太陽が静かに昇り、微かな光が辺りを照らす静かな朝。指揮艦内に与えられたマインツの部屋にて、俺は彼女と二人きりで、苦味の強いコーヒーを無理やり喉に押し込みながら、ゆったりと静かな時間を過ごしていた。
「来てくれたのは歓迎するが、貴官もやるべきことは多かったはずだ。無理をしなくても良かったろうに……」
「いや、短くても君と一緒に戦ってきた訳だから、戦友の見送りくらいはね」
複雑な顔をしているマインツが淹れてくれたコーヒーを再び喉に流し込む。やっぱ苦いなぁ……砂糖をガンガン入れたいけどマインツもいる手前今くらいはやめておくか。
本当はシュペー達も見送りを希望してはいたが、彼女達は現在サディアの研究施設で缶詰状態になっていてその暇はなかった。『イオニア海海戦』と呼ばれる戦いが終了して三日も経ったが、俺達はそれまでの休暇を返上するように身を粉にして鉄血軍人としての責務を果たしていた。
サディア帝国と鉄血公国の関係も変化した。それまでセイレーンを相手に限定したレッドアクシズの防衛協定の権限は拡大されて正式にアズールレーン……というか対ロイヤルを前提にしたものとなり、今後は二カ国は共通の敵と対抗するために密接な関わりになるだろう。
二カ国は現在『イオニア海海戦』を経て、殆ど同盟関係と呼んでも差し支えない程の蜜月関係になっており、サディアの国民感情も親鉄血へと傾く中、ビスマルクさんより権限を与えられたグラーフとマインツは更なる信頼関係の構築のために鉄血の科学技術の結晶である生体艤装のデータの提供や授与を決意する。
そんな中サディアは無傷で丸々手に入ったマルタ島への対処や、戒厳令にて24時間体制でのロイヤルへの警戒。そして鹵獲した多数の無人艦やkansenの艤装の研究・解析など忙しい毎日を送っており、リットリオからは休んでも良いとは言われていたが、そんな状態で派遣されている俺達鉄血艦隊も休むことはできるはずも無く、様々な部署に顔を出している。
ヒッパーやシュペーは自らの生体艤装の現物を片手に、技術者と共に試験に勤しんでいるだろうし。グラーフ辺りは鹵獲したイラストリアスの艤装の解析などに口を出している筈だ。特に空母に関してはサディア軍は航空戦力の有用性を痛感したらしく、グラーフの意見を参考にしつつ、急ピッチで研究が行われており、もしかすると、そう遠く無い未来にサディア軍にも空母が産まれるかも知れない。
「マインツもあと1日くらい残っても良かったんじゃないか?祝勝会は明日なんだから、それが終わった後に一緒に帰れば良かったのに」
マインツは苦笑しながら首を横に振る。
「いや、本来は戦いが終わり次第、この演目の内容を本土に伝えるために帰還することをサディアは望んでいたのだから遅いくらいだ。それに私がパイプになればスムーズに話が進むだろうし……何より私はパーティーの参加経験は無いからな」
「いや、俺もそんな経験無いんだけど……どうしようかなぁ……」
ため息を吐く俺に同情の視線を送るマインツ。結局行われる筈だった祝勝会はロイヤルへの警戒や事後処理なども兼ねて遅れに遅れてしまい、明日の夜に行われることになったがマインツはその祝勝会への参加を辞退して一足先に鉄血本土に戻ることを選択する。
現在搭乗している鉄血製の指揮艦では無く、彼女の帰りはサディアが用意した船舶であり、その船にはサディアの優秀な指揮官や複数のkansenだけではなく、鉄血に滞在予定の駐在武官やkansenの装備を研究する技術者チームと優秀な人材の宝庫となっていた。
彼らはこれから鉄血に派遣され、セイレーン技術の共同研究や今後の防衛協定の調整を行うための貴重な人材。今回の派遣はサディアの本気を鉄血に示すための人材派遣といえるだろう。同様の派遣が恐らく鉄血からされるとマインツは口にしており、言ってみれば人質や監視役としての側面も持っているのがまた面倒くさいが、政治なんてそんなものなんだろうと納得する。
捕虜となった二人のkansenの内、イラストリアスも鉄血に護送されることが決まったが、そんな鉄血とサディアの蜜月関係も、せっかくの派遣部隊がロイヤルやセイレーンに襲撃されて仕舞えばすべてが水泡に帰してしまう。だからこそ、マインツは自ら道先案内人兼、スムーズに話を進めるためのビスマルクさんへのパイプ役としての役目を志願したんだ。
着実に鉄血とサディアの関係はこれまでにない程に深まっており、リットリオの目論見は成功したといえるだろう。今は両国はいい方向に向かっていることを信じたいと少しだけ物思いに耽ると、やがてマインツはコーヒーを全て飲み切ると旅行カバンの取っ手を掴み、再びこちらに向き直る。
