本日の業務も終了し、窓の外は赤っぽくなり廊下は夕焼けの光に包まれた頃。
俺はひよこのぬいぐるみの様な見た目をした高性能ロボット「マンジュウ」二体に護衛されながら、とある物品を満載にした茶色い紙袋を抱えつつ、荷物を支える利き手を少しだけ震えさせて痛みに耐えつつも、先の海戦で降伏したロイヤルの捕虜が収監されている部屋に向かっていた。
絵面としては冗談としか言いようがない見た目とは言え、鉄血の軍帽を被って心なしか目がキリッとしているこのマンジュウ達は、警備用にカスタマイズされた特別仕様となっている。
その小さな身体と可愛らしい見た目を過信したものは、例え訓練された軍人であっても次の瞬間、電気銃によって無様に床に伏せる事になるだろう。マンジュウは日々改良されており、いずれ戦場で黄色い悪魔が跋扈する可能性も……別の意味で悪夢の様だな。
着任、そして初めての戦場を経験して二週間が経ちあの時経験した海戦が今や遠い昔のように思えてくる。ようやく事務仕事や、周辺海域のパトロールといった業務にも慣れてきたなと感じるが……まぁ、ヒッパー辺りにそう話せば「前よりマシになったくらいで調子にのんなっての!」と言われるだろう。
実際、これは俺一人の功績ではなく、秘書としてサポートしてくれるシュペーとヒッパーの二人には未だに頭が上がらないのだが。
そうして自身が仕事を覚える為に四苦八苦を重ねていた頃にグラーフが何をしていたのかといえば、この基地の業務だけではなく、鉄血の幹部としての事務仕事や会議や視察に加えて、この基地で拘束されている捕虜のkansen達の管理や尋問という激務をただ一人だけで行っていた。
「そんな事、卿は気にするな。我は鉄血の幹部として、当たり前の仕事をしているだけだ。寧ろも自分は鉄血に貢献したと自信を持って卿は誇れ。着任当日に五隻のkansenを捕虜にしてセイレーンを退けたのは恐らく古今東西卿くらいなのだから」
先程すれ違った彼女はそう言いながら俺に気を遣ってくれたが、その目には流石に疲労が見えていて……あの時イーグル達への降伏勧告をした事に関しては後悔はしてないが、結果論として俺がグラーフの仕事と負担を増やした事実に罪悪感を覚えてしまう。
だからこそ、自身も迷惑を掛けてしまったグラーフの負担を少しでも減らしたいと、仕事に慣れてきた今、グラーフ任せだった尋問をビスマルクに頼み込んだのがつい先日。
指揮官として認められるキューブ適正の持ち主であり、あまつさえ軍に入隊する事を選んだ指揮官は全世界を含めて数十人ほどしか存在しておらず。そんな貴重な人材の保護の為各国では指揮官は原則として名前を名乗らず、姿を表舞台に見せず、個人情報は徹底的に秘匿せよと教育を受けている。
それはレッドアクシズでもアズールレーンでも変わらず、この鉄血の全ての指揮官の情報を知っているのは上層部の一部とビスマルクさんを除けば右腕であるグラーフや、妹のティルピッツさんくらいのものだろう。
だからこそ本来、俺は捕虜として返還予定であるイーグル達への直接的な接触は情報や安全の為に禁じられている。そう、禁じられているのだが……流石にグラーフの負担を考えると、黙って見ている事は出来なかった
『はぁ……絶対に名前を名乗らず個人情報を特定される物は持ち込まない事。そしてハーグ条約に則って適切に捕虜に対応する事を忘れなければ、今回は認めるわ』
「すいません……!そして、ありがとうございます! 」
「いえ、謝る必要はないわ。捕虜達を貴方に押し付けたのは此方の都合だもの……もう一度繰り返すけど、絶対に名乗ってはいけないわよ。貴方が名乗り、そしてロイヤルに貴方の個人情報を知られてしまえば最悪、貴方の親族にまで手を出して脅迫する可能性もある。それを忘れないで頂戴」
