鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

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After19話 愛と希望の暁星

 

 

 

 目が覚めた時、視界は深夜なのか真っ暗闇に染まっており背中は柔らかくも冷たいベッドに支えられていた。……一体、何が?ここはどこだ?なんでここに?俺は何をしていた?そう自問しても答えは思い浮かばない。

 

 

 状況を確認すべく体を動かそうとしたものの、まるで手足がなくなってしまったかのようにいう事を聞かず、意識は覚醒したにも関わらずずっしりと重かった。記憶を遡る事数秒、上体を起こそうと力を入れるも体に力が入らず上手く起き上がれない事に気が付く。それどころか激しい頭痛に思わず顔を顰めてしまう始末だ。

 

 

「あー…クソっ…」

 

 

 気分は最悪だ。それまで経験してきた中では5指に入るレベルの最悪だがそれでも一番最悪だった謹慎1日目の夜と比べればまだマシか。それでも自分がやらかした事を改めて自覚したせいか、気分は底無しに沈む。

 

 

「……あら、起きたかしら?」

 

「…ビス、マルク…さん?」

 

 

 

 声の主に目をやればソファーに座り本を飲みながら何かを飲んでいたらしきビスマルクさんがほんの少しやつれた様子で、それでもこちらを気遣うかのように微笑んでいるのが見えた。

 

 即座に彼女を観察すれば頬は赤く染まっており、ここまで伝わる吐息も独特の臭気を放っている。それがアルコールの類いであると瞬時に判断すれば彼女がどれだけ飲んでいて、そして酔っているか等考えるまでもない事であった。

 

 

「……起きてよかったわ。身体に問題はないらしいから今はゆっくりと休みなさい」

 

 

 

 ビスマルクさんはそう言って水差しから水をコップに注ぎこちらに渡してくれる。喉が渇いていたせいか勢いよく飲み干しては勢いのあまりむせてしまいそうになるも何とか堪える。

 

 

 

「……情けない所をお見せしまして……もう一杯頂けます?」

 

 

 空になったコップを差し出すようにこちらに向けるが彼女は無言で頷きつつコップに再び水を注いでくれる。

 

 

「……どのくらい、倒れてましたか?」

 

 

「…覚えてないかしら?半日以上気絶してたのよ。ロンドンに一度戻ってもらったタイミングで起きたのは……ちょっと彼女に申し訳ないわね」

 

 

「…ああ、そうか…そうでした…ね」

 

 

 ……ぼんやりとしていた頭が冷静さを少しだけ取り戻し…極めて格好悪い自分自身の行動を思い出す。勢いよく冷たい水を煽るが、頭は逆に冷えるどころか自己嫌悪と激しい後悔の渦に飲み込まれていく。

 

 

 

「本当に……情けない所を見せてしまいましたね……」

 

 

 

 あぁ………本当に、格好悪いなぁ…。

 

 

 

 自嘲的な笑みを浮かべながら改めて彼女に向き直るが、彼女は首を横に振る。彼女は色々と口にしていたが恐らく俺を気遣ってくれる言葉なんだろう。だが、こんな姿をグラーフ達はどう思うのだろうという思考でいっぱいでキャパシティを超えてしまい、情けなさに吐き気を催して彼女の言葉を思わず耳から受け流してしまう。

 

 

「……ごめんなさい、指揮官」

 

 

 

  暫くの間、二人の間にはなんとも言えない空気が漂っていたが、弱々しくも寂しげな彼女の声に思わず耳をかたむける。そんな事は……といつもの俺なら謝罪をしつつ自己嫌悪の海に深く沈んでいく所だが、そんな気力はもう無く……ただただ彼女の言葉を聞いていた。

 

 

「…グラーフ達から任されてたのに、私は連れてきていたあなたを『英雄』としか見てなかったわ。今日の今日まで、一緒に過ごした時間もあったのに……私は、『あなた』を見ていなかった……ロンドンさんが来なければ…どうなっていたかなんて、考えたくもないくらいには、ね」

 

 

 アルコールを含んで散々泣きじゃくったのか彼女の長い睫毛に引っ掛かった涙が居心地の悪さをより一層引き立たせており……普段の凜と振る舞う彼女からは想像も出来ない姿に動揺してしまい、不思議な事に見てはいけないものを見ているような気持ちにさせるのだ。

