本当に今日は清々しい日だ。
基地周辺では海鳥達は歌い、外では花は咲き乱れ、朝日が優しく港を照らし、殺風景な執務室にて私の膝の上で丸くなっている黒猫も居心地の良さそうに眠りに付いている。
今から二週間少し前か……長かった。やっとの事で新人指揮官と自身の右腕とも言える幹部グラーフ達が引き起こした史上初の鉄血のkansenが経験した大規模海戦、「バルト海海戦」への対応が終わり、私の日常は通常業務に移行したが、最早それが天国であるように思えてくる。
黒猫を膝の上に寝かせる余裕もなく不眠不休で取り込んだ対応の数々……それが祖国の為とはいえ思い出したくもない。
捕虜を公開処刑と叫ぶ一部の軍人や、ロイヤルだけではなくユニオン製の装備も鹵獲したのだから研究させろと一時間ごとに電話をかけてくるクラップ社役員。そして、水面下で上から目線で捕虜を即刻返還せよと強気な姿勢を見せるロイヤルからのメッセージ。
長ったらしい嫌味も含めた挑発的なロイヤルからのメッセージを要約すると。
『セイレーン戦のどさくさに紛れて王家の戦士達を攻撃し、無理やり降伏させた鉄血の卑劣な行動をロイヤルは非難する。即刻王家の戦士達を解放せよ』
……私の堪忍袋はよく持ったなと我ながら感心する。ロイヤル、正確には女王クイーン・エリザベスは私達が交渉のカードとして捕虜を拷問、殺害しないと読んで居るのだろう。
実際その通りとはいえ、ここまで鉄血を舐められるのも癪なのでこちらも嫌味も含めた長文の文書を作成し。
『ロイヤルのkansenは我が国の領海で捕虜になったのですが、貴女の国の戦士は戦い以前に自国と他国の領海も区別が付かないのですね?それに停戦命令も無視して砲撃するなんて、王家ではどのような教育をなさられているのでしょうか?』
と皮肉混じりに文書と共にデュークオブヨークの砲撃写真と通信記録を送ったのがつい先日、これでロイヤルが被害者として世界に鉄血の非道を発表した途端に、私達鉄血はこの通信記録を公表すると理解したはずだ。
現在『バルト海海戦』が公式記録として記載されているのは私達鉄血公国と、舞台となったユトランドのみ。図らずも世界を揺るがし、大騒動になりかねない鉄血とロイヤルの初のkansen同士の海戦は両国の暗黙の了解により闇に葬られたのだ……今の所は。
キール第三基地所属の新人指揮官の報告によれば尋問の結果、ロイヤルの特務部隊は基地に所属している幹部であるグラーフを狙った犯行の可能性が高いとなり、私達はより一層防衛とスパイの対策の為に不眠不休で取り組み、睡眠対策のために飲んだコーヒーの数は十杯より先は数えていない。
とはいえ今は忘れよう、未だにロイヤルが沈黙を保っているのは不安要素とはいえ、やっと不眠不休の耐久レースから通常業務に移行出来たのだ。今日の業務が終了したあかつきには私を心配してくれた潜水艦U-556にケーキでも送ってあげようかしら?それとも秘蔵のワインでも飲んでゆっくりと過ごすのも悪くない。
ーーしかしながら、そんな平穏な朝はあっという間に、一瞬のうちに、驚く程呆気なく崩れ去るのであった。
『こちらキール第三基地司令!!現在レス島付近の海域にて、パトロール中に発見したセイレーンと交戦中!さらにロイヤルが介入してこちらに砲撃を…くそ!まただ!!シュペー右に急いで回避を!!ビスマルクさん!応答お願いします!!』
あぁ今日も徹夜か……
基地司令の業務は平時に於いては文書の作成や物品のチェックと言ったデスクワークが主になっているが実際の業務は多岐に渡り、その中の一つに担当海域へのパトロールというものがある。