こうして俺はビスマルクさんの許可を得る事には成功し、差し入れを紙袋に積み込み、意気揚々とまだ尋問を一度も行っていない、旗艦イーグルに与えられた部屋に向かっている。そして、今回は実はイーグルには悪いがアポ無しの訪問だ。こういう事はサプライズで相手を驚かせて見ることも大切なのだから。
ロイヤルへの尋問の戦果は芳しくなく、グラーフも苦労していることが伺える。果たしてイーグルはどこまで情報を吐いてくれるのやら……
そうこうしている間にイーグルの部屋の前に着くと、紙袋を横に置きながらコンコンと部屋をノックする。一応この基地の責任者としてマスターキーは与えられているが……捕虜にもプライベートの自由は保障されるべきであるし、何よりもイーグルが着替え中で無断で入ってしまうなんて最悪の出来事は避けたいからな、ヒッパーに殺されかねない。
「えっと、男性……?どちら様? 」
二、三回のノックの後に少しだけ沈黙を得て扉が開かれる、捕虜になった時の服とは違い私服なのか支給されたジャージ姿だ。手持ち無沙汰なイーグルは少し驚いた様子で突然の訪問者に疑惑の目を隠さずに警戒する。
情報その①
少なくても旗艦だったイーグルは俺の顔を知らない
この時点でイーグルは俺の顔を知らない事が判明する。仮に俺個人の顔写真をロイヤル本国で確認し、暗殺を狙ってこの基地を襲撃なんて可能性はここで潰えた……まぁ貴族でもなく、コネもない新人指揮官をピンポイントで爆殺するなんて可能性は、元から考えては居なかったが。
少なくてもグラーフの本名は知られてはいるが新人指揮官の自分を知らない。つまり着任する当日に予定だった自分を知られてしまう程に、完全にロイヤルに人事や基地の陣容について把握されていなかった事に少しだけホッとしつつ、敢えてニッコリと笑って言葉を紡ぐ。
「なんと言えばいいだろうか?例えば……君たちの任務の爆撃相手かな? 」
味方には優しくする、捕虜にも優しくする、それはそれとして、まだ不明とはいえ彼女達の攻撃任務に置いてはこの基地は攻撃目標になっている可能性も存在していた。着任当日に殺されかけた可能性があるのだから多少の皮肉も言いたくなる。
「……なるほど、あなたがあの艦隊を指揮していた指揮官か……それで、鉄血の指揮官殿が直々に何の用かな? 」
すると、イーグルは自身が敗北した海戦を思い出したのか苦い顔になってしまい、我ながら性格が悪いとは思うが、少しだけ溜飲は下がる。それに……
情報その②
「任務の爆撃相手」という情報で彼女は明らかに苦い顔をしていた……やはり、狙われたのはキール第三基地なのだろうか?
とはいえもっと情報が欲しい、場所的には彼女達が軍事施設を攻撃するのであればもっとも近いのがキール第三基地ではあるが、キールには鉄血海軍の重要施設であるビスマルクさんも滞在している海軍施設だけではなく、他の基地や造船所。軍人達の宿泊施設にクラップ社の支社など様々な施設が存在している。
イーグル達はキールそのものを攻撃目標としていた事は既に判明しているが、どの施設を狙っていたのか、それともロイヤルの力を見せつける為に無差別に破壊しようとしていたのか、それとも他の目的があったのか……
「うん、少し差し入れをね。ほらこの紙袋!というわけで、差し入れの為に部屋に入れてくれないかな? 」
「電気銃をもった護衛を付けて何がという訳だ……私に拒否権は無いのだろう? 」
「護衛は君を威圧する為じゃなくてこっちの安全の為、それに本当に嫌なら素直に帰るよ」
