鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

112 / 144
After8話 屋上にて

 客人用に用意された豪奢な部屋のベッドの上で横になっていたが、先程のジャン・バールさんとの一件もあってか眠気は一向にやってこない。そもそも今日一日で色々なことがありすぎて疲れは溜まっているはずなのに目が冴えて眠れないのだ。

 

 

(参ったなぁ……)

 

 全身を殴られた痛みはまだズキズキと残っているが、それよりも精神的疲労の方が遥かに大きい。身体は鉛のような重さを感じており、だと言うのに眠気は全くと言っていいほど感じていない。生クリームと蜂蜜がたっぷりと入ったココアを喉に流し込むがそれでも睡魔は襲って来ず、嘆息混じりに服を脱ぎ、そのまま部屋に備え付けられた浴室へと向かう。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 熱いシャワーを浴びれば多少は気分転換になるだろう。そんな軽い考えだったが、予想以上に熱湯に近い温度だった事に思わずため息が漏れた。しかし今はそれが心地よく感じる。

 

 

 しばらく無心でシャワーのお湯を頭から浴びていたが、温度のせいで風呂をあがれば睡魔は寧ろ吹き飛んでしまった。

 

 以前、ヴィシアに滞在していた時は使命や定期的に襲ってくるセイレーンとの戦いに備えて直ぐにでも眠れる様に身体が自然と夢の世界に誘われたと言うのに、今日はなかなか眠れなかった。

 

 痛みだけが要因ではないだろう。リシュリュー枢機卿やヴィシアの指揮官と出会った事に公務である船団の護衛が無事に終了できた事による安堵感。さらには一応、あくまで一応だがジャン・バールさんはガスコーニュとの結婚を認めてくれたのも精神が落ちつかない理由の一つに……いやアレはまだ怒ってるわ、そりゃ今までのオレのムーブを客観的に見てみればヤリチン種馬野郎に違いないしさぁ!!!

 

 結局思考はループする。このままじゃダメだ。そう思いながら俺はベッドの中に潜り込み目を瞑るが、頭は憎らしい程に冴えてしまう。こんな時にガスコーニュと少し話したくなるが妻達の中でも屈指の「良い子」であり規則正しい生活をしている彼女は今頃夢の世界に旅立っているだろう。

 

 

「外の空気でも吸おうかな……」

 

 

 そう呟いてから起き上がり、服を着替えてから外に出ようとドアノブに手をかける。勿論ビスマルクさんから面倒事は起こすなと釘を刺されているので建物外ではなく屋上に向かうつもりだ。この時間帯なら人もいない筈だし、少しだけ夜風に当たって頭を冷やそう。

 

 バカと煙は高い所に云々とこんな時ヒッパー辺りなら皮肉を言うかもしれない。外の空気を吸うだけなら窓を開ければ良いだろうし、星空を見るだけなら同上だ。だが故郷のフランクフルトで定期的に家族と山でキャンプをしていた俺にとって高い場所から外を見下ろすのは何と言うか好きなのだ。

 

 父親が持ち込んだソーセージを食べながら妹と共に満点の星空を眺めつつ、あの星はどれだとかあの星座はなんだろう?とたわいも無い話をしたり、山頂から自然を感じつつ眼科に広がる街並みを眺めたりとしたのも良い思い出だ。

 

 今から思えば父親は俺と妹に色々な世界を見せてあげたかったのだろうか?それともただ単にアウトドアが好きだったのか……今度ガスコーニュ達を連れてキャンプに向かうのも楽しそうだ。

 

 

 俺と共に歩んでくれると誓ってくれた彼女達に少しでも家族サービスをしてあげたいと言う使命感。そしてあの時の父親の気持ちを理解できるのではないかと言う淡い期待。

 

 

「……っと」

 

 

 

 物思いに耽りすぎていたようだ。いつの間にやら扉の前に到着していた。鉄で出来た重厚なドアは幸いにも一般開放されており、鍵はかかっていなかった。ノブを回してみるとカチリ、という音ともに扉は開き、目の前には夜の帳に覆われた街の光景が広がっていた。

