レッドアクシズの総本部として整備されていたマルタ基地が完成し、指揮官が基地司令として着任して数ヶ月が過ぎた。軍人の家族を中心とした移住者やそこに商機を見出した企業の従業員が移り住み、もはや軍事都市といって良い賑わいを見せている。
旧マルタ島出身者を追放した結果その人種分布はレッドアクシズ出身者により埋め尽くされ、最早旧出身者が幾ら嘆こうとも既成事実化が進んでいるのは明らかであった。
ヴェネトが一〇〇年恨まれるが千年後のサディアにとって確実に有益となると思い切った決断。それが正しかったのかどうかは未来の歴史人達の評価に任せるとしよう。
そんな中『英雄』ヴァイスクレー・ヘルブストの周囲はマルタ基地の稼働と共に目まぐるしく騒がしい日々が続いている。
陣営代表であるヴェネトとビスマルクの同時妊娠により世界中の男達からの評価が『男の夢の体現者』『同時に軍事トップのデカパイを味わった男』『頭チンポ野郎』など揶揄される様になった一方。
ある意味それがカバーストーリーとなったのかイラストリアスとグレンツェンの存在は露呈する事なく、また基地司令として多忙な日々を送る事で周りからの評価と引き換えに彼の周囲も比較的静かなものとなっていた。
そんな指揮官は今日も今日とて執務室に籠もり書類仕事を片付けている。基地司令としての職務が忙しいのは勿論だが、『英雄』としての仕事も当然ある。プロパガンダへの参加やインタビューの受け答えなど慣れない仕事も多いのだ。
そして、本日も書類仕事を片付けた彼が次の仕事に移るため自身の秘書艦を呼び出そうとすると……ノックの音が執務室に響き渡り入室してきたのは……
「あっ…ロンドン」
「え、えぇ…失礼致します」
一瞬で空気がぎこちない物になる。指揮官は入室してきた女性……ロイヤルネイビー所属のkansenロンドンの目をまともに見る事が出来ずに目を逸らしてしまい、ロンドンもまた書類の束を抱き抱えつつどこか落ち着かない様子で視線を泳がせる。
「その……ロンドン、書類の整理は……」
「……終わりました。こちらに置いてありますので確認を」
指揮官がロンドンに声を掛けると彼女は淡々とした様子で書類を机の上に置き、そのまま一礼し部屋を退出しようとする。
しかし……。
「あ!ま、待ってくれロンドン!」
「……閣下?」
「い、いやその……あー……」
呼び止めるも指揮官は言葉に詰まり目を泳がせる。そんな指揮官の様子にロンドンは僅かに表情を振るわせ、申し訳無さそうに首を横に振る。
「その……今は…お仕事中、ですから」
「……そう、だね。ごめん」
気まずさの余り指揮官はロンドンから視線を外し、そんな指揮官の様子にロンドンは寂しそうに微笑む。
「いえ……では、失礼致しますね」
「あ、あぁ……」
彼女は一礼し今度こそ執務室を退出していく。その背中を見送りながら指揮官は思わず深い溜息を吐いてしまう。
(はぁ……)
何故こんな事になってしまったんだろうと悔やむ指揮官。もう二度と会えないと思っていた、交わる事のない道を進むと思っていた。そんなロンドンと再会し、舞い上がっていた過去の自分をぶん殴りたいと何度思った事だろうか?