「なら帰ってくれないか?今は貴方と話したくな」
「でもなー、この紙袋結構重いんだよなー!あーこの紙袋持ってもう一度帰らないとダメだなんて嫌だなー、親切な人にちゃんと差し入れできればなー」
「こいつ……! 」
これだけの情報では流石に不十分なので笑顔を取り繕ってイーグルに交渉をすると、こちらを睨み、最終的にはため息をしつつ彼女は部屋に自分を誘ってくれた。
なんだかイーグルが好意的になってくれる可能性が粉微塵に消え去った気がするが、荷物が重いと感じたのも事実であるし、ビスマルクさんに話した手前でこのまま黙って帰るわけにはいかない。
情報その③
サプライズでやってきて部屋にいれても構わない、つまり家探しされても問題ないと思っているのかそこまで頭が回らないのか?いずれにせよスパイと旗艦が秘密裏に密会している可能性は低い
とはいえこちらへの印象は悪くなったが、逆にいえば、部屋に入って家探しをする可能性があるクソ指揮官という評価になっていても仕方ない俺を部屋にいれてくれる以上、今の所はスパイと密会していた証拠といったバレて困るものは何もないのだろう。
もっとも恐れていた事の一つがこの基地の警戒網を突破して彼女がスパイと密会していた事だが、少なくてもその可能性が限りなく低くなった事は祝うべきか。
ムスッとした顔のイーグルが入れてくれた部屋の中は、自分の部屋とほぼ変わらない白い大理石の壁に、赤と黒を基調にした家具が設置されている清潔感のある内装だ。
強いて言うなら鉄血の英雄の絵画が彼女の要請なのか取り外されており、代わりに先ほどまで飲んでいたのか、ロイヤルらしい紅茶セットが机の上にある事が違いといった所か?
それにしても、よく考えれば家族を除けば、人生初の女性の部屋にお邪魔するのが、こちらを睨みつけている捕虜相手かぁと少しだけ虚しくなるも、袋を地面に置いて椅子に座ってふうと一息。
「座らないの?疲れるよ? 」
「すまないが貴方と仲良くお茶が出来る程、私は貴方に心を許してないんだ」
「これは手厳しい」
当たり前とはいえイーグルからこちらへの警戒心はMAXなようで、椅子に座らずに壁に寄りかかって此方を睨んでいる。完全に嫌われてるなぁ、まぁいきなり女性の部屋に強引に訪問したんだから当たり前か……なんて思いながらヨイショっと地面に置いていた紙袋を机の上に置いて中身を開き、それをイーグルに見せつける。
「なんだこれは……」
イーグルは本気で困惑した目で中身を見つめる。
「あっこれ?君たちが焼くはずだった基地で取れたジャガイモだよ?この袋以外にも全員分あるから味わって食べなさい。マンジュウに頼めば色々と調理してくれるからね」
袋の中身は未調理のジャガイモ、大振りなものかは小ぶりなものまで沢山あり、土も付いていて中には芽が出ているものも。
この基地では自給自足も兼ねてマンジュウが鉄血の食事には欠かせないジャガイモを栽培しており食事の芋にも使われている。そんな基地産のジャガイモを持ってきたのだ
根にもってる訳ではない、反応を見て情報が欲しいが決して着任同時に殺されてた可能性を思って、このジャガイモも君達が基地を焼けば無駄になっていたんだとまっっったく根に持ってる訳ではない。
「ジャガイモの芽には毒があるかも知れないからちゃんとマンジュウに頼んで調理して貰いなよ」
「食事は充分とれているが……その、感謝する」
中身を見せた後、紙袋を部屋の隅に置きながらイーグルを見つめると敵意や警戒以上に困惑によって少し混乱しているようだ。
いやー、困惑するイーグルの顔を見れてよかったよかった!皮肉も恐らく理解したようだし、これで意趣返しは成功だな!よし帰るか!
