鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

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After5話 2人の指揮官

 

 

 

 ジブラルタル海峡。

 

 西地中海と大西洋を結ぶロイヤル王国の最重要交易拠点の一つ、その洋上にて軽巡スウィフトシュアはぺこりと赤髪のファイルを持ったkansenに頭を下げる。

 

 

「お時間をお掛けして申し訳ございません、鉄血公国の皆様。ただいま許可がおりましたのでどうぞお通り下さいませ」

 

 

 何処かぎこちなさが残るものの、それは未だに癒えない鉄血とロイヤルの憎悪の傷跡ではなくただ彼女が緊張しているからに過ぎないと相対する鉄血公国に所属するkansen、改装軽空母ヴェーザーは冷静に読み解いて見せる。

 

(彼女が責任者ね……ジブラルタルなんて最重要拠点の責任者に軽巡kansenを任せるだなんてロイヤルネイビーの序列を考えるとあり得ない、こちらを舐めているのか……なんて戦時中なら考えるでしょうけど)

 

 ヴェーザーはファイルに書かれた項目を再度チェックしながらも緊張を未だに隠しきれないスウィフトシュアを見て思わず嘆息を吐きたくなるがそれを飲み込んで見せる。

 

 

 流石はあの自身の姉とグラーフ・ツェッペリンが選んだ男と言うべきなのかも知れないが、現在の任務の責任者であるヘルブスト指揮官が事前に予想していた通り、ロイヤルは軽巡kansenを責任者にせざる得ない程の人事の混乱と再編成の真っ最中である事実。それを事前に予測してみせた指揮官への底知れなさを感じずにはいられない。

 

 

(ロイヤルはクイーン・エリザベスの辞任によって彼女を信奉していた幹部クラスの人材がごっそりと失脚せざる得ない状況に追い込まれているはず。そうでなければ国民も軍部も納得するはずはなく、今頃戦艦・空母・騎士と近衛隊にロイヤルメイド隊の責任者は謹慎中かとっくに左遷されて僻地に送られているだろうし、こうして公式の対外の際に顔を見せるのは処分を免れるであろう重巡以下のメンバーか戦後に産まれたkansenやエリザベスと距離をとっていたメンバーになると思うよ、か)

 

 

 自己紹介の時にさえ彼に自身の性格や趣向を分析された経験を持つヴェーザーはそんな人財が自国の『英雄』であったことを改めて安堵する。何故そんな事がわかるの?と疑問を述べれば、ロイヤルネイビー内部の序列やロイヤルで発行されている大手の新人やタブロイド紙などを事前に読み漁り、そこから推測したと答えられた時には何とも言えない気持ちになったものだ。

 

 

(一応、私の義兄に当るんだろうけど、やっぱりヘルブスト指揮官って苦手かも……)

 

 

 空母としての同期であるエルベなどは純粋に『凄いですわ!』と尊敬の目を向けているが、ヴェーザーとしては義兄である指揮官への苦手意識がある事は否定出来ない。

 

 

 成る程、確かに性格的には素直になれない自身の長女が結婚を受け入れる程には温厚で真面目であり信頼できる人物である事は確かなのだろう。

 

 しかし、だからといって初対面で姉妹にすら話してない自身のお気に入りの焼き菓子とコーヒーの銘柄を用意されれば誰だって警戒するだろう。ましてや今回の任務の際もこちらの僅かな動作から趣味が日記を書く事と言い当て船内に予備の日記を用意しようか?と善意100%の表情を浮かべながら尋ねてきた時は流石に冷や汗を流してしまった。

 

 

 極め付けには、ジブラルタルでのロイヤルネイビーとの対応を任された時、彼が予測していた言葉は恐らく慣れない様子のスウィフトシュアを見る限り的中してしまったようだ。

 

(悪い人じゃ無いんだけど…なんだかこっちのスリーサイズまでその内把握される気がする……)

 

 

「……あの、どうかなさいましたか?」

 

 

 自身のサイズにぴったりな下着までその内用意されそうだと不安に思っていると、目の前のスウィフトシュアは心配と緊張が入り混じった表情をしており、少し思案の海に溺れていたと反省しながらも彼女は最終チェックを終えてファイルを閉じる。

 

 

「ごめんなさい、ちょっと確認に手間取ってね。大丈夫、許可は降りたからこのまま通らせてもらうわ」

 

「えぇ、王家に栄光を。そして新天地に旅立つ皆様とあなた方の航海の無事をお祈りいたします」

 

 