時は数週間ほど前に遡る。現在このマルタ島基地に所属する軍人には大きく分けて三つの派閥が存在している。
一つはレッドアクシズ出身者。鉄血、ヴィシアから名を変えた正統アイリス、サディアの三陣営。主に9割近くを占める面々ばかりだ。とはいえ旧ロイヤルの基地を流用しているマルタ基地においてはその殆どがマンジュウで運営されているが為、指揮官の家族以外の多くの軍人やkansenは別の流用した旧ロイヤル海軍基地にて運営ノウハウを学んでいる途中である。
二つ目の派閥は重桜、ユニオン、東煌、北方連合といった先の大戦での中立や早期の講話を受け入れた精力の面々だ。彼らは主にレッドアクシズ陣営とのいわば窓口として駐在武官として派遣されている。
中にはオスマン、エチオピア、クルジス・エルサレムといったkansenを保有してないが今後保有目指す陣営も参加しており彼らは少なからずレッドアクシズから技術支援を受けている。故にこの世界の未来では鉄血の生体艤装で身を固めたkansenが多数存在するのだがそれはまた別の話。
そして、最後の陣営は……ロイヤル。そう、先の大戦における唯一貧乏くじを引いてしまった者達であり、全世界から厳しい視線と風当たりを受ける者達だ。
その人員は片手で数える程。人員も全てkansenばかりであり、ビスマルクと裏取引を行ったネプチューンがその代表を務めている。
その目的は表向きは駐在武官であるのだが、その真意は激しく敵愾心を心に秘めたネプチューンが祖国に反抗するがために作り上げようとする派閥の新芽と言えるだろう。
選抜メンバーの内その多くは戦後生まれの者達であり、彼女達は知らずの内にネプチューンによって思考を誘導され、エリザベスの後継者たるヴァリアント率いる内部革新派とはまた別の改革派への道を歩むことになる。
だがその中で、唯一ネプチューンを除き戦後生まれでないkansenが選抜メンバーに参加していた。
「……久しぶり、だね?」
「まさか……また閣下と会えるとは思いませんでした」
その名はロンドン。かつて『英雄』の手により鉄血の捕虜となり。戦後、指揮官と少なからず交流のあったkansenである。
「ヴァリアント陛下が推薦して下さったんです」
どこか嬉しそうな声色の指揮官と反対にロンドンは視線を落とし、申し訳なさに顔を俯かせつつ静かに口を開く。
「……それに……その、とても言いづらいのですが」
「う、うん?」
「ネプチューンさんから追い出されてしまって……貴女は鉄血の基地でお世話になりなさいと」
指揮官が目をやると部屋の片隅には彼女が持ち込んだとされる私物をまとめたトランクが鎮座している。
「そう……なんだね」
「……はい」
寂しそうに俯くロンドンの様子に指揮官は彼女の手にそっと自身の手を被せる。そんな彼の仕草にロンドンは小さく息を呑み、そして顔を赤くしながら口を開く。
「か、閣下?」
「あ、いやその……」
ロンドンの様子を見て指揮官はしどろもどろになりつつ言葉を紡ごうとするのだが上手くいかないのか視線を泳がせながら言葉を探す様に口をパクパクさせるばかりである。そんな彼の姿にロンドンも、もどかしさを感じ、顔を俯かせつつ言葉を絞り出す。
「……迷惑、ですよね。閣下は結婚なさっているのに……こんな事……」
「あ、いや。迷惑だなんて、そんな事ないが…」
あまりにももどかしく、互いの立場を慮った結果として互いに本音の一言すら言えず。もどかしさと照れくささが混ざり合い、執務室にはむず痒い雰囲気が充満していく。
ロンドンも指揮官も愚か者ではない。ネプチューンが何故ロンドンをこの基地に向かわせたのか?と言えば予想はつく。旧エリザベス派のロンドンが邪魔であった事など打算的な意味合いもあれど、恐らくロンドンと指揮官の『関係』を知った上でそうなるように取り測ったのだと理解できてしまう。
二人は憤慨はせず。されど、複雑な心境で口を噤んでしまう。指揮官が優しく重ねたロンドンの手を、彼女もまた握り返してた。互いに二人がどの様な感情を向けているか知っていたとしても。
それを口にして、互いに認めるのは。ロンドンに大切なものを捨てろと口にするのと同義なのだから。
「……部屋は用意しておく。その、これからよろしく」
「ありがとう、ございます。閣下」
結局、二人はそれ以上の事など言えるわけもなく。単なる挨拶を交わして別れる他なかった。
ロンドンと再会して数日も経てば彼女は基地にあっという間に馴染んでいた。