なんて嫌がらせに満足して帰るも無く。
情報その④
基地を焼くはずだったと言ってもイーグルは否定しない。戦場で苛烈な発言をしていた彼女であればそのような事していない!!と言いそうな物だが……これはもう黒だろう。
少なくても「この基地が」攻撃目標だった事は先程の反応を見る限り確定だろう。とはいえ「この基地が」ではなく「この基地も」である可能性も少なからず存在しているが……やはり着任当日に殺された可能性があったのかと少しだけ背筋が寒くなって、ゾッとするがその様子をイーグルは気づいた様子はない、ジャガイモ万歳だ。
「いやー喜んで貰えてよかったよ!じゃあ此処からは……真面目な話しようか」
内心肝が冷えたことを悟られずに、気を取り直して本題に入るとしよう。ヘラヘラした顔を真面目にして彼女に話しかけると、先程まで困惑してたイーグルは一転して険しい表情に。
「申し訳ないが質問に答える事は出来ないぞ、女王陛下や国家を裏切りたくはない」
イーグルは敗戦したバルト海海戦を思い出したのだろう、さらに険しく自分を責めるような顔になりながらもあの時、降伏勧告を受諾した時のように決心を決めて、こちらを殺意の籠った目で睨みつける。
「例え貴方に拷問されようが、犯されようが私は情報を吐かない。先に言っておくが、もし四人を人質にして情報を強要するというのなら……私は今すぐ舌を噛んで死ぬ」
「……それは困るな、色々な意味で」
その瞬間マンジュウたちも電気銃を構えて自殺を阻止しようと一触即発の重苦しい空気で部屋が包まれる。
「銃を下ろせマンジュウ……なぁイーグル。自分は貴方との約束を守って捕虜の扱いはハーグ条約に則って適切な扱いをしている、決して捕虜の拷問なんてしないし、犯すなんて考えた事もない。他の四人に手を出していないんだから落ち着いてくれ。それに……」
まさかノータイムで自殺を仄めかすとは完全に此方の落ち度だ、ロイヤルの忠誠心を舐めていたと反省しながら心臓をバクバクと鳴らしてパニックになりそうな気持ちを抑えながら、イーグルを説得する為に向き合う。
「君が自殺すれば四人の自殺防止の為に処置をしなければいけなくなる。今の君が言った様に自殺を防止するために口を塞いでベッドで拘束。食事は栄養を点滴で行うのみになり、下の世話も全て人にやってもらう必要になるんだ……」
「……」
「確かに鉄血としては君が自殺をしてしまえば既にロイヤルに捕縛した時の写真は送っているんだ、ロイヤルに捕虜を虐待して殺害したと思われる事は避けたい……そして君としても四人の捕虜が捕虜ではなく人間以下の扱いになるのは嫌、だろ? 」
「脅しか? 」
「脅しではなく忠告かな?事実を言ったまでだよ、捕虜が自殺すれば捕虜を守ろうとする義務のある鉄血はそうせざる得ないんだ」
実際に自殺防止として極端な例を挙げてしまったが、イーグルが自殺をしてしまえばビスマルクさん達は残ったデューク・オブ・ヨーク達の自殺を防ごうとするだろう。そうすれば、今の比較的自由な扱いも喪失し、確実にプライベートも何もない監獄と変わらない扱いで監視しなければいけなくなる。
それにしても祖国や忠義の為の発言とはいえ、ここまでする彼女に慕われているクイーン・エリザベスはどんな人物なのだろうか。写真でしか見た事がなく、ロイヤルの政治中枢にまで影響与えるほどの傑物とは知ってはいるが本心から彼女な忠誠を誓っているのだろう。
「……艦隊の他の子は、本当に何もないんだな? 」
「そりゃもう、しっかり保護させてもらってるさ。情報を引き出そうとする為に無理強いもしていないし、なんなら書類は予め渡しているだろう。申請すれば捕虜同士と面会できる処置も可能だから確かめろ。少し前にグラーフがキュラソーと面会をしていたがキュラソーに話を聞けばいいさ」
わからない。
イーグルは一言ボソリと呟くと、理解不能といった様子でこちらに言葉を突きつける。
「わからない……捕虜を好待遇にして、質問に答える気がないと言えば、それでも貴方は別に構わないと言って私に何もする様子はない。
そして、笑いながらジャガイモを渡して皮肉を言いに来たのかと思えば、今度は情報を引き出そうとして、今度は私も含めた捕虜達皆の命を守ろうとあの時の口約束を守ろうとしている。わからない……私には貴方の考えが理解できないんだ」