 

 自己嫌悪なんてレベルを通り越した自己憎悪を感じさせる表情は自身への怒りと情け無さ、そして近しい相手への申し訳ないという後悔がこもっており……深く覗き込めば夜明け前の闇にも似た昏さは見て取れた。

 

 深淵の底のような瞳に微かに震えてる指先。もし凶器が手元にあれば迷いなく彼女は自身の心臓を抉りとってしまいかねないような。そんな儚さを併せ持っている。

 

 

 彼女の有様にどうしていいか分からず、詫びるべきか優しい言葉をかけるべきなのかすら分からない。皮肉な事に人間、自分よりも酷い状況の他者が近くにいれば、逆に自分の状況の悪さを忘れてしまえる生き物らしい。自己嫌悪に陥りそうだった気分が途端にスっと晴れ渡ってしまう程度には今のビスマルクさんの様子は酷いものだった。

 

 

「…鉄血にいた時にでも、ロイヤルへ来てからでも、きっと、もっと早くこうして話し合っておくべきだったのに…忙しいから、と…向き合うのが怖くて、私は逃げていたわ」

 

 ぶるりの震えて自嘲するように顔を歪める。

 

「……あなたの事を、グラーフ達の……いやロンドンさんの半分でも理解していれば…貴方を『英雄』ではなくごく普通の人間だと知っていればきっと、今回のことは防げた筈なのよ」

 

 後悔を重ねる彼女はやりきれないと言ったように首を横に振る。俺は一体どうすれば彼女の言葉に返事をできるのだろうか……?自嘲と後悔の言葉を述べる彼女に向けて返す言葉が思い浮かばず、何かを言ってはいけないような気がして思わず黙り込む。

 

 

「また…繰り返してしまった……」

 

 

 その沈黙で更に居心地の悪さが広がったらしく……暫くしてからビスマルクさんはゆっくりと口を開いた。

 

「二度とこんな事は起こさないと努力してきたのに。二度と鉄血の仲間達が『あの子』の様に傷付かない様にと気をつけていたのに……」

 

 ぐしゃりと自身の金髪を乱し、酷く悔恨を感じているからか肩を震わせる。ビスマルクさんの慟哭に近い叫び声にも似た懺悔の言葉に俺は何も言えず、ただ聞いている事しか出来ずにいるしかなかった。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

 暫くして彼女は顔を上げた。そして……まるで憑き物が堕ちたかのようにどこかスッキリとした顔付きで俺の方を見てくると今度は謝罪してきたのだ。しかし、その表情は危うく、儚く、もしこの場で何もしなければ一生彼女は幸せになんてなれないのではないかと感じさせる程に危うげなものだった。

 

 

……だから、こそだ。

 

 

 

「それでしたら…一つだけ、お願いをしても宜しいでしょうか」

 

「……私に出来る事なら、何でも」

 

 

 

 

 ……抱かせろと言えば本気で貞操を差し出すのではないか?と思わんばかりの返答だが、こんな時に茶化してはいけないだろと一瞬だけ顕現した下心を妻達の愛情によって粉砕する。落ち込んでいる場合じゃないと喉が焼きつきそうな程熱くなり、頭に血が上るのを自覚すると微かに香るアルコールの酩酊感に誘われるように俺は無意識のうちに彼女に懇願していた。

 

 

「それなら、これからを。ビスマルクさんは俺の事を知らないと言いますし、俺だって『陣営代表』として、『上官』としての貴女の事しか知りませんから。その、一緒に互いを知っていくと言うのはどうでしょうか?」

 

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

 

 ……あの……無言で何言ってんだコイツみたいな顔するの辞めて貰えませんか!?