 

 

「おぉ……」

 

 

 思わず声が漏れてしまった。街灯は消され、代わりに建物の窓から漏れる光が道を照らしている。自身が勤務するキールの街が対セイレーン戦の為に拡充されたどこか無骨さを感じさせる街並みであると言うのなら、ここトゥーロンの港街はまるで中世の絵画に出てきそうな美しさがあった。

 

 月明かりに照らされる白亜の建物の数々。光を放つガラス細工。遠くに見える大聖堂。その全てが幻想的な雰囲気を醸し出している。それに実戦的なヴィシア海軍らしく規律正しく整然と並べられている艦艇達は夜の海というキャンパスを彩る一種の美術品の様な趣すら感じられる。

 

「ガスコーニュにも明日辺り見せてあげようかね」

 

 素直なあの子に夜更かしは良くないと怒られるかもしれないが、それでも見せたいと思う程にこの場所は魅力的であった。きっと彼女は目を輝かせながらあの星座はなんだとか教えてくれるだろう。そんな事を考えていると、不意に背後で扉が開く音が聞こえた。

 

 

「……貴女は」

 

 

 思わず反射的に護身用の拳銃に手を伸ばそうとしたが、すぐに思いとどまる。振り返るとそこには、一人の女性が立っていた。美しい金色の髪が風に靡く姿はまるで一枚の絵の様に完成されており、彼女が纏っているドレスもまた彼女の魅力を引き立てている。

 

 だが何よりも特徴的なのは罪人用に用意された発信機と電撃機能を兼ね揃えた専用チョーカーを首元から覗かせている事。そして赤く腫れた頬を白いガーゼが覆っていた。

 

 

「…………」

 

 

 女性はこちらを見つめたまま何も言わない。その瞳は何処までも深く、吸い込まれてしまいそうになる。優しげな微笑みを浮かべているが、俺がここにいるのが予想外だったのか僅かに目尻がピクついていた。

 

(さて…気まずいけどどうしようかな…)

 

 

 俺も彼女も黙ったまま見つめ合う。彼女に悪意は感じられずこの場で下手に騒ぐのは得策ではないだろう。しかし、だからと言ってこのままずっと立ち尽くす訳にもいかない。俺は意を決して口を開いた。

 

 

「こんばんわ、リシュリュー枢機卿。昼間は助け舟を出して頂きありがとうございます。眠れなくて少しだけ夜風に当たりに来たのですが……リシュリュー枢機卿もですか?」

 

 

 俺の言葉を聞いて彼女は……元自由アイリス教国代表、リシュリュー枢機卿は少しだけ驚いた表情を見せる。だがそれも一瞬の事で直ぐに元の穏やかな笑みへと戻った。

 

 

「そうですね……私も似たようなものです。初めてあの子とじっくり話しましたが、色々と想う所がありまして……」

 

 手すりに両手をついて、彼女は眼前に広がる風景を眺める。その姿は絵画のように美しく、だが同時に触れれば壊れてしまうような脆さを孕んでいる様に感じられた。

 

 

「怪我はありませんか?ジャン・バールが貴方に暴行を加えた事は聞き及んでいますが……まだ痛みませんか?痛み止めの薬でも処方しましょうか?」

 

「あはは……痛みは正直まだありますけど全部俺の責任ですから。それにジャン・バールさんも怪我は残らないように気を遣ってくれましたし、薬なんて見かけたらガスコーニュが不安がりそうですよ」

 

「そう、ですか……」

 

 

 そう言ってから再び沈黙が訪れる。俺も何を話せば良いのか分からず、リシュリューさんも話す言葉を探しているのか口を開かない。ただ、風だけが吹き抜けていく。

 

 

「……この傷、気になりますか?」

 

 

 ポツリとリシュリューさんはガーゼを指差しながら、何処か自嘲気味に呟いた。

 

 