ロイヤル所属の面々に見られがちな自尊心の高さや豪奢な事を好む趣向などをロンドンは持ち合わせておらず。自身が外様
である事を常に意識している様で、礼儀を欠かさない。
数日が数週間となる頃にはロンドンは指揮官の妻達と和やかに会話行い。あのロイヤル嫌いのヒッパーですら「ロイヤルの中ではマシな方」だと指揮官にだけ告げるなど、徐々に受け入れられ始めていた。
グレンツェンの世話やお腹の大きくなったグラーフの補助などを任されていたと言えばどれだけ短期間の間に彼女が信頼を得られたか分かるだろう。
それでも。指揮官とロンドンは以前の様に接する事は出来ない。以前の指揮官であれば積極的にロンドンの部屋に向かい彼女が用意した紅茶に舌鼓をうちながら、他愛の無い近況を話し合ったのだろうが。互いに後一歩を踏み出す事が出来ず、もどかしい日々が続く。
このままではいけない。
そう、最初に行動をしたのは指揮官だ。このまま先延ばしにしていても不幸になるだけだとイラストリアスにも言われてしまった。あの子は凄く我慢してるとシュペーにも小突かれてしまった。
自身の手ではなく妻達による後押しで別の女性との関係を進めるというのは我ながら情けないと嘆息をしつつも、指揮官はある日、ロンドンを基地の外れにある小高い丘へと誘う事を決意したのであった。
「きれい……」
夕焼けに染まる海に見下ろしながらロンドンは感極まった様子で溜息と共に言葉を漏らす。
「……あの、ここは?」
「俺のお気に入りの場所だよ」
そう言って指揮官が目を向けた先にあるのは小高い丘に作られた花壇であった。ただ花の種を植えて手入れしているだけではなく定期的にヒッパーに教えてもらった園芸の本を読みながら試行錯誤を繰り替えし、今では色とりどりの花が咲き誇る小さな花園だ。
あのロイヤルの庭園と同じ様に。この庭園を見るたびに彼女の顔が頭によぎっていたのはそれだけ指揮官もまたロンドンに未練があった証拠なのだろう。
「そう……ですか」
「うん」
「……あの、どうして私をここに?」
「あぁ……それはその……」
指揮官が言い淀むとロンドンは寂しげに微笑む。ここからの展開が全て予想出来てしまったのだろう。なんせ指揮官とロンドンの秘めた想いは同じもの。
なんならロンドンは気づいていた。彼が何度も指揮官の胸ポケットが少し膨らんでいる事を。彼がヴェネトやビスマルク。商人である明石と何かを話し合っていた事も。きっと、彼が悩んだ上でそれでもと行動した事も。
だ
から……彼女は静かに目を瞑り、指揮官の言葉を待つ。
「……その、ロンドン」
「はい……」
「俺は、君が好きだ」
あの日、別れの日に言えなかった言葉。言えずにずっと後悔を繰り返し胸の痛みを耐えてきた言葉。
今、指揮官はようやくその言葉を紡ぎ出すことが出来たのだ。
「っ……わ、私も閣下が好きです」
ロンドンもそれが分かっていたから驚いたり戸惑ったりすることもなく。微笑みを浮かべて告白の返事をする事が出来た。そんな彼女に安堵すると共に嬉しさが込み上げてくる指揮官。ロンドンもまた『好き』と口にしてなお胸の高鳴りが抑えられなかった。
「その、良かったら……」
「ですけど」
本当は彼の胸に飛び込みたかった。本当は指揮官の妻達の様に甘い夜を過ごしたかった。彼女もあの日、もし自分が「一緒に来ないか?」という誘いを受け入れていればと何度も自身の選択を悔いる夜を過ごしていた。
それでも……彼女は首を縦には振れない。この一歩を踏み出してはいけない。自分が全てを捨てて指揮官の元へ行くという事は即ち……何をしてでも守りたかった妹達や仲間達を見捨てる事と同義なのだから。
ロンドンはヒッパーやガスコーニュ達と仲良くなると同時に、イラストリアスとも少なからず交流をしていたのだ。そこで彼女は知ってしまった。祖国から離れてしまった者の末路を。愛する家族に自由に手紙の一つも出せず、生涯会う事も許されない彼女を。
娘を胸に抱きながら、夫である指揮官にすら口にできない無力感やどうしようもない現状に心を痛め。家族に会いたいという言葉を口にすらできなくなったイラストリアスを知ってしまったロンドンは彼女に自分を重ねてしまっていた。
全てを手放す選択肢しか残されなかったイラストリアスと違い、ロンドンは『選択』する自由がある。その『選択』という天秤の皿に乗せられているものの重さを。ロンドンは誰よりも理解していたから『踏み出せない』のだ。
「閣下……私は……」
指揮官の誘いに頷きたい気持ちを必死に押し殺し、ロンドンは顔を俯かせて絞り出す様に言葉を紡ぐ。
