張った。もう教えられることは何もない。あとは、守ろうとする決意でなんとかなるだろう。」
「ウン。…行ッテクル。」
「うむ。…怪我するなよ。」
「?」
「敵であるお前たちが怪我をしたら、もっと凶悪な深海棲艦が来るかもしれんからな。まぁ、せいぜい生きて帰ることだ。」
「ウルサイナ。死ヌワケナイダロ。」
「姉貴ハ強イ。死ナナイ。」
そう言って、港湾水鬼たちはフェリーに間に合うように走って行った。
「……。」
「兄者、毎朝の運動は終わったか?」
「うむ。当分は帰ってこまい。」
「そうか。」
「うむ。それと、弟者よ。フェリーの船は予約しておいたから行くぞ。」
「そうか。…兄者よ、今なんと?」
「支度をしろ。フェリーに間に合わん。」
「あ、兄者?まさか行く気では…。」
「敵は未知の者。この先、障害となる前に我々が対処するのだ。それが、元帥としての役目であろう。深海棲艦より強い敵…。気になるものだ。」
「…分かった。たしかに、脅威になる前に早めに摘み取るのが吉か…。艦娘には伝えておく。支度をするから時間をくれ。」
「5分。」
「十分だ。」
そして、元帥兄弟はこっそり密航するのであった。
当日
「紅葉狩リッ♪紅葉狩リッ♪オ弁当〜♪」
北方棲姫がはしゃいでいる。従姉妹も来て、皆で紅葉狩りしながらのピクニックが楽しみなのだろう。
「嬉シソウダナ。」
「ソウネ。…デモ、レ級ガ今日『バイト』ナンテ…。」
「ソレニ、戦艦棲姫ト防空棲姫ハ葡萄狩リヤ、梨狩リトカヲシテイル。」
「地元ノ人達ノオカゲ…。皆ンナ良イ人…。」
港湾棲姫がしみじみ言う。町内会などに積極的に行き、地元の活動も積極的にやり、尚且つ見知らぬ人も助けるのだから、港湾棲姫たち五島支部の知名度も、人気も高い。
『えっ?港湾ちゃんたち、梨狩りやぶどう狩りとかしたことないの?』
『本当か?なら、栗拾いやきのこ狩りもしたことないのか…?』
『ナシガリ?ブドーガリ?』
『マジかい!早く言ってくれよ!俺ぁ港湾ちゃん達やったことないなんて思っても見なかったぞ。今度、うちの農園でいい梨が出来たんだ。ちょっくら梨狩りしてみっかい?』
『イイノ…?デモ、アマリオ金ガ…。』
『何言ってんだい!港湾ちゃんならいつでもタダさ!前だって、その梨の袋かけ手伝ってもらったんだ!1個や2個、5個なんて言わず、好きなだけ持ってってくれ!どうせ収穫時期過ぎて余ったりキズモノになるもんがあるんだ!』
『ア、アリガトウゴザイマス。家計ニモ助カリマス。今度、支部ノ誰カガ行キタイカモ知レナイノデ、聞イテキマス。』
『んだ。そうだべ。なんなら、うちの葡萄もやってみっか?甘くてうんまいぞ〜。その葡萄の袋かけも手伝ってもらったかんな〜。』
『本当…?』
『そうだべ。でも、収穫時期過ぎてっから、腐っちまう前にとって欲しいべ。う〜ん…。梨も明日までかなぁ?』
『明日…。デモ、明日ハ紅葉狩リ…。』
『あっ、なんなら、支部の誰かが来ても良いぜ。好きなだけとってってくれ。』
『おんなじだべ。』
『アリガトウゴザイマス…。』
『紅葉狩りか〜。あっ、なんならわしんちの山行くかい?キノコ狩りと栗拾い出来るぞ。』
『本当ニ、アリガトウゴザイマス…。』
『わしが腰やっちまった時に手伝ってくれたおかげだよ〜。』
そんなこんな、港湾棲姫の日頃の活動により信頼を得て、地元民からの好意で無料でさせてもらえることになったのだ。
「感謝シナクチャ…。」
「良イ人タチダラケダナ。」
そんなことを思い出し、港湾棲姫と駆逐棲姫がしみじみ言う。そこに…。
ガラララララ