少なくも三日に一度は朝早くから指揮艦に搭乗、三人のkansenを引き連れて数時間も船の上で揺られながら、周辺海域に異常が無いか確かめる警備作業。
セイレーンは神出鬼没であり何もない場所から霧が立ち込めたと思えば次の瞬間大規模艦隊が現れるなんて事も珍しくなく。こうした警備業務は海の安全を守るだけでなく、場合によっては空砲や艦載機を飛ばす事によって簡易化的な訓練を行い、自らの練度の維持を図る目的も兼ねていた。
そして最近ではロイヤルが鉄血の本土攻撃を行おうとしたバルト海海戦以降、戦前に比べて変化したことが一つある。
それは隣接している親鉄血ながら中立を維持している国家ユトランドの事だ。
ユトランドは中立を公言しているものの、国土が鉄血と隣接してるという事もあり親鉄血国家(に成らざる得ない)という複雑な国であり、国土の多くが北海、バルト海、スカゲラック海峡、カテガット海峡と海に接している上、kansenが国内に存在しない為、彼らは今まではセイレーン対策をアズールレーン、鉄血がアズールレーンを離脱した後はレッドアクシズに任せる他なかった。
しかし状況はバルト海海戦以降変化する。それは敵がセイレーンだけではなく、アズールレーンまでもが加わった為だ。
ユトランドと鉄血の調査の結果、決定的な証拠こそ入手出来なかったとはいえ、当時の不審な船の目撃情報や捕虜に対する尋問の結果、やはりバルト海海戦前にロイヤルはユトランドへの通告もなく偽造漁船によって領海を通過していたと言う事がほぼ判明してしまった。
その結果ユトランド政府は親鉄血や反鉄血と行った垣根を超え、反ロイヤル一色になってしまった様で……最終的にはセイレーンの出現と同時に部隊を派遣するだけでなく、自国の領海のパトロールの依頼や、秘密裏にパトロールの感謝という名目による各種物資の提供といった鉄血との仲を深めることを選択したようだ。
今回の俺達の目的は、そんなユトランドの依頼の一つであり、キールから遠く離れた有人島であるレス島付近のパトロール。
照りつける日差しを浴びつつ、キラキラと海面を反射する陽の光に少しだけ感動を覚えつつも、ふと疑問に思い、龍型艤装に跨りながらも、指揮艦と並走するグラーフに個別通信を繋げてみる。
「なぁ、グラーフちょっといいか?」
『どうした卿。何か発見でもしたのか?』
「いやそういう訳じゃないけどさ……ちょっと思ったんだけど、今回の仕事はユトランドから委託って聞いたけど……同じくロイヤルに勝手に領海を使われたスカンジナビアは、この前の戦いで何も言ってこなかったのか?」
中立国スカンジナビア……ユトランドとは違い国境が鉄血と陸路で隣接していない事もあってか、余裕がある為に国内では鉄血脅威論が蔓延し、ロイヤルとの結びつきの強く、俺の知る限りではスカンジナビアは今回特にリアクションの一つもせず沈黙を保っていた。
とはいえ流石にいくら親ロイヤルともいえど国土の無断通過は世論を揺るがしかねないのでは?と色々と知っているであろうグラーフに話しかけると、苦々しい声が通信越しから聞こえてる。
『……スカンジナビアは抗議こそ行なったようだが一度だけ。恐らく形式的なもので、こちらが停戦命令無視の証拠を送った所で反応は無し。恐らくだが……』
「密約か……」
親ロイヤルのスカンジナビアならあり得なくもない、ユトランドが鉄血に接近しているのと同じくロイヤルでもスカンジナビアを取り込む為に事前に恫喝や説得も含めた様々な行動を行っているのだろう。ユトランドと目と鼻の先にあるスカンジナビアは仮にユトランドがレッドアクシズに加盟してしまえば、周りが四面楚歌になり得るのだから。