「時間はない。アズールレーンのロイヤルや自由アイリス以外の勢力がこの欧州戦線に参戦する前に、今は一刻も早くサディア、ヴィシアと関係を強化する必要があるんだ。これはあくまで私の役目であって、私が望んだことだ。気にせず貴官達四人は祝勝会を楽しんでくれ。というか楽しめ」
「楽しめって……」
「あぁ、嫌でも楽しんでもらう。この祝勝会の様子は間違いなく世界に発信され、鉄血とサディアの蜜月関係を世に知らしめるためのものなのだから……せめてカメラの前では何があっても笑顔を取り繕うのが貴官達の仕事なのだから」
指揮官の情報は秘匿されてはいるが、既に情勢は変化している。流石にマスコミ関係者に俺の名前や経歴などを話すことは禁じられており、サディアも検閲をしてくれるらしいが写真は間違いなく撮られるだろう。それなら祝勝会で貴族や軍人達に少なくても『鉄血の指揮官』としての情報をある程度は今後のためにバラした方がいいとグラーフと相談の上で決めてしまった。
『何、よくやってくれた…と感謝の言葉を先に贈っておこうかと思ってね。キミたちが居なければ、我々はタラント港を失っていたろうし…こうして、交渉のカードを得ることも無く敗れていただろう。最高の勝利だ、だから……キミはもっと胸を張りたまえ、このリットリオのいつものように、な』
あの海戦から一夜を空けてリットリオは俺の部屋にやってくると、開口一番にそう口にする。流石に疲れを見せてはいたが目はギラギラと輝いており、勝利の美酒の酔いはまだ抜けきってないようだった。後に本当に徹夜明けで、眠気覚ましにここに向かう前にワインを大量に飲んでいたと聞いた時は流石に申し訳なく思ったが。
『英雄殿が不在でパーティーをする訳にもいかないだろう?誰も欠けずに、ロイヤルを追い返してマルタ島を攻略した記念だよ。その1番の立役者の救国の艦隊の皆がいないというのは、華がなさすぎるからね』
こうして、一夜を開けた時点でリットリオもそう言いながら感謝をしつつも、パーティーの参加は絶対だよ?と笑顔で威圧された以上、俺達はマインツのように帰ることは許されない。パーティーも政治の一部であり、鉄血とサディアの今後の未来を諸外国にアピールするための側面を持っている以上、パーティーの参加は絶対だ。
そんなことを思い出しつつ、マインツはこの祝勝会の重要性を口にしながらも、すっと手袋を取り外しながら片手を差し出して握手の構えを見せる。苦笑しながらもそれを受け入れ手を差し出すと、少しだけ手が痛くなる程にぎゅっと力を込められて、やがてゆっくりと手の温もりは離れていく。
「はっきりと貴官に忠告しておこう。あの時、イラストリアスを救うために起こした行動は軍人失格であり、間違っていたと断言する」
ひと息ついて彼女の口から放たれた言葉は静かながらもはっきりとした口調となっており、そんなマインツに俺は反論することはできなかった。いや、する気も起きない程に自らの誤ちを理解していたのだから。
「貴官はあそこでイラストリアスを助けるべきではなかった。最初の降伏勧告を拒否した時点で相手は……ロイヤルネイビーは敵であり、あのままイラストリアスを沈めるべきだったのだから」
再び何も言うことはできずに思わずマインツの目から視線を逸らしてしまう。彼女の言うことは徹頭徹尾正論だ。あの時は殆ど身体が勝手に動いたといえる程に無我夢中でイラストリアスを助けようとしたことが、軍人としての責務と思っていたが、部隊内の最高権力者が全ての任務をほっぽりだして海に飛び込むだなんて狂っているとしか言いようがない。
後悔はしていない。イラストリアスを助けられたことを悔やんではいない。だが、あの行動の最中に俺がそのまま死んでしまったり、ロイヤルの援軍が現れれば仲間を危険な目に会わせた可能性もあり、ヴェネトさん達が必死になって作ろうとした蜜月関係も破綻しかねなかったのだから。グラーフに指摘された自らの欠点をようやく自覚した俺だが、それでも思い返すたびに罪悪感で今でも胸が苦しくなる。
「今回、我らは圧倒的な勝利を収めることに成功したがあくまで結果論だ。もし貴官が溺れ死ねば大問題になっていたのは間違いない。これからは勝手に暴走するなんてことは二度とするな。仮に相手を説得するなら、自軍が圧倒的に優位な状況で、艦隊の皆と話し合うという当たり前の前提条件をクリアした上で無力化するんだ。そして……」
「躊躇うな、だよね」
マインツはコクリと頷く。
「貴官の躊躇いが指揮系統を混乱させ、それが艦隊運営だけでなく鉄血公国の作戦行動に悪影響を与えかねない。今はまだ割り切れないかも知れないが……その結果がグラーフ、シュペー、ヒッパーの命を奪う要因となり得たのなら、その時悔やんでも悔やみ切れないぞ」
バルト海海戦の時は俺自身の私情も交えてたとはいえ圧倒的優位な状況で降伏勧告を行うことができたが、先の海戦はイレギュラー要素が幾らでもあったんだ。
