海を切り分けて真っ直ぐに、愚直に、猛スピードに、まるで暴走列車の様に進撃するレーダー上に移る黄色い反応とそれを追撃するセイレーン艦隊。
いや……レーダーを見なくても、水平線の先にはそれぞれ寄り添い合いながら主砲を此方に向けるロイヤルネイビーを既に目視出来てしまう。
何故見つかった?ロイヤルのレーダーが鉄血製より優れていたのか?それともグラーフの様に偵察機を使って、バレない様に此方を探っていたのか?
「つっ……わた……まっす…いい……」
なんて緊張しながら警戒していると途切れ途切れだが聞こえてくる。
相手は艤装に備わった集音モードで会話をしているんだろう、個別通信にしていない以上相手は此方に会話を聞かれても別に構わないと思っているのだろうか?後方からは次々と赤い点々が此方に向かってくる。
.……あ、これ戦闘は避けられないしロイヤルはこっちにも攻撃する気満々だな?
『ふむ……卿よ、どうやら向こうはこちらも含めてやる気のようだな? 』
グラーフが憎々しげにそう言いきる声が指揮艦の中に反響する。ビスマルクさんは戦闘は避けろと言っていたが、もうこうなっては後ろに背を向ける方が危険だと理解してしまい、俺も腹を括るしか無いと深呼吸をしながらマイクを手に取る。
大丈夫、落ち着け、この手の震えは武者振るいだ……敵は数が多くても弾薬は少なくて損傷しているはず。こちらは弾薬は満杯で精鋭の三人なんだ、後は俺さえ間違いなければ……俺さえちゃんと指示できれば……!
シュペーは優しく、フォローしてくれると言ってくれた。
ヒッパーは厳しくも、秘書として俺を支えてくれると言ってくれた。
そしてグラーフは、俺を信頼してこの基地を任せると……指揮官らしく、もっと胸を張れと励ましてくれた。
時間はない……訓練を思い出して、落ち着いて、冷静になるんだヴァイスクレー・ヘルブスト。
皆を裏切らず、皆を死なせず、皆の命を守ってこの危機を乗り越える為に頭を使って対処するんだ。
気がつけば手の震えは止まっていた。
『シュペーとヒッパーは少し左右に離れてくれ。グラーフはそのまま待機、マンジュウはエンジンを作動させていつでも発進可能にしつつ、ちょっとだけ待ってくれよ……あと皆急いで耳塞いでくれ』
『指揮官何をしてーー』
シュペーの台詞を敢えて無視して前方に目を向けると、遠目ではあるが完全に相手の姿を捉える事が出来た。
五人の中でも特に目を引くのはピンク髪でマントに身を包んだロイヤルの騎士らしき戦艦、そしてボロボロのメイド服に身を包んだ黒髪の女性。
あれは疑う余地もなくロイヤルの戦闘メイドのロイヤルメイド隊の一員、もう明らかに相手は隠すつもりなく、此方の見間違いもなく敵は99%ロイヤルネイビーのkansenなのだろう。
横にいるマンジュウに手で合図を送るとピヨ!と警告をして準備をしてくれた。頼んだぞ……よし、後は話すだけだと耳栓を身につけ、マイクを手に取りこの戦場全てに響く様に最大音量で前方の五人に話しかける。
「えー此方ー鉄血艦隊ー!貴方達ー!所属不明の一団はー!我らの領海を侵犯している可能性があーるー!なのでー!すみやかにー停船を行いー!武装解除をしてー!此方の誘導にしたがいなさーーい!こちらの指示に従いなさーーい!」
砲撃。
此方の予測通りロイヤルの返答はなく、一瞬の間を置くと、代わりにピンク髪の戦艦らしきkansenから放たれたらしい榴弾は寸分の狂いもなく指揮艦に着弾する。
シールドがギリギリと音を立てて轟音が鼓膜を揺さぶり、榴弾の炎がシールドを包む。目視出来るとはいえあの距離から至近弾も挟叉(きょうさ)の必要もなく此方に命中させるという事は、敵は間違いなく何度もセイレーン戦を乗り越えた猛者なのだろう。
