鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

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After11話 イラストリアスの妹

 

 

 

 空母kansenセントーはいわゆる戦争を知らない世代のkansenだ。彼女は本来この時代に産まれるはずの無かった存在であったが『再現』の失敗によってロイヤルの方針が鉄血との艦隊決戦に舵を切る為に急遽産み出された。

 

 

 しかし、あまりにも早期の和平締結によって彼女はその力を振るう前に世界大戦は終結してしまい、更には敗戦の責任を取る為に多くのロイヤルkansen達が粛正・左遷の憂き目にあったが為にその地位は本人すらも望まぬ形で新女王の幹部として担ぎ上げられてしまった。

 

 

 平和な時代に生まれた彼女にとって戦いは忌むべき物であり、平穏こそが至高の物であると強く信じていた。故に彼女はほかのkansenとは違いレッドアクシズへの憎悪といった感情が希薄であり、温厚で努力家な人柄もあってか純粋にヴァリアントを支える為に尽くしてきた。彼女にとってはエリザベスはあくまで前女王でありそれなりの敬意は抱いているが、あくまで自分が仕えるべき主はヴァリアントであると認識していた。

 

 だからこそ、彼女が今回の任務に対して難色を示すことはなかった。むしろ積極的に協力を申し出て、今回の各種レッドアクシズとの会談でもスケジュールを整えつつ手筈を整えた。ニコニコしながら彼女は本国にてヴァリアントの帰りを待っていたのだが、帰ってきた彼女の様子は明らかにおかしかった。

 

 

「あ、あの!大丈夫ですか陛下?とてもお気分が悪そうですが……」

 

「……あ、あぁ、うん。ごめんなさいねセントー。少し、疲れただけだから……」

 

 

 明らかに覇気のない声色で返事をする彼女に思わず心配の声をかけるが、それでも彼女は笑みを浮かべるだけで今にも倒れてしまいそうなほど顔色は悪く、心なしか肌の色艶が衰えて見えた。

 

 

「……なにがあったんですか?」

 

「……」

 

 

 その問いに彼女は答えない。だが、僅かに唇を噛み締める仕草から何かがあったことだけは察することができた。しかし、ヴァリアントは結局何も言わずに黙り込んでしまう。口数の少ない護衛のモナークにセントーは問いかけるが首を横に振るだけで相変わらずモナークは一言も喋らない。

 

 

 

「……分かりました。今日はもう休んでください。後のことは私に任せて陛下もモナーク先輩もゆっくりとお休みしてくださいな」

 

「……えぇ、ありがとう……私はエリザベス様に報告

してくるから二人は先に休んでいて頂戴」

 

「分かりました。それじゃあモナークさん、行きましょうか」

 

「……」

 

 

 コクリと小さくモナークが首肯すると、そのまま二人で部屋を出て行く。心配したセントーはモナークに何があったのか?と聞いてみるもやはり返答は無く、セントーはため息をつく。

 

 

「……私じゃ頼りにならないって事なんでしょうか?」

 

 

 セントーにとって彼女より早く産まれたkansen達は全員優れた先輩として分け隔てなく尊敬していた。地位の上では自身の方が上であっても駆逐艦にすら先輩と言いながら慕い、未熟な自分に対しても丁寧に指導してくれる素晴らしい存在だと思っていた。

 

 先輩達に近づきたい。先輩達のようにロイヤルネイビーで誰からも頼られるような存在になりたい。そんな思いから彼女は日々努力を重ねてきた。

 

 

 しかし、今のヴァリアントはまるで親とはぐれた幼子のような弱々しい姿だ。何より心を痛めたのは陛下は自分を頼りにしてくれない事。それは自身が未熟だからこそだと言う事は理解しているつもりではあったが、どうしても悔しさを感じてしまう。

 

 

「……もっと、頑張らないといけませんね」

 

 

 そんな事を呟きながらセントーはふと窓の外を見やる。ロイヤルの夜空は綺麗で、月明かりに照らされた夜景はまさに宝石箱のようであったがセントーの心の雲は晴れない。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は良くやっている」

 

「えっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 ボソリと。モナークが呟いた言葉にセントーは驚く。モナークはいつも通り無表情だったが、それでもその声音には確かに彼女を労わる優しさがあった。

