波の静かな月明りの中、凪いだ海が夜空を映す。時刻は現在21時
ゆらりゆらりと揺れる船、赤と黒のコントラストな調度品で統一された船内にて、じっと静かに時を待つ。
磯の匂いが鼻腔をくすぐり、船の窓の外には夜の街を輝く遠いタラント基地の姿が月の光と交差して夜の海を照らしている。
艤装を装備しつつも今は束の間の休息。
ヒッパーはじっと海を眺め、マインツは椅子に座ってコーヒーに舌鼓を打ち、シュペーは空を見上げて満点の星空を眺め、グラーフは腕を組んで目を閉じながら精神統一。
自分はといえば、ぬるいココアを口に含み、ただ静かに合図を待つ。きっと今頃友軍は作戦を成功させていると祈りながらただ静かに時を待つ。
「しっかし…この作戦、本当に成功するのかしらね?」
「鉄血としては、成功して貰わねば困るのだ…その為に、我らが来ている、と言っても過言では無いのだからな」
ヒッパーが海を眺めながら口にすると、グラーフが気怠げに自分達の目標を改めて口にする。
現在自分達は祖国鉄血から遠く離れた夜のタラント沖の海にて、指揮艦に搭乗しながら、サディア海軍の連絡を今か今かと待ち望んでいた。kansenといえどもずっと海の上を滑っているのは負担があり、こうして船の中で待機しているのだが、作戦予定時刻の18時をとうに3時間も過ぎている。
既にロイヤルが作戦を察知して、何かしらの謀略を実行に移しているのか、それともサディア・ロイヤルの海軍が神出鬼没の人類の敵、『セイレーン』に襲われたのだろうか?と不穏な気配が船内に漂う中、本当にセイレーンやロイヤルに襲われているのなら真っ先に通信が来るはずだとため息を吐きながら現在、俺は4杯目の温いココアを口に含んでいた。
作戦内容はセイレーン基地を攻撃すると見せかけてサディアに派遣されたロイヤル艦隊を騙し討ちにより撃破、そして、サディア帝国の喉元の骨ともいえるロイヤル領マルタに於けるマルタ海軍基地を占領し、地中海をサディア帝国、引いてはレッドアクシズのバスタブにする事で完遂する。
自分達がサディアの救援要請を得て部隊が派遣され、先に派遣されていたロイヤル艦隊にバレないように入国し、隠れ、総旗艦ヴィットリオ・ヴェネトさんとの『思い出すのは勘弁願いたい。テルマエ外交の』遣り取りを経て、マルタ基地攻略戦の作戦要項を聞かされたのはほんの数週間前。というよりもロイヤルが先に入国しているという事実に気がついたのもその時だった。
リットリオ曰く、官民問わず緘口令を敷いた上でサディアの皇帝陛下のサインまで利用して公文書を作成、アズールレーンの復帰を餌にロイヤルネイビーの事実上No.2である戦艦ウォースパイトを陣中に誘い込む事に成功した、念入りな作戦。
この作戦に成功すれば地中海のフリーハンドを得たサディアは鉄血、ヴィシアとの連絡や共同作戦も可能に成るだろう。
しかし。
「指揮官……顔色悪いよ?」
「あ、あぁ。大丈夫だシュペー。ごめんな心配かけて」
シュペーがこちらを心配して、上目遣いで俺を見つめてくる。だめだな…自分が焦れば彼女たちまで不安になるのだからポーカーフェイスだ、ポーカーフェイス、深呼吸、深呼吸、素数を数えながら深呼吸。
そう……何事もなく成功するはず、もしサディアが作戦に失敗すれば、俺たちが援軍に動くだけなんだから。
胸騒ぎがする
サディアが作戦に失敗すれば自分たちが援護に向かうだけだ、何事もなくマルタ基地が陥落すればそれでいい。
しかし……あの4大陣営の一員であり、謀略、計略何でも有りなロイヤルがそんなに甘く騙されるのだろうか?