セイレーンが裏切って孤立した鉄血艦隊を襲う可能性も。
ロイヤルの援軍が指揮官不在の鉄血艦隊に襲い掛かった可能性も。
マイナス要因は幾らでも思い付いてしまう。自らの考え無しの行動が幾らでも大切なあの子達の命を奪う結果となり得た未来を掴んでしまう恐れがあったんだ。改めてマインツと最後に話しておいてよかった。自らの愚かさと、今後俺はどうすれば良いのか何となく道筋を彼女は示してくれたのだから。
「貴官は一度、自らが周りにどう見られているのか理解した方がいい。そうすれば自ずと行動は見えてくるはずだ」
マインツは最後にそう口にすると、旅行鞄を片手に俺の返答も待たずに出口に向かおうと歩き出す。そんな彼女の背中をしっかりと、言葉を投げつけた。
「ありがとうマインツ……君と最後に話せてよかった。難しいかも知れないけど変わってみせるよ。自らの命を軽々しく投げ出さないことも。まずは仲間の命を優先して、必要なら……撃墜するって命令を出すことも」
『撃墜』とは口に出せたが『殺す』とは言えなかったのは俺の甘さなんだろう。指揮官という立場の俺は自らが手を下さずにシュペー達に相手を殺すように命令をするのが役目だ。あのイオニア海海戦の時も、イラストリアスの覚悟を知って吐き気と動悸が止まらなかった事実を思い出す。
大切な仲間達に殺人という業を背負わせる命令を下すという罪深さの罪悪感と拒否反応によってあの時の俺は吐瀉物をぶちまけてしまった。己のやりたいことを貫き通し、イラストリアスは『敵』であると割り切ろうとするも、結局割り切ることができなかったからこそ、皆に迷惑をかけてしまった。
ーー卿がここからいなくなれば、怒る者も、悲しむ者も……きっと、卿が思っているよりもずっと、ずっと多いということを……!
……もっと、自分を大事にするのだ。卿の命は卿のものだが…既に、卿だけのものでもないのだから。
胸ぐらを掴みながら泣いてくれたグラーフ。震えながら待っていてくれたヒッパー。今にも泣きそうになっていたシュペー。そして、今もこうして自らが間違っていると親身になって話してくれるマインツ。
俺の周りにはこんなにも優しく、そして俺の行動を否定してくれた人々がいるんだ。ならそんな彼女達を危険に晒さないために軍人としての心を再び持ち……皆で生き残るために、あらゆる意味で、俺も変わらなければ。大切な同胞の皆のためにも。
「……なにも、降伏勧告をするなとは言わない。捕虜を得ることができれば人道的にも情報的にも優位に働くのだから。だがそれは圧倒的優位で余裕があり、相手を安全に無力化する上で援軍は来ないと確信できる状況だけに限定しろ。それと……」
ドアの取っ手を掴んだマインツは再び振り向くと、じっと紫色の瞳をこちらに向ける。吸い込まれそうな瞳から今度は目を逸らさずにこちらも彼女の言葉を待つ。
「シュペー達は貴官を大切な仲間と……家族のような存在だと認識している。そのことだけは絶対に忘れるな。彼女達から離れることもなく、二度と泣かせるような真似はするなよ」
「あぁ、もう二度とね」
「最後に……ロンドンの騒ぎの返礼はもうしなくても良い。サディアはコーヒーメーカーや大量の豆を用意してくれたのでな。それではまた戦友として肩を並べて戦えることを願おう」
あぁ、忘れてたな……そういえばロンドンの媚薬騒動の時にやれることはなんでもやると言ってたんだっけ。もう媚薬騒動が遥か昔に思えてくるが、鉄血に帰ったらロンドンにも一言声をかけなければなんて思いつつ、俺は額に手をやって敬礼を行う。
「こちらもそう願うよ。我が同胞のために鉄血の力とならんことを……幸運を。マインツが何事も無く本国に帰ることを願うよ」
「我が同胞のために鉄血の力とならんことを。貴官は軍人としては今はまだ評価することはできないが……紛れもなく私の大切な同胞の一人だ。無茶はせず絶対にこの戦争を生き残り、またコーヒーを飲み合おうじゃないか」
「そうだね、でも今度は砂糖をたくさん入れるよ?」
「………訂正する。貴官は大切な同胞ではあるが、コーヒーの趣向という部分に関しては私は貴方が大嫌いだ」
最後の最後にお互いに軽口を言い合いながらも、マインツは旅行鞄を引きずりながら去っていく。
再び椅子に座って思わず窓をながめると、気がつけば窓の外の太陽は完全に昇りきり、サディア帝国に新たなる朝の到来を伝えているのだった。
「……こんな感じでいいのかな?」
恐る恐るといった感じで鏡に映った自身の姿を見れば、映し出されたのは胸元に鷲章を身に付けた黒いタキシード姿の怯えた様子の茶髪の青年の姿。正直な話似合ってるかどうかは分からない。だって詳しくないもん!俺こういうこと初めてなんだから!