「……どこの国も大変だな、本当に」
『他人事ではないぞ、卿も指揮官なのだからその内嫌でも政治的な判断をしなければいけなくなる……学んでおけ今の内に』
グラーフが呟いた一言にため息が思わず漏れてしまう。自分はセイレーンから人々や祖国を守る為に指揮官になる事を喜んでいたと言うのに、実際にはロイヤルとの交戦や政治的な判断も頭にいれないと駄目な訳で……
『そういう意味では卿は騎士長の妹を含めた五隻を捕虜にした指揮官、ロイヤルに深く恨まれていてもおかしくはない。ロイヤル相手に個人情報は絶対に漏らすなよ』
「了解っと……その、いざとなったら守ってくれないか?」
『ある程度なら。しかし、こういう場面では普通であれば逆に男が女を守ってやると強く抱きしめるような場面だと思うのだが』
少し皮肉混じりにグラーフが口を開くも、そういう事しようにも俺体力ないんです……つい先日もヒッパーと格闘訓練を行なった時も彼女に思い切り壁に叩きつけられ、慌てたシュペーから応急手当てを受けつつ、ヒッパーに怒りや呆れではなく、本気で身体を心配された時は自室で枕を濡らしていただなんてグラーフには絶対に言えない。
「はっはっ……なんか男としての自信がなくなって来たなぁ……」
『忠告はしておくが最低限シュペーとヒッパーに嫌われない程度には男らしくしておけ。特にシュペーにゴミを見る目で見られるような男は今すぐ沈んだ方が良いだろう』
「そうならないように努力するよ、以上通信終わり!」
少しだけ強引に通信を終えるとマンジュウがピヨピヨと「使う?泣くなら使ってみる?」とばかりにハンカチに差し出してくれたが即座に断り椅子に座る。確かにグラーフの言う通りだ、俺個人の意思ではなくて政治的な判断を学ばなければいけなくなる時もあって……まぁそれは兎も角、男としてシュペーとヒッパーには嫌われないようにしておこう。勿論グラーフにも。
再びレーダーを見ながら索敵を行いつつ、パトロールに戻るも、現在の天候は本日は極めて晴天なり。海は穏やか、予兆であるセイレーンの霧も気配も微塵もない。
とはいえパトロールをしているレス島付近には友好国の民間人が多数在住しているんだ。万が一の間違いもなく備えて即応してセイレーンを撲滅出来る様に気を引き締めなければ。
『んー、平和ねぇ……セイレーンも無し、ロイヤルも無し。何かあれば問題なんだけど、こんな風に何もなければ暇で仕方ないっての』
ヒッパーが欠伸混じりに鉄血の回線を使い全員に話しかけてくる。気持ちは分かるがなんというか……それって。
「ヒッパー、フラグって知ってるか?」
『映画とか小説のお決まりのパターン?そんな事言われても早々にセイレーンやらロイヤルが変に現れる訳ないんだから、創作と現実の区別くらいつくってぇの。気にするだけ無』
『あっ、ヒッパーちゃん。前方にセイレーン反応』
リラックスしているヒッパーの言葉が終わる間際にシュペーの言葉が皆の耳に届く、同時にこっちのレーダーにも前方にセイレーンが突如現れてこっちに向かっている事が判明してしまい。
セイレーンは神出鬼没、いつ現れてもおかしくない為に急いで全員が脳を戦闘モードに切り替えつつも、流石にこのタイミングは……
「……ヒッパーお前」
『……ヒッパーちゃんそれは流石に』
『……流石の我もこれは』
「「「ピヨッ……ピヨピヨ……」」」
『は、はぁ!?私が悪いって訳!?』