「……気にならないと言えば嘘になりますけど……なんとなく想像は付きますし、俺がその領域に踏み込む資格は無いと思っていますから。ただ貴女が気楽になるのでしたら喜んで聴かせて頂きますし、必要であればビスマルクさんに繋ぎますよ」

 

「いえ、結構。これは私が犯した罪に対する罰なのですから」

 

 

 その口調は穏やかで、まるで自分自身に言い聞かせている様だった。彼女の真意は分からないが、これ以上の詮索は無粋だろう。例え彼女が俺にとっては義姉と言える存在だとしても、彼女の心の奥底に秘めた物を暴く権利など俺には持ち合わせていない。

 

 

 

 

「1つ、あなたに聞きたいことがあるのですが……あなたから見て、あの子はどうですか?」

 

 

 

 

 

 少しの間静かに夜風に当たっていると、リシュリューさんは何処か躊躇いがちに質問を投げかけてきた。

 

 

「どう、とは?」

 

「もちろんガスコーニュの事です……夫であるあなたから見て、でいいのでガスコーニュをどう思うのか聞かせてくれませんか?」

 

 

 真っ直ぐにこちらを見ながら、リシュリューさんは真剣な面持ちで尋ねてくる。その瞳は何かを期待していながらも、怯える子供のようでもあった。

 

 

「そう、ですね……愛しているのは勿論ですが、それ以外で彼女を一言で表すのなら……色々と成長中の可愛い女の子、ですね」

 

 

 今はスヤスヤと眠っているだろうガスコーニュの事を思い浮かべながら正直に答える。特に仲の良いシュペーを筆頭にグラーフやヒッパーに色々と聞いたり、暇な時は本を読んで自分から何かを学ぼうとしたり。

 

 特別計画艦として生み出されて一年も満たない、もしくは感情抑制プロトコルが解除された事を加味したとしてもガスコーニュは何処か精神的に幼い部分が多々ある。

 

 

 例えば定期的に一人で眠れないからと俺の部屋に来る時があったりするし、幼児向けの絵本を読んで純粋に面白いと喜びながら俺にその感想を嬉々として語る事もあり、子供らしいというか何処までも純真無垢で、だからこそ俺はそんな彼女を愛しいと思うのだ。

 

 

「成る程、純真無垢な少女と……ですがもう指輪も渡しているし、ヤる事はヤっていると」

 

 

 ぶふっと思わず吹き出しそうになるのを堪える。

 

「えぇ、ガスコーニュから指輪を見せつけられながら色々と彼女は話してくれましたから。どれだけ主(メートル)や鉄血の皆が優しいのか?どれだけ主(メートル)の事を自分は大好きなのか、そして話がヒートアップしていき思わず「そういう事」の経験について話した後、顔を真っ赤にして慌てていましたから」

 

「……さいですかぁ……」

 

 

 

 そう言ってリシュリューさんはクスリと笑う。どこか安堵した様子だったが、ジャン・バールさん程ではないがふふふと笑みを浮かべながらも軽い威圧感の様なモノを感じてしまい、思わず俺は一歩後ずさる。

 

 

 これは……第二回戦の開幕か?と左と右の頬を差し出すべきか、それとも土下座をしながら謝罪するべきだろうか?と考えていると彼女はゆっくりと口を開いた。

 

 

「安心してください、言いたいことはありはしますが…私は何も言えませんよ」

 

 彼女は纏った威圧感を雲散させると手すりに背を向けるように振り返り、再び海を見つめ始める。

 

 

「それは……」

 

「ヴィシアが忙しい時や、ガスコーニュが生まれた時

そのどちらにも居られなかったような私が、あの子の姉面をして何か言う資格などありはしませんよ……あの子はこんな私をリシュリューお姉ちゃんと慕ってくれましたが、正直あの子に裏切り者のクズだと断罪して貰った方が気が楽でした……そんな事を考えてしまった私が何処までも醜く感じてしまいます」

 

 