マインツと別れた翌日の夜。いよいよマルタ島攻略記念祝勝会に参加することになり、係の方に案内される形で皆と別れた俺は、控え室にてサディア側が用意してくれた礼服に身を包んでいた。当初は軍服姿で参加する予定であって、ヒッパー達も普段通りの姿でパーティー会場に乗り込もうとしたんだけど……受付内で全員の礼服が用意されているからと即座に引き摺られるように連行されてしまい、慣れないながらもこうして黒いタキシード姿に着替えていた。
というかこれ……絶対高いやつだなーと少しだけ自らが身につけている礼服の値段を考えると怖くなってしまう。あまり服には詳しくないが材質的にも絶対に良い奴だこれ。しかもパーティーが終われば予備も含めて5着近く記念に差し上げるので、全て持って帰ってくださいと言われてしまった。嬉しい反面こんなに高そうな、それこそ一ヶ月分の給料が軽く吹き飛びそうな服をそんなに貰って良いのか?と身震いしてしまう。
恐らく、今頃はグラーフ達もドレス姿に着替えている筈だ。皆のドレス姿が楽しみな反面、鉄血艦隊の皆と離れてしまったことに少しだけ不安を感じてしまう。これじゃ子供と変わらないなと苦笑しながら、控え室を出ると廊下にはカービン銃を構えた金髪の少女が教科書に載せてもいいのではないか?と思う程に綺麗な敬礼を俺に向けていた。
「指揮官様ですね?案内役を務めさせて頂きます、サディア帝国所属!ソルダティ級駆逐艦カラビニエーレであります!到着をお待ちしておりました!それではパーティー会場まで、ご案内させて頂くであります! 」
「あぁ、よろしくね」
彼女、カラビニエーレに倣って敬礼をすればカービン銃を肩にやりながらも警戒した様子で彼女に先導されて廊下を歩いて行く。真面目な子なんだなと感心しながら進んでいけば、廊下には所々に獅子を象ったカーテンや調度品が設置されていることに嫌でも気がついてしまう。
そう、ここは新たなるサディア帝国の領土であるマルタ島だ。元々はロイヤルが使用していたリゾートホテルの一つを接収し、本来ならロイヤルの王族や貴族達が使用しており、クイーン・エリザベスも利用していたとされる最高級ホテルが今回のパーティー会場の舞台となっていた。
外観はホテルというよりも褐色の建物であって、白い大理石で作られた床といい、どちらかと言えば歴史の教科書に出てくるような古代に作られた宮殿のようだなと思えてくる。しかし、中に入れば近代的なロイヤル風の作りとなっており、戦火に包まれなかったホテルはロイヤルの調度品などを持ち出す暇も無かったのかそのままとなっており、流石にスタッフは安全のために派遣されたサディア人で固められてはいるが、新たなる主人であるサディア帝国の要人・賓客を出迎えていた。
現在戒厳令によって民間人からの武器の接収や各種布告を行なっているマルタ島で祝勝会をすることに関してはもちろん反対意見も出たらしいが、結局はマルタ島は現在誰のものであるかということを諸外国に示すために。
そして、奇襲攻撃を計画したクイーン・エリザベス率いるロイヤルネイビーに屈辱を与え、彼女らに責任問題を誘発させ、クイーン・エリザベスの影響力を削ぐために首都チッタ・エテナールではなく、マルタ島が選ばれることとなったのだ。
と、色々と理由も述べてはいるがぶっちゃけてしまうと全てはロイヤルへの嫌がらせだ。
カラビニエーレさんに導かれるままにたどり着いたパーティー会場は豪華絢爛なものとなっており、元老院に所属しているであろう貴族らしき人物や軍服に身を包んだサディア帝国の軍人でごった返していた。
立食形式にて用意された食事の匂いが鼻腔を擽り、和やかなムードで彼らは始まったばかりのパーティーを楽しんでいるようだが……どうしてもそんなことより俺が真っ先に思ったことは、隠し切れないサディアの嫌がらせの数々だ。
(うわぁ……)
彼らが飲んでいるものはワインではなく基地内で接収されたロイヤル軍向けの紅茶であり、勿論他の飲み物も用意されているものの、どれだけ高価なワインよりもロイヤルから奪い取った紅茶を率先して飲んでいた。
パーティー会場の中央にはウォースパイトが降伏の際に手渡したとされる剣がガラス張りのケース内にて陳列されており、横には何処で撮影していたのかリットリオに剣を差し出すウォースパイトの巨大な白黒写真が共に並べられている。参加者の人々は興味深い様子で剣を眺めて談笑をしているが、どちらかといえば貴族よりも軍服姿の軍人の方が多く剣に注目しており、あの時は大変だったなーと笑顔の様子。
