ロイヤル王国。
欧州を代表する列強国の一つであり、ユニオン、鉄血、重桜と並ぶ、世界に名だたる四大国家の一つ。
国家体制は立憲君主制であり、世界中に海外植民地を持ち、かつては7つの海を支配したと称される大国。
その海軍力は欧州随一であり、レッドアクシズ全ての国家と単独で渡り合える程の質、量を誇っており、政治的にも軍事的にも国民から絶大な支持を得る、もっとも世界に影響力を与えるkansenとも言われた優れた海軍指導者、クイーン・エリザベス。
その元に集う絶対忠誠と称された天下無双のロイヤルネイビーは、まさに人類種の敵であるセイレーン。そして裏切り者であるレッドアクシズに対抗する為の希望と言えるだろう。
そして、多くの因縁を生み世界の歴史に名を残す事となる物語は、ロイヤルネイビーが保有するリバープール海軍基地より動き出す。
島国であるロイヤル列島防衛の為にセイレーン大戦中より建設されたこの基地は、ユニオンが誇る世界最大の基地、NY要塞と比べても遜色も無いほどに強大な軍事基地と言えるだろう。
獅子の旗が舞う軍事基地。しかしその内部は鉄血海軍の様な無骨で実用性重視のものではなく、豪奢な調度品やアンティークで飾りつけられたまさに一種の王宮。kansenの身でありながら政治的影響力と議会における議席を保有し、人であるロイヤル王家と並ぶ権限が与えられたクイーン・エリザベス率いる王家、貴族の力を示している。
その様子を戦前訪問したサディア総旗艦は「お金がありますねー」と感心したと言われているが、鉄血の代表ビスマルクは
「権威の為に資金を使う事は必要。とはいえロイヤルはやり過ぎよ。まるで豪奢に飾り付ける事が目的になってその本質を失っているわ。これでは軍事基地じゃなくて舞踏会の会場じゃない」
と部下に漏らしたと言われており、根本的にビスマルクとクイーン・エリザベスの思想が真逆であると後世で例えられたエピソードの一つとして数えられている。
そしてメインホールである謁見場では現在1人の少女が跪き、緊張のあまり身体を震わせている。そんな彼女を玉座から見下ろすのは産まれもっての陣営代表。美しい金髪と王冠をモチーフにした杖を片手に、数人の幹部を侍らせ、つまらなそうな表情を浮かべる幼い少女、そしてロイヤルネイビーの代表であるクイーン・エリザベスその人であった。
「それじゃ予定通りはじめるわよハーディ。言っておくけどこれから起きる出来事は他言無用、そして誰かに漏らせば命はないと覚悟しなさい」
「りょ、了解しました。女王陛下……! 」
小さな王女より放たれた威圧によって身体を震わせながらもハーディと呼ばれた少女は覚悟を決める。女王陛下への忠誠の元に、自らの役目を果たさんと拳を握りしめ、勇気をもってクイーン・エリザベスにそう返答するのであった。
彼女は駆逐艦kansenであり、本来であれば女王との謁見も叶わない立場だ。まさに雲の上のような存在とも言える女王陛下の元に謁見すると言われた際は驚きと緊張のあまり、紅茶に塩をいれてしまったと言うのに味の変化に気がつくことさえ出来なかった。
彼女を見つめる者達は女王陛下だけではなくそれ以外も錚々たる面々。
メイド長軽巡ベルファストに、騎士団団長戦艦キングジョージ5世。貴族の中でも最高位である空母イラストリアス。そして近衛師団団長であり、ロイヤル最強とも評された戦艦クイーン・エリザベス級二番艦ウォースパイト。
ハーディは心の中で思う。早く終わって欲しい。何をするのかは聞いてはいるけど、これ以上この空間で、この方達と同じ空気を吸っているだけで無礼に当たるのではないかと身体を振るわせる。そんな彼女を知ってか知らずか、クイーン・エリザベスは玉座より立ち上がるとハーディにゆっくりと語りかける。
「いいわね?力を抜いて、目を瞑り、そして命令通りに言われた事を答えなさい」
そして、ハーディが返答する間もなく。クイーン・エリザベスは杖を掲げ、ハーディの頭にゆっくりと振り下ろす。トン、と音を立ててハーディの頭に杖が触れ、ハーディの心臓がバクバクと音を立てる中、やがて少しの沈黙の後にクイーン・エリザベスは口を開く。
「女王の名の下に命じるわ。貴方の過去を、キューブに宿っているその記憶を包み隠さず、今ここで答えなさい。嘘は禁ずる、誇張も禁じる。ただ頭に宿ることを全て話しなさい」
「えっ……んっ…!? 」
その瞬間ハーディの頭に激痛が走る。まるで脳にミミズが発生し、異物が脳内でのたうつ様な感覚に思わず跪く事をやめ、苦しみ、もがくハーディ。
同時に頭によぎるのは存在しないはずの記憶。自身の記憶ではなく第三者からみた記憶を脳内に無理やり叩き込まれ、知るはずのない情報の本流によってハーディは地面に倒れ痙攣する。
(な、なんなんですかこの記憶!?私の記憶じゃ……!?いや、でも……えっ…?)
