鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

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第四十二話 それぞれの覚悟

 

 

 

 フクロウの鳴き声がホーホーと聞こえる宿舎の中、私は甘い干し葡萄のワインを喉へと通す。あまりお酒は飲まないようにしてきたけど、このデザートワインは特別で指揮官も好きだったのも納得の甘さであり、牛乳で割ると美味しいと感じる。

 

 

 あの人は今頃何をしているんだろう……そんなことを考えながらグラスを傾ける。

 

 私、アドミラル・グラーフ・シュペーは本来の所属艦隊を離れて2ヶ月ほど、今も気持ちよさそうに寝息を立てている姉と共に別任務の真っ最中だ。名目的には指揮官がセイレーン、卑怯なロイヤルとのスパイによる海戦によって負傷したために。本当は鉄血海軍の処罰を受けて謹慎生活中の指揮官の元に貴重な戦力である私たちを放っておく訳もないというのが原因になっているけど。

 

 私は、以前の海戦でミスをした。それまでの慢心や皆とあまりにも仲良くなり過ぎたために、本部の指示を無視して指揮官の指示を最優先とした結果、ロイヤルのスパイに危うく逃げられるところだったのだ。更に友軍の妨害行為や単艦隊による無線封鎖の上での独断専行など、本来はもっと厳しい処置になってもおかしくなかった。

 

 

 外交的な都合によって最終的には私たちの処罰は考えられない程に軽いものとなっており、2月になれば業務の復帰も可能となっている。そう、今は12月だがあと少し待てば全て元に戻るのだ。

 

 だけど……私の心の中は罪悪感、そして孤独感でいっぱいだった。指揮官を信頼するあまり周りが見えなくなってしまった。あの時の指揮官の行動は情報不足であって、セイレーンが居なければスパイの捕縛に成功していた可能性が高いと思っていても言い訳にはならない。いくらでも、止めるチャンスや一度くらいもう一度本部の指示を考えてみよう、本部に通信を送ってどういうことなんですか?と言い出すチャンスはあった。

 

 

 ピュリファイアーが現れた時点でスパイ二人を轟沈、もしくは部隊を分けて連行、捕縛のために動くこともできた。それをしなかったのは私の怠惰であり、それがこの結果を招いたと、どうしても思ってしまう。

 

 ヒッパーちゃんやグラーフさん、そして指揮官が……私が大好きなあの人は今何をしているんだろう?反省や罪悪感で胸を押し潰されそうな気分だ。早く会いたいと思う気持ちは毎日のように強くなる、でも今会ってしまうと私は耐えられなくなる。これは贖罪であって、もう一度私という存在が鉄血海軍として、そして指揮官たちを支える同胞として向き合う時間だと思うのだから。

 

 もう一度甘いワインをグラスに注ぎ、甘さを確かめるようにゆっくりと喉に注ぎ込む。酒に溺れるなというが、その気持ちが少しわかってしまう。私はこうして寝る前に三杯の干し葡萄の甘いワインを嗜むのが好きになってしまった。多分皆と再会するまではこうしないと夜は眠れないと思うから。酩酊状態になりながらぼーっとなると改めて色々と振り返ることができ、甘いワインを飲んでいると指揮官たちとの日々を思い出して寂しさを紛らわせることができる。

 

 ビスマルクさんの情報統制の結果だろうか、ドイッチュラント姉ちゃんも含めた皆はとても優しかった。私を責める人なく、同時にあの唯我独尊が擬人化したかのようなドイッチュラント姉ちゃんですらついでではあるが、指揮官を心配してくれた。そう、卑怯なロイヤルのせいで二度も傷ついた指揮官を。

 

 結果的に私たちの命令違反などは全てスパイ二人が元凶であり、スパイはあの戦いで私たちにセイレーンを押しつけた上で妨害行為を行い逃亡したという筋書きとなっており、それを鉄血海軍の皆は信じていたのだ。私達は被害者であり、ロイヤルのスパイは卑劣で卑怯でどうしようもない加害者。

 

 

 それが、少し有名になってしまった私たちの罪を軽減すると同時にロイヤルの、ロイヤルネイビーへの憎悪を煽り、最早今の鉄血海軍は開戦前と比べて、ほんの数ヶ月前と比べてもロイヤルへの目や感情はかなり厳しくなり、そういう意味では本部で捕虜が厳重に管理されることになったのは良かったのかもしれない。

 

 そう、私達がやろうとしたことは結果的にロイヤルへの殺意や憎悪を高めてしまい、もっと泥沼の戦いに繋がりかねなくなってしまった。皆に優しい言葉を掛けられるほどに、同時に優しい鉄血海軍の皆の目が明らかにロイヤルへの不信感や憎悪に染まる姿を見ていると、それは自分たちが招いた結果なんだと嫌でも理解してしまいその度に胸が痛くなる。だから私は任務に集中する。

 

 

 ドイッチュラント姉ちゃんは色々と連れ出してくれて心配してくれるが、それを除けば疲れて倒れるほどに何度もデータ収集任務で模擬戦やテストを行い、疲れれば仮眠をとり、更にテストを行い、夜はワインを三杯飲んで反省会。それが今の私の生活であり、そんな生活の中で一つの結論を出すことに成功した。

 

 最後の一杯を飲むために、干し葡萄のワインをグラスに注ぐ。結構アルコール度数が高いらしく少し頭がくらっとするが、構わず一気に飲み干す。ふわぁ~とした気分になるが何とか意識を保つ。よし、これで眠れるだろう。そのままグラスを机の上に置きながらダラダラとベッドの上に倒れ込む。