 そう言ってリシュリューさんは小さく自嘲気味に笑い、視線を足元へと向ける。その姿はまるで自分の罪を懺悔するようにも見えた。

 

 慰める言葉なら幾らでも思いつくが、何かを言おうとしても言葉が出てこない。自分も兄として妹を持つ身だからこそ、仮に俺が信じた道を歩み続けた結果妹を傷つける事になったとしたらと考えるだけで胸が締め付けられてしまう。

 

 国家間の戦争は終わった。恐らく彼女は引退して不自由ながらも余生を過ごす事になるだろう。今、彼女に必要な事は俺の慰めではなく、これからの事をじっくりと時間をかけて考える事だ。

 

 

「……出来る限りガスコーニュを連れて、この国に顔を出せる様に取り計らいます。今は難しいでしょうけど、情勢が落ち着いたら……貴女の心の整理がついた時に、その時は笑ってあの子を迎えてあげて下さい。ガスコーニュはきっと喜びますから」

 

 

 俺の言葉にリシュリューさんは一瞬だけ目を大きく見開くが、すぐに穏やかな表情で微笑む。元陣営の代表でもなく、国や国民を見捨てた罪人でもない。ただガスコーニュの姉として、彼女は優しく微笑んだ。

 

 

「…ごめんなさい、本来なら聞かせるべきではない愚痴をあなたに聞かせてしまいましたね」

 

 

 そう言いながらリシュリューさんは小さく頭を下げるが、正直に言って国家の代表に等しい彼女を頭を下げられるのは中々心臓に悪い。というか社会的立場を抜きにしても義理の姉とも言える女性に頭を下げられて慌てない男はそうはいないだろう。

 

 

「あ、すいません!生意気な事言って…!その、顔を上げて下さい!」

 

「いえ……そうですね、ありがとうございます。少し気持ちが軽くなった気がします。何故だか、あなた相手だと隠したい事を話してしまうような雰囲気がありますね?」

 

 

 冗談でも何でもなく、本気で言っているのかリシュリューさんは俺を見ながらクスクスと笑みを浮かべている。

 

 

「いやまぁ……俺としては、リシュリューさんのような素敵な女性が義理とはいえ姉だというのは嬉しいですが……」

 

「あら、ふふっ。お世辞としても嬉しいですが、ジャン・バールが客観的にこの光景を見ればなんで思うのでしょう?ガスコーニュの旦那様に粉を掛ける愚姉に、褒められて満更でもない鉄血の指揮官様という状況は?」

 

「いやマジでやめて下さいね!?と言うか端末から手を離して下さいっ!ガスコーニュに泣かれたくないですし、ジャン・バールさんも艤装担いで殺しにきますから…!」

 

 

 

 クスクスと笑うリシュリューさんの後ろ姿に俺は冷や汗を流しながら、彼女に気付かれないようにため息をつく。どうやら俺は彼女から完全にからかいの対象になっているらしい。俺は彼女に慈悲深いが厳格で宗教狂いな国家主義者というイメージを持っていたのだが、意外とお茶目な所があるようだ。

 

 

「貸し一つ、ですね?」

 

 

 これで悩みが少しでも和らいだのなら嬉しいが、冗談でも軽いノリでそんな事を広められてしまえば洒落にならない。

 

 特にガスコーニュに『リシュリューお姉ちゃんにデレデレな主(メートル)なんて大嫌い…』なんて言われた最後……おぇ…想像するだけで胃液が込み上げてくる。

 

 

「さて……そろそろ、中に戻りましょうか。気分転換にもなりましたが、あまり風に当たり続けて風邪を引いてしまってはいけませんからね?」

 

 

 リシュリューさんは振り返ると静かに笑みを浮かべながらそう呟き、改めて俺に背を向けるように手すりに両手を置く。冷えた風が彼女の髪を揺らす中で、彼女は小さく口を開く。

 

 

 

 それは、まるで誰かに語りかけるようにも聞こえた。

 

 

 あるいは、自分自身に言い聞かせるようにも。

 

 