やがて痛みが消えていき、ぜぇぜぇと息を吐きながらもハーディは自身の違和感に恐怖心を覚えてしまう。
その記憶は知らないはずなのに、知っている。自分の身に起きた事ではないと言うのにまるで体験したような感覚に襲われる。頭からモヤが晴れたと同時に、ハーディは吐き気に襲われた。
「成る程ね……ベル、バケツの用意を」
予想していたのだろう。メイド長ベルファストはどこから持ち出したバケツをハーディに差し出し、申し訳ございませんと語りかけつつ、思わずバケツに吐瀉物をぶちまけるハーディの背中をさすっている。
「悪かったわね。でも最初からこうなるかもしれないと伝えていれば、効果が出ない可能性があるもの。吐いたことに関しては気にしなくていいわ、貴方以外にもフッドやアークロイヤルも同じ様に吐いたんだから」
摂政フッドと空母アークロイヤル。先日行われたメルセルケビール海戦にてレッドアクシズの組したヴィシア海軍を叩き、勝利に貢献した英雄2人。そんな2人すら自分と同じように吐いてしまった事実に失礼ではあるが少しほっとしたハーディは心の中で2人に謝罪しつつ、陛下に向き直る。
「これは……」
「言ったでしょう。その記憶はキューブに宿る貴方の……そうね。貴方はパラレルワールドって概念は知ってるかしら? 」
唐突かつ突飛な陛下の言動にハーディは困惑を隠せない。
「えっと……自分たち以外にも世界は実在する。似ている世界が存在しているというSF作品の解釈でしょうか……? 」
不安げに答えるハーディに陛下は満足げだ。
「なら話は早いわね。結論から言えば、多分この世界には存在するのよ。パラレルワールドが。そして私達kansenの元になって生み出されたキューブには別世界の記憶がなんらかの理由によって流れ込むのよ」
「そんな事……」
「最後まで聞きなさい。その記憶を元に私たちの姿を作り出す。いってみればキューブは私たちの世界と極めて近く、限りなく遠い並行世界を繋ぐ触媒のようなもの。そして私は自身の能力を使って、貴方が本来知るはずのない記憶を呼び覚ました。そして」
ーーその記憶は貴方が辿るかもしれない、未来予想図なのよ。
クイーン・エリザベスはやがて説明をし終えると玉座に再び座り、じっとハーディを見つめている。あっけに取られていたハーディは口はまだ酸っぱく、身体も本調子ではないものの再びベルファストに支えられて、そして跪く。
「さぁ、もう一度いうわよ。貴方の過去を、キューブに宿っているその記憶を包み隠さず、今ここで答えなさい。嘘は禁ずる、誇張も禁じる。ただ頭に宿ることを全て話しなさい」
奇妙な感覚だと。そうハーディは感じていた。
初陣はアフリカ、シエラレオネのフリータウン。鉄血が行った通商破壊作戦の妨害だった。
アドミラル・グラーフ・シュペーと呼ばれた重巡を仕留める為にラプラタ川と呼ばれる南ユニオンの地域に向かったこともある。
フリータウン?ラプラタ川?そんな地域名前すら知らなければ、アドミラル・グラーフ・シュペーという名の鉄血艦の名前も知らない。だと言うのに、彼女はまるで自身が体感した事のように、昨日の夕飯を答えるかのようにその記憶を口にし、それを聞いたウォースパイトは一言一句漏らさずにカリカリと報告書に書き込んでいく。
そして…とある記憶を語ろうとした瞬間、ハーディはまた吐き気に襲われる。しかし、ハーディは勇気をもって……自身の、最後の戦いを語る。
「私は……その後、1940年の…4月くらいだったと思います。友人のハンターと共に、スカンジナビアの要請を受けて、ナルヴィク港に向かうように命じられ……」
吐き気が全身に駆け巡る。今は西暦1939年。そう、1940年の記憶なんてあるはずがないと言うのに。思考回路な一瞬で真っ黒になった記憶。その記憶をハーディは理解する。この記憶は……死の、自分が死ぬ瞬間だった記憶である事実を。
「そし…て…二隻の鉄血駆逐艦を撃破。しかし、撤退中に鉄血の反撃を受けて私とハンターは……沈んでしまったんだと、思います」