「私は……ダメ、なんです」
「……うん」
彼はそんな彼女の葛藤を理解していたからこそ。優しく微笑みながら頷く。その瞳に涙を湛えながら微笑む彼女を指揮官は抱きしめない。抱きしめてしまったらきっと彼の胸に溜まった気持ちが溢れてしまうから。
ここで欲のままに彼女を抱きしめてしまえば……『本当に欲しいもの』を手に入れられなくなってしまうと分かっているから、彼はそっとロンドンの肩に手を添えるだけに留める他なかった。
「ロンドン……」
「ごめんなさい閣下」
悲し気に表情を曇らせる指揮官にロンドンも頭を下げるしかない。ここで指揮官に甘えてはいけないのだと自分を叱り付けるように唇を嚙み締める。
「全てを置いていく事は、私にはできませんから」
「……分かったよ」
そんなロンドンの様子を見てどこか寂しそうに微笑むと指揮官はそっと彼女から離れ、小高い丘に増設したベンチに腰をかける。
「さて、もう日が沈んでしまうね……そろそろ戻ろうか?」
「……はい」
未だ溢れそうな涙を瞳に湛えつつ、ロンドンは指揮官の言葉に頷き彼の隣に座る。そしてそのまま二人は無言で海を眺め続けた。互いに何を話せばいいか分からなかったのだ。ただ、この沈黙は不思議と心地いいものであると同時に
……二人にとって心臓に刃を突き付けられているかの様な息苦しさを感じさせるものでしかなかった。
執務室で指揮官は惚けた様に椅子にもたれ掛かりながら天井を見上げていた。
その日以降、ロンドンとの関係はギクシャクしたモノとなったのは言うまでもないだろう。互いに嫌いあっている訳ではない。
寧ろ下手に口にしてしまえば。下手に同じ空間で過ごしてしまえばそれだけで自分を抑えきれないと互いに理解したからこそ接触と自然と最小限になってしまった。
それでも、こうして一日に一回は顔を合わせてしまうのは未練が残っているからだろうと指揮官は乾いた笑いが止まらない。お陰でもう数日も妻達と日課となっていた『夜』の時間も取れてはおらず。彼はどこか達観した笑みを浮かべながら溜息をつくしかない。
「参ったな……」
そう言いながらも何処か今の関係に諦めを見出しているのか、指揮官の顔に悲観の色はない。ただ虚しさと後悔が胸を満たしているだけだ。
シュペー達は二人に何があったのか察したのだろう。その事に触れる事もなく自然体のまま指揮官と接し、唯一精神が幼いガスコーニュだけが「主(メートル)…甘えても良い、よ?」と気を使って一度だけ手を広げてくれたのだが「……ありがとう」と優しく頭を撫でるにとどめたのだった。
胸ポケットにしまっているケッコン指輪を。各方面に頭を下げ、相当な無理を行いようやく手に入れた絆の証を無意識に服の上から撫で付ける。金庫の奥にでも封印するべきだと言うのに未練を身に着けている自身に情けなさが溢れ出る。
もういいかと。これ以上はロンドンと自分の心を傷つけるだけだ。他の妻達にも申し訳ない。ならば指輪を返却し、ネプチューンに連絡を入れ……と諦めたかの様に震える手で通信室に向かおうと立ちあがろうと。
「…っと」
軽くよろめきながら手をファイルの上につき、ゆっくりと姿勢を正す。ストレスで体調管理も出来なくなったのか?と一人自嘲してファイルへと再び手を伸ばした指揮官の手は何かに当たったのか。ファイルがパタンと倒れる。
「ん?これは……」
倒れた拍子に開いたファイルから数枚の便箋がヒラリと床に落ちる。それを拾い上げようとして……彼は大きく目を開かせ、そして便箋を一枚一枚丁寧に拾い上げる。
差出人はデヴォンシャー、シュロップシャー、サセックス。
全員、ロンドンの妹達から指揮官に宛てた手紙だったのだ。
ロンドン姉さんは優し過ぎる。故に貴方が多少強引に行動すればきっと断りきれない。何でもどんな事でも彼女は受け入れるはず。だから空気を読まなければ、姉をモノや奴隷の様に扱えば必ず将来後悔する事になるとロンドンの性格を忠告するデヴォンシャー。
元気にしてるか?体調は崩してないか?ロンドン姉さんは無理をし過ぎるところがあるから心配だ。それと姉さんを泣かせたら承知しません!とロンドンは任せたとシュロップシャー。
最後に最も短く。なんなら姉を奪った指揮官に対する葛藤なのか、彼ではなく。ロンドン宛の短いメッセージを送ってきた最もロンドンに懐いていた末妹のサセックス。
『色々あるけれどこっちは元気にやっているから……どうか、姉さんの方は自分の気持ちに素直になって生きて大丈夫ですので』
「あの子達……」