それらはまだ可愛いもので特にロイヤルを挑発・愚弄していると断言できるものは、クイーン・エリザベスの肖像画や写真の数々だ。それは恐らくこのホテルやマルタ基地に元から存在していたものをひっぱり出してきた様子で、絵から金髪の少女の優雅な雰囲気、気高い様子が伝わってくるものの、全ての肖像画や写真の数々にはある共通点が存在している。
それはクイーン・エリザベスの肖像画の横に必ず並んで展示されている一人の男性の肖像画の数々だ。彼の名前はジョン王。またの名前をジョン『欠地王』。ロイヤルが誇る最も暗君と呼ばれていた人望皆無の無能とされていた国王であり、アイリスとの戦いでエウロパ大陸や海外の領土の殆どを失陥させてしまい、破門などその他の計り知れないロイヤルを弱体化させた無能伝説の数々は、鉄血人である自分ですら知る程のものだった。
そんな国王の肖像画とクイーン・エリザベスの肖像画が並んでいるのだから、サディア帝国も祖国を後一歩で焼かれようとしたことをかなり根に持っているのは確実だろう。
言葉にこそ出してはいないが王族待遇であるクイーン・エリザベスに『お前はロイヤルで最も無能な暗君と並ぶ人物だ』と示すことに変わりなく、何よりも内輪向けではなくこのパーティーの様子は国内外にアピールするよう……まず、間違いなくクイーン・エリザベスや彼女を信奉するロイヤルのkansen達がブチ切れることは確実だろう。ウォースパイトがこの場にいなくて良かった、彼女がこの場に参加していれば、責任感のあまり舌を噛んでいた可能性すらあるのだから。
その他隠しきれないロイヤルへの挑発的なメッセージが多数隠れている祝勝会会場をなんとも言えない表情で眺めながら、差し出された紅茶に砂糖をぶち込んでいると、ふと気になったことがあってカラビニエーレさんに話しかける。
「えっと、カラビニエーレさんはヴェネトさん……いや、総旗艦様については詳しいのかな?」
「はっ!光栄なことに総旗艦ヴェネト様の護衛も複数回担当させていただいております!! 」
再びカービン銃を肩に置きながらハキハキとした声で敬礼しながら返答するカラビニエーレさん。海軍の実働部隊の実質的な代表であり、元老院にも席を置くヴェネトさんの権力はかなりのもので、そんな彼女を護衛するカラビニエーレさんは間違いなく優秀であり、ヴェネトさんから信頼された少女なんだろう。
「それなら聞きたいんだけど、総旗艦様は大変そうだけど大丈夫かなって思ってね?戦いが終わった後もリットリオ…さんとは何度か顔を合わせたけどヴェネトさんとは一度も会ってないし、元気なのかなーって少し心配になって」
「………あ、はい!大丈夫であります! 」
おい、今一瞬目を逸らしたぞこの子。
嘘や腹芸は苦手な真っ直ぐな性格らしく、先ほどまでとは違い気まずそうな表情を隠せないカラビニエーレさん。リットリオも戦いの前と比べれば明らかに疲弊しているようだが、ヴェネトさんはそれ以上であることは間違いないんだろう。祝勝会の挨拶もリットリオが担当するようで、彼女は戦後処理で忙殺されていることが伺えた。
「悪いけどじゃあもし君が総旗艦様に会う機会があれば鉄血の指揮官からって伝言を伝えてくれないかな?無理はしないで下さいね、貴方の身体を鉄血の指揮官は心配していましたよって」
「了解しました!命を掛けて後日、その命令を受諾し、完遂させていただくであります! 」
いや無理はしなくても良いんだけどね?どうやらヴェネトさんはめちゃくちゃ忙しいらしく、心配に思いながらもカラビニエーレさんに伝言を頼むと彼女は了承してくれた。
そして、カラビニエーレさんにここまでで大丈夫だよと言いながら別れると、急いでパーティー会場の隅っこの方に目立たないように移動する。
パーティーの政治的な必要性は理解しているが、下手なことをして失敗するよりはこうして路傍の石のように無言で目立たずに過ごした方が良いはずだろう。幸いにも個人情報に関しては顔写真が出回っていないことから俺の正体に気がつく様子はない。後は適当に食べて、広い会場で皆を探しつつ目立たないようにパーティーが終わるまで楽しむかー!あっはっはー!
『それでは今回の祝勝会の主役の一人をご紹介しよう!!彼こそが!ロイヤルの手から我らの祖国を救ったフローテ・ディ・サルヴェッツア(救国の艦隊)の一員!彼こそが!我らの英雄!鉄血の指揮官だ!! 』
紅茶を思い切りむせてしまった。
リットリオお前なぁ!!!