 

 

 私が出した結論。それは私は皆を信頼して、信用してはいたが、結局のところは私が皆の優しさに溺れてしまい、信頼ではなくただ依存してしまっていたのだと。大切な仲間と恋をしているヴァイス。彼らの言うことならきっと間違えるはずもない、命令なら何でもといって思考回路を停止してしまい、その結果がこんな事態を招いたしまったのだと。私は皆に依存し過ぎていたのだと改めて理解してしまった。

 

 命令なら何でもと私はヴァイスに言ったけど、信頼できるヴァイスだって間違うこともある。勘違いすることだってあり、それを支えて時にはサポートするのが本当にやるべきことなんじゃないか?と思考する。ただ依存して何でも言うことを聞くなんて、そんなのセイレーンの量産艦と変わらないのだから。

 

 私は……ヴァイスを異性として愛している。でもそれが原因で、この前の指輪騒動なんかも含めて浮かれて恋愛脳になってしまい、周りが見えなくなっていた。

 

 率直に言えば、私は指揮官に信頼ではなく依存しており、イエスマンとなっていたのだ。だから私は変わりたい。自分が依存するのではなく、むしろ大好きなあの人に本当の意味で頼られる女。都合の良い女ではなく、横で共に歩き本当の意味でヴァイスを支えられる女になりたいと。

 

 だから私はこの謹慎生活中に指揮官や皆と会う気は無かった。それが私のケジメであり、愛するあの人の横で歩むためにはどうしたら良いのか?と2月になるまではゆっくりともう一度考えてみたいから。

 

「変わらないといけない……優しい皆に頼られるようになるためにも。そしてこの戦争のケジメをつけるためにも……!」

 

 アルコールの眠気が私を眠りへと誘う、だがその前に私は決意した。私は変わるんだと。

 

 もう二度と、あの時のような過ちを犯さないためにも、毎晩寝る前に行う自己対話と反省会を終えた私はそのまま意識を睡魔に任せようとする。

 

 

 

 

「……シュペー。私はいつでも、頑張る貴方の味方よ。例え全てが敵になっても、鉄血海軍を敵に回しても……だから休暇中くらい、あの下等生物だけじゃなくて、少しくらい私に頼りなさい。でないと寂しいじゃない」

 

 

 

 何故か寂しげな誰かの声が聞こえた気がするが、その声に私が気づくことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペーネミュンデ海軍実験場近くの海上では熾烈な航空戦が繰り広げられている。二人のkansenが一人のkansenを追い詰めようと鉄血製の艦載機を次々と発艦させるも、相手役のkansenはのらりくらりと攻撃を回避しつつ自身の戦闘機、ユニオン製のF4Uコルセアにロイヤル製のシーファイヤを巧みに操作しながら次々と艦載機を撃ち落としていく。

 

 

「どうした?これで終わりか?実戦ではお前たちは3回は我に殺されていたぞ」

 

 アズールレーンで使用される艦載機を運用するグラーフ・ツェッペリンは、アグレッサーとして新人の空母kansen二人に厳しい訓練を施す。二人はその指導を必死にこなし、こうして演習を行っているのだが結果は散々である。

 

 いや、新人二人は良くやっていると言えるだろう。燃えるような赤毛を短く切り揃えた軽空母ヴェーザーはいつもの冷静さをかなぐり捨てて必死に応戦しており、長い銀髪を海水に濡らしながら軽空母エルベは泣きそうになるも、涙を堪えて歴戦の猛者であるグラーフ・ツェッペリンに食らいつく。しかし、それでもまだ経験不足なのか、もしくは相手が悪すぎるのか、二人の攻撃を軽くあしらうように回避していく。

 

 

「攻撃が当たらないわ…何故…!」

 

「ヴェーザー、お前は教本通り過ぎる。確かに基本は大事だ、だがそれは教科書通りの戦法しか取れないということではない。戦術とは状況に応じて臨機応変に変えていくものなのだ。教科書通りにやって勝てるならば誰も苦労しないだろう?」

 

 

 そう言いながら上空を旋回していたグラーフ・ツェッペリンの爆撃機、イラストリアスも使用しており、サディアをあと少しで火の海に変えようとした鹵獲品。ロイヤル製の爆撃機フルマーは急降下爆撃を行い、慌てて回避運動を取るヴェーザーであったが間に合わずに直撃してしまう。撃墜判定によってヴェーザーは悔しそうにグラーフを睨みつける。

 

 

「ヴェーザー!?」

 

 

「よそ見をするなエルベ。お前は攻撃があまりにも素直過ぎて読みやすいのだ。戦場では常に頭を使え、相手の行動を読んで先回りしろ。そして何よりも常に考えろ、どうすればこの状況を打開できるかを。そのためには自分の動きだけではなく周囲の状況、天候、風向き、湿度、気温、全てを感じ取れ。それら全てを把握した上で敵の次の行動を予測するのだ。でなければお前はすぐに死ぬぞ」

 

「くっ……!了解しましたわ……!」

 

 

 再び上空を旋回するフルマーの攻撃を回避すべく、その場を離れる。しかし、その瞬間だった。突如として後方から爆音と共に巨大な水柱が立ち昇る。

 

 