船越しからマンジュウも含めた複数のジト目が一人の少女に集中し、少女は非難の視線に目を逸らしながら反論を口にする。
とはいえセイレーンの反応は前回とは違い中規模程度であり、警戒すべき高性能な人型タイプもいない。流石に俺が全ての指揮を取るとなると不安とはいえ、前回のようにある程度彼女達に任せ、普通にやれば勝てる程度の規模だろう。
三つ巴の勢力が入り混じった前回の戦いと比べれば自身が指揮や指示を間違えなければ、無傷で勝てるはずの戦いだ。
どんな海戦だって早々あの『バルト海海戦』より酷くなる筈がない、そう考えればセイレーンが現れたと言うのに不思議とリラックスをしている自分がいた。
「この規模なら落ち着いて動けば負ける事は絶対に無い筈だ。グラーフは艦載機で敵の情報を集めろ!ヒッパーは突撃しつつ戦艦ルーク級を中心に撃破、シュペーはヒッパーの撃ち漏らしを援護で撃破してくれ。指揮艦急いでシールド展開!以後集音モードで会話を!総員戦闘準備!我が同胞のために鉄血の力とならん事を! 」
「「「了解」」」
そう……普通なら『バルト海海戦』より酷くなる筈がない、この時まではそう信じていたんだ。
それが悪夢の始まりとも知らずに。
敵と接敵すると同時に戦場に響く砲撃音と共にヒッパーとシュペーが目の前の量産艦を海に沈める、偵察を終えたグラーフの艦載機が地獄のサイレンを鳴らすごとに敵セイレーンが一体、また一体と吹き飛んでいく。
ふと振り返ると指揮艦の後方には遠目から見ても緑豊かだと分かるレス島の姿があり、今自分はあの島に、そして島に住む人々の命を守る為にヒッパー達と共に戦っているのだと少しだけ胸が熱くなる。
「指揮艦は待機!ヒッパー右方向にポーン級二!シュペーは左に避けろ!グラーフはシュペーの援護を!絶対に守るぞ!島を! 」
目視で分かる敵は目視で、少し離れた場所にいる敵にはレーダーを確認しながら敵の攻撃タイミングを予測して彼女達が攻撃を喰らわない様に立ち上がりながらマイクを掴みながら必死で指示を出す。
この状況を安堵こそしているが油断するつもりはない、とはいえ敵の損耗は既に30%を超えており、敵増援の気配もなく制空権も握っている、少しだけヒヤッとしてしまったが撲滅には問題なさそうだ。
後はそう何も、何も起こらなければ……
しかし、そんな願いも虚しく
「えっ、きゃぁ……!?」
「シュペー!?」
突如セイレーンがいない筈の指揮艦の後方より、砲撃が轟音と共に戦場を切り裂いた。
「シュペー!応答を! 」
「だ、大丈夫。濡れただけだから……でもなんで……」
至近弾の水飛沫によってシュペーの艤装が水まみれになるも、命に別状は無さそうなのは幸いか。とはいえあまりの出来事にヒッパーもグラーフも呆気をとられたかの様に、何があったのか説明をしろという視線がこちらに向けられる。
「なに!?指揮官何があったの! 」
「緊急事態だ!!後方から砲撃が飛来した!注意しろ!!」
そう言いながら舌打ちをしつつ、焦燥感に駆られながらレーダーを確認すると、その正体は即座に に明らかになった。友軍はこの海域いると報告は受けてはいない、つまりこれは……!
「識別コード、アズールレーン……ロイヤル!?」
本来この海域に存在しない筈のロイヤルの反応に二週間前の海戦を思い出し、またかよぉ!!と叫び出しそうになるのを堪えつつ、落ち着いて現状の把握を行う。
敵セイレーンの損耗率は40%で突如飛来したロイヤルからの砲撃。
なぜロイヤルが?こちらのパトロール情報を掴んでいて、グラーフの暗殺をまた狙っているのか?それとも偶発的な遭遇戦か?