『……るっさいわねぇ!!悠長に何やってんのよこのバカ!! 』
耳を塞ぐ間も無かったんだろう、ヒッパーの怒号の通信が戦場に拡散する、それはそうだろう。自分たちは離れろと言いながらバカ正直にロイヤルに停戦してくださいー!なんて五月蝿く呼びかけ、案の定砲撃を受けるなんて無能を通り越して、グラーフに今すぐ指揮権を剥奪されても仕方ない。
でも。
『こっちは停船命令を出したのにロイヤルさんは攻撃してくれた。大義も正義は完全に此方にあり……今のやりとりは完全に録音して、砲撃前の写真も撮れた。後で向こうさんが何か言って来ても少しは有利になるはずだ』
耳栓を取りつつヒッパーに通信を送る。領海侵犯に密輸した艤装で武装、それだけじゃなく停船勧告を無視と、これでロイヤルはもう誤魔化す事はできなくなった。
わざわざ停船して大音量で五月蝿く、馬鹿正直に話しかければセイレーンに追われている相手は返答する余裕もなく、集音モードで鼓膜を刺激された相手は無視か攻撃をしてくれると信じていた。
相手が無視するのであれば、停船命令をロイヤルは無視したと此方は非難が可能であり。
相手が攻撃したのならロイヤルは停船命令を無視して攻撃する国だと非難出来る。
……シールドが一発だけなら絶対に突破されない、榴弾であろうがシールドについた炎は消えると理解していても、正直床にへたり込みそうな程の恐怖を覚えたのは内緒だ。
『だからって!なんで!あんたが攻撃を受けるのよ!! 』
『このシールドで一発だけなら、この世界のどんな戦艦の主砲にだって耐えられると信じてたからね』
『ふむ……」
『でもだからって……」
再び轟音、そして着弾。
此方の動きを止める為なのか、変わらず敵戦艦は砲撃を仕掛けてくる。今度は徹甲弾だ、先程と違い炎は出ないがシールドに今度はヒビが入る。
シールドがいくら頑丈でも何度も攻撃を受ければ何れ限界を迎えてしまう、2回も相手から砲撃してきたのだからもう充分だろう。後でヒッパー達への謝罪の言葉を考えつつも、今度こそ指揮官としての責務を全うしなければ。
『総員戦闘配置に!まずヒッパーは前方に突っ込み、シュペーはヒッパーの援護を!戦術は高度な柔軟性を持って臨機応変に二人に任せる! 』
『はぁ!?あんたねぇ……!それって指揮になってないわよ!要は適当に動けって事!? 」
呆れて怒鳴るヒッパーの言う通りだ。適当と捉えられてと仕方ない。自分はまだ指揮が下手な上に、初実戦という事もあり書類の上でしか三人の戦い方を知らない。
だから必死になって昨晩考えた結果がこれだ。戦闘経験も豊富な三人には好きに動いてもらい、自分はレーダーや目視で戦場を把握してあくまで補助に回り全体的な指揮ではなくサポートを行う。
『それだけ二人を信頼してるのさ!二人が好きなようにやってくれ!無線でフォローするからロイヤルじゃなくてセイレーンをメインに撃破してくれ!』
『了解。ヒッパーちゃん、援護するから前方の敵は頼むよ」
『シュペーも少しは怒りなさい!あぁもう!アンタ、基地に帰ったら覚悟しなさいってぇの!』
素直に従ってくれたシュペーに呆れつつ、ヒッパー達二人は敵ロイヤルに接敵しないように、セイレーンの方向へと斜め方向に前進していく。
切り込み隊長として敵陣で暴れ回る事が得意なヒッパーが前に出て、援護が得意なシュペーにはその補助に回ってもらい二人には残存セイレーンを片付けてもらう役目を果たしてもらう。
ヒッパーの説教は後で受けるつもりとはいえ、物理的な説教で無い事を祈ろう。
『卿、我はどうする?自由に動けばいいのか?』