 一瞬、背後を振り返るエルベであったがそれが致命的であった。エルベに向かって放たれた雷撃機ソードフィッシュは弓矢のように一直線に飛んでいく。

 

 

 魚雷投下後に反転して急速離脱を図るも、魚雷は回避できずに直撃する。轟沈判定により、エルベの艤装は動きを止めてしまいこれで模擬戦は終了した。

 

 

 これでヴェーザーとエルベの両名はグラーフ・ツェッペリン一人に20回の敗北を経験したことになる。彼女たちは決して無能ではなく、向上心に溢れた優秀な人材であり、二人とも将来有望な存在だとグラーフ・ツェッペリンは評価している。しかしその才能を腐らせる訳にはいかないと彼女は更に厳しく鍛え上げていくつもりだ。

 

 こうして何度も模擬戦を行なって苦渋を舐めても二人は諦めることもなく、何度も何度も手を変え品を変えグラーフ・ツェッペリンに立ち向かう。軽空母二人と正規空母一人。更にヴェーザーとエルベは使い慣れた鉄血製の艦載機を利用しているというのに、何度も敗北してしまう。それでも徐々に動きが良くなっていることをグラーフは理解しており、何よりも心が折れずに立ち向かう二人のガッツに感服していた。

 

 

「二人とも随分と成長したものだ。最初は10回ほど負ければ心がポッキリと折られるかと思ったが……中々どうして、お前たちは粘り強い。その根性だけは認めよう」

 

「当然よ……私は、皆の期待に応えるためにも…鉄血の軍人として民と同胞を守る必要があるもの……!」

 

 

 ヴェーザーは当然と言わんばかりに拳を握りしめる。彼女は元はヒッパーの妹であり重巡ザイドリッツと数週間前までは呼ばれていたが、今は軽空母にコンバート改装することで慣れない装備に戸惑いながらもグラーフ・ツェッペリンの猛特訓に弱音を吐かずに食らいついている。そのガッツは姉であるヒッパー譲りだなと思わず苦笑しそうになるが、二人の前ではグラーフは決して笑うことはなかった。

 

 

「私も同じですわ……セイレーン、そして仲間たちを傷つける卑劣なロイヤルネイビーから祖国を守らねばなりませんもの。そのためには強くなる必要があるんですの!」

 

 

 エルベもまた、ヴェーザーの真似をするように拳を握る。重巡として戦場を経験したヴェーザーと比べ更に未熟ではあるものの、その瞳は決意に満ちており、祖国と民を守り、青き航路を取り戻すという使命を全うしようとする意志が感じられる。

 

 

 グラーフには二人がどこまでも眩しく見えた。自分は命令違反の上で罰せられることもなく、平穏に今も訓練を行なっている。自身の過ち、そして指揮官に全ての責任を被せてしまったことに今もグラーフは責任を感じているのだから。あまりにも、純粋に祖国のために尽くそうとする軽空母二人が眩しく見えてしまったのだ。

 

 グラーフは自身の罪を理解していたが反省や後悔は誰よりも早く終えており、今は新人の空母二人を一刻も早く鉄血海軍の戦力にするべく指導に熱を入れていた。

 

 過去を後悔しても今は変わらない。自分たちは軍人であり、国家の暴力装置なのだから、それが好き勝手に独自に行動してしまえば……それが正しいと上層部を無視してしまえば、最後に待ち受けるものはロクな未来ではないだろう。

 

 

 自分はビスマルクや皆を、そして指揮官たちを裏切ったも同然の罪を犯してしまったとグラーフは恥じており、今でも悪夢にうなされることもある。

 

 

 ならば失態によって失った信頼を取り戻すためには、新たに与えられた任務を愚直にこなすしかない。今の彼女の役目はアグレッサーとなって二人を強く育て上げることなのだから。

 

 そう、彼女たちが強くなることが愛する祖国に忠を尽くすことに繋がり、それが不器用なグラーフ・ツェッペリンなりの贖罪なのであった。何よりも同僚の妹であるヴェーザーや、自身の戦闘データを元に産まれたエルベを戦場で死なせたくないというのが本音であった。

 

 

『グラーフ、ちょっと良いかしら?』

 

 

 こうして少しの小休憩を二人に命じて座学の内容を考えていたグラーフに通信が入る。相手は戦艦ビスマルク。鉄血の陣営代表でありグラーフたちに実質的な謹慎を命じた人物でもある。とはいえビスマルクは既に処分を与え、その上で四人がそれぞれ自分自身と向き合えるはずだと信じているためか、通信越しからは怒りは感じられない。

 

 

「どうしたビスマルク。既にそっちの試験は終了したとZ2から報告は受けているぞ」

 

 

『ええっ、お陰様で一発だけなら100%安定して『アレ』を使えるようになったわ……その威力や戦術について貴方と議論したいところだけど、今回はまた別の話よ』

 

 

 

 ビスマルクの言動の裏には疲れが隠しきれないが、同時に秘匿兵器の調整が安定したことに関する安堵も含まれていることにグラーフは気が付き、これで忠誠心の塊である小柄な指揮官にようやく安眠の日が訪ずれると内心ほっとしていたが、それならば何故自身に通信を?とグラーフは思案するも、ビスマルクは直球に事実から伝え始める。

 

 

 

「キールの技術部門から連絡が届いたわ。おめでとう、そろそろ貴方に妹ができるはずよ」

 

「……そうか、それでいつ産まれる?」

 

『あら?もう少し驚くと思っていたけど冷静ね』

 