 

 

「……えへへ、嬉しいですね。まさかモナーク先輩に褒めて貰えるなんて」

 

 

 嬉しそうに微笑む無邪気なセントーを一瞥もせず、モナークは踵を返すとそのまま自室へと戻っていった。

 

 

 

「……セントーの様な者がいるというのにヴァリアント。お前は……」

 

 

 自室の扉を閉め、一人きりになった瞬間にモナークの口から漏れた呟きは誰にも聞かれる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間の時が流れ、いよいよ鉄血からの使者がやってくる日だと言うのにヴァリアントの調子は一向に良くなる気配がなかった。食事もあまり取らず、ただぼんやりと虚ろな目で遠くを眺めているだけの彼女を見てセントーはただただ不安を募らせていく。

 

 

 

「……陛下、大丈夫ですか?もし体調が悪いようでしたら今日の会談は中止に致しますが……」

 

「いや、大丈夫よ…私は女王だもの。ビスマルク達に顔を合わさなきゃいけないわ」

 

「ですが!」

 

「お願いだから……私の言うことを聞いて頂戴」

 

「……はい、わかりました。でも、無理はしないで下さいね?」

 

「ありがとう、大丈夫よ。貴方も心配性ね」

 

 

 力無く笑う彼女の顔色はやはり悪いままであり、明らかに痩せこけているのが見て取れる。明らかに衰弱しきったその姿にセントーはただ見守ることしか出来ない自分の不甲斐なさを嘆く。

 

 

「セントー。対応は私とモナークでするから貴方は外で待機していて頂戴。何かあったらすぐに連絡を入れるから」

 

「はい、分かりました。陛下もモナーク先輩もどうかお気をつけて」

 

 

 

 そう言って彼女は一礼をしてから部屋を後にする。そして、その後ろ姿をじっと見つめるモナークの姿があったがヴァリアントの心は憔悴に包まれていた。

 

 

(あぁ……どうして……どうしてこんなことに……)

 

 

 彼女の頭の中で何度も繰り返されるのは『彼』の顔。何度も、何度もうなされた『彼』の言葉。

 

 

 

 

『押してるのに、わざわざ律儀に敵の話に付き合うのは馬鹿ってことだよ。覚えておくといい』

 

 

 

 彼女はずっと後悔すると同時に指揮官ヴァイスクレー・ヘルブストの事を忘れなかった。自分が彼を仕留めていればロイヤルは今頃この戦争に勝っていたかもしれない。そう思えば思う程に彼への憎悪と自身の不甲斐なさで内臓を掻きむしりたくなる程の自己嫌悪に陥る。

 

 

 

『初めまして。キール第三基地所属の司令官を勤務しております。ヴァイスクレー・ヘルブストと申します。ロイヤルからの客人の方ですね?以後お見知りおきを』

 

 

 だが、何よりもショックだったのは彼にとって自身の事など眼中に入っていなかった事だ。今でも毎日のようにあの日の悪夢を思い出している自分とは違い彼は私の名前すら知らなかった。自身が余りにも滑稽過ぎて思わず笑みを浮かべてしまったほどだ。

 

 

 

 何故、自分はこうも惨めなのか?一体どこで間違ったのか?考えても答えが出ない疑問ばかりが浮かんでは消えていく。そんな時だ。

 

 

 

「ヴァリアント様!緊急事態です!!」

 

 

 

 

 

 セントーの慌てた声と共に部屋の扉が勢いよく開かれる。

 

 

「どうしたの!?」

 

 

「こちらに向かう途中に鉄血の使者の方々がセイレーンの襲撃を受けてしまい現在鉄血の指揮官がこちらに救援要請を!大至急援軍を!」

 

 

 

 セントーの報告を聞き、ヴァリアントは一瞬だけ言葉を失う。もしも五臓六腑を口から吐き出す事が出来るkansenがいたならば間違いなくそうしていただろう。それほどまでに彼女はショックを受けた。

 

 わざわざこちらから来て欲しいと願った使者団がまさかの襲撃を受けている。世界はどう思うのだろうか?孤立したビスマルク達をロイヤルがなぶり殺して事故死に見せかけて始末しようとしていると思うのではないか? そんな事が頭を過るとヴァリアントは全身の血流がそのまま凍結したかのような感覚に襲われる。