『そのままグラーフには後方から戦闘機と艦爆を準備をしつつこちらが合図をすればロイヤルの足止めを。当たらなくてもいい、グラーフにはただロイヤルの動きを止めて逃げない様にして欲しいんだ」
『高度な柔軟性を持って? 』
『臨機応変に! 』
『ふふ……よかろう、そちらの方が動きやすい。シュペーとヒッパーがセイレーンを撲滅するまでの間は食い止めて見せよう』
グラーフはこちらの通信を受けると面白そうに受諾してくれた。
本音を言えばグラーフの火力で一気に攻撃したいとはいえ、数で劣るこちらが相手を確実に逃がさない為にはグラーフによるハラスメント攻撃が必須だ。
現状ロイヤルが何を考えているのか理解できないとはいえ三つ巴の戦いになる事は事実。
それならひとまずグラーフには戦闘機の機銃と艦爆の爆撃によってロイヤルの足止めに徹してもらう。
『指揮艦は動き回って、敵の攻撃が当たらない様に進路の妨害を。出来れば敵が砲撃する瞬間に写真が撮れるのであれば撮影を。そして、この通信を切った後は僅かなタイムラグも惜しい。集音モードに切り替えてくれ』
指揮官と言うより俺の役割はオペレーター。情けない限りだが、下手に全部を動かして破綻するよりは、この状況で生き残るためには俺は補助に回るしかない。
初実戦がこんなイレギュラー塗れになってしまった事による緊張や、命のやり取りを今から行うことに関する恐怖はある。それでも信頼してくれた三人の想いに応える為に……!
『ーー我が同胞のために鉄血の力とならん事を!各員の奮戦に期待する! 』
『『『了解』』』
皆の声をバックに最大船速で相手の進路を妨害する為に指揮艦は前方に向かって発進を開始、役目はロイヤルの進路を妨害しつつ攻撃が当たらない様に逃げ回る事だ。
本音を言えば護衛の彼女達から離れることに不安はある。後方から皆の動きを見ながら戦場を見渡したかったが数が少ない以上グラーフが艦載機を発艦させるまでの時間は稼がなければ……バリアが無限ではないとは言えある程度の攻撃なら耐えられる、逃げ回ればきっと死にはしない。
それぞれが役目を果たせばこの戦いを勝利することは出来るはずだ、今はただ時間を稼いでセイレーンを攻撃しつつロイヤルが逃げない様に動かなければ。
こうしてセイレーン、ロイヤル、そして鉄血による混迷する海を舞台にした狂想曲が。
後に『バルト海海戦』と呼ばれる事になる戦いの幕が今開けようとしていた。
「鉄血の海で好き勝手できるだなんて、思わせるかってぇの!」
「指揮官、ヒッパーちゃん、無理しちゃダメだからね……!」
ロイヤル艦隊と接敵しないように迂回して後方から迫るセイレーンに、小さな身体で突撃するヒッパーと更に巨大な腕を振りかざしつつ、その後ろに続くシュペー。
幸いロイヤルは二人に攻撃を加えることなく無視してこの指揮艦に突っ込んでくる。正確には相手の進行方向にこちらの船を無理やりねじ込んでいるのだが。
……相手はヒッパー達を狙わない?なら狙いはセイレーンをこちらに押しつける事なのだろうか?弾薬がないから出来ないのか、それとも戦闘する気は最初からないのだろうか?いずれにしても砲撃を受けるのがこの指揮艦だけなら今の状況であれば幸いだ。
敵の軽巡や駆逐には目も暮れずにヒッパーが狙うのはどうやら敵の戦艦ルーク級や空母クイーン級といった主力、遠目から見てもその殆どがロイヤルの攻撃によって傷ついているが迎撃機能はまだ健在。
副砲や艦載機を使ってヒッパー達に攻撃を加えるも、ヒッパーは対空砲でカトンボの様に艦載機を潰しつつ、流れる様に敵の副砲攻撃を避けて敵戦艦二隻を確実に仕留める事が可能なキリングレンジに捉えてみせる。
「まずは大物狙い!自由にやれって言うんならその通りにさせてもらうわ!」
ふっとべ!!