 

 

 

 

 

 自分なりにこれから『友達』になりましょうビスマルクさん!なんて言いながら握手をしつつ空気をいい感じにするつもりだったのに『ポカン』と呆れるのを通り越して、ひたすら無言で握手を求める俺の手をじっと見つめている。

 

 いや……違うんだ。こんな時にふざけてなんていないんだ。自分のやらかしや罪悪感が吹き飛ぶ程に精神的に余裕がないビスマルクさんを元気付けたい。俺だってもっと早くビスマルクさんに気軽に相談できる様になれば今回みたいな事にならなかった。

 

 

 だから相互理解を深めて鉄血らしく歩み寄りましょうと……ってあークソっ。いきなり何言ってんだよ自分は…!と気恥ずかしさで顔が赤くなり枕に向かって顔を勢いよく埋めてしまう。仮にもこっちを心配してくれた陣営代表相手になにほざいてんだよ!頭が上手く回っていないんだろうなぁ!?と足を思わずバタバタとしたくなるがビスマルクさんの手前そんな事は出来ない。

 

 

 

「……ごめんなさい。それはその……やめておきましょう」

 

 

 

 

 

 ……はっきりと、よく通る声でビスマルクさんはそう告げる。バカな事を言ったと思えばガチトーンでの拒絶に思わず喉の奥から詰まったような悲鳴が漏れた。

 

 

「え……そ、そうですね…すいません。馬鹿言って…本当に忘れて下さい……」

 

 

 何故、と聞いてもビスマルクさんは答えてくれないだろう。そうはっきりと分かる拒絶の雰囲気に俺はそれ以上何も言えなくなり、せめて謝ろうと努力するが喉がつまり上手く声が出ない。

 

 沈黙が流れていくと外から聞こえてくる潮騒の音がやけに煩く感じた。この状況に耐えきれないのか気まずさを紛らわす様に水を注ごうとするも用意してくれていたらしい水差しは空っぽらしく、空しい音が響くばかり……。

 

 冷めた頭で思い切り今度こそ枕に顔を埋めてバタバタと足を暴れさせてしまうが、この状況を打破出来る名案が浮かぶ事はなくただ時間が過ぎていく。

 

 

 

「……私には───」

 

 

 

 最後に彼女は何かを呟いたらしいが、その言葉をうまく書く前に俺の意識は闇に落ちていくのであった。

 

 

 

 

 

 戴冠式の日程が決まった。あと一週間後だ。

 

 出来る限り開催を急いでいるとは聞いていたがようやく帰る目処がたった事にホッとする。ビスマルクさん曰くヴァリアントが色々と裏で動いていたそうだがさっさと面倒ごとの塊である俺達を放り出したいのでは?と少し邪推してしまう。

 

 あの日以降、俺はロンドン以外のロイヤルのkansenを出会う事はなくなった。実の所食事を持ってくる際や備品の補充など以前はロイヤルメイドが必要最低限のやり取りをしていたのだが、それすらもなくなり。食事の配膳などは全てロンドンが行ってくれるようになったのだ。

 

 

『気にしないで下さい。私の好きでやっている事ですから』

 

 

 

 なんて2人でお茶を飲むときにロンドンは言ってくれるが、やるべき事も沢山あるだろうに彼女に負担をかけるのは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。トラブルを引き起こさない為にはトラブルの要因を取り除くのが一番。

 

 

 ロイヤル出身者から徹底的に嫌われている俺相手に万が一にも問題が起これば大事になる、という判断なのは理解できるが……これじゃ貧乏くじを彼女に押し付けているだけだ。

 

 彼女だって本来ロイヤルではそこそこ地位も高いだろうに……本当に、申し訳が立たない。

 

 

 それ以外の変化としてはビスマルクさんが毎晩部屋に帰ってくる事が多くなった事だろうか?内部協力者からの情報の整理などは大使館にぶん投げたのか今は一日中部屋にいる事も多くなった。

 

 とはいえあの日以降微妙に気まずくなり、ロンドンが茶会に参加しませんか?と誘っても迷惑だからと有無を言わさず部屋の片隅で本を読みつつ扉や窓を警戒、そして俺の様子を時々伺って来るというのが今のスタンスだ。

 

 

 

 

『で、気まずいからって悩んだ挙句私に連絡してきたって訳ね』

 

 

 

 通信機越しから少しだけ懐かしくなってきたヒッパーの声を聞きながら苦笑しつつ頷いて見せる。あぁ……もうヒッパーの声を聞けただけで涙が出てくる。

 

『っていうかこのバカ!泣いてんじゃないわよ!こんな深夜に突然連絡よこしてきて……あぁもう分かった!分かったから泣くな!』

 

 

 

 深夜に連絡をしてしまった申し訳なさに涙が零れ、謝罪の言葉が止まらない俺にキレつつもヒッパーは話を聞いてくれる。ちなみに現在午前1時だがヒッパーもオフだったのか、それとも俺の様子が不味かったのか通話に出てくれたのだ。