酷く嫌な予感がする、心臓を凍った手で鷲掴みにされる様な嫌な感覚にジリジリと襲われる。
――自分たちは何か大切な事を忘れているのではないのか?
もし、サディア帝国の謀略をロイヤルが気がついているのなら、自分がロイヤルならどうやって報復するのだろう?
ケース①
逃げ帰る?
後方にマルタ基地があるのだから否。
ケース②
大量のkansenで待ち構える?
そこまでのkansenがロイヤル本島よりマルタ基地に移動するのならリットリオ達だって直ぐに気がつく筈なので否。
ケース③
サディアが……作戦の決行を躊躇うほどの事態を引き起こす?
自分であれば恐らくケース③を選択するだろう、しかし、ロイヤルからすれば動かせる戦力はサディアにバレない程度の少数戦力になるはず、なら、どうすればサディアに打撃を与えられるのか?
頭の中でピースが一つ一つまとまっていく、作戦決行前日どころか、リットリオから今回の作戦を説明されてからも感じていた違和感。
しかし、それでも最後のピースが埋まらない。
何だ?
最後のピースは何なんだ……?
「卿よ、考え過ぎだ。少し仮眠を取れ……徹夜明けの様な酷い顔では満足した指揮も出来んぞ」
俺の肩にポンと手を触れつつ、コーヒーを口に含みながらグラーフはそう呟いた。海の闇と背中まで流れる銀髪が月明かりに照らされて良く映える。
「しかし………この様な漆黒の闇では艦載機を飛ばすのも一苦労だ」
「うーん……グラーフ、参考までに聞きたいんだけど、航空戦で夜間戦闘で敵に向かって攻撃を行うのは難しいのか?」
実の所、俺には夜間戦闘の経験はない。教本通りなら重桜は夜間訓練を積極的に行っていて世界最強の夜戦集団だなんて書かれていたが、その本に於いても航空母艦の夜間戦闘についての記述は微塵もなかった。
空母kansenは独自の感覚で索敵、爆撃、雷撃を行なっているらしいが、これに関しては人間である自分には理解出来ない感覚なのだろう。鉄血の航空母艦は現在グラーフ・ツェッペリンのみ、こんな場面で言うべき事でも無いかも知れないが、夜間戦闘についてもっと早く聞いておけば良かったと後悔しつつ、迷う頭を振りつつもグラーフに話しかける。
「そうだな……夜間戦闘の場合まず敵目標を索敵する事自体が困難になる。
選択肢としては照明弾を打ち上げて海を照らすか、レーダーのみを信じて敵目標に爆撃するかの二択となる。とはいえ、我の場合は、照明弾もレーダーも使わずに爆撃機で面制圧を行い炙り出す事を優先するが」
……それって脳筋スタイルなんじゃないか?と思いつつと敢えて口には出さない。
「やっぱり、動く目標を夜間戦闘で攻撃するのは難しいのか」
「あぁ、これが動きの鈍い攻撃目標であるのなら爆撃を集中して……」
・動きの鈍い攻撃目標。
・少数のkansenで敵にダメージを与えて敵を混乱させる。
・そして、タラント基地は基地内部ではなく外部に大量の船舶を並べていて、基地は今も稼働中なのだから誘導するかの様に光り輝いている訳で。
………ああっクソ!!そういうことか!!!!
「グラーフ、仮にだけどさ?敵が全く動かなければ爆撃も雷撃も夜間戦闘だろうが当てる自信はあるか?」
「卿……何を当たり前の事を……我の力を疑っているのか?偵察機だけではなく航空機そのものに我ら空母には『目』がついている。
敵が無抵抗なのであれば、全ての攻撃を集中してそれを撲滅する事など的に攻撃を当てる様なものだ」
恐らくグラーフの表情は呆れているのだろう、しかし頭の中では嫌な仮説がその瞬間産まれてしまった。
空母……大量のサディアの艦艇……もしかすると……!!