手紙を片手に息を切らせてロンドンの部屋に駆け込んだ指揮官に驚きつつ、姉妹からの手紙を目にした後。彼女は決壊したかの様に瞳からポロポロと涙を流しては「……あの子達ったら」と嬉しそうに笑う。
「……ずっと、私は。サセックス達を子供扱いしていたんでしょうね。守らなければならない子供だと。命を賭けてでも守り通すべき『家族』だと。でも……もう、あの子は私なんかよりよっぽど大人でした」
「……」
「なのに私は、ずっと。一人、空回りを……」
「それは違うよ」
ロンドンの言葉に指揮官は首を振る。
「君があの子達をどれだけ愛していたか、俺は知っている。あの日、初めて君と出会った戦場で。必死に叫んでいた君の言葉は今でも覚えている」
初めての戦場。着任早々セイレーンと三つ巴の戦いとなってしまった悲劇の着任日。あの日、指揮官は領海侵犯を果たした挙句自分達を暗殺しようとしたロンドン達を見せしめの為に沈める事も考えていた。
『私達は本国に帰るんです……妹達も待っている家に!皆で何としても!』
しかし、彼が最後に選んだのは強引な降伏勧告だ。その選択を選んだのも、ロンドンの言葉がサディアに嫁いだ妹のツィトローネとの記憶を揺さぶり、殺す事が出来なくなってしまったからである。
もし、ロンドンが居なければ……多くのセイレーンが観測した『枝』の様に。ここまで早期の終戦や、生ける伝説となった『英雄』としての立場もなく。彼は、この鉄血は。レッドアクシズは。全く別の未来を歩んでいただろう。
「空回りって言うのならもっと俺だってどうにかすべきだった。よく考えれば簡単な話だったんだ。あのヴァリアント陛下が無理やり君を送るはずがないって。きっとロンドンがマルタ島に来るまでに色々と根回しをしてくれて……妹想いの君の気持ちを蔑ろにする意志なんてなかったんだから」
きっと、指揮官がヴァリアントに通信の一つでも入れておけば。彼女はサセックス達の様子やロンドンが妹を気にしていると伝えてくれたはずだと。わざわざ手紙という形式にして後から送り込んだのはロンドンが本国を離れた後、妹達が姉を後押しする為に書いたものだと指揮官は推測する。
指揮官は人の感情の僅かな変化を見抜く事にかけては優秀な人材だ。だと言うのに恋愛絡みになるとその才能がすっかりポンコツと化してしまうのは彼らしいと言えば彼らしい。きっとロンドンは今後他の妻達と同じく苦労する事になるだろう。
彼と、彼女達と。共に歩む道を選ぶと言うのなら。
「うん。ロンドン」
指揮官は静かにロンドンの手を取る。
「あの、閣下……?」
「俺はいつでもする準備はあるし、覚悟はある。だからまぁ……そっちも心構えができたら、教えてほしいな?」
真っ直ぐと、そうロンドンに告げて……ロンドンは耐えきれなかったかのように顔を赤らめてから、小さく頷くのだった。
これはあり得たかもしれないIFの物語。
これはあり得るかも知れないIFの物語。
女神がダイスを振るかの如く、ほんの少しの選択が無限の未来に分岐する世界。その内の一つが紡ぎ出す可能性。
それでも、その『IF』の一つ一つの選択によって世界は形作られていく。これはいつか有り得たかもしれない一つの物語であり。
『ちぇー、ラブコメしちゃってさ。ただしっかりビスマルク達も仕事してるから許してあげようかね』
素直になれない誰かさんが。そんな二人の様子を気付かれずに観測し、無意識に口角が緩んでいたと言う事も記述しておこう。
今作品は本編ではなく番外編。あくまであり得たかも知れない物語であり。今後歩むかも知れない未来の可能性の一つであって、ロンドンと指揮官が本当に再会出来たかどうかは皆様のご想像にお任せします。
・ダイスの女神様
実はこの物語はプロトタイプに当たるものがあり、それは今年のバレンタイン記念に行われた特別ダイスでの話。過去作の主人公とkansen達のその後の物語を安価で組み合わせを決めてGMが執筆なさるというもので、10%の確率で抽選されたクリティカルにて描かれたロンドンと鉄血指揮官のIFの物語でした。
ロンドンにチョコを渡された場面から始まり。
たですが
dice1d10=10 (10)
1~3.折角ですし、ホワイトデーまで待つというのも楽しいものですから
4~6.皆様に申し訳ございません
7~9.その分だけ、皆様にしてあげてくださいませ
10.*おおっと*←ファンブル
*おおっと*
dice1d10=7 (7)
1~3.……こうして、こうできるだけで、嬉しいものですから
4~6.関係ねえする!!!
