プロローグ 歴史の分岐点
波の静かな月明りの中、凪いだ海が夜空を映す。時刻は現在21時
ゆらりゆらりと揺れる船、赤と黒のコントラストな調度品で統一された船内にて、じっと静かに時を待つ。
磯の匂いが鼻腔をくすぐり、船の窓の外には夜の街が輝く遠いタラント基地の姿が月の光と交差して夜の海を照らしている。
艤装を装備しつつも今は束の間の休息。
ある者はじっと海を眺め、ある者は椅子に座ってコーヒーに舌鼓を打ち、ある者は空を見上げて満天の星空を眺め、ある者は腕を組んで目を閉じながら精神統一。
自分はと言えば、ぬるいココアを口に含み、ただ静かに合図を待つ。きっと今頃友軍は作戦を成功させていると祈りながらただ静かに時を待つ。
「しっかし…この作戦、本当に成功するのかしらね?」
「鉄血としては、成功して貰わねば困るのだ…その為に、我らが来ている、と言っても過言では無いのだからな」
金髪の少女が海を眺めながら口にすると、手を組んだ銀髪の胸の大きい、とっても胸の大きい長髪美人が自分達の目標を改めて口にする。
現在自分達は祖国鉄血から遠く離れた夜のタラント沖の海にて、指揮艦に搭乗しながら、サディア海軍の連絡を今か今かと待ち望んでいた。kansenといえどもずっと海の上を滑っているのは負担があり、こうして船の中で待機しているのだが、作戦予定時刻の18時をとうに3時間も過ぎている。
既にロイヤルが作戦を察知して、何かしらの謀略を実行に移しているのか、それともサディア・ロイヤルの海軍が神出鬼没の人類の敵、『セイレーン』に襲われたのだろうか?と不穏な気配が船内に漂う中、本当にセイレーンやロイヤルに襲われているのなら真っ先に通信が来るはずだとため息を吐きながら現在、俺は4杯目の温いココアを口に含んでいた。
作戦内容はセイレーン基地を攻撃すると見せかけてサディアに派遣されたロイヤル艦隊を騙し討ちにより撃破、そして、サディア帝国の喉元の骨ともいえるロイヤル領マルタに於けるマルタ海軍基地を占領し、地中海をサディア帝国、引いてはレッドアクシズのバスタブにする事で完遂する。
自分達がサディアの救援要請を得て部隊が派遣され、先に派遣されていたロイヤル艦隊にバレないように入国し、隠れ、総旗艦ヴィットリオ・ヴェネトさんとの『思い出すのは勘弁願いたい。』遣り取りを経て、マルタ基地攻略戦の作戦要項を聞かされたのはほんの数週間前。というよりもロイヤルが先に入国しているという事実に気がついたのもその時だった。
リットリオ曰く、官民問わず緘口令を敷いた上でサディアの皇帝陛下のサインまで利用して公文書を作成、アズールレーンの復帰を餌にロイヤルネイビーの事実上No.2である戦艦ウォースパイトを陣中に誘い込む事に成功した、念入りな作戦。
この作戦に成功すれば地中海のフリーハンドを得たサディアは鉄血、ヴィシアとの連絡や共同作戦も可能に成るだろう。
しかし
「指揮官……顔色悪いよ?」
「あ、あぁ。大丈夫だシュペー。ごめんな心配かけて」
巨大な腕の様な艤装を装備した銀髪の少女シュペーがこちらを心配して、上目遣いで俺を見つめてくる。だめだな…自分が焦れば彼女たちまで不安になるのだからポーカーフェイスだ、ポーカーフェイス、深呼吸、深呼吸、素数を数えながら深呼吸。
そう……何事もなく成功するはず、もしサディアが作戦に失敗すれば、俺たちが援軍に動くだけなんだから。
胸騒ぎがする
サディアが作戦に失敗すれば自分たちが援護に向かうだけだ、何事もなくマルタ基地が陥落すればそれでいい。
しかし……あの4大陣営の一員であり、謀略、計略何でも有りなロイヤルがそんなに甘く騙されるのだろうか?
酷く嫌な予感がする、心臓を凍った手で鷲掴みにされる様な嫌な感覚にジリジリと襲われる。
――自分たちは何か大切な事を忘れているのではないのか?
もし、サディア帝国の謀略をロイヤルが気がついているのなら、自分がロイヤルならどうやって報復するのだろう?
ケース①
逃げ帰る?
後方にマルタ基地があるのだから否。
ケース②
大量のkansenで待ち構える?
そこまでのkansenがロイヤル本島よりマルタ基地に移動するのならリットリオ達だって直ぐに気がつく筈なので否。
ケース③
サディアが……作戦の決行を躊躇うほどの事態を引き起こす?