「んっ…ちょっと、あんなの話し合いにあった訳?」
懸念されていた最後のピースがハマったその瞬間、夜空に赤い信号弾が点滅する。
いや、そんな事はない、今回の戦闘ではリットリオが直接この艦隊に通信すると作戦会議で発言をしていた、つまり、サディアからの通信がまだという事は……!
「指揮官、何をやっている!?」
後方からのマインツの声を無視して心臓がバクバクと早鐘を打つ中、船内を飛び出して甲板に、赤く点滅する信号弾を目に焼き付け…その瞬間。
気のせいかも知れなかった。
ただの幻覚かも知れなかった。
しかし…俺は何故か確信してしまった。
ぞわりとした悪寒に襲われつつ海上へと目を向けると。
――――白い女性と、目が合った気がした。
こうなってしまえばやるしかない。
ウォースパイト達との密会後、サディアの警戒網を隠れるようにして進んでいき、作戦予定の位置についていた白い衣類に身を包んだ美女、王家の戦士である空母kansenイラストリアスは覚悟を決める。
彼女は自らの主君である女王クイーン・エリザベスの言葉を思い出す。彼女は既にこうなる事を予測しており。
「将は戦いに勝つことを考え、王は戦いを避けることを考える……でも戦いが必要である以上もしサディアがロイヤル艦隊に不利になる働きをした際は躊躇なくロイヤル、そして『私たち』の『立場』をしっかり見せなさい!」
こうなる事を既に予測していたのだろう。陛下は戦いを避けきれないのであれば、自身の艦歴に従ってヴィシア戦の時のように戦う必要があると口にしている。そしてこの戦いが避けられない事を何となく彼女は分かっていたのだ……そう、自身の艦歴を女王号令で調べた際に最も強烈な記憶として残ったものがこの記憶なのだから。
タラント空襲。
ジャッジメント作戦。
地中海に存在するサディア艦隊を撃破する為に並行世界の自身が行った、サディア帝国の主要港タラント軍港に行った夜間における港湾奇襲攻撃。
世界初の航空機による港湾攻撃。それまで空母kansenは戦場の主役とはなり得えない存在であったが、この戦いにより戦艦も含めた多くのサディア海軍は沈黙。これにより世界にイラストリアスはその力を示し、各国の空母kansenの重要性は見直され、航空論者と空母kansenの発言力は増していき、戦艦の時代を終焉に導くきっかけとなり得た歴史的事象。
この戦いの結果ロイヤルは圧倒的勝利を収めてサディア帝国の動きを鈍化させる事に成功し、地中海のイニシアチブを獲得したと言えるだろう。しかし、王家の戦士達にとってはそれはとある一つの……最もこの戦争の行く末を左右するといえる事象を引き起こす為の前段階に過ぎなかったのだ。
重桜。
東方に存在する近年まで鎖国を行なっていた未知の国家。現在では四大陣営と呼ばれ、世界パワーバランスを握る存在であり、セイレーン大戦中はロイヤルとの技術交流も行なっていたのだが、現在は不穏な動きを見せている大国の一つ。
女王陛下曰く派遣したスパイによれば訓練回数の増加や蔵王重工関係者が本部に出入りする数が増えている。
もし、タラント空襲に成功した場合。恐らく重桜はユニオンへ航空機による奇襲攻撃と同時に宣戦布告を行うはずと女王陛下は口にする。その要因は何故なのか、女王陛下が多くの艦歴を女王号令で調べても不明ではあったのだが、仮に重桜が真珠湾の奇襲攻撃を行えば、ユニオンは多大なる損害を受けてしまい、重桜は同時に世界にレッドアクシズへの加入を宣言し我々ロイヤルの負担も増えるという最悪の事態が引き起こされてしまう。
しかし、それこそが……ロイヤルにとって最良の道となる。
