深海棲艦のゆるい日常   作:とある組織の生体兵器

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仕事に追われる毎日…。いっそのこと、深海棲艦になりたい…。


弐拾玖話 大島出張所ナノ? 前編

ここは『深海棲艦 五島支部』。今日もゆるい日常が続く。

 

「フゥ…。」

 

梅雨のある日。皆、家…ごほん、支部で各々座ったり寝転んだりして過ごしていた。

 

「梅雨…去年ハ『カビ』ニ手ヲ焼イタワネ…。」

 

「ダナ〜。…今年ハ…。」

 

「シッカリ、点検シテルワ。」

 

「ソウカ~。」

 

居間で、港湾棲姫とレ級が話す。北方棲姫は、港湾棲姫の膝で寝ちゃっている。

 

「フフ…可愛イ…。」

 

「…ダナ。」

 

港湾棲姫が北方棲姫の頬を撫でながら言い、レ級が同感する。すると…。

 

「キャーーー!」

 

駆逐棲姫の悲鳴が聞こえる。

 

「…コンナ事、前モアッタナ…。」

 

レ級はそう思いながら、港湾棲姫と目を合わせる。

 

「タ、大変!!」

 

「ドウシタ?マタ『カビ』カ?」

 

「ホッポガ起キチャウ…。」

 

駆逐棲姫がすぐさま来て、港湾棲姫たちに言われる。

 

「ソレヨリ…艤装ヲ外ニ出シタママダッタノハ誰…?」

 

駆逐棲姫が、縁側から裏庭を指差す。北方棲姫が港湾棲姫の膝で寝ているため、レ級が行くと…。

 

「…エ…。」

 

レ級も信じられないような顔をした。港湾棲姫は北方棲姫を座布団で寝かせて、レ級の後に出てくると…。

 

「……。」

 

困った顔をしている。

 

「…艤装…全部錆ビテル…。」

 

駆逐棲姫が、雨の降る中錆びた艤装に行き、自分の艤装を引っ張り出した。

 

「ウソダロ…。」

 

レ級も、自分の艤装を見て絶句する。

 

「ドウスンダヨ…。テカ、誰ダヨ…出シタママダッタノハ…。」

 

レ級は、呆れた顔をしながら言う。

 

「分カラナイ…。」

 

港湾棲姫も困っていた。

 

「コノ子達ノ艤装ヲ見タラ、多分怒ルデショウネ…。」

 

「マァ、ソウダナ…。」

 

「戦艦棲姫ヤ防空棲姫ノ物モ…。幸イ、ホッポモ使ウ、艦載機ハ無事ダッタケド…。誰ガコンナ事…。」

 

「ウン…。」

 

3人が話しながら悩んでいると、北方棲姫が起きる。

 

「ノ…?」

 

「ア。ホッポ、オハヨウ。」

 

「オ早ウ。」

 

「…オハヨ。」

 

「起キタノ…。」

 

北方棲姫はまだ眠そうな目を擦る。

 

「…ドウシタノ?」

 

「アソコニ、誰カガ艤装ヲ出シタママ放ッテイタミタイデ…。」

 

「ノ!?」

 

北方棲姫は、錆だらけの艤装を見る。これ以上雨に濡らさないように、新聞紙の上に全ての艤装を置いた。

 

「誰ナノカシラ…?本当ニ…許セナイ…。」

 

「全クダ。」

 

「誰ナンダ…。」

 

3人が悩ませていると…。

 

「…ソーイエバ…。集積地オネーチャンガ、倉庫ニ邪魔ダカラッテ、出シタママニシテタノ…。」

 

「「「倉庫?」」」

 

それを聞いて、レ級と港湾棲姫と駆逐棲姫が傘をさして、倉庫の引き戸を開けた。そこには…。

 

「…『フィギュア』…。」

 

「『ゲーム』…。」

 

「同人誌…。」

 

レ級と港湾棲姫と駆逐棲姫が、唖然としながら呟く。そこに…。

 

「〜♪ンア?何ヤッテンダ?」

 

口笛を吹きながらやってきた集積地棲姫。そして、隣から3人を見た。そして、何を見ているのか分かった。

 

「集積地棲姫…!」

 

「アナタ…ドウ責任取ルノカシラ…?」

 

レ級と港湾棲姫が、怒りながら聞く。駆逐棲姫は、北方棲姫を避難させようと一緒に家に入っている。集積地棲姫は、絶賛汗をかきまくり、どう切り抜けようか必死に考えていた。

 

「エ、イヤ、コレハ…ソノ…アレダ…。部屋ニ置ク場所ガナイ訳ジャナクテ、ソノ…。ホ、ホラ…一応、一時避難的ナ…?」

 