 そう言って頭を下げる彼女に小さく手を振り、彼女の横を通り過ぎる。正直な話思い切り睨まれながらロイヤルお得意の皮肉混じりに罵られると覚悟していたがスウィフトシュアは最後まで何も言わず、ただ静かに頭を下げて自分達を見送るだけだった事に内心で驚きながらもヴェーザーは後ろを振り返ることなく、そのまま船渠へと向かう。

 

 

(……良い子ね、あの子は)

 

 

 緊張と責務へのプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、それでも気丈かつ優雅に振舞おうとするスウィフトシュア。本音としては鉄血に思う所は色々とあるのだろう。しかし彼女はその全てを飲み込み、ただ純粋に幸運を祈ってくれる。

 

 もしも、時代や環境が違えば彼女と友人になり得た未来もあったのだろうかと考えてしまうが、そんな未来は最早あり得ない。レッドアクシズとロイヤルに生じた戦争の溝は余りにも深く、仲良くベンチで隣に座って談笑するような関係にはもう戻れない。

 

「ふぅ…こちらヴェーザー。指揮官、ジブラルタルでの臨検は完了したわ。出航の準備を」

 

『了解。どうしたんだいヴェーザー。何かロイヤルの子達と諍いでもあったのかな?』

 

 

 ヴェーザーが小型端末越しから通信行えば、指揮官は心配そうな声音が耳に響く。元来物静かな性格のヴェーザーとしては、出来る限り感情を見せずに交信を行ったというのに、一瞬で彼はヴェーザーの内面を読み取ってみせる。

 

(その察しの良さはやっぱり苦手ね…全く、彼に指揮官適正がなければ希代の諜報員か外交官。或いは詐欺師にでもなっていたんじゃない?)

 

 そんな事を考えつつも、自身の心中を悟られた事に若干の悔しさを覚えながらも彼女は平静を装いつつ、何でもないと誤魔化しながら艤装を展開させるのであった。

 

 数十年後。彼女の日記かつ自伝が書籍として鉄血にて出版される事になるのだが、彼女がそれまで完璧超人として国内に広がっていた英雄ヴァイスクレー・ヘルブストの印象を大きく変えるきっかけを作り出すのだが、この時の彼女はまだ知るはずもなかった。

 

 

 

 

 極東クルジス・エルサレム共和国の建国が宣言されて数ヶ月。世界中のそれまで虐げられてきたユダヤ人やクルド人達が安寧の地を求めて移住を進める中、問題であったのは彼らが北方連合に警戒心を持っていた事だろう。

 

 

 共産主義という思想の是非については俺自身は何も述べないが、その歴史は余りにも短く、未知の思想と国内を一つの思想に纏める為に行った宗教・思想の弾圧やセイレーンによってズタボロとなった国力の回復と市民の犠牲を防ぐ為に行った強制移住。

 

 

 それらは鉄血も含めた多くの国によってプロパガンダ込みで悪評として伝わっており、ユダヤ人やクルド人が重桜は信頼していたとしても、北方連合には警戒心や偏見を持つ事は仕方ないのかも知らない。

 

 

『コミュニストの私はこの国では嫌われている。鉄血に来てから用事があって何人かと話したけどその多くが嫌悪感情や差別感情を仮面で隠しつつ、私と接そうとしてくれていたわ。きっと、皆優しい人達なんでしょう。それでも仮面から漏れる嫌悪感は嫌でも感じられた』

 

 チャパエフさんと交わした会話を嫌でも思い出してしまう。北方連合がそれらの偏見やマイナスイメージから名誉を回復する事を内心祈りつつも、北方連合への信頼の低さは確実に移住計画に少なくない影響を与えていた。

 

 

 戦争が終結し、ユダヤ人とクルド人達は極東の地に向かう為に二つの選択肢が与えられた。一つは北方連合内陸部に存在する超巨大鉄道、シベリア鉄道を利用した陸路での移動。もう一つは移住計画の支援を表明した国家が貸し出した巨大客船などに登場してでの海路での移動だ。

 

 

 

 海路での移動は陸路以上の莫大な時間と常に未だに断続的に出現するセイレーンへの脅威が常に内包されている為に危険な道と言えるだろう。

 

 

 例えば鉄血のユダヤ人は極東に向かう為には、まずキールを出航した客船はドーバー海峡を通ってヴィシアのブレストにて補給を受け、更にイベリアとアフリカの境目。ロイヤルに所属するジブラルタル海峡を通り、更にヴィシアにてトゥーロンかマルセイユ島で補給受け、更にマルタ島にスエズ運河にインドと……何度も何度も補給やkansenの交代を得てようやく目的地に到着する。

 