 

 

『……なるほどねぇ』

 

 

 一通り話し終わるとヒッパーは深く深くため息をついた。そのため息には色々な複雑な感情が入り混じっているかのようで、呆れと安堵、そして失望といったところだろうか。

 

 

 

『大体何カッコつけてんのよ。元女王のエリザベスのアホにバカにされた?自分達の行動を差し置いてイラストリアスの妹ヘイトをぶつけられた?その挙句小さい子に八つ当たりして最後は追い詰められてぶっ倒れた?もう馬鹿ね。大馬鹿よ』

 

 

 

 相変わらず遠慮のない罵倒の言葉が響くが事実なので反論も出来ない。情けなさと気恥ずかしさから何も言えずにいるとヒッパーはまたため息を吐いて言葉を続けた。

 

 

『私が一番怒ってる理由、わかってんの?』

 

「……意地張って家族の皆に相談しなかった事…ぐすっ…」

 

『あーもう!ほら泣ーくーなー!ガスコーニュだってこんな泣かないっての!別にアンタが相談しなかった事には怒ってないわよ』

 

「……怒ってるじゃん……」

 

 

『うっさいわ馬鹿!』

 

 

 

 ダメだ涙が止まらない。もっと早く電話をかけるべきだった。愛している相手に、妻の1人であるヒッパーの声を聞いただけで感情のダムは決壊してしまう。

 

 

『全く……ほら、そろそろ泣き止みなさい』

 

 

「うん……」

 

 

 

 ぐすぐすと鼻を啜りながらも返事をする。ぐちゃぐちゃになった感情のダムはまだまだ修復に時間がかかりそうだが、ちょっとだけ冷静さを取り戻せた気がする。

 

 

「……あっ、ごめんもう無理涙が止まらん」

 

 

『あっコラ!だから男なんだから泣くなっての!』

 

 

 

 ヒッパーの声が聞けた安心感で緊張の糸が解けてしまいボロボロと涙が溢れ出す。心配させないように喋っていたつもりだが、余計に不安を煽るだけの結果となったらしく彼女に駄目だしされてしまった。

 

 

「ぅぅ……ごめん……」

 

 

『ま、まぁいいわ……本当にヴァイスがそんなに泣くのって初めてだから調子が狂うったらありゃしない…」

 

 

 若干の怒気は感じるがそれでも心配されているのは分かる。心配してくれているのが分かるだけに更に涙が出るが……このままではいけないなといつまでも泣いていられないので必死に涙を堪える。

 

 

「ぅっく……ありがどぅ……もう大丈夫……」

 

 

『ん……とりあえず。今すぐ帰りたいならヴェネトにでも連絡して一緒に殴り込んでやるけど我慢できるわね?」

 

「…………多分」

 

『そこは我慢できるって言うべきでしょ?全く……ウチの旦那をここまで追い詰めるなんて…ロイヤルのクズがっ…』

 

 

 

 

 チッと舌打ちをする音やカンに触ると言わんばかりに歯を噛み締める音が聞こえてくる。愚痴りまくった時も言葉をできる限り選んだが元々ロイヤル嫌いのヒッパーにとってはその嫌悪感を悪化させる事に繋がってしまったらしい。

 

 

 

 

「…でも、ロンドンはさ」

 

『あーはいはい。ロンドンは優しくしてくれただのロンドンとの茶会は楽しかっただの散々聞いたわよ6回くらいは。でもねヴァイス。これだけは言っておくわ。嫁に向かって他の女の褒め言葉なんて浮気の自白とおんなじなんだからね!』

 

「……わ、わかった」

 

『……重症ね。いつものアンタはデリカシーは皆無でもそこら辺の気遣いや言葉の選び方は出来てたのに。というかこんな深夜に連絡する辺り、まず自分のメンタルが異常だって自覚はしなさい』

 

「……わかった」

 

 

 

 

 確かに……俺は自分が思ってるより精神にガタが来ているのかもしれない。自分では平気だと分かっているつもりだったが、もう限界ギリギリだったんだろう。ハンカチで目元をゴシゴシと拭きながらそんな事を考え……あっ、これハンカチを新しくしなきゃまた泣きそうだ。