あぁ……そうか。
私みたいにフッド様やアークロイヤル様が吐いた理由が分かった。
誰だって自分が死ぬ瞬間の記憶をもう一度体感するなんて絶対に嫌だろうと。
そして、ハーディは理解した。
女王陛下が、いま報告書に記載するウォースパイトが、そしてここにいるロイヤル貴族の幹部達が何のために自身を呼び出したのかを。
「成る程ね、エスキモーやウォースパイトも言ってたけどヴェーザー演習作戦。その阻止のための貴方はウィルフレッド作戦に参加、第一次ナルヴィク海戦で、ね」
「そう、です」
目の前の女王陛下はこの記憶を元に、パラレルワールドで行われた戦争の『再現』を行おうとしていると。そして、その為に多くの情報を一人一人から聞き出しているという事を。
「分かったわ。貴方の配属も含めて後日連絡する。仮に『再現』になっても死なないよう手配はするから安心しなさい。そしてこの事は誰にも、ハンターにも絶対に話してはダメよ」
そしてハーディが震えながら退出すると、クイーン・エリザベスはその姿をつまらなさそうに見つめ、ウォースパイトに「いつものように」編纂を頼み、メイド長を連れて執務室に戻っていく。
「あの子も死ぬ予定なのね……まぁ、死なないように手配はするわ。全く、ロイヤルの全ての実を拾おうとするのって本当に大変だと思わない?ベル」
「ですが、陛下はそれでも全ての実を拾うとおっしゃって下さりました。その為、私の命を如何様にもお使いください」
「頼りにしてるわ。それにエディンバラが沈めば私もあの子の紅茶が飲めなくなるもの。私個人の願いの為にも、あの子の命も救ってみせるわよ」
kansenには自身を構成するキューブ情報に前世とも、並行世界とも言える場所で行われた戦いの記憶が存在している。
その記憶はkansenによって個人差はあり、殆ど覚えていないものや、人格に影響を与える程に記憶がはっきりしているものもある。
そして、その世界の記憶は……この世界とリンクしていると、極めて近く限りなく遠い世界で行われた戦争の記憶は未来で起こりかねない物であると、そうロイヤルでは研究されていた。
事実全ては、鉄血が率いるレッドアクシズの離脱によりはっきりとしてしまった。
数名のキューブの記憶、それは明らかに鉄血のkansenに対抗する為に作られた記憶があり、例えばキングジョージ5世級などは鉄血との戦争に間に合わせる為に姉妹全員が開戦前に作られたと判明してる。
なぜそこまでの事が分かるのか。それは女王であるクイーン・エリザベスが持つスキル。『女王号令』が原因である。
kansenには全てスキルともいえる特殊技能をそれぞれ固有に保有しており、場合によってはシールドを生み出すものや、連続砲撃が可能になるといった強力なスキルを保有してる者もいる。
例えばアドミラル・グラーフ・シュペーは軽巡・駆逐に分類される相手へのダメージの増加、アドミラル・ヒッパーであればシールドの生成。中にはグラーフ・ツェッペリンの様に複数のスキルを持つkansenも存在しており、強力なスキルを持つkansenは特に、セイレーンとの戦いの最中多くの戦果をあげている。
そして、生まれ持って陣営代表となるべく生み出された、クイーンエリザベスのスキル名は『女王号令』。それは、戦場に存在するだけで自身も含めたロイヤルのkansenの力を増幅させる強力なスキルなのであった。
クイーン。女王エリザベス。
産まれ持っての女王であるエリザベスにとって相応しい、正に人の上に立つべき能力だろう。
同時に彼女は産まれた時から、自分はキューブの情報の影響によるとある艦歴を保有していた。kansenの中には生み出された瞬間から何らかの記憶を保有している者も存在しているが、その数少ない1人がクイーン・エリザベスである。
彼女は艦歴により。
『ヴァリアントと共に傷を負うという記憶があった』