 

 ビスマルクは意外そうな声を上げるが、グラーフにとってそれは予想外の言葉ではなかった。むしろ予想通りと言うべきか、このタイミングでの報告はある程度覚悟していたことなのだから。

 

 

「恐らく我がサディアに向かったタイミングからお前や上層部は我の姉妹艦の建造を開始したのだろう。鉄血の空母はその時我しか居なかった。そんな状態で貴重な唯一の空母kansenである我が海外派兵されたのだから、万が一に備えてグラーフ・ツェッペリン級の姉妹艦を建造することは予想していた。それにイオニアのこともあるのだから、こうしてエルベやヴェーザーの戦力化を急ぐ必要があったのも理解できる」

 

 鉄血艦隊の主力艦の多くは戦艦であり、つい最近まで空母kansenはグラーフ一人しか存在しなかった。というのも空母kansenは戦艦と違い、あくまで補助的な役割を期待され建造されたものであり、戦場の花形ではなくその優位性なども含めてまだ模索中であったためと言えるだろう。

 

 

 また、鉄血では潜水艦kansenの複数運用による奇襲戦術によって仮想敵であるアズールレーンの空母を撃破することを期待されており、鉄血は四大陣営では唯一空母kansenの運用に積極的ではなかったのだ。グラーフの姉妹艦が建造され始めたのも当初はそれ程積極的ではなく、2ヶ月ほどで急ピッチで建造されたマインツやオーディンと比べれば、一年以内に完成すれば御の字と言える程にスローペースで建造が進んでいた。

 

 

 しかし、状況は地中海での狂想曲によって大きく変わる。ロイヤルの空母イラストリアスによる夜間空襲。それを防いだグラーフの防空戦は世界の空母運用に大きく影響を与え、それはユニオンや重桜だけではなく鉄血も例外ではなかった。

 

 調査の結果イラストリアスのタラント空襲が仮に成功していれば間違いなくタラント港は壊滅状態となり、更に司令部や民間施設まで爆撃されていた可能性が高く、その場合の死者や損失はイラストリアスが無差別に攻撃を与えていれば最悪数万人単位で増えていただろうと判明する。やがて別の未来ではその損害を知った重桜の赤城が提案した真珠湾攻撃の後押しとなったのだが、この世界ではそうはならなかった。

 

 結果、グラーフたちがイラストリアスの奇襲攻撃を防ぎ死者を0名に抑えた挙句、その後の海戦でイラストリアスを捕虜にしたことから、空母による港湾奇襲攻撃の恐ろしさやイラストリアスの悪名と同時に世界各国では防空に重視した空母kansenの重要性が増したのである。彼女たちに求められたのは敵を撃ち破るための矛ではなく、味方を守るための鉄壁の盾なのだから。

 

「軽空母のエルベは恐らく我の戦闘データを元に、如何に早く空母kansenを製造できるのか?をテストするために産まれた存在。ヴェーザーはコンバート兵装によっていざとなれば重巡kansenに航空戦を行わせる存在だろう。それだけ鉄血は現在我ら空母kansenによる絶対的な防衛網の樹立を重視しており、そしてエルベやヴェーザーの戦闘データによって我の姉妹艦の建造も予想外の速度で進んだ……といったところだろうか?」

 

『そうね、貴方がそこまで理解しているのなら話は早いわ。もっとも、まだまだ鉄血は空母のノウハウが無い上に空母kansenの製造には莫大な予算や貴重な物資が必要……とはいえバーデン宰相閣下や上層部の説得は完了したわ。ゆくゆくは鉄血も他国に負けない空母打撃群を保有することになるでしょう』

 

 

 

 ビスマルクの言葉を聞きながらグラーフは考える。鉄血が空母kansenという新たな兵器を運用するには様々なハードルがある。まず、空母kansenの建造に必要な資源や技術の確保、kansenを研究する人材の育成等々。それらをクリアしても今度は製造ラインの確立、量産体制の構築、さらには運用ノウハウの確立などやるべきことは幾らでもある。重桜、ユニオン、ロイヤルに対抗するためには、最低でも空母kansenが1ダースは居なければ完璧な国土の防空網の構築は不可能だ。

 

 

 外交的には空母運用国との国交は断絶しており、レッドアクシズに所属するサディア帝国とヴィシア聖座は空母を運用していない。水底から潜水艦kansenが引き上げ、鹵獲したイラストリアスの空母艤装を元に現在サディアでは空母kansenを建造中ではあり、ヴィシアにはベアルンのデータはあるものの、それでも三カ国が一斉に空母による奇襲攻撃を仕掛ければ現在の鉄血、レッドアクシズでは防ぎ切れるはずもない。

 

「ユニオンと重桜が戦争に参加するまでに、この戦争にケリをつけなければなるまいな。最低でも我らはロイヤルの奇襲攻撃だけは防がねばならん。でなければあの忌々しいクイーン・エリザベスの思うつぼ、か」

 

『だからこそ、その一歩が貴方の姉妹艦の製造よ。恐らく貴方の姉妹は後3ヶ月程度で完成する。貴方たちが戦闘データを集めればもっと早く産まれる可能性は高くなるでしょう……更に貴方にだけは言っておくけど、現在鉄血では2隻の特別計画艦を建造中でそのうちの一人は貴方達のデータによる空母kansenになる予定よ』

 