 それまでにセイレーンに襲撃される事も少なくはなく、最悪海の藻屑に成りかねないが為に安全性で言えば北方連合領内の鉄道を利用するのが速さも含めて上なのだが……北方連合の鉄道に乗った一団が行方不明になるだの、賄賂を渡さなければ極寒の地に全裸で放置されるだの(その様な事を行えばソビエツキー・ソユーズは間違いなく激怒するのはいうまでもないが)偏見から始まった噂はまことしやかに囁かれ、鉄血国内のユダヤ人達は多少の危険性を考慮しても海路での移動を希望する者達が多かった。

 

 

 おかげで鉄血海軍は戦時中よりも慌しい日々を送る羽目になる。移住用に提供された客船に俺たちの指揮艦に匹敵するような大型のシールド発生装置を内蔵の為に技術者やマンジュウ達は休むまもなく働いており、kansenや指揮官達もそれらの護衛の為に出撃を命じられる。

 

 幸いな事にこれらの計画はアズールレーンとレッドアクシズに所属する全ての国が協力に合意した事によって極東に最後までついていくのでは無く、例えば俺達の艦隊は、ヴィシアのトゥーロン基地までの護衛が任務となっていた。

 

 

「報告、周囲に敵反応無し。問題ないよ主(メートル)」

 

 

 数千人のユダヤ人が搭乗する、改造大型客船を纏うように大型の青いシールドが防備を固まる中、ガスコーニュが素直に状況を報告してくれる。相変わらず可愛らしい声に思わず笑みを浮かべてしまうのは妻帯者としての性だろうか?

 

 

「了解、そのまま航行を続けてくれ。何かあった時は焦らずにな」

 

「うん……提案。終わったら、ぎゅって抱きしめてね?」

 

「……あぁ、わかった」

 

 

 あぁーもう本当可愛いなぁ!?と思わず叫びそうになるのを必死に抑えながら通信を切り、俺はふぅっと息を吐く。ガスコーニュがあんな風に自分から甘えてくるなんて本当に珍しい。

 

 恐らく出航前にシュペーからサディアで色々と聞いていたのだろうか?ガスコーニュは基本的に良い子なのだが、自身が他の皆とは違いヴィシア出身なのか少し遠慮気味に振る舞う所がある。

 

 だからこそ、そんな彼女が勇気を持って甘えたいと言ってきてくれんだ。後で沢山頭を撫でてあげよう、とはいえ盛り上がり過ぎてそのまま致しかねないが為に少なくとも今回の任務が終わるまでは自身を律しなければ。

 

 現在俺は今回の船団護衛の為にいつものキール第三基地艦隊、通称『救国の艦隊』を指揮している訳ではなく、人員もガスコーニュを除けば今回初めて出会ったkansenばかりだ。

 

 軽空母エルベにヒッパーの妹で元重巡である改装空母ヴェーザー。彼女たちが大型客船の左右を囲むように布陣し、客船内には数人の駆逐kansenがいざと言う時のために待機している。そして俺が搭乗する指揮艦とガスコーニュが先導する布陣で移民船団は海原を突き進んでいた。

 

 一応、出航前に顔合わせと一通りの訓練を行ったが、ヴェーザー以外の皆とは程々に上手くやれている筈だ。特にエルベはグラーフから訓練を受ける際に色々と俺について聞いていたらしく興味津々で夫婦生活についての質問を何度もガスコーニュに行っており、仲良くなれたようで何より……だが、昨日はガスコーニュが素直に『夜の生活』に至るまで話そうとしかけた所で慌てて止める羽目になってしまった。

 

 逆にヴェーザーはヒッパーの妹。つまり俺の義妹という事もあって色々と気を使った所、警戒心と苦手意識を持たれてしまった。とはいえ彼女も任務には手を抜かず客船内の老婆からお菓子を貰ったり、子供達に懐かれたりと年相応の姿を見せてくれたのは安心した。

 

 

 因みに何故俺が鉄血内では貴重な空母kansenの二人を指揮して移民船団を率いているのかといえば、俺が鉄血でもっとも優れた指揮能力を持つ指揮官だからだ!

 

 

 いやー照れるなぁ!ビスマルクさんから真顔でそう言われた時には即座に辞退を申し出ようとしたよ畜生!!