そうこう考えるも急いで鉄血本部に通信しつつ、グラーフに敵ロイヤルの情報を偵察機で集めて貰おうとするも、轟音、轟音、また轟音。重巡の砲撃とは比べ物にならない空気を切り裂く悪魔の様な砲弾が次々と此方の方向に飛来してしまい、自身の脳内のキャパシティを一気に限界ギリギリへと落ち込んでしまう。しかし、その状況でただ一つ分かる事は。
「グラーフ偵察機を後方に飛ばせ!!気をつけろ!!敵さんセイレーンじゃなくてこっちばかりを狙ってる!多分な! 」
音量を一気に上げてマイク片手に三人に急いで予測を伝える、不自然なまでに今まで飛来した十発近くの砲撃、それら全てがセイレーンに擦りもしなかったという事実。
どうやら相手の狙いは完全に鉄血艦隊に絞られているようで、セイレーンの数は一体も減っておらず。寧ろ後方から飛来した砲撃でこちらの体勢が乱れると同時に、飢えたハイエナの様に近づいてきてヒッパー達を殺戮するための無慈悲な砲撃を再開する。
「あーーもう!!ロイヤルは何考えてるのよ!! 」
目の前に近づくナイト級に榴弾砲撃を与えて火だるまにしつつも、ヒッパーは呪詛の様に恨み節をこぼしている。
それもそうだ、よりにもよってセイレーン戦の途中に武力介入されるだなんて……この理不尽な状況に思わず怒りが湧くも、それがバルト海海戦に於けるイーグル達と似たような状況である事をふと思い出してしまう。
確か重桜か東煌には因果応報なんて言葉があったな、自分がやった出来事や過去の所業が自分自身に振り返る。まさにそれが今の状況という言うことか!はははクソォ!!
「敵艦四隻、しかし煙幕を貼られている為艦種の特定はできないが恐らく二隻……いや三隻の戦艦による砲撃。今の所は周囲に他の敵影は存在してないが次々と援軍がやってくる可能性も視野にいれろ。どうする卿?」
ご丁寧に煙幕でこちらの情報取得を妨害しているという嫌な情報をグラーフが伝えられ、再度口を開こうとすると、敵セイレーンの砲撃によってこちらの言葉が阻害される。
グラーフに集中してロイヤルに爆撃をして貰おうにもセイレーンが邪魔で妨害されてしまい、煙幕がある以上効果も薄いだろう。そしてヒッパーとシュペーが敵セイレーンに砲撃する体勢を取ろうとした途端に、後方からの砲撃でそれすら邪魔をされてしまいセイレーンの撲滅速度は目に見えて低下している。
まさに四面楚歌、前方からのセイレーンに後方からこちらのみを狙う戦艦の砲撃によって着々と俺たちの艦隊は追い込まれていく。セイレーンのみで有れば確実に勝てる筈の戦いの行方が一気に劣勢に傾いていく。
「指揮官後退を!あの時のロイヤルと違ってこの数ならセイレーンを無視すれば下がる事も……!」
妨害行為を受けながらも懸命に敵艦を鎮めようとするシュペーからの提案、確かに完全に敵地であったイーグル達と違って少し遠いがこちらは鉄血の勢力圏だ。下がれば全員無事にキール基地に帰還する事は可能だろう。
功を焦っているわけでもない、今帰れば苦い敗北が待ち受けているが確実に皆の命を守る事は出来るんだ。俺がやるべき事は今すぐ撤退命令を出して皆の命を守ることなのだろう。
そう……俺達鉄血艦隊の命、だけは。
「今ここで後退すればレス島がセイレーンに襲われる可能性が高い……ロイヤルがこちらが下がった後セイレーン戦をそのまま引き継いでくれるかどうか分からない以上、後退は許可、出来ない……!少なくてもセイレーンを撃破しない限り、は……!」
「…っ…!」
爪で手のひらが痛い程に手を握りつつ、絞り出すようにシュペーに声をかけると、ロイヤルからの砲撃を避けつつ絶句するシュペー。
そう……今ここでセイレーンを最低でも撲滅しなければレス島の住人に被害が出る可能性がある。自分達が後退して、残りのセイレーンをロイヤルに任せようにも、ロイヤルが果たしてセイレーンを素直に撲滅してくれるかわからない。