しかしながら、誰に、そして何故と言うことは分からない。不快感極まりない艦歴。だからこそセイレーン大戦中、何気なく『女王号令』スキルによって思い出せと自身に命令した所……残酷な運命の歯車を時を進める事になる。
彼女は衝撃を受けた。
吐き気と共に頭にミミズがのたうつ様な不快感。そして、同時に頭に注ぎ込まれた残酷な真実。
『敵対したサディアの工作員による爆破工作により、ヴァリアント共に大きな怪我を負い、そしてユニオンによって一年間の療養生活を送った記憶があった』
同時に様々な記憶が流れてくる、その情報はハーディとは違い途切れ途切れではあるものの、小さな女王陛下は理解してしまった。
『女王号令』は自分が存在するだけで皆に力を与えるスキル、その力には記憶を引き出す能力もあるのだと。
同時に彼女は思ってしまう。あまりにもリアルな記憶。そしてそうなってもおかしくないと頷ける物事。それはまるで……この記憶は自分たちの未来を予知してるのではないか?
女王陛下はもしやと思い次々と重鎮達を呼び出して記憶を呼び覚ます。それは不完全な記憶であり途切れ途切れではあるが、全て同じような記憶を保有していた。
とある作戦に参加する記憶を持つ者。そして時に勝利し、時に敗北し死亡する記憶まで彼女は引き出していく。
そして情報をまとめつつ、何故かより多くの記憶を保有しているベルファストの記憶が正しいのであれば。
・未来で鉄血、サディア、アイリス教国より分離したヴィシア聖座、そして重桜がアズールレーンから離脱し、敵になると言う事。
・ロイヤルは今後鉄血と雌雄を決する事になる。その過程で摂政フッドといった少なくない犠牲を払うがロイヤルは勝ち続け、サディア、ヴィシア、鉄血に勝利を重ねていく事。
・そして1941年12月8日。重桜がユニオンに奇襲攻撃を仕掛けた真珠湾攻撃により、ユニオンが本格参戦、当初は敗北を重ねるもののヴィシア聖座の全てを自沈に追い込み、サディアを寝返らせ、そして鉄血と重桜に勝利するという未来を。
これだけならまだいいと言えるだろう。たしかに少なくない犠牲を払うが、ロイヤルはこの戦争に勝利する。その結果敵対した国家を降伏に追い込み、やがて戦後は欧州の覇権を握る事になるのだから。
しかし現実はそう甘くもなかった。
たしかにロイヤルは勝利する。しかし、ロイヤルの傷は深く、やがて圧倒的勝利を納めたユニオンに覇権国の立場を取られて、ロイヤルは緩やかに没落していくと。そして世界の覇権を握ることもなく、この戦争でロイヤルが得たものは栄光でもなければ覇権でもなく、ユニオンからの莫大な借金だけであったと。そう、ベルファストは沈痛な表情を浮かべていた。
そして、皆が沈痛な表情を迎える中陛下は考えを口にする。もし、仮に現在アズールレーンに所属している鉄血が陣営を立ち上げたのであれば……この、自分たちが編纂したkansen達の記憶通りに世界は進んでいくのではないか?と。
嘘であって欲しかった。
自分たちがセイレーンもいると言うのに、勢力同士で殺し合い。
何も得られず、何も得ず、ただ没落していくという未来を否定したかった。
そして運命の日。
鉄血公国は度々行なっていたセイレーン技術の本格的な解析と技術利用の提案に反対されたと、レッドアクシズ陣営を立ち上げたのだ。
陛下達は理解した、やはりこの世界は私たちの記憶通りに進んでいくと。
そしてアズールレーンを離脱。同時にサディア帝国も賛同して離脱。そして鉄血の隣国アイリスでは小競り合いの最中政変が起き、枢機卿リシュリューを中心とした旧アイリス組がロイヤルに亡命。
それら全てがクイーン・エリザベスが呼び起こした記憶通りであり、まるで物語のように『再現』されていく。やめてくれ、そう願っても放たれた矢は止まる事はなかった。
同時にクイーン・エリザベスは動き出す。人を中心とした上層部の一部に事実を伝え、上層部は眉唾ものだと思っていた『再現』が次々と予言の如く当たっていく姿を見て驚愕。同時にkansenの権限はQEの手腕をもって鉄血の宣戦布告の際には絶大なものになっていた。