ヒッパーの咆哮と共に放たれた魚雷は真っ直ぐに敵の脇腹を目掛けて突き進む、敵の戦艦ルーク級は傷ついた船体を傾けて避けようとするも、ここまで近距離で魚雷を直接ぶつけられればどんな艦艇も避けることは不可能だろう。
轟音。
敵戦艦ルーク級二隻は虚しく副砲でヒッパーを狙おうとするも、至近距離から鋭く突き刺さった魚雷によって船体に穴が空き、傾斜している現状では何も出来ない。
やがてゆっくりと巨大な船体は傾き海の底に新たな墓標が産まれ、ヒッパーの撃沈スコアに星が二つ追加される事になる。
「ヒッパー!右舷の方向に追加で空母クイーン級一隻!周囲を取り囲んで軽巡ナイト級五隻!」
「了解!」
沈みゆく戦艦には目も暮れずヒッパーはすぐさま次のターゲットを仕留めるために動き出す。早速捕捉した軽巡ナイト級五隻による主砲や、クイーン級艦載機による機銃攻撃をシールドで強引に防ぎながら荒々しく強引前進し、大型空母クイーン級の横腹に二発の魚雷を発射し再び撃破。
クイーン級を撃破されたと同時に力を失った艦載機は海に沈んでいき、進路を防ぐ軽巡、駆逐を無視してシールドで攻撃を防ぎつつ次々と戦艦ルーク級、空母クイーン級、重巡ビショップ級と大型のセイレーン船ばかりが沈んでいく。
長くロイヤルと戦っていたからだろう、セイレーンの中にも傷ついている量産機も多数存在しているが、だからと言って抗戦能力は変わらない。
ヒッパーがしている事は機械的に自身を抹殺しようとする量産機の攻撃を紙一重で回避をしつつ、避けきれない攻撃は自身の能力により生み出したシールドによって防ぎ敵陣のど真ん中に吶喊。
「魚雷はまだまだ!敵はわんさか!本当ウンザリする程やりごたえがあるって…ぇの!!」
「次は右斜め方向にビショップ二!ポーン四!」
「了解!」
そして敵大物だけを至近距離からの砲撃や魚雷で仕留めると、雑魚には用がないと言わんばかりに進路を防ぐ敵を除けば、数の多い軽巡と駆逐を無視して次の獲物に狙いを定めていく。
(戦闘に関しては自身の周辺にシールドを浮かべて防衛しつつ、確実に仕留められるキルレンジまで近づき、仕留める戦法を多用している)
彼女と出会う前に読んだヒッパーの戦闘記録を思い出す。荒々しくも繊細に、それでいて敵の砲火に突っ切っていくヒッパーの後ろ姿には恐怖は微塵も感じない。
砲火に突っ込む勇気もあるのだろう。
攻撃に当たらない自信もあるのだろう。
この中で最もセイレーンと交戦した慣れもあるのだろう。
そして何よりも……
「ヒッパーちゃんはやらせない……! 」
ヒッパーが敵艦を撃破した一瞬の隙を突いて背中を狙おうとした駆逐ポーン級に、シュペーは生体艤装の口を展開させ、今正に砲撃を放とうとする下手人に裁きを与える。
砲撃……命中!