 

 

 

『あんまり深呼吸はしない方がいいわ。一度泣いた後は感情の高ぶりから涙がすぐに出やすくなるから』

 

「あー……」

 

 

 確かに、言われてみれば今現在も呼吸が少し浅くなっている。大きく息を吸って吐いてを繰り返していたつもりだが……深呼吸だったんだろう。ヒッヒッフーと少し冗談で呼吸を整えるとヒッパーは電話越しでも分かるほどに呆れかえっていた。

 

 

『はぁ…悪いけど通信は今日限りにしなさい。今のアンタの声を聞いたらガスコーニュは不安がるし、シュペーは自分のせいだって思い込む。グラーフかサディアの色ボケ姉妹なら今すぐロイヤルを焼くかってキレるわよ』

 

 

 

 そこまで……だろうな。実はこの通信が終わったらリットリオかヴェネトにもと考えていたがやめておくか…。

 

 

『……はぁ……もう分かったわよ』

 

「んっ?」

 

 

 

 ヒッパーは通信越しですら分かるような深いため息をはくと……先ほどより幾分か落ついた声でこう言ってくれた。

 

 

 

 

『……帰ったら、好きなだけ抱かせてあげるから今は我慢しなさい。強引なのも、優しいのも、甘やかすのも、気持ちいいのも含めて全部やったげるから』

 

 

「……」

 

 

『……』

 

 

「……」

 

 

『……あーもう!今更沈黙を作るな!恥ずかしがってる私が馬鹿みたいでしょうが!』

 

 

「ごめん」

 

 

 

 

 いや、まぁうん。うん。なんというか……言葉が出ないとはこういう事なんだなと痛感した。

 

 

 

 いや、既に夫婦なんだからヒッパーとはそう言う事をやっているし、毎日であるわけじゃないけど十分愛されてるという実感はあるが……こう直接言葉にされるとなんかもう照れるし嬉しいしで頭が蒸発寸前になってしむう。

 

 

 

『良いから早く寝なさいっての!私とヤれるのを楽しみにしながらちゃんと休息して早めに帰ってきなさい!後、私との夜のアレの話は他の奴にはしないでよね!』

 

 

「…ありがとうヒッパー。それとな」

 

 

『何よ!』

 

 

「愛してるよ」

 

 

『……ばーか…』

 

 

 

 プツリと通信が切られた瞬間、なんとも言えない寂しさと寂しさを上回る安堵感に満たされていく。さっきまでの感情の高ぶりが嘘のように穏やかになっている。

 

 

「はぁ……」

 

 

 下品な話だが帰ったらヒッパーとあれやこれやする事を考えると信じられない程に穏やかな感情に心が支配される。ヒッパーだけではなくヴェネト達の艶かしい裸体や声を思い出し……おっと危ない。

 

 

「部屋に戻る前に少しトイレにでもいくか…」

 

 

 結婚以来久々の『アレ』は量も凄い上に今までに感じた事が無い絶頂が全身を走り抜け、どハマりして何度も行った挙句腰が抜けてトイレからしばらく出れなくなったのは秘密だ。

 

 

 

 

 

 さてそんなこんなで戴冠式までの日程は一日ずつ着実に過ぎていき、いよいよロイヤルから受け取った礼服を着て行くべきかそれとも鉄血軍人としての姿を見せつけるために軍服を着るべきか……なんて1人思い悩んでいた時、運命の呼び鈴は部屋中に鳴り響くのであった。

 

 

「んっ…ロンドン、じゃないのか?」

 

 

 ビスマルクさんは日程の調整の為午前中は不在だ。なので珍しく半裸で礼服か、軍服か?と逡巡している所に響く呼び鈴に思わず眉をひそめる。ロンドンはいつも呼び鈴ではなくノックをしながら「閣下」と呼んでくれたし、ビスマルクさんはノックもせずに声をかけてから了承をとるタイプだ。

 

 

 つまり部屋の外にいる人物はそのどちらでもなく、その上で嫌われ者の鉄血生まれの俺に興味を持つ人物である可能性が高いわけで……。

 

 

 

「誰なんです?」

 

 

 