まるで敷かれたレールのように未来に進んでいくストーリー。セイレーンと言う不確定要素があるとはいえ、もし、このままであれば確かにロイヤルは鉄血に勝利する。しかし、それが意味するものはユニオンが覇権国となりロイヤルが没落していくという事実。
だからクイーンエリザベスは覚悟を決めたのだ。
勝利する戦いには全て介入する事により『再現』を行う。
敗北する戦いにはそのまま敗北する『再現』を行い、同時に秘密裏に敗戦したkansen達を、中でも特に重鎮とも言える面々は絶対に潜水艦などを派遣する事により回収、死の運命を覆すと。
そして『再現』という絶対的なアドバンテージによってレッドアクシズを叩きのめし、ユニオンや北方連合がイニシアチブを握る前にこの戦争で勝利し続けて、最終的により良い勝利を。決して、ユニオンではなくロイヤルが、ロイヤルが主軸となるアズールレーンの名の下に世界に君臨できる世界を目指そうと。
クイーンエリザベスは決意する。
その再現のために時に味方を利用する、元味方を攻撃する必要もあった。
その再現のために時に多くの敵国、自国の民間人の命を見捨てる事になる。
そして、ロイヤルは軍事行動を開始したのだ。
最初の作戦目標は旧アイリス領、メルセルケビール。ケビール港。
現在はヴィシア聖座に掌握されており、数年前までは共に戦った盟友達が守る港。
女王陛下は決断する。今ここで、ヴィシア聖座を攻撃し、完全にヴィシアが鉄血に取り込まれる前にダンケルク達を撃破しようとフッド達を派遣した。その勝利は確定されており、運命はその通りに進んでいくと。そう理解したうえで、陛下は自らが作戦を組み、アズールレーン陣営にメルセルケビール攻撃を通達。そのうえで勝利の『再現』を行い……完全に沈める事には失敗したものの、フッドとアークロイヤルは役目を果たした。
『再現』との違いは沈むはずの戦艦ブルターニュが大破状態ながらも生存し、予備部隊であったネルソンがダンケルクと交戦し、敗北して逃げ帰るなど差異は産まれてしまったが、ほぼ完璧とも言える勝利を。そして世界は『再現』通りに世界は進んでいくという呪いの実証を行なってしまった。
これによりヴィシア聖座はレッドアクシズの旗を掲げて強烈な反ロイヤル国家となり、同時にロイヤルに亡命したリシュリュー枢機卿は自由アイリス宣言を行い、アイリスは二分となってしまう。
自分達にはヴィシアを攻撃する表向きの大義はある。それでも……ヴィシア攻撃を決めた時、ロイヤルの幹部達に笑みを浮かべる者はいなかった。どれだけ美辞麗句、大義名分を並べても結局の所は自国の国益を追求して、優雅や礼儀ではなく物量と暴力の名の下にダンケルク達を蹂躙し、アイリスを二つに割ってしまったのだから。
こうして人類初のkansen同士の戦いが終了し、いずれは多くの血が流れていく。その引き金をロイヤルは引いてしまった。
「全く……鉄血が世界を混乱に陥れたと散々私達は世界に発信しているのに、実際戦争と混乱を望んでいるのは私達ロイヤル。本当に、滑稽ね」
疲れたように呟く陛下に全てを知る、ウォースパイト達幹部は何もいえなかった。
あとはロイヤルが勝ち続け、重桜がユニオンに宣戦布告。真珠湾攻撃を行いユニオンが重い腰を上げればロイヤルは確実にこの戦争に勝利できるだろう。
世界は進んでいく、意地を敷き詰めた世界で赤と青に二分されていく。
最早ロイヤルは止まらなかった。
それが例え国益のために多くの人々を苦しめる事になると言っても自国の利益と、没落の未来を回避し、同時にkansen達の権限の確立の為に。
そして王家は決意した。
全てはより多くの善の為に。
全てはこの戦争を終わらせる為に。
全てはロイヤルの戦後の未来の為に。
そして王家の栄光のために。
世界を戦火に包み、そして苦悩する女王陛下を支える為に、勝利し続ける事を決意するのであった。
「以上が鉄血に潜伏中である、シェフィールド、エディンバラからの連絡です」