「さぁね?優しくしようとする俺と情報を引き出そうとする俺。どちらが本心の俺ではなく、どちらも本心の俺かも知らないし、どちらも偽りの俺かも知らないな」
あの海戦で必死に忠義と仲間の為に戦って勇気ある決断をしたイーグルに死んでほしく無い、そして捕虜の代表として鉄血軍人としてはイーグルに死んでもらっては困る。その気持ちは両立出来るものであり、本心なのだが煙を撒く様にはぐらかす。
捕虜への待遇に関しては自分なりに色々と考えがあるのだが……わざわざ勇気ある彼女達に劣悪な環境で追い詰めるような事をしたくは無いだけだ、俺は彼女やロイヤルを憎んで戦争をしている訳じゃないのだから。
皮肉やジャガイモによる嫌がらせに関しては……まぁ、少なくても芋は美味く食べられるのだから許して欲しい。
「……ただあの時の約束を守っているだけと言えば納得するのに貴方ははぐらかす、すまないが私は貴方のことを好きになれない」
「はっはっ嫌われてしまったね……まぁ捕虜の待遇に関しては安心安全の捕虜生活を約束する。仮にこの基地から君たちが移動になっても待遇は極力変わらないように上には言っているから長い休暇とでも思ってダラダラと過ごしてくれ」
……正直言えばイーグルの言う通り。俺はあの時イーグルと交わした約束、ハーグ条約に乗っ取って捕虜を適切に保護しているだけだ。
それに戦争にもルールはある、仮に俺が捕虜であるイーグル達を虐待でもしてしまえばロイヤルの捕虜になった鉄血の人材が意趣返しをされかねない。
なにより、そんな胸糞悪い事は少なくてもこの基地では俺の目が黒いうちは絶対にやりたくなかった。それは自身を信じてくれたシュペー、ヒッパー、グラーフ、ビスマルクさんの信頼を裏切ることになるのだから。
「君が私を嫌うのは当然だろうし、協力しなくても良い。ただ今日は質問に一つだけ答えて欲しいだけだ、それを答えなくてもいいしそれさえ終われば俺は直ぐに部屋から出て行くのだから……なんならマンジュウを下がらせようか? 」
実際の所イーグルの仕草から少しとはいえ状況は会得しているがそれ以上に踏み込みたい気持ちもある、とはいえこうなってしまっては長々と紅茶を飲んで和やかにお喋りは期待出来なくなってしまったが、イーグルの瞳をじっと見つめると彼女は再びため息を吐く。
「いや、その必要はない。それに質問には答えられるのなら答える……貴方が切実な対応をしてくれている以上それが本心ではないにしても、私が出来る事ならすると、言ってしまったからな」
疲れた様子ではあるがどうやら納得はしてくれたようだ、とはいえ仮に君たち俺たち殺そうとしただろ!おら!情報全部吐け!!なんて言えば口をつぐむ事は確実だ。
なら……すこし別の情報を引き出せるか試してみるか。
「さいですか、じゃあ質問なんだけどさ……あの時のセイレーン。本当に偶然だと思う? 」
「……なにが言いたいんだ」
イーグルは特務についての質問を待ち構えていたのだろう、呆気をとられてなにを言っているんだ?と言った目で再び困惑する様子。
「いやね?考えてもみてくれよ。ちょうど新設の基地があって、そこに大物グラーフ・ツェッペリンが所属して、更にそこに偶然ロイヤルが通りがかって、ちょうど大規模なセイレーン艦隊が偶発的に通りかかって交戦。さらにウチまで介入して大規模混戦の末でウチが勝つ」
「……いくら何でも出来すぎている、か? 」
「イエス、流石にちょっとね? 」
情報その⑤
グラーフが所属や新設された基地と伝えても驚いた様子もない。捕虜を移送した際は本部に連行してから別の人員がこの基地まで案内している。降伏勧告の際も自分達がこの基地に所属していたと一切話しておらず、申請書を見る限りイーグルは他の捕虜とは一切接触していない。
この基地にイーグルが捕虜になって二週間近くグラーフとは一切面識もなく、話してないと言うのに驚いた様子もなく、すんなりと受け入れて……やはりグラーフの本名が彼女の口から漏れた以上、この基地の存在や彼女が所属していると知っていた可能性がある
つまり……現状この基地の襲撃はグラーフの暗殺が目当てな可能性が一番高いか?