 

 まぁ、結局は断れずに引き受ける事になったのだが……結局の所ネタバラシをしてしまえば、鉄血海軍にて空母kansenを指揮した経験があるのは俺だけであり、更に移民船団の護衛に主力空母の二人に『英雄』である俺が指揮をすれば、危険な海を航行する際にユダヤ人の方々が安心するだろうというビスマルクさんの判断と国外への宣伝も兼ねての作戦であった。

 

 俺が一つミスすれば数千人の民間人が海に沈む事になるという事実。更に『英雄』としての官民問わない期待は重圧となり、俺の精神を蝕んでいく。もし前日に妻達の身体に溺れ、弱音を吐きながら愛し合っていなければきっと心が折れていただろう。

 

 

 男して我ながら情けないとは思うが、休暇が終わって本格的に職に復帰してからというものの、勇気を貰うため身体を重ね合う事が多くなっている。もっと言えば今回は任務とは別に個人的にもケジメを取りに行く必要がある訳で……。

 

 

『し、指揮官!大変ですの!』

 

 

 遠い目をして数時間後に俺生きてるかなぁと呟いた直後、通信機越しに慌てた様子のエルベの声が響き、瞬時に俺は意識を切り替える。

 

「どうした?何かあったか?」

 

『ここから南に5キロ先のヴィシア領海にてセイレーンの中規模の艦隊反応ですわ!というか交戦中で……えっ…?』

 

 通信途中のエルベは惚けたような声を上げる。目の前の事実に信じられないと言わんばかりに。

 

 

「敵の規模は?」

 

『え、えっと……敵20体ほどに……あ、あれって……!?』

 

「落ち着くんだエルベ、深呼吸をしてまずは状況を説明してくれ。大丈夫、わかる範囲でいいからね」

 

 

 俺は動揺するエルベを宥めながら、彼女の報告を待つ。セイレーンとの交戦経験は彼女は1〜2回だとグラーフから聞いている。それならばまだ状況を飲み込めないのも無理はない。

 

 

『ご、ごめんなさいですわ指揮官。その……ついさっきまでセイレーンとヴィシア海軍が交戦していた様ですけれど…もう、終わりましたの。全部、セイレーンは全滅してますの……』

 

 

 ……はっ?

 

 

 

 

 

 

 

 移民船団が航行する海域から南に5キロメートル程離れた海原。そこには無数の残骸となった兵器の残骸が散らばっていた。

 

 既に戦闘は終了し、周囲に敵の気配は無い。夥しいまでの敵の残骸が海原を埋め尽くしており、戦いの凄まじさを物語っている。エルベが驚くのも無理はないだろう、これだけの規模の敵艦隊が彼女索敵して間も無くあっという間に撲滅されたのだから。

 

 

『まるで暴風雨のようでしたの…二人のkansenが指揮艦からの指示に従い、縦横無尽に駆け巡って……一瞬で……中規模艦隊だと報告しようとした途端、レーダーから次々と敵が物凄い勢いで消えていって……』

 

 

 

 エルベの報告を聞きながら、俺は周囲を見渡す。

確かにエルベの言う通り、荒れ果てた海原には多数の戦艦や巡洋艦の残骸が転がっており、中には度々目撃されるようになった模倣されたkansenのコピータイプと思われる残骸も浮かんでいる。模倣艦の戦闘力は身をもって知っているが、それがこうも簡単に撃破されるとは……。

 

 

 

『こちらヴィシア艦隊。聞こえるか鉄血艦隊』

 

 

 

 セイレーンの残骸を見て不安に思っているであろう移民船団への説明と、エルベとヴェーザーに周辺の索敵にと連絡をした直後、無線から男性の声が響く。どこか無愛想でぶっきらぼうな印象を覚えるが、恐らく彼がこの鉄の嵐を引き起こした当事者なんだろう。

 

 

「ええ、聞こえます。すいません、確認の為に合言葉をどうぞ」

 

『蒼と紅に、祝福を──移民船団の事はジャン・バールから聞いている。お前達を迎えにいく予定は無かったが海のクズ共が沸いた以上、安全の為に残りの航路は護衛する。こちらの戦力は駆逐1軽巡…』

 

『やっほー!久しぶりだね、鉄血の指揮官ー!』

 

 

 

 男の淡々とした声とは対照的に明るい少女の声が響き渡る。見知った知人の声に思わず驚いてひまうが、男は面倒そうに舌打ちを隠さない。

 

 

『黙れ。通信に割り込むなガリソニエール』

 

『もー、そんな無愛想だと女の子にモテないよ?ねっマルスもそう思うでしょ?』

 

『えっ!?あの…し、指揮官は無愛想ですけど優しい所もありますし、その……』

 

『うるさい』

 

『あうぅ……す、すみませぇん……』

 

 

 

 ケタケタと笑うガリソニエールさんに不機嫌そうな男……ヴィシアの指揮官は怒気を孕んだ声で告げる。一方会話に巻き込まれたであろうマルスと呼ばれた少女は申し訳なさげに縮こまるような声を上げている。

 