 

 

 ビスマルクとヘルブスト指揮官が死ねばレッドアクシズの各国は激怒するだろう。最早ロイヤルの、ロイヤルネイビーの国際的地位はアズールレーン内部ですら演習からはぶられるレベルなのだからどの国も英雄二人を謀殺したと思うに違いない。

 

 

 孤立無援の状態でレッドアクシズが研究しているという無差別殺傷兵器をこちらに使用されればロイヤルは終わる。それ以前にいよいよ国民が大暴動を引き越して私達の首は絞首台に滲む血の一つも残さず消えることになる。

 

「い、今すぐよ!今すぐ近隣の部隊を鉄血の救援に向かわせなさい!何があってもあの二人だけは守り通さないと!」

 

「はい!」

 

「ダメだ」

 

 

 しかし、緊迫した空気に水を差すように冷淡なモナークの声が響き、思わずヴァリアントはモナークに正気か?と言わんばかりに声を荒げる。

 

 

「モナーク!!何を言っているの!?」

 

「近隣の部隊はやめておけ。むしろ退避させろ。それより私かセントーが出撃して──」

 

「ここから間に合うと思ってるの!?貴方馬鹿なの!?」

 

 

 

 

 金切声で叫ぶヴァリアントはモナークを無視してセントーに指示を出す。

 

 

「近くの部隊に通達。どんな手を使ってでもビスマルクとヘルブストを助け出すの。いいわね?」

 

「は、はい……」

 

 

 

 

 

 セントーは迷いを断ち切るように敬礼するとそのまま部屋を飛び出していく。ヴァリアントはそれを見送ると改めて自身に忠実ではない騎士団長に初めて怒鳴りつけんばかりの怒りをぶつける。

 

 

 

「モナーク……貴方が私を嫌ってるのは知ってるわ。でも邪魔だけしないで。ここから貴方を送った所で間に合わなければ鉄血側が全滅するのよ?それにビスマルク達が死んだらそれこそ血で血を洗う戦争の開幕よ!」

 

 

「……」

 

 

「モナーク!」

 

 

「……これを」

 

 

 モナークを懐からファイルを差し出す。それは彼女が独自に制作してのであろう近隣の部隊の編成表や周囲のkansenのパトロールのスケジュールなどが事細かに記載されており、彼女はそれを黙って机の上に置く。

 

 怒りに任せてふんだくる様にヴァリアントがファイルを手に取るとその中を覗き見る、こんな時だと言うのにモナークのファイルは彼女の文字でびっしりと埋め尽くされており、彼女の緻密な計算によって周辺海域の海流や天候の変化まで予測され、最短ルートでの部隊の移動時間から補給物資の輸送にかかる日数までもが記載されて思わず感心してしまう程だ。

 

 だが、ファイルを流し見していたヴァリアントはあるページを見て息を呑む。そこにはビスマルク達が救援要請を送った海域に最も近くでパトロールを行っているkansenの名が書かれており、ヴァリアントはその瞬間絶句する。

 

 

 モナークは決して嫌がらせや妨害目的で自身に任せろと言ったわけではないと。なんせ現在周辺海域でパトロールに従事しているkansenの名は。

 

 

 

 

 

 

 

「陛下!幸いにも軽空母ユニコーンさんがパトロール中でしたので直ぐにそちらに向かう様に───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビスマルクさん!北東よりナイト級2!クイーン級1!背後からは…!」

 

「次から次へと…キリがないわね」

 

 

 

 指揮官から報告を聞いてビスマルクは舌打ちをする。遭遇戦は彼女にとって久々の実戦であったが、彼女は焦ることなく冷静に状況を把握していく。主砲を構えて狙いを定める。そして、次の瞬間には轟音と共に放たれた砲弾が殺戮機械達を木端微塵にする。

 

 

 

 だが、敵はまだまだおり、しかも増援の気配すらある。

 

 

 

(……これは少し不味いわね)

 

 

 