ヒッパーの砲撃によって自身の主砲を暴発させたポーン級は、火だるまに包まれると大爆発を起こし、その衝撃による津波によって敵の量産型は一時的に行動が不能となり、それを逃さずにシュペーはバイタルパートを狙撃していき次々と敵を撃破していく。
「背中は任せて……! 」
「ありがと!頼りにしてる! 」
ヒッパーの後方に常に陣取り、大物を撃破してヒッパーが残した敵を平らげつつもヒッパーが避けられない攻撃を敢行する敵は最優先で撃破するシュペー。
(戦闘に関しては、援護や共同撃墜を積極的に行なっており、フォローしながら戦う事を優先している)
シュペーはヒッパーの様にシールドを生み出す事は不可能なのだが、自身に備わった艤装の能力なのか本人の努力によるものなのか、敵小型艦を撃破する事が得意な様だ。
彼女はひたすらヒッパーの援護を徹底して行って自身の役目を果たし、ヒッパーは背中を預けて安心して敵の大型艦艇を撃破していく。
まるで長年連れ添ったパートナーの様に息のあった動きでレーダーに映る赤い点が次々と消していく。
しかし、もしこれが俺の指揮なら……なんてネガティブな事を考えている余裕も俺にはなかった。
「ちっ……邪魔だ! 」
「邪魔と言われてはい退きます!なんて言えない立場でね……!」
空母らしき女性の苛立ちを感じつつも戦場を全速力で駆け回りながら敵の進路を妨害していく、ヒッパーとシュペーに集音モードで指揮が可能という言う事は、敵のロイヤル五人にも声が届いていると言う事だ。
最早肉眼で完全に目視ができる距離に捕らえたロイヤルkansenの狙いは読めた、彼女達はシュペーやヒッパーを攻撃せずに不自然に立ち止まり、挑発するかの様に敵の大型量産機に攻撃を掠めさせて、それを二人に押し付けつつも、戦場を脱出する為に速力を上げて離脱を敢行する。
「こっちを囮にするだなんて卑怯だなぁ!優雅と聞いて呆れますね!それとも敵を撃破するだけの弾薬もないのかな!?君達は! 」
「くっ……言わせておけば! 」
「相手の挑発に乗るな、そして邪魔をすると言うのなら暫くおとなしくしてもらおうか……! 」
「おっと、全速力で横に避けろ! 」
「「「ピヨっ!! 」」」
全速力で海を駆けずり回り敵の進路を防いで妨害をしつつ挑発をする事により、静かな怒りを隠さないピンク髪の戦艦の艦砲がこちらに向けられ、急いでマンジュウの操舵する指揮艦は砲撃を避けんとエンジンを酷使させる。
敵の攻撃は僅かに掠ったがどうにか避ける事には成功、しつこく相手を挑発しつつ再び敵の進路の妨害を再開する。
「しつこい男性は嫌われます……よ! 」
「おっと!忠告ありがとうメイドさん!でも男性に砲撃を躊躇いなくぶっ放す女性もどうかと思うけどなぁ! 」
「ご心配ございません、私も耐えずに進路を妨害する様な男性以外には攻撃を加えませんからね」
「これは手厳しい!それとシュペー、後ろにポーン三! 」
戦艦の砲撃だけではなく傷ついたメイドさんからの砲撃も加えられ、シールドの耐久残量は確実に減っていく。しかし、なにも無意味に挑発してる訳じゃなく、これで相手の情報も少しずつ揃ってきた。
・空母型のkansenはこちらに艦載機で即座に発艦させて攻撃する能力はない、或いは既に艦載機の殆どを失っている。
・ピンク髪の戦艦と傷ついたメイドさんを除いた残るメガネと赤毛の二人は攻撃してこない、明らかに弾薬の残量が心許ない。
・相手の狙いはこちらにセイレーンを押し付けての脱出、或いは時間稼ぎで援軍を呼ぶ事だがこのバルト海にロイヤルの援軍がやってくる可能性は限りなく低く前者が目的なのだろう。
代わりに戦ってる最中にシュペーとヒッパーの名前を相手にバレてしまったのは痛いがこれで相手の脅威度を分析しつつ、相手の注目を向けてヘイトを集めて時間を稼ぎ……シールドの残量が半分になる頃に準備は完了した。
「よし……発艦開始!全速力で逃げるぞ!」
「卿よ、よく耐え抜いた。これより攻撃を開始する」
「この声……皆さん3隻目!来ます!注意してください!」
メガネのkansenが叫ぶと同時に後方より飛来するのは大量のJu-87Cスツーカ爆撃機に、BF-109Tメッサーシュミット戦闘機。