 だが俺にはそんな三人が、たったそれだけの戦力でセイレーンの大艦隊を撲滅したというのだから関心すると同時にどこか底知れぬ恐ろしさを感じていた。

 

 

『とにかくだ。これよりアンタらを護衛する。進路はそのまま南へ向かえ。何かあればこちらの駆逐艦のル・マルス経由か俺に連絡しろ。では、幸運を祈る』

 

『また後でねー!というか指揮官なんでよー!明らかにあたしをハブるなんて酷くない?酷いよねー少しは鉄血の指揮官くらいの優しさと配慮があっても良いと思うんだけどさぁ……』

 

『黙れ。これ以上醜態を晒せば次回以降の編成から外すぞ』

 

『え、えっと…失礼しました!!』

 

 

 

 ブツリと通信が切れ、辺りは再び静寂に包まれる。同時に南方にてヴィシア艦隊の所属を表す印がレーダーにて浮かびあがり、やがて近づいてくるのか肉眼でもその姿を確認する事が出来た。

 

 

『向こうが座標データを送るまで反応できなかった……ヴィシアはどうやら鉄血とは別に独自のステルスシステムを用意している様ね』

 

 

『以前から似たような経験があったよ。こちらがセイレーンに襲われてる時に唐突にガリソニエールさんがレーダーに現れたりしてね。恐らくロイヤル艦隊を降伏に追い込んだのも、あのステルス機能で待ち伏せした結果だろうね』

 

 

 

 ヴェーザーの訝しむ声に思い返すように返答する。鉄血が秘密裏に黒キューブを研究していたようにヴィシアもまた、戦う為に常にその牙を研ぎ続けてきたのだろう。

 

 陣営代表であり、実質的にヴィシアをトップであるジャン・バールさん。そんな彼女には他の指揮官がリシュリュー枢機卿と共に亡命への離脱を表明する中、唯一残留を決断した優秀な指揮官が存在していると聞いた事がある。

 

 

 

『主(メートル)、行こっか』

 

 

 思う所があるのかガスコーニュが緊張した様子で俺に通信を入れる。その声は平坦で無感情な声ではなく、どこか不安げで心細さが滲み出ており、彼女の声を聞いただけで彼女が今どんな気持ちなのか理解できた。

 

 

 移民船団の護衛。それは俺が命じられた大切な任務だ。だが同時にヴィシアに向かい、ジャン・バールさんに謝罪をするのがもう一つ目的だ。

 

 ガスコーニュに結婚指輪を渡し、無断で姉である彼女を無視してガスコーニュと婚約した事を。そしてその婚約を認めてもらう為に、彼女に殴られにいくのがもう一つの目的なのだから。

 

 

 

 

 

 

「つまり……貴方はガスコーニュのお父さん?」

 

 

「おい鉄血の。二度とソイツにその言葉を口にさせるな」

 

 

 こうして俺のケジメを付けるための物語は今始まりを迎えるのであった。

 

 






 1月に骨折手術を行ったというのに今度は神経の痺れが出てきてまた手術をする事に…少し投稿が遅れるかもしれませんが、少しずつ投稿させて頂きますね。


 ・移民船団の護衛任務

 しばらくの間は結婚生活を満喫していた指揮官達ですが、本格的に全世界で行われているユダヤ人とクルド人の大規模な移住計画である河豚計画に鉄血も賛同したが為に、指揮官も英雄として護衛任務に参加することに。同時に今回の任務の合間にヴィシアに向かい、ガスコーニュに指輪を渡して婚約した事に関しての釈明と弁明、そして妹大好きなジャンお姉ちゃんにケジメを取りに行く事が指揮官のもう一つの任務となるのでした。


 ・北方連合への不信感
 今作での北方連合は基本的に全世界から偏見の目で見られており、共産主義という特異な政体と過去に国家をまとめる為に行なったいくつかの強引な弾圧とも言える行動の数々が不信感に繋がっておりソユーズ達の悩みの種となっており、本来であれば鉄道経由でエウロパ大陸のユダヤ人達は陸路にて極東に行けるはずが、結果として各国が大型軍艦や客船を利用する事で海路にて約束の地に向かう事に。北方連合への偏見が薄まるのはもう少し時間が掛かるようで、ソユーズは結果的に各国に借りが出来たことやどこまで自国が信頼されてないんだと長門にウォッカを片手に愚痴っているのは内緒です。

・ヴィシアの指揮官

ガスコーニュ「ガスコーニュはヴィシアのkansenの戦闘データから生まれた存在。つまりその指揮をしたあの人はガスコーニュの…お父さん?」

ヴィシア指揮官「おい馬鹿やめろ」



 次回、ジャン・バールブチ切れ回

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指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
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