 いくらビスマルクが優秀であっても連戦続きで疲労は溜まる一方であり、更に言えば弾薬も残り少なくなってきている。一瞬ロイヤルがセイレーンと手を組み自分たちをハメて謀殺する為にこの海域を航路として指定してきたのかとも思ったが、流石にロイヤル側にメリットが無さすぎると思考を切り換える。

 

 

 

 

(秘密裏の航海だったから戦力が私だけ…こんな事ならグラーフヒッパー達も同行させるべきだったわね)

 

 

 

 指揮官は未だに指揮能力は未熟ながらも必死でビスマルクをサポートしようと動いているがその動きには精細さが欠けており、焦りが見え隠れしている。

 

 

 本来であれば指揮官を叱咤し、的確な判断をさせて戦闘に集中させたい所ではあったが、生憎と今のビスマルクにそこまでの余裕は無かった。それでも彼女達が今も生き残っているのは指揮官が直接指揮するのではなく戦域の情報だけを整理してビスマルクに伝える事に切り替え、ビスマルクがそれを確認して攻撃を行う事で互いの負担を軽減しているからだ。

 

 いわゆるkansenに『高度な柔軟性をもって臨機応変に』対応させるこの特殊な指揮を即興でビスマルクが従える程に優秀であった事が幸いしたが弾薬の消耗率だけはどうしようもない。

 

 既に救援要請を出してから数十分が経過しており、タイムリミットは刻一刻と迫っている。後一人、後一人だけkansenがいれば状況は変わるのだが……。そんな思いを抱きながら彼女は迫り来る敵を迎撃していく。

 

 

 

 

 

 

 その時だ。

 

 

 

 

 

「こちら鉄血艦隊!合言葉を……チッ…ビスマルクさん!前方に模倣艦!空母kansenタイプです!」

 

 

 

 指揮官からの通信に思わずビスマルクは顔をしかめる。模倣艦と呼ばれる現存のkansenをコピーした敵個体は終戦後も少なくはない目撃・交戦報告が確認されていたがよりにもよって最も相性の悪い空母kansenタイプの出現に思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

 

 オリジナルの個体に比べて搭載機数は減るもののその戦闘能力は低くはなく、特に艦載機による攻撃力は本体性能と比べて遜色は無い。次々と放たれた艦載機がビスマルクと指揮艦に猛禽の如く襲い掛かり、それらを迎撃するも今度は量産艦が距離を詰めてくると言う悪循環。

 

 世界初の空母対決を制し、戦艦の時代を終わらせた寵児であらヴァイスクレー・ヘルブストがよりにもよって空母の攻撃で沈むなど笑い話にもなりはしない。

 

 

 

 

「……このままじゃジリ貧よ」

 

「えぇ、なんとか突破口を見つけないと……」

 

「あぁもう!面倒ね!!」

 

 

 

 ビスマルクは珍しく苛立ちのあまり叫び声を上げると艤装を変形させ、主砲を二門構えるとそれを連射して敵模倣艦を襲おうとするも相手は巧みに量産艦を盾にする事で回避してみせる。弾薬はいよいよ3割を切っており、この状況を打破する為の黒キューブも鉄血に置いてきてある以上無力感がのたうち回る。互いが同胞であるそれぞれの殿になってでも片方は逃がそうと同時に覚悟を決めたその瞬間。

 

 

 

 

 

 

「蒼と紅に、祝福を……こちら、ロイヤルのパトロール部隊…!援護するね…!」

 

 

 

 

 

 言葉を話せない模倣艦ではあり得ない何処か幼く、舌足らず気味の少女の声が響くと同時に量産型が次々と爆発四散する。彼女から放たれた艦載機は全てロイヤル製であり、かつてサディアを火の海にしようと試みたフルマー爆撃機は瞬く間に殺戮機械達を爆撃で焼き払い、制空権を拮抗状態に推しやっていく。声は幼いがその技量は決して子供だましではなく、歴戦の勇士のそれだとビスマルクは理解する。

 

 

 

 

「……ロイヤルの援軍ね……助かったわ、感謝する」

 

 

 

 だが遠方で戦う少女は一切ビスマルク達に目を向けることなくただ前を見据えている。迷いと躊躇いをどこか感じさせつつもなにかぬいぐるみの様なものをぎゅっと抱きしめつつ左右から艦載機を飛ばしており、束の間の余裕を見せる指揮官とビスマルクであったが露骨な少女の態度の意図を一瞬で理解できた。