 或いは、ただ単に独り言を呟いただけかもしれない。

 

 

 だが、その声色は穏やかでありながらも何処までも寂しそうな印象を受けた。

 

 

「ヘルブスト様。あの子を…ガスコーニュを、どうかよろしくお願いします。私が出来なかった分まで、彼女を幸福にしてあげてください。願わくばあの子に人としての幸せを……沢山笑い、沢山泣いて、そして大好きな貴方と結ばれて……母になる。そんな当たり前の女の子としての幸せな人生を歩ませて上げてください」

 

 

 俺は何も言わずに小さく首を縦に振る。俺にはそれしか出来ない。

 

 

 それが、俺が今出来る精一杯の事だったからだ。

 

 

「ええ、勿論です。」

 

 

 重い願いだった。だが受けない訳にはいけない。

 

 

 

「俺はあの子の夫として、家族として。ガスコーニュが笑顔になれるよう努力します。だから、安心して下さい。貴女の妹は必ず幸せにして見せます。俺を信じて下さい、リシュリュー義姉さん」

 

 

 俺の言葉にリシュリューさんは振り返らなかった。沈黙が場を支配するが……か細く、今にも崩れ落ちそうなガラス細工の様な弱々しい声が耳に入る。

 

 

 

「…………ありがとうございます」

 

 

 嗚咽を堪えるような震えた声で、リシュリューさんはそう感謝の言葉を口にする。彼女の胸中に渦巻く感情がどの様なモノなのか?彼女が今、どの様な表情をしているのか俺が知るべきではないだろう。

 

 

 

「……俺は先に戻ります、そちらも落ち着いたら戻ってくださいな」

 

 

 

 最後まで振り返らなかったリシュリューさんの背中を見ない様にしつつ、階段を下って自分の部屋に歩いて向かう。

 

 

 今の俺が彼女を慰める事なんて出来ないだろう。彼女にとって今一番大切なものは、誰かへの謝罪ではなく自分を見つめ直す事なんだろう。

 

 

 俺も増長の上で謹慎した時は皆に迷惑をかけた事への罪悪感で死にたくなった。皆を巻き込んだ自分を呪って、何度も後悔をした。

 

 

 だが、そんな時。ヒッパーは心の整理をしようと、自分を見つめ直しなさいと寄り添ってくれた。そして自分が自分を許せないというのなら、せめて忘れずに反省し、後ろばかり振り返らず前を向くべきだと気づかせてくれた。

 

 あの人もいつか心の底から笑える日が来るのだろうか?リシュリューさんだけではなく、戦争を勝利に導いて立役者である自身の上司の顔も思い浮かべながら、いつの間にか引いた痛みに気づきもせず、俺は自室へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、朝早くに目覚めた俺はベッドから起き上がる。

 

 

 気がつけばベッドで倒れ伏す様にして朝を迎えたらしく、全身に鈍い疲労感が残っている。

 

 

(……疲れているな)

 

 

 昨日のリシュリューさんとの会話が脳裏に浮かび上がり、思わずため息が出る。部屋まで戻った記憶はあるが……そこから先はベッドに入った事すらも思い出せない。怖いね、精神の疲労って。

 

 何とかベッドに腰掛けて、ぼんやりとした意識のまま壁にかけられた時計を見る。時刻は七時を過ぎた頃で、朝食の時間までは少し時間があるようだ。

 

 このまま二度寝をするのも良いが、一度シャワーでも浴びてから食堂に行くべきか……そんな事を考えていると不意に扉がノックされる。

 

 

「主(メートル)の起床時刻を確認、ガスコーニュが起こしに…あれ、起きてる?」

 

 

 ガチャリとドアノブが捻られる音が響き、部屋の中に入って来たガスコーニュが不思議そうに首を傾げる。どうやら俺がまだ眠っていると思ってわざわざ起こしに来てくれたらしい。

 

「ははっ…おはよう。今起きた所だよ。それとガスコーニュ、ちょっとこっちに」

 

「?」

 