「港湾棲姫。来タゾ。」
「アッ、ハーイ。」
「来タノ!」
二人が急いで、港湾水鬼のいる玄関へ行く。
「ド、ドウシタノ!?ソノ怪我!大丈夫!?」
「怪我シテルノ!大変ナノ!」
二人が、急いで救急箱を持ってくる。
「ドウシテ…。」
「怪我ヲシナイヨウニナ。」
「ココ、富士山ジャナイ…。」
港湾棲姫が包帯でくるくる巻く。
「終ワッタラ、スグニ行コウ。」
「エ?行ケルノ?」
「行ク。行クタメニ鍛エタ。」
「ココ、ソンナニ危険ナ山ジャナイケド…。」
港湾棲姫は駆逐棲姫、北方棲姫と支度をして、港湾水鬼と共に山へ向かうのだった。
「…歩キ辛イ…。」
港湾棲姫が漏らす。現在、何故だか分からないが港湾水鬼たち『礼文島支部』のメンバーが港湾棲姫たちを巻き込んで警戒陣で進んでいる。そんな様子を見る二人がいた。
ガサガサ…
「ふむ…。なんとかバレてはいないな…。」
「兄者よ…。何故隠れる必要があるんだ…?わざわざ落ち葉を纏ってまで…。」
「バレたら、敵が警戒するかもしれん…。」
「…兄者よ。もしかしてと思ったが、いいか?」
「なんだ?」
「…港湾水鬼にほの字なのk…。」
ガツン!
「そんなわけなかろう!」
「痛ってぇ…!そんな本気で殴らんでもよかろうに…!」
「あくまでも、奴らは敵だ…!それ以上でも、以下でもない。」
「にしては、随分と肩入れしているがな…。」
草むらで二人が話す。一方。
「トコロデ、ドンナ奴ヲ狩ルンダ?」
「エ?ナンノ話?ドンナ奴?」
「モミジッテ奴…。」
「モミジ狩リノコト…?」
港湾棲姫は港湾水鬼が何か勘違いしていることに気がついた。
「…紅葉狩り…。港湾水鬼…紅葉狩りを勘違いしていたのか…?」
「…兄者よ…。教えたことは全部無駄だったな…。」
「聞かない我も悪いが…。紅葉狩りと言ってくれれば…。」
「…帰ろう兄者…。」
「うむ…。」
元帥兄弟は草むらの中で聞いていた。港湾棲姫はやれやれとして、説明しなかった自分も悪いと思って、説明しようとする。
「モミジ狩リッテ言ウノハ、狩リジャナクテ…。」
「狩リジャナイ…?」
ガサガサ…
「敵!敵!姉貴!」
「!」
北方棲妹が揺れる草むらに反応してしまった。
「秋ノイクサ…ハジメテミルカ…?」
港湾水鬼がいつの間にか砲を起動させていた。
ドガァァァァ!
「転進!」
「避けるのだ。」
ズガァァァァ!
間一髪避けた元帥兄弟。まぁ、当たったら痛いじゃ済まないだろう。
「避ケタ…!?」
「落チ葉ニ身ヲ包ンデ…。」
元帥たちとは知らずに、攻撃をする港湾水鬼。
「軽巡棲姫手伝エ…!」
「紅葉狩リダッタノ…?」
軽巡棲姫は紅葉狩りだと今知った。
「…クッ…。逃ゲラレタ…!」
港湾水鬼は悔しそうな顔をした。
「港湾水鬼…。」
「…?」
軽巡棲姫が話しかけて、手伝ってくれなかったことに不服なのか、不機嫌そうな顔だ。
「紅葉狩リッテ言ウノハ…。」
「ツマリ、『ピクニック』ナノカ?」
「エエ。」
港湾水鬼と北方棲妹が理解する。
「ソウカ…。…ン?待テ。ナラサッキノハ…。」
「…普通ノ動物ノ動キジャナカッタワネ…。」
それを聞いて、サッと港湾水鬼の顔色が悪くなる。
「…アッ、ソウ思ッテミレバ、港湾水鬼ッテ『ホラー』苦手ダッタンジャ…。」
「…港湾棲姫…ドウシヨ…。来ルヨナ…。仕返シニ来ルヨナ…!」
「来ルカモ…。」
「…ドウシヨ…。」
港湾水鬼が本気で困った顔をする。相変わらず顔は怖い。
「あの顔で、ホラーが怖いとは…。これがギャップと言うものか…。」
「兄者よ、もう帰ろう…。」
「…そうだな…。」