最悪のケースでは自分達が逃げた後、セイレーンはレス島に攻撃。島に被害が出るのを黙認してから、ロイヤルは悠々とセイレーンに攻撃を加え、鉄血が尻尾を巻いて逃げ出し、卑怯な鉄血の代わりにレス島を救ったと言いかねない。
つまり最低でも俺達はこの状況で、セイレーンだけはまず撲滅しなければいけない。考え過ぎかも知れないが今下がれば住民ごと生活インフラはセイレーンに焼かれていき、外交的にも鉄血が不利になり、ユトランドがロイヤルに靡く可能性も出てくるのだから。
……グラーフに直前に言われた政治的判断を学んで理解しろというシチュエーションに今まさに遭遇してしまったというのが皮肉以外の何者でもない。
「すまない、こんな状況に追い込んで……指示は砲撃を避けながらセイレーンを一刻も早く撲滅するんだ。ただし避けることを優先して無茶だけはするな!焦ればロイヤルの思う壺だ!」
「了……解……!!」
「了解」
「……了解」
マンジュウに指示を出して砲撃を避けながらシュペーの顔を窓越しから見ると、顔を歪ませて艤装の手をギュッと握りつつ、明らかに怒りを堪えながら砲撃を避けている。
文句を言いそうなヒッパーも何も言わずに、グラーフも短く了解と口にしただけ。
しかし、短い会話の中からでも、その言葉の節々から怒りを感じる。人類の敵のセイレーンを放置して真っ先にこちらを狙っているのだから当然だろう。俺自身も深呼吸をしながら指揮を取りつつ思わず叫び出したいのを我慢しているのだから。
逃げる事は状況的には可能だが政治的には不可能。
最低でもセイレーンを撲滅してから撤退しなければ、守るべき友好国の住民が犠牲になる可能性も捨てきれない。
そして、仮にセイレーンを撲滅し撤退しても、ロイヤルの戦果だと言われかねないと言うわけで。
「また三つ巴かよ!クソがぁ!!」
思わず帽子を床に叩きつけながら悪態をつき、三つ巴どころか前方と後方から挟み込まれたような状況。この瞬間だけはロイヤルに呪詛の言葉を送りながら本部に援軍要請の為の連絡をとりつつ。
長い、終わりの見えない耐久戦の幕が開けるのだった。
・ロイヤルが果たしてセイレーンを素直に撲滅してくれるかわからない。
本来レス島付近の防衛はレッドアクシズが担っており、国境がスカンジナビアから近いとはいえこの時点でロイヤルはユトランドへの領海侵犯を行なっており、ロイヤルを信じるのは難しいものでした。
指揮官は考え過ぎかも知れませんしロイヤルは実際は勘違いして『偶然』鉄血にだけ砲撃を加えている可能性もあります、しかし最悪の可能性が存在する以上、指揮官の部隊は後退を選択する事はレス島を見捨てるのと同義。勝利目標こそセイレーンの撲滅でかわりませんが、そこに後方から常にこちらを狙った砲撃がなされていない事もあり、命中しない様に避けてストレスを溜めつつも対処する必要があります。
・大騒動になりかねない鉄血とロイヤル初のkansen同士の海戦は両国の暗黙の了解により闇に葬られたのだ……今の所は。
今ここで鉄血がバルト海海戦が世界中に広まって仕舞えば、レッドアクシズとアズールレーンの戦いは後には引けなくなります。その為指揮官の初陣とは思えない功績は今の所は闇に葬り去られてしまいました……しかしバルト海海戦で指揮官の上層部評価が上がったのは確実であり、ビスマルクも彼の忠誠と行動に報いる為に恩賞を企画したのですが……指揮官が動く毎に激務がどんどん増えていく為にそれどころではないそうな。
・ビスマルクの休暇
陣営代表は最悪休暇も仕事になる訳で……いよいよ二週間連続で徹夜になりそうです。
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