「……私達はそこまでは考えていなかったな、私達としては当初は鉄血とセイレーンが組んでいるのか、鉄血がセイレーン艦を使って狙ってきていたと思っていたが、確かに偶然としては出来すぎているな……」
「だろう?まるでセイレーンが面白がってこの状況を作り出したなんて少し思ってね」
現状セイレーンについては謎が多く人型タイプも存在しているが、ひたすら無言でこちらに攻撃を加えるエクスキューター級に、ピュリファイヤー級といった会話は出来ても話は通じないケースが多い。いくらなんでも、ここまで偶然に偶然を重ねるだなんて物語として出来すぎており、セイレーンが手引きしたのではないか?と少し疑問に思ったのも事実だ。
まぁ……セイレーンの意見も聞きたかったがそれはあくまでついでだ、今の会話で思わず欲しかった情報の一つを抜き取ることには成功した。
情報⑥
旗艦のイーグルや貴族のデューク・オブ・ヨークはセイレーンを此方が組んで狙っていたと思っていたが、それを偶然にしては出来すぎていると発言した。
つまり……鉄血と組んでセイレーンが自分達を襲った、若しくは鉄血がセイレーンの無人艦を量産したのか判断に迷っていた辺り、彼女は少なくても鉄血のセイレーン研究技術を、貴族階級や騎士階級としては上位と思われる彼女であっても、鉄血がセイレーンをどこまで操れ、そして利用できるのか把握しきれていないのだ。
セイレーンの研究技術は現在の鉄血においてはトップシークレットであり守るべき存在、少なくてもロイヤルの女王クイーン・エリザベスやその側近であれば把握している可能性はあるが、仮にも特務で襲撃しようとしていたイーグル達に知らされていない、もしくは知っていても教えることが出来ないという事は理解出来た。
情報としてはここまで獲得出来ればもう十分だろう。今回の基地攻撃はグラーフ自身を狙った可能性が高く、尚且つロイヤルはこちらのセイレーン技術に関して何処まで進んでいるのか理解していない。特に後者の相手が「知らない」という情報を「知る」事が出来たのは成果としては中々だろう。
「質問はそれだけだよ、セイレーンに関して君の意見を聞きたかったんだ。芋は好きに食べてくれ、ちゃんと申請すれば皆と本当に会えるんだから忘れずにな」
「……感謝する」
「じゃあ失礼するよ。必要な情報はあらかた貰ったし今日はこの辺で」
時間にすれば10分も経っていないだろう、自殺を仄めかすと自分を盾にするトラブルがあったものの、それ以外は尋問というよりも側から見れば芋を渡して少しだけ質問しただけ。
とはいえイーグルから情報を引き出そうとしたものの、肝心の特務部隊の目的こそ辿り着けなかったが推定証拠や小さな証拠も含めると恐らく彼女が知っている情報の多くを獲得することに成功した。
恐らく……いや間違い無く、イーグルはこのような尋問に慣れていない実直で王家に忠誠を誓っている真面目な人物なのだろう、だからこそ最初の時点で会話が成立した。
会話が成立した以上、既に目標は達成しこちらの最低限の勝利条件は満たしていたのだ。
仮にデューク・オブ・ヨークの様にひたすら黙秘を続けていればこちらも弱ったが、真面目だからこそ最低限の会話は成立して、その上で反応の節々から情報引き出せた。
まるで真面目なイーグルを……いや、実際に完全に騙して情報を抜き取ることには罪悪感を少しだけ覚えるが、此方も仕事なので見逃して欲しい。また芋の差し入れはするからね。
「待て、情報とは一体……」
「いやー気にしないでいいよ、あえて言うなら……」
ーーーーポーカーフェイス、もっと身に付けた方がいいよ。
情報協力してくれたお礼と気まぐれも兼ねてそいい、彼女の反応を見る間もなく部屋を後にする。
そして、これら六つの情報をまとめ、ビスマルクさんへの報告書にどう書くべきかな?と頭を掻きながら自室に向かうのだった