 

 

 彼女は明らかに鉄血を快く思っていないと。それはある意味で当然なのだが、それでも援軍が無ければこの状況を切り抜けられない。せめて騙して悪いがと背後から撃たれない事を祈ろうと彼らは目の前の敵を殲滅すべく動き出すのであった。

 

 

 

 

 

「何はともあれ、無事に…とは言えないですね」

 

「……本当に、よくこれで色々と無事だったわね?模倣艦を逃したのは痛手だけど……」

 

「…運が良かっただけですよ、色々と、ね。模倣艦の手掛かりは欲しかったですが…」

 

 

 

 セイレーンの残骸に囲まれながら指揮官はビスマルクの言葉に肩をすくめ、焦げた匂いに顔を顰めつつも指揮官は小さくため息をつく。いつの間にか模倣艦は姿を消しておりあわよくば腕の一本でも残骸の回収が出来ていればと悔しがる辺りはビスマルクも指揮官も鉄血海軍らしい狡猾さと貪欲さと言えるだろう。

 

 その合間も彼らを救った艦載機は二人の頭上を警戒するように旋回しており、少女は礼をする為に近づく二人に白い馬のぬいぐるみを大事に抱えたまま微動だにしなかった。

 

 

 

「君がさっきの艦載機で助けてくれた子かな?」

 

 

 

 少女は小さくコクリと頷く。

 

 

 

 

「ありがとう、お陰で助かったわ。あなたの名前は?」

 

「……ユニコーン」

 

 

 

 

 目線を合わせるように少しだけしゃがみ込みながらビスマルクが話しかけると、彼女はしばらく間を置いてポツリと名前を呟く。警戒心が解けていないのか表情は硬く、人形の様に感情を感じさせない無表情だ。甲板に上がった指揮官にはそれが感情の奔流を必死に押し殺している様に見え、任務でなければ鉄血出身の自分達を救いたくなかったのだろうと察してしまう。

 

 

 

 

「こちら鉄血の指揮官。ありがとう、君のおかげで助かったよ」

 

「……っ…」

 

 

 

 それでも彼女が任務であれ必死になってこちらを救ってくれたのは事実だ。指揮官はユニコーンの葛藤を知って尚、感謝の気持ちを込めて感謝するが、だが彼女はキツくぬいぐるみを抱きしめ、結局は何も言わずに踵を返して先導を始める。

 

 

 だが指揮官は見逃さなかった。隠す様に抱きしめられた人形の奥から放たれた瞳は明らかに自身を睨んでいたと。明確な敵意を、拒絶の意思を。怯えと警戒の裏に潜む静かな怒りを。

 

 

 

「……私じゃなくてあなた個人……何かは…いや、互いに山程したわね」

 

 

 

 見ず知らずの少女から敵意を抱かれる理由にビスマルクは思い当たる節はいくらでもあったが指揮官個人への敵意となると恐らく捕虜関係者や元騎士団長などの関係者だろうかと首を傾げる。

 

 

 指揮官としても一瞬心が折れかけたがセイレーンがまた襲いかかってくる危険性などもあり今はユニコーンの案内に従って進むしかなかった。

 

 

 

「それじゃ、残りの道中はよろしくね」

 

 

 

 一瞬ユニコーンは指揮官の声に振り返ったが無言でプイッとそっぽを向いてしまう。妻から今回のロイヤル出張では恨まれる可能性が高いと心配されたが早速その洗礼を幼い少女から受けてしまい、指揮官はふぅ…と疲れを隠せない。

 

 

 

 

 

 空気は重くなっていく。先導するユニコーンに何度か指揮官は話しかけるがその都度プイッと視線を逸らされ、遂には無視される始末。自然と指揮官とビスマルクの口数も少なくなり誰も喋らないまま1時間、2時間と時間は過ぎていく。

 

 

 

 いよいよ日も暮れ始めた頃。ついに彼らの視界に目的となる港が見えてきた。

 

 

 

「入口、こっち」

 

 

 

 