 ロイヤルは鉄血以上に世界中に広まる広大な植民地を保有しており、戦力は現在世界各地に分散している。だからこそ、ビスマルクの言う通りに追加2隻の空母kansenが産まれ、合計5隻の空母kansenを運用出来るようになればロイヤルの奇襲攻撃に対抗するための抑止力に繋がる。更にヴェーザーのコンバート兵装が普及すれば更に多くの空母kansenによって鉄血領アフリカ植民地の防衛も可能となる。

 

 急がなければとグラーフは決意する。過去の失敗を悔やんでも過ぎ去った日は変わらない。例え他者から開き直りと罵られようとも、今はデータを集め、ヴェーザーとエルベを鍛え上げる。それが2月までグラーフに与えられた使命であり、そして贖罪なのだから。

 

 

「悪いがそろそろ模擬戦を再開する。エルベとヴェーザーは伸びるぞ。このまま訓練を続ければ我よりも遥かに強くなるだろう。何れ完成するであろう鉄血の空母打撃群を支える存在としてできる限りのことは教導しよう」

 

『えぇ、頑張って頂戴。私もできる限りの支援をするわ……でも少しくらいは休みなさい。というか貴方っていつ休んでいるの?』

 

「毎日6時間の睡眠は欠かさずとっているから安心しろ。それにお前が言えたことか?ビスマルク、少しはあの眼帯の指揮官たちを安心させるためにお前も休息を取るべきだろう。過労で倒れることは恥だと理解しろ」

 

『うっ……分かったわ。それじゃあ私はこれで失礼するわね。エルベとヴェーザーのことを宜しく頼むわよ』

 

 こうしてビスマルクとの通信を切ったグラーフはエルベとヴェーザーに近づくとポケットから何かを取り出しそれを無言で二人に投げつける。唐突なグラーフの行動にエルベは慌てるも、海面に沈むことなく二人はキャッチする。

 

 

「チョコレートだ。我の指揮官も休憩終わりによく食べている。糖分補給には最適で、集中力を持続させるためにも良い。今後は模擬戦の後にポケットに菓子類を忍ばせておくといい」

 

 

「グラーフの指揮官……今は負傷中と聞きましたけれど、凄い人だと聞いていますわ!もしよろしければ後でどんな人なのか話を聞かせてほしいですの!」

 

 

 純粋な興味なのだろう、エルベは友邦サディア帝国を救い。対ロイヤル戦に幾度となく勝利を導いたグラーフの指揮官に興味津々な様子で見つめると、彼女はほんの少しだけ表情を和らげる。

 

 

「あぁ。個人情報などは話せないが今日の仕事終わりにでも聞かせてやろう。だから模擬戦が始まるまでは今はゆっくりとチョコレートを食べて休め。戦士には休息が必要なのだから」

 

 

 ヴェーザーはチョコレートを口に含みつつ、一瞬だけ自らの指揮官の話題となった時のグラーフの表情が柔らかくなったことに気が付く。そしてその表情が自身の姉であるヒッパーと同じものだと気がつき、何気なく、毎日欠かさず書いている日記の内容に反省点と共にそのことを記述しようと懐から取り出した手帳にメモを書き込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く…暇だからってのんびりしすぎてんじゃないわよこのマヌケ!人が来たらさっさと出なさいってえの!」

 

「あぁ、久しぶりだねヒッパー。ちょっとコーヒーでも用意するから座って待っていてくれ」

 

 オイゲンとのバーでの話し合いから数日後、私はメロンを片手にお見舞いという名目で基地で謹慎中の指揮官の様子を見に行くも、彼は少しだけ驚いた様子だが直ぐに書類仕事を辞め、自身の部屋に私を招待してくれた。

 

 初めて入った指揮官の……いや男の部屋に少しだけ緊張するも、謹慎中であることを抜きにしても、彼が私を襲うなんてことも考えられずにそこは安心と言えるだろう。部屋はマンジュウが整理していることを抜きにしても几帳面に片付いており、ベッド脇にある机の上には教本が山積みになって置かれている。軍務に関係する仕事を取り上げられて、最低限、マンジュウの試験報告など以外の仕事がない指揮官が謹慎中に何をしているのかが一目瞭然だった。

 

 

「口は相変わらず、といったところかな?」

 

「ふん!そんな短期間で変わるわけないでしょ?それにそんな言われるほど期間空いてる訳でもないっての!」

 

 

 微笑みながら注いだ彼のコーヒーを見つめながら我ながら皮肉気味にそう口にする。指揮官とは一週間ぶりの再会となるが表向きは思い詰めた様子もなく、食事もしっかりと摂っているようだ。最悪部屋に引きこもって拒食症になっていることすら予想していたが、そこは少し安心する。

 

 

「まぁ……俺としては久しぶり、って思うくらいだったんだよ。久しぶりにヒッパーの様子が見れて、ヒッパーの声が聞けて嬉しいよ」

 

 

「あんたバカなの?こんな言い方されてるのに喜ぶなんて…マゾとか勘弁してほしいっての。全く」

 

 

 我ながら少しだけ頬が熱くなるが、同時に違和感を覚えてしまう。ニコニコと微笑みながらコーヒーを飲む指揮官はいつもの狂信的なまでの甘党要素を捨て去り砂糖や蜂蜜を一切入れていない。それにコイツとはもう3か月近くの付き合いになるが正直ここまで平気な顔をしているのは……異常だと思えた。

 

 

「ははっ、こんなことヒッパーじゃなきゃ言わないよ……こういうことは本当に、ね」

 