いよいよ、リットリオの挨拶と共に本格的に始まった祝勝会。国家を運営する貴族やタラントにて死力を尽くした兵士達への感謝の気持ちを彼女は述べていたが、そのスピーチが終わる直前に辺りは暗闇に包まれる。
次の瞬間スポットライトを直接当てられてしまい、一気に眩しさを感じつつも、そんなネタバラシをリットリオのバカが行ったせいで一気に注目を集めてしまい……後はもう、本当に……大変だった。
リットリオのスピーチが終わって明るくなる会場。しかしその後は俺の周囲には多くの人々が集まってしまい、凄まじいまでの質問攻めにあってしまった。
貴族の人々はあくまであの人かーっといった感じで遠巻きに見ているか、軽くありがとうと声をかけるくらいだったが問題はサディア軍人だ。彼らの多くは軍服に身を包んで俺よりも遥かに高齢な方ばかり。中には数人ほど俺と歳がさほど変わらない人もいたが彼らは自分は貴方と同じくサディアの指揮官だと名乗っていた。
あの海戦の教訓は?、どうやって空母を発見したのか?、イラストリアスを救った理由は?、ウォースパイトと交戦した場合勝ち目はあったのかな?、噂では亀甲縛りをしたらしいが本当なのか?とイオニア海海戦に関する質問の数々。
グラーフ・ツェッペリンと話をしたいから渡りをつけて欲しい、既にロイヤルと交戦していたらしいが騎士団団長の妹を捕縛したのは本当かな?鉄血公国の軍用食ってどんな味なんだ?ビスマルクさんって既婚者なのか?といった鉄血海軍に関わる出来事。
中には年齢、出身といった個人情報を求める人や、航空母艦の有用性について議論を求める初老の男性。涙ながらにあの時弟がタラント基地に配属されていた、貴方は命の恩人だと握手を求めるサディアの指揮官の一人と休む間もなく多くのサディア軍人に話しかけられる。
あぁ、この人達に褒められて嬉しいなと思う以上に愛想笑いをしつつも矢継ぎ早にやってくる相手が不快に思わない程度の返答をするのがこんなに大変とは思わなかった。改めて政治にも度々関わっているビスマルクさんが凄いと思うが……遥かに年上の方々相手に指揮能力が低いとバレないように取り繕い、情報の取捨選択を行えば、どんどんと疲労が溜まっていく。
「……疲れたぁ……」
やっとのことで解放されたのは1時間後、ニコニコ笑顔で少し強引に人混みを離れ、バルコニーに避難するとぜぇぜぇと息を吐きながら軽くそうボヤく。矢継ぎ早に話をしていたせいで喉は疲れ果て、バカ(リットリオ)への恨みが増していく。
嫌でも一瞬で理解することができた。リットリオはパーティーにて俺に祖国を救った英雄として振る舞うことを望んでいたことを。大人しくしようとしていた自分を否定し、今は英雄になりきってパーティーに参加しろと無理やり政治の舞台に俺を放り込んだのだ。
お陰でこちらはボロを出さないようにするのが必死で、いつ自分がボロを出さないかと考えてしまい楽しむ余裕なんて一瞬で吹き飛んでしまう。鉄血の国益のためなら友好関係を演出するためにもそうする方が正しいとは理解しているがそれでも、慣れないことを続けたせいで、もういっそバルコニーから離れたくない、控え室で終わりまで過ごしたいと弱音を吐きたくなる。
……よく考えればこんなに多人数の人と話すなんて鉄血軍人になってからは初めてなんじゃないか?それをこんなに負担に思う辺り、俺は少数の気の合う仲間と静かに過ごす方が好きなのかも知れないなとバルコニー越しから星空を眺めていれば、後ろから見知った声が耳に届く。
「あんたねぇ……何してんの、こんな所で」
「そりゃこっちの台詞……って言いたいけど疲れたんだ、本当に……」
振り向けばピンクのドレスに身を包み、花柄のトパーズのブローチを胸元に付けたヒッパーが呆れた様子で歩いてきて、俺の横に立つと同じようにバルコニーの手すりに手をやりながら、物憂げな表情で星空を眺めていた。
「まぁ同情はするわ。お陰でこっちは目立たないから楽できて、そこは感謝はしてあげるけど」
星を眺めながらそう呟くヒッパーの雰囲気はいつもと変わらないというのに、何処となく小柄な彼女が大人っぽく見えてしまう。普段は見慣れないドレス姿で、月明かりに照らされた彼女の様子はその……新鮮で、美しいと素直に感じられた。
「……人の顔をそんなにジロジロと見るんじゃないってぇの! 」
目の前でその横顔をじっと眺めていたからだろう。流石に気付かれてしまいヒッパーは少しだけ怒り、ぶつぶつと文句を言いながら面倒くさそうにドレスに触れる。
「すまんすまん、珍しい格好でつい…」
「ったく…この姿、私だって好きでやってる訳じゃないのに…」
「でもさ……よく似合ってるぞ?」
揶揄われたと思ったのか、それとも自分にドレスは似合わないと思っているのか?不満そうにむくれた表情を見せるヒッパーに、疲れた脳みそを働かせて、慣れないながらも女性を褒めようと少ない語彙力の中からそう口にする。
黄金色のトパーズのブローチは彼女の金髪と並んで似合っているし、文句を言いながらもピンク色のドレスをヒッパーは完全に着こなしている。彼女のこんな姿を見るのは初めてだが、いつもより大人っぽく見えたことも、美しいと思ったことも決して嘘ではなかった。
「……ふ…ふん!今日だけはもっと褒めることを許してあげるわ!……今日だけよ」