自分であれば恐らくケース③を選択するだろう、しかし、ロイヤルからすれば動かせる戦力はサディアにバレない程度の少数戦力になるはず、なら、どうすればサディアに打撃を与えられるのか?
頭の中でピースが一つ一つまとまっていく、作戦決行前日どころか、リットリオから今回の作戦を説明されてからも感じていた違和感。
しかし、それでも最後のピースが埋まらない。
何だ?
最後のピースは何なんだ……?
「卿よ、考え過ぎだ。
少し仮眠を取れ……徹夜明けの様な酷い顔では満足した指揮も出来んぞ」
俺の肩にポンと手を触れつつコーヒーを口に含みながらグラーフはそう呟いた。海の闇と背中まで流れる銀髪が月明かりに照らされて良く映える。
「しかし………この様な漆黒の闇では艦載機を飛ばすのも一苦労だ」
「うーん……グラーフ、参考までに聞きたいんだけど、航空戦で夜間戦闘で敵に向かって攻撃を行うのは難しいのか?」
実の所、俺には夜間戦闘の経験はない。教本通りなら重桜は夜間訓練を積極的に行っていて世界最強の夜戦集団だなんて書かれていたが、その本に於いても航空母艦の夜間戦闘についての記述は微塵もなかった。
空母kansenは独自の感覚で索敵、爆撃、雷撃を行なっているらしいが、これに関しては人間である自分には理解出来ない感覚なのだろう。鉄血の航空母艦は現在グラーフ・ツェッペリンのみ、こんな場面で言うべき事でも無いかも知れないが、夜間戦闘についてもっと早く聞いておけば良かったと後悔しつつ、迷う頭を振りつつもグラーフに話しかける。
「そうだな……夜間戦闘の場合まず敵目標を索敵する事自体が困難になる。
選択肢としては照明弾を打ち上げて海を照らすか、レーダーのみを信じて敵目標に爆撃するかの二択となる。とはいえ、我の場合は、照明弾もレーダーも使わずに爆撃機で面制圧を行い炙り出す事を優先するが」
……それって脳筋スタイルなんじゃないか?と思いつつ敢えて口には出さない。
「やっぱり、動く目標を夜間戦闘で攻撃するのは難しいのか」
「あぁ、これが動きの鈍い攻撃目標であるのなら爆撃を集中して……」
・動きの鈍い攻撃目標
・少数のkansenで敵にダメージを与えて敵を混乱させる
・そして、タラント基地は基地内部ではなく外部に大量の船舶を並べていて、基地は今も稼働中なのだから誘導するかの様に光り輝いている訳で
………ああっクソ!!そういうことか!!!!
「グラーフ、仮にだけどさ?敵が全く動かなければ爆撃も雷撃も夜間戦闘だろうが当てる自信はあるか?」
「卿……何を当たり前の事を……我の力を疑っているのか?偵察機だけではなく航空機そのものに我ら空母には『目』がついている。
敵が無抵抗なのであれば、全ての攻撃を集中してそれを撲滅する事など的に攻撃を当てる様なものだ」
恐らくグラーフの表情は呆れているのだろう、しかし頭の中では嫌な仮説がその瞬間産まれてしまった。
空母……大量のサディアの艦艇……もしかすると……!!
「んっ…ちょっと、あんなの話し合いにあった訳?」
懸念されていた最後のピースがハマったその瞬間、夜空に赤い信号弾が点滅する。
いや、そんな事はない、今回の戦闘ではリットリオが直接この艦隊に通信すると作戦会議で発言をしていた、つまり、サディアからの通信がまだという事は……!
「指揮官、何をやっている!?」
後方からの声を無視して心臓がバクバクと早鐘を打つ中、船内を飛び出して甲板に、赤く点滅する信号弾を目に焼き付け…その瞬間
気のせいかも知れなかった
ただの幻覚かも知れなかった
しかし…俺は何故か確信してしまった
ぞわりとした悪寒に襲われつつ海上へと目を向けると
――――白い女性と、目が合った気がした。
初めまして、投稿させて頂いておりますkiakiaというものです
今作品は某所にて行われたサイコロを振り、物語をアドリブで作り上げていくダイススレ。
その際、アズールレーン原作にて投稿された長編作品を作者様の許可を得た上で三次創作としてリメイク、独自設定を組み込みつつ投稿させて頂くことになりました。
元ネタは3ヶ月にも及ぶ日々を得て完結したとても素晴らしい作品です、その様な作品をもっと皆さんに見て貰いたい。知って貰いたい、そして私もこの世界観をもっと楽しみたいと思い、投稿いたします。
非才な身ではありますが、お付き合いして頂けると幸いです。それでは皆様次回の本編よりお会いしましょう
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