 

 

 そう口にする指揮官は、罪悪感のカケラも感じられない。そう、あれ程までに真面目で溜め込みやすく、時として戦闘中に吐いたことすらある程に脆く、弱いメンタルをしている男とは思えない。

 

 

 それこそまるで別人のように 。そう、完璧なまでに反省して、後悔して、その上で乗り越えたという姿を見せている。そんなはずないというのに。この指揮官がたった一週間程度で立ち直る程に鈍感でも無責任でもないはずなのに。

 

 

「アンタ……大丈夫なの?」

 

「えっ?なにがだい?というかいきなりどうしたんだい?急に変な質問をして……」

 

「アンタがそんなにニコニコしてる時点でいつもの調子とは違うのくらいわかるってえの……普段のアンタならマゾ発言の時点で「俺マゾじゃねぇよ!?」って言うでしょうし、もっと何というか、普段と違って全然リラックスしてないじゃない。秘書艦なめんな、まったく」

 

 

 指揮官はきょとんとした表情を浮かべるも、ばつの悪そうな笑みをこぼす。そして『鉄血の軍人』であるベールを脱ぎ捨てるかのように疲れたような声で彼はつぶやいた。

 

 

 

 

「……よく見られてるなぁ……もう少し誤魔化せるかな?って思ったんだけどね?」

 

 

「どれだけ平気そうな顔しても逆に完璧に演じきってるから余計怪しく見えるっての……大体さっきから何なの?普段はココアばっかでコーヒーなんて飲まない癖に」

 

 

「あー……うん。飲むよ?飲むけど、もっと砂糖とか入れるべきだったかなぁ……悪い、心配かけさせないようにって思ったけど逆効果になっちゃったみたいだね」

 

 

 そう微笑もうとするが既にベールを脱ぎ去った彼の微笑みは不器用というか、無理やり彫刻が笑おうとしているのと同じくらい違和感を感じるものだった。覇気は消え失せ、何かを必死に耐えようとする姿だけがそこにはあった。

 

 きっと、一人でずっと悩んでいたんだろう。自身の命令による責任で艦隊の皆が一時的に離れ離れになること。ハプニングが重なったとはいえ後一歩でスパイが二人とも逃亡するという最悪の事態を招いたこと。軍人として最低な命令違反を好き放題行なってしまい、極め付けは謹慎中の間はビスマルクの「貴方はもう何もしないで」という言葉が彼の心を突き刺し、深く傷つけていた。

 

 だからこそ、彼は何度も自己問答を繰り返していたんだろう。ただひたすらに自身の失敗を認めて、反省し続けながら自身の中で折り合いをつけようとしていたのだろう。だが、それは不十分であり一週間程度では到底不可能で死にたくなるような毎日を送っていたはずだ。

 

 

 だけど、それは自身の問題なのだからと会いに来た私の前では平気そうな顔を無理矢理浮かべ、私との会話でも笑顔を取り繕おうとしていた。せめて私たちの前では自分を偽り、元気でやっているという姿を見せようとしたのだろうが……多分私でなくてもシュペー、グラーフの二人ならきっと彼が今無理をしていると気が付いたはずだ。

 

 

 狂人は本物の狂人をみると思わず冷静になってしまうだなんて何処かで聞いたことがあったが、それと同じで自身よりも思い詰めていた指揮官を見ると罪悪感よりも彼を心配する感情が湧いてきた。だから私はため息混じりにこう告げた。

 

 

「ほら……聞いてあげるから、さっさと話しなさい」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、指揮官は力無く微笑もうとするが最早それすら不可能になったのだろう。躊躇いがちに言葉を詰まらせそうになりながら彼は思い詰めた様子でボソリと呟いた。

 

 

「何が悪いか、何が正しいか、どれだけ迷惑かけたのか……ごめん、まだ少し心の整理がつかないんだ」

 

 

「あっそ……んじゃ、一つづつ整理していくわよ」

 

「え……いや、そのね?ヒッパー?」

 

「何よ?整理つかないってんなら一つづつ対処するしかないでしょうが……それとも何?私とは嫌だって訳?」

 

 

 

 そう口にすると指揮官は首をブンブンと横に振る。全く……悩みがあるなら私に素直に話せば、いや愚痴ればいいのに変に回りくどくしようとする辺り、コイツらしいと言えばコイツらしいんだけどね。

 

 

「いや、そんなことはないんだけどその…悪いというか」

 

「うっさいバーカ。ほら悩みがあるならさっさとやるわよ……私だって思ってることもあるんだから、気にせずほら、しゃんとする!」

 

 

 彼のコーヒーに無理矢理砂糖をぶち込んで背中を叩きながら強引に促すと、観念したように指揮官はポツリポツリと語り始めた 

 

 

「あの時、なんで無線を切ったのかなってね……」

 

「そうね、私もあの時もっと早く止めるべきだったわ」

 

「ピュリファイアーが現れた時スパイ二人に共闘するよう話しかけたり、指揮艦に避難とか他にやれることがあったのかもしれないなって」

 

「そればかりはスパイ二人の行動次第だから難しいかもしれないわね」

 

「サディアの時も勝手に飛び込んで……」

 

「反省しなさい。それはもう物凄く反省しなさい。シュペーも泣いてたし次に同じことすれば許さないわよ」

 

 