陸軍元帥は懐中時計を出して見る。
「…兄者、本当に大丈夫か?分かっているとは思うが、よりによって元帥と深海棲艦は…。」
「何度も言うておろう。我は港湾水鬼と結ぶ気はない。…が、心配なだけだ。」
「兄者よ…。本当に大丈夫か…?一応、あきつ丸を部下に持っているのに…。」
「何度も言うでない。良きライバルなだけだ。」
「だと良いが…。」
「それより、そろそろ飛行機の時間に間に合わん。急いで帰るぞ。」
「先程気になっていたのは航空機の時間であったか…。」
二人の元帥は木をつたったり、飛びながら飛行場へ目指した。
一方、果物狩りの方は…
「美味シイワ。」
「ウッフフフ。美味ネ〜。」
「…ウマイ…。」
戦艦棲姫、防空棲姫、集積地棲姫…三人は梨をとっている。木を傷つけないように、教えられた通りに丁寧にとっている。そして、食べてもいる。そんなのどかな時間が過ぎる。しかし、しばらくしたら少し出入り口が騒がしくなった。
『……。』
『……。』
「ナンカ声ガ聞コエル…。」
三人は出入り口近くの梨の木に隠れる。
「アレ、多分提督ヨネ…?」
「アッハハ。門前払イサレテルワネ〜。」
「艦娘ト一緒ニ果物狩リカ?」
どうやらいるのは提督御一行のようだ。
「えっ!?果物狩りやってないんですか!?」
「ああ。あんたらにゃ申し訳ないが、港湾ちゃんたちがやっていてな。」
「でも、前々から…。」
「港湾ちゃんたちはやったことがないってよ。それに、毎年袋かけ手伝ってくれてるしな。」
「そうだったんですか…。」
「さらには、決定的な違いがある。」
「決定的な違い…?」
「ああ。去年も一昨年も…。あんたらがしでかしたことを忘れたわけじゃあるまい。うちの網に大穴あけたり、枝を折ったり。」
「ゔっ…。その節は、誠に申し訳ございませんでした…。卯月にはしっかりと言っておきました…。」
「木を傷つけるなっちゅうのに、そっちの小さな子たちが遊んでわざと傷つけるし。赤いのと青いのがたまに梨を盗むし。あんたはしっかり見張ってないし。ほっぽちゃんを見てみろ。あの子は言われたことをしっかり守って、一つ一つ丁寧に袋かけしてくれたんだ。あんたら鎮守府の者より、港湾ちゃんたちのところの方が信頼できるってもんだ。」
「それ言われちゃ立つ瀬ないです…。」
「…すまん、ちと意地が悪かったな。そっちは多い人数だから、一人で見張るのも大変だしな。だが、もうちと教育をしっかりしてくれ。」
「すみません…。」
そんなこんな、農園のおじさんと提督が話していた。戦艦棲姫はそのやりとりを見て…。正確には、楽しみにしていたのに出来ないと知った艦娘たちの顔を見て…。
クイクイ
姿を現して手招きをした。
「ん?なんだい?戦艦ちゃん。」
戦艦棲姫は農園のおじさんと話す。そして、農園の人が提督の所へ戻った。
「戦艦ちゃんに言われちゃしゃあない。戦艦ちゃんに感謝してくれ。」
農園のおじさんが出入り口を開ける。
「提督、戦艦ちゃんは全責任は自分が持つって言ったんだ。その想いを踏み躙るなよ。」
農園の人は提督の後ろ肩を叩いて、ニンマリとしながら家に戻って行った。艦娘たちは嬉しそうに中に入る。
「戦艦棲姫さん…。本当にありがとうございます…。」
「イイワヨ。別ニ。減ルモノデモナイワ。」
「いいか!絶対に迷惑をかけちゃいかんぞ!戦艦棲姫さんの名誉でもあるんだ!特に卯月!何か問題をしでかしたら、お前の部屋はないと思うんだな!」
「わ、わかったぴょん…。うーちゃんは何もしないぴょん…。だから、そんな睨まないでほしいぴょん…。」