7~9.……どうしても指輪受ける気はない?←確定
10.*おおっと*
dice1d4=4 (4)
1~2.シてる
3.シてない
4.ロンドンから避けてる←肉体関係を避けている
これにより。ロンドンは指輪を受け取るつもりはなく、更にロンドンかま肉体関係を避けている事から姉妹を置いてマルタ基地の駐在武官をしていても、相思相愛な指揮官を拒絶することしか出来ない。
dice1d10=6 (6)
1~5.見送った
6~9.……それでも←50%の確率で物語の続行
10.*おおっと*
dice1d10=10 (10)
1~3.お言葉は嬉しいです
4~6.……もう
7~9.何も言われずに出て行かれたぁ……
10.もしもし鉄血の指揮官?←10%の確率でヴァリアント陛下の連絡
そして。ヴァリアントの連絡によって手紙が届いているのだから確認して欲しいと言われた二人は慌てて手紙を探して。
dice1d10=7 (7)
1~7.見つかったー!←3割の確率で手紙が紛失していた
8~9.ねえー!!!
10.*おおっと*
その結果、僅かな可能性を。続行チャンスを掴み、ヴァリアントからの10%の手紙の確率という選択肢を勝ち取り。その結果、ロンドンが抱えた姉妹を裏切る罪悪感と、姉妹を見捨てられない優しさの板挟みを解消させ。
以後本文公開。
最後の一文を見てからあなた達はお互いに顔を見合わせました
えっと
「えっと…」
お互いに言葉を重ねてしまいえっと、やらあの、やら暫く二人でどちらが先に何を言うか詰まらせていましたが…
dice1d10=9 (9)
1~3.……ちょっと時間をおこう!うん!
4~6.……少しだけ、時間をいただいてよろしいでしょうか?
7~9.自分はいつでもする準備はあるから←確定
10.*おおっと*
そんな空気にあなたは耐えきれずに笑ってから……うん、と一つだけ頷いてからロンドンなら手を取って
『自分はいつでもする準備はあるし、覚悟はある
だからまあ……そっちも心構えができたら、教えてほしいな?』
真っ直ぐと、そうロンドンに告げて……ロンドンは耐えきれなかったかのように顔を赤らめてから、小さく頷くのでした
こうしてロンドンはIFとはいえ。幸せになる『枝』が産まれ、本作の番外編に繋がるのでした。
・ロンドンの妹達
デヴォンシャー「ロンドン姉さんは人に甘すぎますね」
シュロップシャー「衣装が変われば気持ちも変わる…と、ロンドン姉さんが言っていましたけど、変わるのは誰の気持ちですかね〜?
サセックス「ロンドン姉さんはきっと悪い人に騙されやすくて、しかも騙されてもにっこりと受け入れちゃう…もうなんでこんな性格しているのよ……」
何気に姉妹全員から言及がある長女というのは金剛なども含めてかなり珍しかったりします。そしてサセックスどころかあのデヴォンシャーからも素で甘過ぎると言われる辺りロンドンの無防備さと善性の強さは相当なものなのでしょうね。
どうにかクリスマスまでに間に合ってよかった……次回は恐らく来年の1〜2月。まず残ったヒッパーのR-18回を更新してから最終パートとなります。皆様大好き信濃おねーさんも出てくるよ!
それでは今年もご愛読ありがとうございました。コメント、感想、評価をお待ちしております!皆様良いお年を!
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