この重桜の真珠湾攻撃によって、重桜はレッドアクシズ加入を宣言してしまうのだが、同時にユニオンは国内を奇襲攻撃された衝撃と怒り、そして世論の声に応じる事によってリメンバー・パールハーバーと叫び、対レッドアクシズ路線の拡大を宣言。
ユニオンは積極的にレッドアクシズとの戦争を終わらせる為にその強大な工業力をフル活用してレンドリース製品を作り出し、膨大な物資をロイヤル・自由アイリス・北方連合、新たにアズールレーンに加わった東煌に提供。
そして大量のkansenが欧州戦線に派遣される事によりロイヤルはユニオンとの合同作戦を開始。それこそが、ユニオンの本格的な参戦こそがアズールレーンの勝利に最終的に繋がるのだ。
つまり真珠湾攻撃はロイヤルにとっては全ての『再現』を捨ててでも、真っ先に『再現』の必要がある最重要事項。この作戦の後の『再現』で多くのロイヤルkansenは傷つき、領土を一時的に喪失してしまうのだが、それを乗り越えればユニオンの参戦によって戦線は安定、最後はレッドアクシズを撃ち破る事が可能となっている。
最も先の歴史的事象、未来を知る事が可能なベルファスト曰く、レンドリースの有償支援こそが莫大な借金となり、ロイヤルの没落に繋がったと発言しており、一歩間違えば自らの首を絞める事になりかねない重要な事象。
現在はクイーン・エリザベスがユニオンとの交渉によってレンドリースの条約に深く関わった為に『再現』と違って一部のkansenをNYシティ防衛部隊に派遣する事により、実質的な無償支援となっているが……長期戦は。ユニオンが参戦した後はわからない。
王家の望むものはロイヤルの勝利ではなく、その果ての没落の未来を回避する事。だからこそ『再現』の知識を利用する事で、望む形での終戦を迎えて没落の未来を回避する。
その為には……このタラント空襲は。サディアに対する裁きと言えるジャッジメント作戦を成功させて、ロイヤルの勝利への道筋を立てなければいけないのだ。
サディアの不穏な動きは既にロイヤルは把握している。サディアは恐らくロイヤルの地中海の重要拠点マルタを騙し討ちする為に動くと女王陛下とイラストリアスは既に把握しており、偵察機による報告においてもサディア海軍の動きに変化は見られていた。
こちらから提案したセイレーン基地への夜間攻撃をサディアは容易く了承していたが、内心では喜んでいたのだろう。マルタ基地の哨戒は夜間は機能せず、まさに撒き餌としては最大限の効果を発揮する。これによってロイヤルはサディアを誘い込む事に成功したのだ。
だからこその裁き……王家の栄光に傷をつけようとする罪人に、歴史を変える一撃によって裁きを与え、後の真珠湾攻撃の為の踏み台にする。
全ては王家の栄光のために、そして王家の没落を回避してロイヤルのより良い未来を勝ち取るために。
「無駄な争いをどうして……」
そして予測通り、夜の闇を照らす赤い信号が放たれてしまった、ヨークの合図にもしかしたら……という一縷の望みはこれで砕けたと言えるだろう。
「この、戦いでタラントは火に包まれて多くの人々が傷つくでしょう。その罪も、その咎も全て私が受け入れます」
疲れたように、深いため息を吐くイラストリアス。しかし、躊躇わずにイラストリアスは即座に発艦準備を行う。雷撃機ソードフィッシュと爆撃機フルマーによるこの攻撃は間違いなく歴史を変えることとなるだろう。
「サディアがロイヤルと敵対するのであれば……願わくばこの一撃が世界を変え、平和への道筋になる事を祈りましょう。私達の凱旋の行き先が、光満ち溢れる場所となる為に」