提督が完全に目を光らせて、艦娘たちが大人しくなる。
「ウッフフフ。優シイトコロアルジャナイ。」
「楽シミニシテイタノニ、チョット可哀想ダッタシ。」
「マァ、港湾棲姫デモ多分ソウヤルダロウナ。」
深海棲艦三人が話す。
「赤城ー、ほどほどになー。枝を折るなよー!お前たちは力が強いんだからなー!」
提督は艦娘一人一人を監視して、忙しくしている。
「あっ、そういえば戦艦棲姫さんたちの分…。」
「大丈夫。支部ノ皆ンナガ満足スルクライアルワ。」
戦艦棲姫たちは梨でいっぱいの大きなカゴを見せる。
「甘クテ美味シイ。」
「そうかー。そりゃ良かったよー。これも、港湾ちゃんたちが袋かけしてくれたおかげさ〜。」
集積地棲姫は感想を農園のおじさんに話していた。
「今日ハアリガトウゴザイマシタ。」
「あれ?戦艦ちゃんたちもう行っちゃうの?」
農園のおじさんと話す戦艦棲姫たち。
「ウン。葡萄モアルカラ…。」
「もっと持ってっていいのに…。」
「ウウン。欲張リハ得シナイ。港湾棲姫ガ言ッテタ。」
「かぁ〜。鎮守府の子も、戦艦ちゃんたちを見習ってほしいよ。」
農園のおじさんが艦娘たちを見る。艦娘たちはそんなことを言われていると知らずに、笑顔で梨狩りをしていた。
「本日ハ、貴重ナ体験ヲアリガトウゴザイマシタ。来年モ、必ズ袋カケヲ手伝イマス。」
「そう言ってくれると助かるよ…。最近はちと歳でな…。もしかしたら、数年後まで続けられんかもしれんしの。うちのバカ息子は東京さ行くってうち飛び出しちまってから一度も帰ってこんし。」
「…歳…。」
「深海棲艦や艦娘にゃ縁のない言葉さ。衰弱っつって、歳を重ねれば重ねるほど、弱くなるってことさ。人間は脆い。思っているよりも簡単に死んじまうんだよ。」
農園のおじさんが自嘲のような…軽い笑顔をした。
「何年も後の話さ。まぁ俺が死んだら、うちのバカ息子が戻ってくんかもしんねぇ。その時は、戦艦ちゃんたちも仲良くしてやってくれ。もし来なければ、うちの農園は港湾ちゃん達にやるつもりさ。俺の祖父の代から続いている梨畑だ。余った土地として、市に梨畑切り倒されるくらいなら、港湾ちゃんたちにやるさ。そん時は、どうか梨畑を切り倒さんでくれな。バカ息子にもそう言っとくれ。」
「…分カッタ。」
農園のおじさんが真面目な眼差しで見て言い、戦艦棲姫は覚悟をした、しっかりとした目で、そらさずに頷いた。そして、しっかりとお辞儀をした後、戦艦棲姫たちは葡萄園を目指した。
「…いいのですか?」
「…何がだ?」
行った後、農園のおじさんの所に農園のおばさんが来る。
「うちの梨畑をやるっつって。最初は深海棲艦だからっつって、忌み嫌っていたべ。」
「最初はな。でも話してみたり、こっちから心を開けば悪い奴じゃないってわかったかんな。切り倒されるよかマシだべ。」
「元“海軍大元帥”のあんたがよう変わったの。昔は、「うちの梨畑さ取られるくらいなら燃すべ」っつってたんに。」
「それを言うなって。昔の話さ。今は素性を隠してるんだから。“農園のおじさん”でいいんだ。」
「わかってますよ。」
農園のおじさん夫婦は、遠くで手を振っている戦艦棲姫たちに手を振りかえしていた。
前編。
シリアスを…駆逐してやる!
次回は、コーヒーの香りがするみたいです。
誰を登場させたいか
-
集積地棲姫
-
戦艦棲姫
-
駆逐棲姫
-
南方棲姫
-
空母棲姫
-
軽巡棲姫
-
重巡棲姫
-
水母棲姫
-
潜水棲姫
-
離島棲姫
-
船渠棲姫
-
護衛棲姫
-
防空棲姫
-
泊地棲姫
-
飛行場姫
-
その他