その日。クイーン・エリザベスは執務室にて鉄血に送り込んだスパイからの報告書を戦艦ネルソン、ウォースパイトと共に閲覧していた。
その情報はロイヤルとしては頭を抱えてしまう程に、衝撃的な事態であった。シェフィールドとエディンバラの報告によると、鉄血では既に空母が存在していると判明したからだ。
その名前はグラーフ・ツェッペリン。護衛を連れている彼女は明らかに鉄血内部でも幹部と思われる存在であり、とある基地を視察していたとネルソンは報告書を読み上げる。
「鉄血が空母ね……」
クイーン・エリザベスは思案する。多くのkansenからの記憶を呼び覚まし、編纂した『再現予定書』を見ても鉄血は空母は実用化してなかったはず。交戦した記憶もなく、仮に実用化しても少なくても大戦初期に存在するはずはなかったと。
「モナーク、ネプチューンと同じく計画艦の一員でしょうか? 」
ウォースパイトはとある2人のkansenを思い浮かべながらそう口を開く。艦歴が存在せず、セイレーンと戦う為に遺伝子情報から汲み上げた特別計画艦はロイヤルにも存在してる。
彼女達はメルセルケビール海戦で予備部隊として参加したネルソンが傷ついた事もあり、不確定要素を持ち込むと思わぬ海戦が発生し、再現の邪魔になるからと、この戦争を『再現』している間は出撃を許されないと決定されており、現在は幽閉状態となっている。
しかし、その力は他のkansenと比べても圧倒的と言えるだろう。そして自国と同じく鉄血が空母の特別計画艦を生み出してもおかしくないと。そうウォースパイトはネルソン、クイーン・エリザベスに自身の考えを伝えてみせる。
実際の所は彼女はそうではない、しかし、並行世界で完成しなかった。計画だけは立案されていたkansenも鉄血では現れるが、ロイヤルでは未だ特別計画艦を除けば存在せず、そうウォースパイトが勘違いを行なっても仕方ないだろう。
余談ではあるが同様に不確定要素の塊であるキューブ適正のある指揮官はロイヤルでは重宝されず、近隣のセイレーン戦にのみ活躍を許され、『再現』のための戦いでは指揮官は基本的には連れて行かない方針となっている。
基地司令として権限を与えられた人間のヘルブスト指揮官といい、生まれたと同時に幹部である事が決定した特別計画艦オーディンといい、鉄血とロイヤルは、ありとあらゆる意味で違っていると言えるだろう。
「鉄血に空母が……どうしましょうか、陛下」
ネルソンの呟いた言葉に、無言の沈黙を挟み。悩みながらも陛下ははっきりと決断した。
「不確定要素ね、確実に私たちの目的を成す為には邪魔な存在。なら……答えは一つよ」
ーーグラーフ・ツェッペリンを暗殺しなさい。
そう、はっきりと陛下はネルソン達に命じるのであった。
「暗殺、ですか」
躊躇うようにそう口にするネルソン。余り乗り気ではない事が伺えてウォースパイトは一瞬顔をしかめて見せる。
彼女は潔癖な所がありメルセルケビール海戦の『再現』のためとはいえ、ロイヤルがヴィシアに到底従うことなど不可能な降伏勧告を高圧的に行い、その上で攻撃した事を苦く思っているのだ。
その上メルセルケビール襲撃における予備部隊として配属された所、傷ついたダンケルクに敗北した上、殺されずに見逃された事を今も気にしており、卑怯ともいえる暗殺に関して思う所はあるのだろう。
そんなネルソンを見ながらクイーン・エリザベスはため息を漏らす。
「シェフィとエディンバラはグラーフ・ツェッペリンが視察に来ていると報告したのよ。つまり近日ここにグラーフ・ツェッペリンが配属される可能性があるわ」
女王陛下はネルソンの性格を理解しているが、今更卑怯な事に躊躇う余裕はロイヤルにはなかった。
「だからこそ今のうちに不確定要素の塊である空母グラーフ・ツェッペリンは暗殺しなければいけない。『再現』の編纂書において彼女の存在は歴史に歪みを発生させかねないのよ……ただでさえ本来この時期に起こるはずのヴェーザー演習作戦を鉄血は遅延してるのよ。だからこそ、これ以上の『再現』の邪魔になるグラーフ・ツェッペリンだけは何としても粛清しなさい。これは、女王命令よ」