 手招きにどうしたんだろう?と無防備に近づいてきた彼女の手を掴むと、そのまま強引に引き寄せる。

 

 

「主(メートル)?どうし…ひゃっ!?」

 

 

 隣にまできたガスコーニュを手を引いて…抱き止める様にそのまま彼女をベッドに引き倒して背中に手を回す。突然の出来事に混乱しているのか、ガスコーニュは目を白黒させており抵抗もせずに大人しく俺の腕の中に収まっている。

 

 

 しばらくガスコーニュの体温と柔らかさを堪能してから、ゆっくりと身体を離すと……顔を真っ赤に染め上げた彼女と目が合う。

 

 

「め、メートル?ガスコーニュはこんな朝からはダメだと判断……い、嫌じゃないけどエッチな事は夜になってから……」

 

 

 恥ずかしそうにモジモジとしている彼女の頭を優しく撫でると、くすぐったそうに身をよじる。だがガスコーニュは嫌がる事となく、情事を思い出してか熱っぽい吐息を漏らしながら潤んだ瞳で俺を見上げてくる。

 

 

(可愛い子だ)

 

 普段は大人しく、情緒はやや幼いが好奇心旺盛で、とても純粋で……何より俺を好きだと慕ってくれる優しい女の子。そんな彼女を愛おしく思う。

 

 

「主(メートル)……いいよ…?」

 

 

 ガスコーニュは頬を赤く染めたまま、何か言いたげに口をパクパクさせるが……結局は何も言わずに俺の胸に顔を埋めてしまう。

 

 

「……え?ちょっと寝足りないからガスコーニュを抱き枕にでもしようとしただけだよ?もしかしてそっちと思ったの?」

 

 あー……無理!!これ以上は無理!!おふざけにでもしないと本当にこのまま襲ってしまいそうだ。

 

 

「え?……ち、違う!ガスコーニュはその……そのつもりじゃなく…も、もう!」

 

 珍しく少しだけ怒った様子のガスコーニュだが、良い子過ぎるのか罵倒らしい罵倒もなく恥ずかしそうにポカポカと胸板を叩いてくるだけだ。それでも俺の腕の中から抜け出そうとしないあたり本気で怒っている訳ではないのだろう。

 

 

「…………ねえ、主(メートル)」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「ううん、何でもない」

 

 

 俺が聞いてみるとガスコーニュは首を振る。そして幸せそうな笑みを浮かべながら、ぎゅっと強く抱きしめ返してくる。今の彼女は幸福に満たされており、悩みなんて何もないと言わんばかりに穏やかな表情をしている。

 

 

(まあ……多分こういう小さな積み重ねとかでもしていけばいいのかね?)

 

 柔らかな感触と甘い香りを楽しみながら、ガスコーニュの温もりに微睡む。まだ朝食まで時間もある以上、本当に彼女を抱き枕にして二度寝をするのも悪くないだろう。

 

 腕の中の存在がただひたすらに愛おしくて、無意識に彼女を抱きしめる力を強くする。

 

 

(……この子はずっと守ってあげたいな)

 

 

 心の底からそう思い、ふわふわとした意識の中でそう考える。無防備に心を許してくれている彼女をもっと感じていたい……そう思った瞬間だった。

 

 

「ん……!?」

 

 

 突然唇に触れた柔らかい感触に目を開くと、至近距離に彼女の顔があり……一瞬遅れてキスをされたのだと理解した。

 

「じゃあ改めて……起床確認。主(メートル)、おはよう」

 

「……おはよう。なぁガスコーニュ?いいのか?俺も我慢できなくなるんだけど?」

 

「うん、構わない。ガスコーニュは主(メートル)のものだから。それにガスコーニュも……主(メートル)の全部が欲しい」

 

 

 俺の全てを求める様にガスコーニュは再びキスをしてくる。今度は触れるだけの軽いものだったが、何度も口づけを繰り返して舌を絡め合うディープなものに変わる。

 

 