ふと、彼女の脳裏には本国に残してきた妹達の顔が過ぎる。私はこの攻撃で多くのサディアの人々を傷つけてなお、ユニコーンちゃん達と本心から笑う事が出来るのだろうか?と胸が締め付けられてしまう。
たとえ偽善者と呼ばれてもいい。傲慢と言われてもいい。多くの人を傷つけ非難される覚悟も既にできている。あの日、クイーン・エリザベスに記憶を引き出され、王家の幹部達は王家の栄光とロイヤルの未来を救う為に命を差し出したのだ。
忠臣イラストリアスの王家への忠誠と平和を願う気持ちは本物であり、その為であれば幾らでも彼女は自分の心を捨て去る事が可能だった。
そして命令であるのなら国家のために基地を焼き払う事への躊躇いを瞬時に捨てる。多くの人々を命を奪うことに繋がる一撃を自身の手で放つために彼女ははっきりと口にする。
「自らに宿る因子に従い……『再現』を行いましょう」
エンジン音が夜空に響き渡り、あるべき歴史を導くために航空機は放たれる。こうして一斉に放たれた雷撃機、爆撃機は列をなして誘導灯の様に夜空を照らすタラント基地へと殺到。待機中のサディアのkansenや無人艦に打撃を与え、タラント港を火の海に……
――――変える事はなかった。
「なっ……!? 」
イラストリアスは絶句する。
突如艦載機に一斉に襲いかかる両翼に黒い十字架がペイントされた戦闘機達。彼らは獲物を仕留めにかかる猛禽類の如く一気呵成に此方に食らいつく。その任務を果たすために爆薬を満載した艦載機は次々と制御を失い墜落していき、一つ、また一つと海面に叩きつけられる。
いくつかの艦載機は無人艦に雷撃を放って撃破に成功したのだが、kansenはノーダメージであり、本来想定されていたはずの戦果には全く及ばない。特に基地を爆撃するはずだったフルマーは最優先で念入りに破壊されていく。
「………ッ!グラーフ!艦載機展開!戦闘機急げ! 」
「む?卿よ……何を? 」
「いいから!早く!!向こうにも空母が来てる!ヒッパーとシュペーも!前に出て対空警戒!!マインツは後方に下がって二人が撃ち漏らしたものを任せた!! 」
「えっ、ちょっ、何よ!?説明は!? 」
「ヒッパーちゃん、急いで。こういう時の指揮官のカンはよく当たる、でしょ? 」
「了解。夜間による奇襲攻撃か……しかし、私たちの存在は予想外だったようだな」
『イラストリアス!?何が起きたの!?赤い信号弾は確認したけど状況報告を!! 』
『イラストリアス様!?どうなってるんですか!?私ちゃんと信号弾撃ちましたよ!? 』
夜空で艦載機が次々と破壊されていく姿を遠目から目撃したのだろう。イラストリアスの通信機から響き渡る焦りを隠せないウォースパイトの声と困惑を隠せないヨークの声。イラストリアスは呆然としながらも瞬時に思考を切り替えて対艦隊の準備を行う。
「おそらく鉄血の方々です……例のグラーフ・ツェッペリンの艦隊が待ち構えていて、作戦は……失敗です……! 」
サディアが特別計画艦として空母を開発した可能性は低い。重桜が敵に回るのはあまりにも早すぎて、ヴィシアは空母を保有していない。だとすればこの奇襲攻撃を防いだのは、あのグラーフ・ツェッペリンの艦隊に他ならない。
ロイヤルの特務部隊の面々を全て捕虜にした上で、ヴァリアント率いる部隊を撤退に追い込んだ精鋭部隊。北欧戦線における鉄血が行うはずだったヴェーザー演習作戦を中止に追い込み、ロイヤルの再現スケジュールを大幅に狂わせた怨敵とも言える存在。
そんな本来キール基地周辺に存在するはずだった鉄血の部隊が……存在しないはずの鉄血艦隊がこの戦いに介入しようとしているのだ!