「「集積地棲姫…!」」

 

レ級と港湾棲姫は、聞いていなかった。

 

「ゴメンッ!」

 

「逃スカ!」

 

「発進!」

 

逃げ出そうとした集積地棲姫だったが、すぐさまレ級に抑えられ、港湾棲姫の艦載機で軽く燃やされた。そして、説教が1時間ほど始まった。

 


 

「コンナニ錆ビテ…。」

 

「ウッフフフ…後デ説教カシラ?」

 

「勘弁シテクレ…。戦艦棲姫、防空棲姫…。モウ、コッテリ叱ラレタ…。」

 

「自業自得ダ。」

 

戦艦棲姫と防空棲姫にも言われて、ゲンナリしている集積地棲姫。目の前には錆びた艤装があった。

 

「…ハァ…。コンナニ酷クチャ、海域ニモ行ケナイ…。ショウガナイカラ、『大島出張所』ニ行カナイト…。」

 

港湾棲姫がそんな事を呟く。

 

「『大島出張所』ナノ?」

 

「ホッポハ、マダ行ッタ事無カッタカシラ?」

 

「『大島出張所』カ。マァ、アソコニ頼ムノガ一番ダナ。アソコハ、深海棲艦ノ使ウ艤装ヤ、依頼トカヲ作ッテル場所ダカラナ。本部ニ近イ所ダ。」

 

レ級が言う。

 

「ソウナノ?」

 

「ソウヨ。デモ、長旅ニナルカラ、ホッポハオ留守番ガ良イト思ウ。」

 

「ノ!?」

 

「確カニナ。チョット遠イシ、一般人ノ目ニ触レルカモシレナイ。ソウナレバ、海軍ニ通報ガ行ク。海軍ハ放ッテオクワケニモイカナイカラ、攻撃ヲ仕掛ケテクル。ソウナレバ、本格的ニ戦争ニナル。」

 

「…ノン…。」

 

北方棲姫がものすごくガッカリしている。

 

「……。」

 

「港湾棲姫。」

 

今にも、抱きしめようとする港湾棲姫をレ級が止めている。

 

「トニカク、今回ハ遠イカラオ留守番ダ。集積地棲姫、オ前家ニイルノ好キダロ。面倒見ルノ頼ンダゾ。」

 

「…大丈夫カシラ…?スゴク心配…。」

 

「イザトナレバ、隣ノ五島沖海底姫ニモ言ットク。」

 

「ソウネ…。」

 

「明日、出発スル。ナルベク早ク戻ル。オ土産持ッテ帰ルカラ。」

 

「ノー…。」

 

北方棲姫は、不満そうな顔をしている。

 

「…ホッポ、オ前ハ良イ子ダ。シッカリト聞キ分ケ出来ル子ダ。集積地棲姫ノ言ウ事ヲシッカリ聞クンダゾ。」

 

「…ワカッタノ…。」

 

レ級の説得に、渋々納得する北方棲姫。

 

「……。」

 

港湾棲姫は、その様子を見ていた。

 


翌朝早く

 

「港湾棲姫、忘レ物ナイカ?」

 

「…エエ…。レ級モ、艤装全部持ッタ?」

 

「アア。」

 

レ級のリュックは不思議と明らかに物理法則を無視してなんでも入る。とんでもない量の錆びた艤装も、全て入る。しかし、少し膨らんでるように見える。

 

「戦艦棲姫達ハ、時間ヲ開ケテ行クカラナ。…遅レルト、迷惑ガカカル…。ジャ、行クゾ。」

 

「…エエ…。」

 

「…仕方ナイダロ。コッチモ、結構危険ナンダ。ホッポヲ巻キ込ム訳ニハイカナイ。…マァ、ナンカ荷物ガ重イケド…。」

 

レ級と港湾棲姫が歩き出す。そして、海岸に着いた。

 

「…ソウイヤ、ホッポニ行ッテラッシャイ言ッテナイケド、平気ナノカ?」

 

「エ?…ウン…。」

 

「……。」

 

レ級は港湾棲姫の様子が少し変だと思いつつも、北方棲姫がいなくて調子が悪いだけだと決めつけた。そして、2人は海に出る。

 

「…本当ニ、言ワナクテモ良カッタノカ?」

 

「エエ。」

 

「フーン。」

 

「……。」

 

「……。」

 

そして、無言で海上を進んでいく。

 

「ハァ…。」

 

真っ先に口を開いたのは、レ級だった。

 

「…集積地棲姫ニ伝エタノカ?」

 