 去り際にユニコーンは港の裏手を指差すとそのまま走り去っていき、あっという間にその姿は闇の中に消えていく。こうして二人の鉄血軍人による波乱の滞在は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに、よ…私個人としてもあなたとは話しては見たかったのよね…ねえ、鉄血の指揮官?」

 

 

 

 

 

 

 

 喉を締め付ける様な威圧感を放つ元女王。エリザベスの鋭い眼光によって始まりを迎えるのであった。

 

 

 

 

 






 今回は珍しく、原作のダイスではどのような判定が行われたのか裏側をご紹介。



ロイヤルへと向かう道中

dice1d10=8 (8)
1~3.流石に何もないよ!
4~6.ロイヤルの子達が護衛についてくれるらしい
7~9.ん?反応?←確定
10.*おおっと*


dice1d10=2 (2)
1~5.はぐれセイレーン!?←襲撃
6~8.脱走饅頭…このタイミングで?
9.ヴィシア…?
10.*おおっと*

襲撃の規模
dice1d10=2 (2)
1~4.小規模←確定
5~8.中規模
9.大規模
10.*おおっと*


小規模なのでkansenが二人いれば撃退可能とはいえビスマルクが一人と戦力が足りておらずに、更に指揮官の能力の低さも響いて押し切られそうになる。その時……


dice1d10=1 (1)
1~3.お、艦載機?←空母確定
4~6.ん、砲撃?
7~8.鉄血側から誰か来た?
9.気づかれた☆
10.*おおっと*


dice1d4=1 (1)

1~3.そりゃロイヤルよね←ロイヤルから誰がやってきたのかダイス
4.鉄血の…?



複数の判定を省略しつつビスマルクの艤装に傷がつきながら戦闘終了。


dice1d10=2 (2)
1~2馬のぬいぐるみ?を持った少女←ユニコーン確定
3~4.金髪エルフ耳の少女←セントー
5~6.なんか乗ってる…←ハーミーズ
7~8.金髪の…なにあの、耳?←ヴィクトリアス
9.あ、イーグルさん←イーグル
10.…なんで?←イラストリアス本人


ユニコーンと遭遇した指揮官

dice1d10=1 (1)
1~3.あなたを見て…いや、睨んでる?←敵意を隠せないユニコーン
4~6.…凄く複雑そうな目でこっちを見ている
7~9.…あの人が、イラストリアスお姉ちゃんを…
10.*おおっと*

道中判定

dice1d10=1 (1)
1~5.そのまま特に話すこともなくロイヤルに到着しました←融和失敗
6~8.…とはいえ、流石にこの気まずいままは辛い
9.…またセイレーン!?
10.*おおっと*


ラスト判定

誰がロイヤルに到着したらビスマルクと指揮官を部屋に案内するか?



「…よく来てくれ…ください、ました
例の件までは、暫くゆっくりしていってくださいませ」
あなた達が到着した、ととなるとすぐさまヴァリアントへと通され、そう告げられましたね
…やっぱりなんか喋り方ぎこちなくない?と思うあなたです
「ええ、それじゃ暫くの間はゆっくりとさせてもらうけれども…出来れば行くのはいけない場所とかも知っておきたいから案内も付けてもらえないかしら?」
そうビスマルクが言うと、あわわといった表情になるヴァリアントですが…
dice1d11=11 (11)
1~3.まあ引き続きユニコーンで
4~6.騎士隊…?
7~9.メイドさんかぁ…
10.…なら、私にやらせていただけないでしょう
11.なら、私が相手をさせてもらおうかしら←クイーンではない元陛下


裏側の判定はこの様な事になっており、本編ではこれらを肉付けした上で何故ユニコーンが救援にやってきたのか?指揮官とビスマルクは小規模艦隊ながらもなぜ苦戦したのか?などを付け加えつつ完成したのでした。


・ユニコーン

 ユニコーンは極めて優しく差別意識もない天使のような優しい女の子としてアニメ公式のキャラ紹介でもその様に描かれているのですが、今作のユニコーンは怯えつつも鉄血指揮官への敵意を隠せずに態度も悪くガン無視するという公式ではありえない様な対応に。ユニコーン好きな方は申し訳ございません……何故、そんな優しいユニコーンがその様な態度を?という事も含めてもう少しだけお待ちくださいませ。


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指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
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