『こ、ここサディアなんですよ!?なのに鉄血の部隊がなんで……!? 』
『あ、あの……疫病神がぁ……!!何で鉄血が介入してるのよ!?ちっ……イラストリアス!ヨーク!!作戦を切り替えるわよ!!一刻も早くマルタ島に!! 』
最早奇襲攻撃を防がれた時点でこの『再現』は完全に失敗に終わってしまった。
『再現』を円滑に行うためにジャッジメント作戦の『再現』に関わらない人材は全てアレキサンドリア基地に帰還しており、数的有利は絶望的。今すぐにでもマルタ島に帰還して今後の身の振り方を考えなければならない。
「きゃっ……!? 」
だというのに撤退をしようとすれば鉄血の艦載機がこちらに機銃攻撃を仕掛けて妨害を行なってくる。なけなしのシーファイア戦闘機を使って迎撃に移るも、本来基地を空襲するための雷撃機、爆撃機ばかりで身を固めている彼女には迎撃のための戦闘機の数は少なく、不利は確実だろう。
「撤退は……難しそうですね。これより時間稼ぎを行います」
『……こっちも戦艦に囲まれたわ、ヨーク。今すぐ貴方だけでもマルタ。無理なら他の基地に……手はず通りに動きなさい』
『……了解です。最後の言葉は』
『王家に、栄光を』
「ユニコーンちゃん達に。復讐なんて考えずに自分の人生を歩むように伝えてください」
『ごめんなさい……!こっちも重巡と交戦してますけど……!絶対に、伝えてみせます……!』
本来は勝てるはずだからこそ、彼女達は歴史を繰り返すために『再現』を望む。
しかし、『再現』は今失敗した。
メルセルケビールと違い、最早この戦場に参加する王家の戦士達は等しく希望から絶望に、狩るものから狩られるものに変わってしまう。未来への道筋を知ってしまったからこそ、一気に目の前が暗闇に包まれ、闇の中に放り込まれるような感覚に襲われてしまう。
それでも、彼女達は死の恐怖を振り払い王家の戦士として自らの為すべきことを為そうと動き出す。それが旅の終焉になると理解していても、この情報を本国に伝えんが為に。未来の可能性を求め、彼女達は最後まで諦めずに抵抗を続けるだろう。
こうして本来勝利するはずの再現は崩壊、三人にとっては絶望的な戦いの幕は今上がる。
この戦いは本来の歴史ではあり得ない戦い。漆黒の獣達の咆哮が海に反響し、純白の空母と黒衣の空母は、公式記録であれば世界初とも言える空母による本格的な対決に移行する。
この戦いは確実に歴史に刻まれるだろう。その後の展開は観測と嘲笑を行う人類種の敵であっても予想は不可能。
『この海域に存在する全てのサディア海軍に告げる!こちら鉄血艦隊!これより戦闘に参戦する!!!友邦サディアを襲うロイヤルの『卑劣な騙し討ちによる奇襲攻撃』を防ぐための迎撃行動を行う!繰り返す!こちら鉄血艦隊!これより戦闘に参戦する!!』
後に『イオニア海海戦』と呼ばれる戦いのゴングは、イラストリアスの艦載機の破壊音、そして静寂の海に戦いの狼煙をあげんとばかりに沈黙の海を切り裂く、鉄血の指揮官『ヴァイスクレー・ヘルブスト』の必死の広域通信と共に鳴り響いた。
鋼鉄の咆哮が世界を揺らし、地中海に狂想曲を巻き起こす。漆黒の艦載機が闇を切り裂き、歴史を変えるはずの因子を次々と叩き落としていく。
彼らは未来を勝ち取るために予測不能な戦場にその身を投じていく。その先にあるのは希望か?絶望か?しかしこの事実だけは、はっきりと言えるだろう。
その時、
・真珠湾攻撃
史実の1941年(昭和16年)12月8日未明に大日本帝国が行った航空機による奇襲攻撃。日本人であれば誰もが知っているといえるこの戦いの裏には前年に行われたタラント空襲が深く関わっていました。
イギリス軍がイタリア軍の戦艦を複数、空母イラストリアスによる航空機による雷撃隊によって撃破。これにより地中海戦線は後退したのですが、本来空母は硬くて、強くて、戦場の主役であった戦艦を撃破できない。それを裏切るような大戦果により真珠湾攻撃はこのタラント空襲を参考にしたのではないか?という説もあります。