 時間は少しずつ過ぎていく。指揮官が途切れ途切れに言葉を放つごとに、私も振り返って肯定することも、否定することも、時に自分が後悔してることを彼に伝える。

 

 

「怖いんだ……皆を失うことが、皆に失望されることが、皆に嫌われることが、鉄血にいらないって言われることが…」

 

 

「そうね、私も怖いわよ。アンタたちが目の前で死んだりしたら死ぬ程引きずるわ」

 

 

「マインツやグラーフにもう二度と過ちは繰り返さないなんて言ったのにさ…今回は皆を巻き込んで…」

 

 

「私だって何かあればヴァイスを殴ってでも止めようとしてたわよ。でも結局何もしないし、できなかった」

 

 

「でも妹を、守れてさ……サディアに住んでる妹をさ」

 

 

「妹なんていたのね。良かったじゃない、アンタがあの時気付けたからサディアは誰も死んでないわよ。自信を持ちなさい」

 

 

「うん……皆に感謝されてプレッシャーも凄かったけど、でもあぁ俺って人を守ることができたんだなって同時に嬉しくて…」

 

「気持ちは分からなくもないわ。じゃあ英雄に志願したのは?」

 

 

「あれはプロパガンダの影響だけど、少しでもヴェネトさんやビスマルクさんの役に立ちたくて、この戦争を終わらせるきっかけにしたいから……」

 

 

 

 最初は細々と呟いていた指揮官は私の言葉一つ一つを聞くたびに徐々に口数が増え、まるで今まで溜め込んでいた感情が溢れ出したかのように饒舌になっていた。

 

 そして私は彼の言葉を受け止め、できる限り自分の考えを述べ続けた。それが彼の本音を聞いた私ができる精一杯のお返しなのだから。

そうしているうちに指揮官の目からは涙が流れ始め、それは次第に嗚咽交じりのものになっていった。

 

 

 それでもハンカチを差し出しながら指揮官との会話を続けていく。自分が溜め込んでいた感情や後悔を吐き出しながら私は指揮官と向き合っていく。1時間、2時間と時間は過ぎていき、お昼頃には特に命令をしていなかったというのに、ドアをノックしたマンジュウが心配した様子でピヨピヨと鳴きながらサンドイッチを差し出す。

 

 

「慕われてるわね」

 

「いや、そんなんじゃ……」

 

「アンタは気づいていないかも知れないけどマンジュウたちは相当アンタに懐いて忠誠誓ってるみたいよ」

 

 

 私の言葉を聞いた指揮官は、少し照れくさそうに頬を掻く。マンジュウはそうだとばかりに頷くと敬礼と共に部屋を立ち去っていく。

 

 

「なんでだろうね……分からないや」

 

「それだけアンタがやってきたことは無駄じゃなかったってことよ。モノやロボ扱いせずにちゃんと接してきた結果なんじゃないかしら?」

 

 

「そうなの、かな?結構無茶振りなんかもしてきたから、マンジュウたちにも申し訳なくなってくるんだけど……」

 

「そういう申し訳なく思う心がある時点で、マンジュウたちもきっとアンタなら忠誠を誓っていいって思ってるのよ。じゃあ話に戻るわね、レス島の時にアンタは───」

 

 

 

 時計の針は刻一刻と進んでいく。互いの欠点を、反省点を、そしてこれから鉄血軍人としてどうあるべきかを話し合う。

 

 

 そうして夜になり日付が変わるまで話し合いを続けると、彼は少しだけ表情を弛緩させリラックスしたようだった。まだ考えや反省などもまとまってはいないが、少なくともこの日の会議は彼にとって有意義なものになったことだけは確かだった。

 

 

「多分謹慎中はもう会う機会は無いと思うけど平気?」

 

 

「あぁ、もう平気……とはまだ言えないけどどうにか一人で頑張ってみるよ、じゃあまた2月に、ね?」

 

 

 

 そして、同時に私も彼と話し合うことで精神が落ち着き、見えなかった自身の欠点や彼の本音などについて学ぶことができた。一人だけでは私はそのまま酒に溺れていただろう。その点に関してはオイゲンへの感謝しようと決めながら私はメロンを掴む。

 

 

「キッチン借りるわよ、私もこれ食べたくなってきたわ」

 

「………」

 

「どうしたのよヴァイス」

 

 

「いや、何というか……故郷の母さんみたいな感じだなって……」

 

「ふぅ……まだ、ケツを叩き切れてなかったようね?」

 

 

「違う違う!これ本心だから!いい意味でだってばぁ!」

 

 

「戦友だろうが!秘書だろうが!友人だろうが!!女性を自分の母親と比べるんじゃないっての!!このバカアホドジトーヘンボクのマヌケェ!」

 

 

 

 ほんっっっとうに!!調子狂うわねアンタ!!