あぁ……報告に六つではなく最後一つだけ追加しておくか
情報その⑦
旗艦イーグルはポーカーフェイスが苦手である
・この基地では自給自足も兼ねてマンジュウが鉄血の食事には欠かせないジャガイモを栽培しており食事の芋にも使われている。
長きに渡るセイレーン大戦でシーレーンを破壊された各国は食糧不足に陥った過去により、基地内でも水耕栽培によって野菜を栽培する様になっており鉄血ではジャガイモを。重桜ではサツマイモを、ロイヤルではキュウリ、ユニオンではレタスといったものも作られている。
史実でもアメリカや日本も食料を基地で栽培が行われており、長期戦に備えた食料備蓄の為の自給自足もかねており、兵士達の身体が農業によって鍛えられていったという事例も。
・アズールレーンとレッドアクシズ
アズールレーン勢力
ユニオン、ロイヤル、北連、重桜、自由アイリス
レッドアクシズ
鉄血、ヴィシア、サディア
中立
東煌
ゲーム内に於いてはレッドアクシズ結成と同時に国内にセイレーンが跳梁跋扈しており、イデオロギーなどの違いもあって不仲であった北連はアズールレーンに加入しているが、東煌は重桜がレッドアクシズ加入と同時に加盟している為、本小説での時系列ではまだ中国を元ネタとしている東煌はまだ中立を保ってアズールレーンへの加入を行なっていない。
各国のスタンスとしては
アズールレーン
ロイヤル(英国)→積極的にレッドアクシズやセイレーンと交戦、イーグル達が捕虜になって不思議と沈黙しているが……
ユニオン(アメリカ)→条約によってセイレーン戦を行うロイヤルや重桜に援助はしているがkansenはセイレーン討伐のみをおこなっている部隊の派遣はしておらずレッドアクシズとは未交戦
北連(ソ連)→鉄血を警戒しつつセイレーン要塞である王冠と呼ばれる施設が国内に存在している為に、地獄の様な戦いを繰り広げている
重桜(日本)→中立の東煌との関係が不仲ではあるものの今の所はセイレーン戦に従事している
アイリス(自由フランス)→ロイヤルに信奉する国民や政治家をつれて亡命するものの、枢機卿としての正当性の証である「聖域」がヴィシア国内に存在しており、多くの国民が本土に取り残されている為正当性を得るために代表リシュリューは胃を痛めている
レッドアクシズ
鉄血(ドイツ)→バルト海海戦以降、攻勢計画を見直し、国内の防備を固めてセイレーンと交戦
サディア(イタリア)→地中海を自勢力の海にしたいと野心をたぎらせている、レッドアクシズに加盟しているものの仮に鉄血が自国をぞんざいに扱うのであれば……と不穏な様子
ヴィシア(ヴィシーフランス)→メルセルケビール以降最もロイヤルに怒りをたぎらせて国内では反ロイヤルで団結しているものの、このまま様では鉄血と一蓮托生、最悪吸収されかねないとヴィシア海軍の代表であるジャン・バールは胃を痛めている
中立
東煌(中国)→重桜との関係に問題があるものの今の所は重桜を警戒しつつ、自国のkansenでシーレーンの防衛に成功しているが今後の重桜の動きによってはどちらかの勢力に加入を目論んでいる。今の所は前線では重桜海軍と協力してセイレーンを撃破する事もあるが果たして…
・ポーカーフェイス
この一連の会話に関しては実際の所ほとんど小説化に関して肉付けでされておらず、イーグルが尋問の際にボロを出した場面や指揮官が次々と情報を獲得していく流れはダイススレの進行によって作られていきました。
詳しくは活動報告の裏話に投稿させて頂きます。
そして、誤字報告をして頂いたignes様、ディザスダー様誠に感謝致します
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