「エ…?」

 

「隠シ通セルト思ッテイルノカ?」

 

「…ドウシテ…?」

 

「アラカサマダロ。ソレニ、例エドレダケ完璧ニ隠スコトガ出来ルトシテモ、見破レル。親友ダロ。…アノ時カラナ。荒レテイタ時、声ヲ掛ケテ助ケテクレタアノ時カラナ。」

 

「……。」

 

「何年一緒ニ居タト思ッテンダ。」

 

「…ソウヨネ…。アナタニ、隠シ事ハ出来ナイワヨネ。」

 

「当タリ前ダ。…デ、集積地棲姫達ニハ ホッポガイナイ事言ッテキタノカ?」

 

「エエ。」

 

「全ク。」

 

レ級は分かっている。自分のリュックの中に、北方棲姫がいるのを。

 

「…帰リハ、遠回リデ、一般人ニ見ツカラナイヨウニ帰ルカラナ。」

 

「…ソウネ。」

 

レ級が言い、港湾棲姫が納得する。そのうちに、『大島出張所』が見えてくる。

 

「ヒト回リ小サイナ。ホラ、見エテキタゾ。」

 

「ノー!」

 

「着イタワネ。」

 

もう、ここまで来れば後は艦娘や深海棲艦がいるので、誤魔化しが効く程度の距離にきた。北方棲姫が、レ級のリュックから顔を出して、目をキラキラさせる。港湾棲姫が、近海で艦娘がいないかどうか探す。

 

「ごきげんよう、五島支部の方ですか?」

 

「ウン。」

 

「お話は聞いてます!こっち側ですよ〜。」

 

大島周辺で演習をしていた艦娘が声をかける。

 

「『深海棲艦 大島出張所』ノ…。」

 

「はい。ここだと、目立っちゃいますのでこちらです。綾波、少し抜けます。」

 

艦娘が本州側から見て裏手の方へ案内する。

 

「最近本州の方でちょっと反海軍の動きがありますので、こちらからお願いしますね。」

 

「分カッタ。アリガトウ。」

 

「アリガトウ。」

 

「アリガトナノ!」

 

「あ。」

 

その艦娘がリュックから頭だけ出ている北方棲姫に気づく。

 

「とっても可愛いですね!流石、五島支部の人気No. 1です。」

 

「ノ?」

 

「でも、大島出張所でも同じ子がいるので、是非会ってみてくださいね!」

 

「ソウナノ?」

 

「はい。」

 

艦娘は軽く北方棲姫の頭を撫でる。レ級は裏手から来るように戦艦棲姫たちに連絡して、港湾棲姫は周りの警戒をしている。

 

「さて、私は戻りまーす。頑張って下さい。」

 

「分カッタ。」

 

「アリガト。」

 

そして、3人は艦娘の案内のもと、無事に着いた。その出張所は、赤レンガ倉庫のように見え、ツタが蔓延っており相当古いものと推測される。五島支部よりは建物が大きく、まるで要塞のような雰囲気がある。森の木々の間から漏れる光が建物を照らし、人がいるとは思えない、神秘的な空間を作り出している。

本部からこんな情報を聞いている。大島出張所は、所長は優秀であり、深海棲艦にとって唯一無二の存在で、どんな状況においても頼りになる人物だと言う。そして、深海棲艦達にとっては、ある意味一番安心できる場所でもあるという。それは、かつて、人類と戦争をしていた頃の最後の砦であり、最終防衛ラインであるとか。その出張所に所属する深海棲艦も、出張所を守るために強者揃いだとか。そして、この大島出張所にいる技師は他の追随を許さない程高いらしい。この物語始まって以来の、他の深海棲艦の出張所に踏み込んだ。北方棲姫は初めてでありドキドキしている。港湾棲姫は少し心配そうな顔で、手土産を握りしめている。レ級はその大きな門の前で、出張所建物を見上げていた。

 

『深海棲艦 五島支部』は今日も平和です。




長すぎたので、区切りました。大島出張所…どんな深海棲艦がいるのか…。
くお〜!!ぶつかる〜!!ここでコメディ全開、シリアスを右に!
次回は、大島出張所にお邪魔するそうです。

誰を登場させたいか

  • 集積地棲姫
  • 戦艦棲姫
  • 駆逐棲姫
  • 南方棲姫
  • 空母棲姫
  • 軽巡棲姫
  • 重巡棲姫
  • 水母棲姫
  • 潜水棲姫
  • 離島棲姫
  • 船渠棲姫
  • 護衛棲姫
  • 防空棲姫
  • 泊地棲姫
  • 飛行場姫
  • その他
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