 

 

 

 結局、最後はこうしてギャーギャーと言いながら私達は騒がしい一日を過ごすのだった。本当、あのアホがこんなんだからこっちも心が乱れるのよ!!もう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身の依存心を無くし、皆と横で歩こうと決意するもの。

 

 

 ただひたすらに職務に尽くし、失った信頼を取り戻そうとするもの。

 

 二人でお互いに話し合い、もう一度自分たちを見つめ直そうとするもの。

 

 

 彼らはとても不器用で、それでも前に進もうと。祖国を愛する軍人としてもう一度歩むためにそれぞれの日々を過ごすことになる。

 

 

 

 しかし、世界はそんな彼らを無視して激動の日々を歩み出す。地中海から始まった騒動は一発の銃弾によって最早誰も知らない、観測者すら予想できない未来を歩もうとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方とこうして直接会うのは初めてですね、長門」

 

「うむ。だがソユーズよ、これからの重桜と北方連合はイデオロギーや思想、宗教を乗り越えなければなるまいよ」

 

「同意しましょう……前置きは抜きにして、それでは始めましょうか。同志長門、血塗られた歴史を乗り越え、我々の未来についての有意義な話し合いを」

 

 

 

 

 

 

 

 極東、樺太(北方連合名サハリン)の国境線の境目では本来出会うはずも無かった二人の陣営代表がテーブルの上で向き合うこととなり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アルジェリア方面は現有戦力で何とかなる。例えあのクズ共やロイヤルが大挙をなして押し寄せても俺たちが撃退する。本国は任せたぞジャン』

 

「お前の力は信用しているが、油断はするなよ。帰ったら酒のひとつでも奢ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リシュリュー猊下!!本当に、本当に申し訳ございませんでしたぁ!!」

 

「サン、ルイ。こんな時どんな表情を私はすれば良いのでしょうか?」

 

 

「笑えばいいかと。そして必要であれば今からロイヤルに掛け合いギロチンを手配しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ神を信仰しながら二つに分かれた国家の陣営代表たちは腹心との会話にそれぞれ別の表情を見せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベル……貴方とグラスゴー、サウサンプトン、それにユニコーンにしばらく休みを与えるわ。そんな状態で職務なんてできるはずないもの」

 

「……承知、いたしました。陛下、誠に申し訳ございません……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は……」

 

 

「それ以上はやめろネプチューン。私は王家の戦士としてお前を拘束しなければならなくなる。」

 

 

「……真面目ですわね。ですが溜め込んでばかりでは、いつか損するだけですわよモナーク」

 

 

 

 

 乱れる獅子の国ではそれぞれの思惑が交錯しており。

 

 

 

 

 

 

「なっ…!?正気なのか重桜は!?」

 

 

 

 

 自由の国の英雄は隣国の行動に驚きを隠せない。

 

 

 

 

 

 

 世界は少しずつ、ゆっくりと、そして確実に変化していく。これはその一幕に過ぎないのかもしれない。

 

 

 だが、もし仮にこれが歴史を動かす大きなきっかけとなるとしたならば、果たしてそれはどのような結末を迎えるのか? 少なくとも、この物語の先の結末は例え観測者であっても予測不能と言えるだろう。

 

 

 

 

 

『ビスマルク。新たな演劇の準備は整いました。我らは貴方たちに恩があります。我々は一蓮托生。イオニアの恩を返すためにも、我々は鉄血に協力を惜しみません」

 

 

 

「信頼しているわよヴェネト。貴方のような人と共に未来を勝ち取るために戦えることを感謝します。それでは始めましょうか」

 

 

 

 

 

 ───ロイヤルへの報復を、そして我々の戦争を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 全ては未来を掴むために。全ては未来を勝ち取るために。それぞれの勢力が動き出す。

 

 

 

 その先に待ち受けるのは勝利か敗北か。誰にも分からない。それでもただ一つ言えることがあるとするならば。

 

 

 過去は、あの穏やかな日々はもう二度と戻らない。例え第三勢力のセイレーンが存在しようが、都合の良い団結なんてものは不可能ということだろう。

 

 

 

 

 そして、物語は再び始まる。

 

 あの日の続きを、彼等が望んだ未来を手に入れるための物語を。

 

 

 そして、鉄血の指揮官ヴァイスクレー・ヘルブストは。

 

 

 

 

 

 

「どうすりゃ良いんだよ、こんなのぉぉぉぉ!?」

 

 

 

 

 

 心の底から、絶叫していた。

 

 

 

 




 


 これにて第三部は終了。シェフィールドの銃撃から始まった大事件は一旦の落ち着きを見せたと言えるでしょう。指揮官達はそれぞれ自分を見つめ直す中、彼らの歩んだ先から波紋が広がる様に、世界は少しずつ変化していきます。その先に待ち受ける未来は……


 第4部のタイトルは『変わりゆく世界』いよいよ国際情勢が本格的に変わり始めるなか、謹慎中の指揮官は何を思うのか。

 次回は恒例のキャラ紹介まとめ……ではなく、少し違ったものとなりますがお待ちくださいませ。


 また、アンケートとして重桜の派閥に関してどの派閥を皆様は支持をするのかを聞かせくださいませ。


 ①たらればの想定で盟友アズールレーンからの脱却など言語道断であり、むしろ現在の関係は決して悪くは無いユニオン、ロイヤルとの関係を更に深める事で重桜の重要性を理解させ、場合によってはレッドアクシズの攻撃も辞さない親アズールレーン、反レッドアクシズの金剛派

 ②将来の経済奴隷からの脱却と、資源地帯の獲得のためにレッドアクシズと手を結び、アズールレーンからの脱却と真珠湾奇襲攻撃を目指す親レッドアクシズ、反アズールレーンの赤城派

 ③二つの勢力とは別の道をいく、アズールレーンへの残留をしつつ、かつて宗教を弾圧しておりイデオロギー的には相容れない、セイレーン塗れの共産主義国家、コミュニストである北方連合との協力、連携によってユニオン、ロイヤル、鉄血を牽制する事を目指す長門派

 コメント、感想、評価をお待ちしております……

指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
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