 眉を更に顰めながら俺は扉の覗き窓越しに来客者を確認する。扉の前にいた人物を視界に入れた瞬間、思わずぶん殴られたかのような気分になりながらも一瞬思考が停止する。ビスマルクさんの事も、ロンドンの事も、それどころかヒッパーの裸体すら頭の中から一瞬消し飛んだ。

 

 

 

「お久しぶり、でしょうか」

 

 

 

 カチャリと鍵を開けて扉を開けると彼女はニコリとほほ笑みを見せ、室内に足を踏み入れてから改めて俺を見て言った。それはいつも聞くより1オクターブは高いような透き通った声で、どこかウキウキしたような弾んだ声の彼女は無垢な笑顔で微笑みかけてから……。

 

 

 

「ご主人様♡」

 

 

 

 

 ────卑猥な、露出度の高いウェディングドレスの様な何かを着用し、錠前のようなデザインの首輪をつけたイラストリアスが満面の笑みで俺を見つめ、床に三つ指をついて頭を下げていたのであった。

 

 

 

 

「お元気そうでなによりでございますご主人様♡申し訳ありません♡このドレス、どうでしょうか♡もし御目汚しとなるならばメイド服やバニースーツに着替えて♡ふふっ♡なんでした、さっそく卑しい妾にお情けの子種をぶち撒けたいと♡御戯れ用の器具を今すぐ用意いたしますのでご一考をくださいまして……♡」

 

 

「待て待て待て待て待ってくれ!それ以上情報を増やすなぁ!!頼むから!」

 

 

 

 

 

 コテンと可愛らしく小首を傾げながらそう告げるイラストリアスの姿をポカンと口を半開きにした間抜け面で見つめ続ける事しか出来なかった俺は悪くないと信じたい。

 

 

 





・ビスマルクの状態
 指揮官が目覚めるまで酒を飲んだり自己嫌悪や反省をしたりと色々と酷い事に。本当なら今すぐにでも責任を取って辞任しても、それ以上の罰を受けてもいいと思える程度には消耗しているのですが陣営代表としての責務も投げ出してはいけないという責任感で板挟みに。ロイヤルアフター編でずっとシリアスな状態で常に後悔に苛まれています。

・イラストリアス
 度重なるファンブルの結果所謂ケッコンスキンに身を包んでご主人様♡と言いながら媚びっ媚びの態度とメスとしての色気を漂わせて廊下の前にたっていた痴女。ロイヤルアフター編で常にシリアス(ロイヤル的な意味)な状態で発情しています。

・指揮官
 ビスマルクからの拒絶で傷つきつつも泣きながらヒッパーの声を聞いた上で、夜の営みの予約も出来たという事もあって精神的にはようやく落ち着きました。その夜はずっと禁止にしてただけあって相当濃かったようですが……いきなり前の前で卑猥な格好のイラストリアスが現れて果たしてどうなるのやら?


・本編の判定について。

滞在ラストターン

dice1d5=3 (3)
1.ビスマルク
2.ロンドン
3.イラストリアス←確定
4.チェシャキャッツ!
5.…ユニコーンちゃん、だっけなぁ

まさかの人物に思わず固まる指揮官にイラストリアスは

dice1d10=10 (10)
1~3.少々、お話がありましてお邪魔させて戴きました
4~6.陛下達から、先に顔も合わせておいた方がいいだろう、と
7~9.…あれ、後ろにいるのは…
10.ご主人様←ここまでならまだどうにかできた

そしてご主人様と語ったイラストリアスの格好は…


dice1d10=10 (10)
1~7.流石にいつもの服よ
8~9.なしてメイド服…?
10.愛 と 希 望 の 暁 星←マゾストリアス爆誕♡

 100分の1の確率を連続で踏み抜き、ロイヤルの皆が謹慎中の真最中にあのドスケベウェディングドレスをノリノリで着用しつつ『ご主人様♡』と媚びるマゾストリアスが爆誕してしまうのでした……苛立ちながらヘイトスピーチをぶつけたフォーミダブルや、あの天使のようなユニコーンが鉄血の指揮官を睨みつけたのはそれ相応の理由があったのですね。

 次回はそんなイラストリアスと指揮官の会話から。今回で政治や謀略の会話は一旦おしまい。暴走特急と化したイラストリアスに果たして指揮官はどう対処するのか?

 コメント、感想、評価をお待ちしております。

指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
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