「ん……っ……ちゅっ……主(メートル)……大好き」

 

 

 

 俺達はお互いを求め合い……どんどんエスカレートした結果、気がついた時には互いに服を乱し、一糸纏わぬ姿になりながらも心地の良い疲労感と偶に空腹を知らせる音に我に返る事になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん、ガスコーニュはヴィシアに置いていけ」

 

「はぁ!?」

 

 

 

 






・屋上の判定

屋上でのリシュリューと出会いのシーン。


dice1d10=8 (8)
1~3.リシュリューさんこそ、なんでこんな所に?
4~6.…本当に、向こうで聞いていた姿とは大違いですね?
7~9.…あなたから見て、あの子はどうですか?←確定
10.*おおっと*

まずはリシュリューから改めてガスコーニュをどう思うのか?を聞いてきたのだが指揮官は。

dice1d10=3 (3)
1~3.成長中のかわいい子、ですかね←確定
4~6.立派なお嫁さんですよ
7~9.いい子ですよ…俺なんかには勿体無いくらいには
10.*おおっと*

 ガスコーニュは特別計画艦として産まれて間もないがローンやグローセの姿を見る限りそれとは別にやや幼い気がするが、皆と仲良くしようとしたり好奇心でなんでも知識を吸収しようとするなど素直な女の子だと指揮官はイメージを語るが、それはそれとしてヤってはいるのだと枢機卿に絡まれる。しかし……リシュリューはそんなガスコーニュと指揮官の関係に言いたい事はあれど姉として何も出来なかった自分は口を挟むべきでは無いと話すが。


dice1d10=3 (3)
1~3.…何も言えないなぁ←確定
4~6.別に、何があろうと姉は姉ですよ?
7~9.それなら、今からでもこれからでも、姉として接していってあげりゃいいでしょうよ
10.*おおっと*

追加判定

dice1d10=3 (3)
1~3.…ごめんなさい、聞かせるべきではない愚痴を聞かせてしまいましたね←確定
4~6.それでも、ガスコーニュとはもっと話してやって欲しい
7~9.…あの子がそこまで気にするタマだと思います?
10.*おおっと*

dice1d10=1 (1)
1~3.そろそろ戻りましょうか、風邪も引くといけませんし←確定
4~6.…でも、あなたはガスコーニュの姉です、それだけは忘れないであげてください
7~9.気分が楽になるのなら、俺相手でいいならいつでも吐き出して欲しい
10.*おおっと*



 判定によっては指揮官が慰めたり、説得するダイスもあったものの、3回の連続ダイスはいずれも深く関わる選択肢にならない事に。ドラマチックな展開ではなく、今は慰めな言葉より冷却期間が必要だと。謹慎中にヒッパーによって教えてもらった通り自己批判や自分が今何をやりたいのかをじっくりと心の整理をする事が大切だと思い最低限の言葉をかける。


dice1d10=5 (5)
1~3.できる限りは
4~6.…勿論です←確定
7~9.は?無理に決まってるでしょう
10.*おおっと*


 最後にガスコーニュを幸せにしてあげて欲しいという重い言葉に、ただ指揮官は素直に頷き。その言葉を聞いた時、リシュリューは表情は見えないが指揮官は見ようとはせず部屋に一人戻っていく。



dice1d10=4 (4)
1~3.抱きしめた
4~6.ベッドに引き倒した
7~9.キスした
10.*おおっと*


 最後にガスコーニュは朝から指揮官を起こそうと健気にきてくれたが、リシュリューお姉ちゃんに可愛い妹を託されて数時間もしない内に悪い指揮官はガスコーニュを押し倒して抱き枕にしてしまいましたとさ。その様な積み重ねをこれからも必要と信じながら。



 次回、ヴィシアアフター編最終回。ですが最終判定は少し短めになりそうなので追加で少し追加しようと、またアンケートにて次回の内容について更新しましたので見たいなと思ったお話に投票していただけると幸いです。

 コメント、感想、評価をお待ちしております。

指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。