一瞬だけ寝耳に水といった驚いた表情を見せた彼女だったが、即座に顔を逸らしながらも、ヒッパーは呟く。非日常的なパーティーの雰囲気がそうさせるんだろうか?少しだけ彼女の頬が赤くなっているのは、きっと気のせい、ということにしておこう。
「そうか、もっと褒めても良いんだな? 」
そんな頬を染めた彼女は可愛らしく、見知った顔に再会したせいで今から思えばテンションがおかしなことになっていたんだろう。無言の肯定と受け取った俺は、よせば良いのに少し悪戯心が湧いてしまいニヤリと笑みを浮かべると俺はその後はひたすらに、ヒッパーのドレス姿をほめていく。
「いやー、最初に会った時は厳しい人かな?って思ったけど実際ヒッパーはめちゃくちゃ優しいと思うよ。徹夜で寝落ちした時はさりげなく毛布をかけてくれるし、勉強の終わりにはそれとなく褒めてくれてやる気にさせてくれるし、君は怒ることはあっても理不尽に人を貶すことは絶対になかったからね。それに仕事のミスは怒りつつも、その後は文句を言いながらもフォローと再発防止のために力を貸してくれるし、本当にヒッパーが秘書をしてくれて助かってるよ。いつもありがとう。君に会えて幸運だと思うし、鉄血で仕事をしている時は君が秘書をしてくれて毎日助かってたよ、本当に感謝してもしきれないね。あっ、でも褒める所はもっとあるよね?他にも……」
最初の頃はブローチが良い、ドレスが良いといった装飾品からヒッパーの髪の毛や顔といった部分に転移していき、最終的には彼女の内面が如何に優しいかといった所になるまで褒め続ければ彼女はどんどん頬を染めていく。
なんだか怒られないし、そうやって顔を赤くする彼女が可愛いと思ってしまい、楽しくなっていく。褒め殺しではあるが実際俺は事実しか言っておらず、本心からの感謝を伝えながらそうやってどんどん話を進めていけば、遂にヒッパーは我慢の限界を迎えたようで……
「ほ、褒めろとは言ったけどそこまでやれとは言ってないわよこのバカァ! 」
「いや、まだ挙げれるんだけどなー?言えって言ったのヒッパーだしなー? 」
更に顔を赤くしたヒッパーが恥ずかしさのあまりに涙目になっていたのでまあ、これくらいにしとおくかと揶揄いつつも辞めておく。正直な話ヒッパーと話してるうちに疲れは吹き飛んで回復はできたし、同時に今までずっと秘めていたヒッパーへの感謝の気持ちをある程度は伝えられてよかった。
「じゃあ、そろそろ戻るとするよ」
「さっさと行けこのバカ!アホ!帰れってぇの!! 」
「いや、でも本当に全部嘘じゃないからな?それはせめて理解してもらえれば……」
「はぁっ!?うるさい!うっさい!黙りなさい!!1分以内に私の目の前から消えないと首締めるわよ!!! 」
流石に身の危険を感じ、逃げるようにしてバルコニーの扉を開く。ちょっとやり過ぎたなと思いながらも、こうしてヒッパーと会話をして気が楽になったのは事実だ。内心彼女への感謝の言葉を繰り返しつつ、また本国に帰ったら彼女に何かプレゼントでもと考えながら俺は少しだけ元気を貰って、パーティー会場に戻っていくのだった。
「ったく…あのバカは…ほんとにバカでアホでマヌケで……ホント、恥ずかしいことばっか言ってくるんだから……」
ヒッパーと別れパーティー会場に戻った俺は、人混みを避けながらも喉が渇いたのでリンゴジュースを飲みながら会場を見渡していると、ふと、見知った赤いメッシュが入った銀髪の少女がウォースパイトの剣を眺めていた。
鹵獲したウォースパイトの剣を晒している一角にて、その瞳と同じく青いドレスで身を包んだ少女、シュペーは他人と会話をするのでもなく、何かを食べるのでもなく、何か思う所があるのかじっと剣を見つめている。そんな彼女の姿を見かけ、つい後ろから話しかけようとするも、その直前に彼女の姿がドレス以外にも、いつもと少し違うことに気がつく。
「お疲れ様シュペー。腕、外してるんだね」
「え?あ、指揮官…えっとその、流石にパーティーをドレスに参加するなら外しておけ、ってグラーフさんとヒッパーちゃんに言われて…
ならいつもの服でいいや、って言ったんだけど殆ど無理矢理気味に…」
そう、彼女は戦闘時を除いて普段から身につけているあの巨大な義腕を取り外していた。セイレーンの装甲を握り潰し、引き裂くこともできる腕ではなく、彼女の両手は少女らしい白くてすべすべとした小さなもので、こちらが普通だというのに新鮮に思えてしまう。
彼女が滅多なことでは義腕を外さず、イオニア海海戦で話した時を含めれば今回で二度目だ。なんだか少し感動してしまい彼女の腕を見ていると、シュペーは手を後ろに隠して恥ずかしそうに呟く。
「あの、指揮官、あんまりじろじろ見ないで…」
「あぁ、ごめんな。ついその……新鮮でさ?」
いつもの威圧感のある義腕がなければ、かなりシュペーの雰囲気も変わる。話せばシュペーは物静かで優しい女の子だと分かるが、普段はその腕のせいでどうしても近寄り難い雰囲気になっているんだ。
だが、いつも身につけている義腕がない今は何処からどう見ても物静かな普通の女の子で……あくまで好みの押し付けかも知れないが、俺はこっちのシュペーの方が似合うなと感じていた。勿論、義腕をつけているシュペーも俺の心の中の男の子の部分を刺激して、カッコいいなぁ!と内心思ってはいるんだけどね?