了解しましたとネルソンは答える。同時に襲撃部隊は、スパイとして侵入したシェフィールドと同じく、漁船を使って侵入させなさい。そして新しい基地を明朝に。鉄血が迎撃準備を整える前に、グラーフ・ツェッペリンを仕留めるのよ、と。
成功すれば不確定要素を排除できる。失敗しても基地は潰せて鉄血の面目は丸潰れとなり、目先の勝利を求めてヴェーザー演習作戦を行う可能性が高くなる。
どちらにせよ今後の再現の為に必要な作戦。『再現』の為に本来起こるはずがない海戦を引き起こす事に不安はあるものの、本来存在しないはずの空母によって引き起こされる再現の崩壊と比べれば、と天秤は暗殺に傾いた。
こうして襲撃部隊は旗艦は歴戦の空母イーグル。そして基地を壊滅させる為の砲撃役として選ばれたのは騎士団長の妹であるデュークオブヨーク。
「頼んだわよ……全てはこの戦いを終わらせる為に。なんとしてもグラーフ・ツェッペリンを仕留めなさい」
そして……後にバルト海海戦と呼ばれる戦いは幕を開けるのであった。
・再現
再現に関しての情報を引き出す場面は今作のオリジナル要素、なぜゲーム内でロイヤルの幹部達が何度も再現との口にしているのか。そして、なぜ再現で負けると言うのにレッドアクシズの面々はその事を知らず、逆にアズールレーン。特にロイヤルは再現について熟知しているのか。
イラストリアス「あまり考えたくはありませんけど…その時は陛下の言う通り、「再現」するしかありませんわ」
とイベント『悲歎せし焔海の詩』作戦準備にて発言しており、のちにイベント『神穹を衝く聖歌』に負いても、メルセルケビール海戦はロイヤルが因子に従い、引き起こしたと判明しており、少なくてもロイヤルは再現の知識に関しては他陣営以上のものを持っており、幹部クラスは史実再現の情報を共有していると思われています。
また、メルセルケビール海戦は上層部ではなく陛下が主体となって決定したと語られており、ロイヤルkansenは大規模な海戦を行う権限を保有しているなど他国のkansen以上に独立した強い権限を持っていると言えるでしょう。
・そして情報をまとめつつ、何故かより多くの記憶を保有しているベルファストの記憶が正しいのであれば。
最も多くの記憶を保有しているベルファストは現在史実では記念艦として三笠のように保存されており、その為に史実で戦後没落していく記憶を保有していました。仮に女王号令は他国のkansenには効きませんが三笠、マサチューセッツであればより多くの記憶を引き出せたでしょう。三笠は元ロイヤルとも言えるので効く可能性はありますが。
・最終的により良い勝利を。決して、ユニオンではなくロイヤルが、ロイヤルが主軸となるアズールレーンの名の下に世界に君臨できる世界を目指そうと。
実の所ゲーム内ではクイーン・エリザベスの考えはある意味では達成しておりセイレーン作戦の主体となったのはロイヤルであり、それぞれの勢力はセイレーンとの戦いに集中せざる得ませんでした。今ここで、セイレーンよりもロイヤルへの恨みのままに行動すれば、自分たちは大義を失ってしまう。そして例え過去のシコリがあろうとも、人類は一丸となって団結せざる得ず、レッドアクシズを無効化した上でセイレーンに集中できる。そしてレッドアクシズはもうロイヤルに敵対行動を今の所は取る事ができない。まさに、クイーンエリザベスの望む通りの歴史になったと言えるでしょう。
ゲーム内では鉄血や重桜が暗躍しているのでこのままロイヤルがグエーとなる可能性もありますが。
また次回は恐らくギャグ多め作風になると思います、バルト海海戦以後の陛下の心労をお楽しみあれ。
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