そして、この真珠湾攻撃によってアメリカは日本への報復と復讐の為にリメンバー・パールハーバーと叫び、それまで消極的であった欧州戦線に部隊の派遣を決定。これが第二次世界大戦最大の転換点の一つとも言われており、アズールレーンゲーム内でも真珠湾攻撃以後ユニオンはロイヤルとの共同作戦を行う為に『光と影のアイリス』後半戦のトーチ作戦のように、多数の部隊が派遣されました。
ある意味では真珠湾攻撃こそイギリス……そしてロイヤルの勝利の最大の要因と言えるでしょう。本作ではこの真珠湾攻撃の『再現』こそがクイーン・エリザベスが望む最大の作戦であり、だからこそロイヤルはその前段階にあたる『ジャッジメント作戦』を必ず成功させる為の準備を数ヶ月前から行なっていたのです。
また、ゲーム内でもプリンス・オブ・ウェールズがイベント『努力、希望の計画』、そのセイレーンが見ていたログでは彼女はこんな発言を。
「私たちの大砲と比べれば航空機はあくまで補佐程度だけど、慎重に越したことはないわ。」
→それまで航空論はタラント空襲をもってしても評価されずあくまで補佐的な役割であり、真珠湾攻撃、そして戦艦であるウェールズ達が沈められた『マレー沖海戦』で評価される事になる。
「ずっと中立を装ってたユニオンの連中もこれでいい加減気づくね。」→それまでユニオンは積極的な支援を行なって居なかった
「こんなハエどもにやられるとは…私の慢心ゆえか…それとも大艦巨砲の時代はもう終わりだというのか?」
→戦艦の時代は終わりを迎え、新たに空母の時代を迎える事を示している
と史実のような歴史をアズールレーンにおいても歩んでおり、徐々に空母は戦争の主役となるのでした。
・イオニア海海戦
史実には存在しなかった海戦。本来の歴史、そしてゲーム内のサディアイベント『悲歎せし焔海の詩』ではタラント空襲の成功により、ロイヤルは勝利しまともな海戦が行われる事はありませんでした。
しかし、本来産まれる事のなかった、史実では存在を否定された黒衣の空母が歴史を変えてしまいました。
本来起きるはずの『再現』はこの瞬間崩壊、鉄血艦隊とロイヤル艦隊は交戦を開始します。これから先の歴史はセイレーンにも予測できない未知の領域、歴史は壊れ、そして誰も知らない歴史が、海戦が今始まろうとしているのです。
・ヨーク
本来は厨二病全開の台詞なのですが今作ではわかりやすく翻訳済み、流石のヨークも異常事態であり上司二人の前ではその言動もごく普通のものになりました。ヨークファンの皆様申し訳ございません。
・裏話
指揮官はタラント空襲を防ぎましたがそれもダイスによるもの。
三回の低確率のダイスにて
作戦前日
指揮官のひっかかりは
dice1d10=8 (8)
1~9.(取れ)ないです←
10.…………んんん?
配置につく
dice1d10=6 (6)
1~8.なんだ、この不安?←
9.しかし、ロイヤルもこの作戦読んだりしてないのかしらね?
10.しかし…この港、少し空襲に不安があるな?
最後のチャンス
dice1d10=10 (10)
1~4.サディアから動いてくれとの合図が←失敗
5~8.赤い、信号弾?←失敗
9.…本当に、来てるのは戦艦だけか?←判定ダイス
10.白い女性と目が合った、気がした←阻止確定
と最後の最後のチャンスの結果指揮官は奇跡的にもイラストリアスによる空襲の直前に気がつき、紙一重による防衛を実施。こうしてタラント空襲は防がれ、戦いは未知の領域に突入していくのでした。
以後サディア編はいよいよクライマックスを迎えます。もしよろしければ感想、お気に入り登録、評価をお待ちしております…
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