「新鮮って?」
「んー?なんといえば良いのかな?ドレスも似合ってるけど、なんというかいつもより可愛いなって……あ、違うぞ?いつもが可愛くないって訳じゃなくていつも以上って訳で…」
「そっか……えっと、ありがとう指揮官」
言い方を間違えてしまい思わず慌てて訂正すると、シュペーは恥ずかしそうに頬を染めてありがとうと呟く。やだ可愛い、本当に可愛い、マジで天使だこの子!と思わずときめいてしまうが躊躇いがちに俺はシュペーに提案する。
「いつもの義腕が悪い訳じゃないけどさ?戦闘中でもなければ、普段から外すのもいいんじゃないかなって」
似合う、似合わないというのは別にしても、恐らくドレス姿でシュペーがあの義腕を身につけていればパーティーの参加者の人々は怖さを感じていたんじゃないか?と思えてしまう。本当はシュペーは心優しくて皆のために頑張ろうとしてくれる女の子だっていうのに、見た目の印象で彼女がそう思われるのは少し悲しくなってしまう。
勿論全ては彼女の自由であり、彼女が常に義腕をかっこいいと思っていて身につけているのなら止めはしないが……こうして普段は外していた方が周囲に溶け込みやすくなり、シュペーを皆が理解してくれるんじゃないか?と感じてしまったからだ。
「そう、かな?指揮官がそう言うなら…うん、少し考えようかな」
そう呟くシュペーはその日以降、プライベートでは義腕を外すことが多くなり、後々駆逐艦の女の子達に、あの腕のせいでずっと怖い人だって思ってたと暴露されてショックを受けつつも、打ち解けることができたと優しい目で報告をしてくれたが、それはあくまで後日談のお話。
頷きながらもシュペーは何かを決心したようで、シュペーは小さく呟いた。
「やっぱり、これって……そうなのかな?」
「これって?」
「ううん、何でもないよ。ほら、指揮官、せっかくなんだから……もう少し、一緒にパーティーを楽しもう?」
そう言って手を差し出してくるシュペーと握手をすれば、小さいながらも温かなシュペーの手の温もりが右手から伝わってくる。同時に握手をしたタイミングで流れていた音楽が変わり、どうやらダンスの流れとなったようで数人のカップルや夫婦らしき参加者は音楽に従って手を取り合い、ダンスを始めていく。参加するのも自由であって、軍人の多くは勿論参加をしてなかったが……折角だ。
「じゃあ、ちょうどいいし…ダンスのお相手、よろしくな?」
「え、わっ…し、指揮官…私そういうの苦手で…」
「大丈夫、雰囲気でやればいいんだよ」
少し強引にシュペーの手を取ると、彼女は困惑しながらも身を任せてくれた。
勿論二人ともダンスの経験もなく、普段から社交界に参加をしているであろうサディアの貴族のダンスと比べれば雲泥の差といえるだろう。見よう見まねなので少しだけ遅れてしまい、ぎこちないステップを踏みながらいくつも間違いを連発する。
「おっと、下手でごめんな。シニョリーナ」
「ふふっ、気にしないで。楽しいから、ねっ」
だというのに俺達は自然と笑い合い、少しだけ気恥ずかしさを覚えながらも少しの間、二人でダンスに興じているのだった。
( これってやっぱり……ヴァイスのことが…好き、なのかな…?)
・と、色々と理由も述べてはいるがぶっちゃけてしまうと全てはロイヤルへの嫌がらせだ。
占領地にてこれ見よがしに相手国に屈辱を与えるという事を行うのは実の所それほど珍しいものではありません。近代における戦争であるのならナチスドイツがフランスに対して行って、かつてWW1の講和条約が結ばれたベルサイユ宮殿やフランスを代表する建造物であるエッフェル塔にハーケンクロイツを掲げて大々的に宣伝した事などが挙げられますし、日本に於いては戦国時代、石山本願寺の本拠地であった石山御坊跡地にわざわざ権力の象徴である大阪城を作り出すなどが挙げられるでしょう。
・ジョン『欠地王』
現在においてもこれ以上の無能は存在しないと英国内で語り継げられる無能の代名詞とされた人物。その無能な功績を語り出せばキリがないのでわかりやすく言えば
『何度も同じ名前が受け継がれる英国王で誰もジョンという名前は使われずに永久欠番な名前となっている』
と言えばどれ程のものなのか分かりやすいかも知れません。
因みにそんな彼がフランス殺すべしと整備した港があのアズールレーンゲーム内でセイレーン作戦にて登場するリバープール港だったりします。
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