空母kansenは一度の攻撃では艦載機を大量に放出する事は不可能であり、こうして後方で少しずつ機体を発艦させては上空に待機を繰り返して貰っていたが、その甲斐もあって編隊を組み飛行する航空機の数は、こちらにとっては希望を、そして相手にとっては絶望を与えるに相応しい航空部隊と化していた。
「優先するのはピンク髪の戦艦、あと空母も発艦させないように妨害を!」
「了解、さぁ条件が全て揃った。では開幕するとしよう……終焉のシンフォニーを…… funebre! 」
「艦載機……!?グラーフ・ツェッペリンか!?全艦対空防御急げ! 」
急降下と同時に悪魔のサイレンを響かせてスツーカは全ての敵爆撃を行い、逃げようとするkansenの退路をメッサーシュミットの機銃によって逃げ道を防ぐ。
逃げ道が無いと判断したロイヤルは対空攻撃を開始、急降下するスツーカが次々と撃ち抜かれて海に沈んでいくも、その多くはラッパの様なサイレン音を流し、直上から鉄の暴風雨を浴びせていく。
(適正は爆撃による面制圧、戦闘に於いては、雷撃よりも爆撃を好み、集中運用をした場合の命中率は70%を超える)
敵を撃破するのではなく敵の進路を、退路を防ぐ為の爆撃に機銃の猛射。とはいえ当たればロイヤルのkansenに少なくないダメージを確実に与えていき、やがて優先攻撃目標とされていたピンク髪の戦艦に攻撃が直撃する。
「ガハッ!?……くっ……左舷の主砲がやられた……! 」
苦々しげにこちらとグラーフを睨みつけるロイヤル戦艦、kansenは艤装を身につければ超人的な力を発揮し、常人であれば確実に死を与える悪魔のサイレンの攻撃を持ってしても、少し服が破けた程でまだまだ戦闘の続行は可能なはずだ。とは言え、これで指揮艦だけではなくグラーフに致命打を与える唯一の可能性も狭まった。反撃で主砲を狙おうとするも同時にまた爆撃による妨害が入り、発射体勢を解いて攻撃を避ける事に集中する他ない。
「戦闘機を放つ!皆は私の周りを! 」
「させるか」
「やらせま……せん!! 」
敵空母が艦載機を放とうとしたタイミングでグラーフはメッサーシュミット3機の機銃によって妨害を図るも、眼鏡をかけたkansenが対空砲で全てを撃破、その隙に戦闘機が数機放たれてグラーフの艦載機に牙を剥く。
「ふん、やるな」
「皆の為にも、ただ黙ってやられる訳にはいかないのでな! 」
スツーカを確実に撃破しながら叫ぶ敵空母。とは言え多勢に無勢、通常時なら兎も角消耗した状態で既に艦載機が展開された現在ではチクチクと戦闘機による妨害を受けながらでは相手も追加の途切れ途切れでしか出来ずに各個撃破されていき、制空権はこちらが掌握した。
戦場ではヒッパーとシュペーによるセイレーン戦と、消耗したとは言え五隻のロイヤルのkansenを単艦で足止めすらグラーフと二つの戦場が同時に行われており、更に逃げようとするロイヤルのkansenの反応をグラーフに伝え、シュペーとヒッパーに指示を送るこちらの頭はもうパンク寸前だ。
自分は完全に指揮を行なっておらず彼女達にある程度好きに動いてもらってこの体たらく。
これら全ての指揮を同時に行う指揮官が世の中には何人もいるのかと、初出撃とは言え改めて自分の未熟さを実感するも、最早悔やむ余裕もないほどに頭をフル回転させて戦場を見守る。
それにしても、グラーフ・ツェッペリン……幹部であり機密のはずのグラーフの名前を相手が知っている?相手がこちらの性能を超える無線を持って傍受に成功していても皆は彼女を「グラーフ」とは何度も発言したが「ツェッペリン」とは一言も言っていない……つまり彼女の情報が敵に漏れているのか?
一瞬不穏な考えが脳裏によぎるも、今は目の前の戦場に集中する以外の事を考える事は不可能だ。既にシュペーとヒッパーによって大型艦の数は半数以下になっているが小型艦は多数健在。戦艦の主砲を半分潰した今ロイヤルへの爆撃を続行するか、爆撃機を全て二人の援護に回して機銃だけでグラーフに押し止めてもらうか。
シュペーとヒッパーが敵セイレーンを撃破してこちらに援護に回るのが先か、グラーフの艦載機による妨害が限界を迎えて相手に逃げられるのが先か、或いは……
長い1日になりそうだ……この戦いが終わったらヒッパーの言っていたマンジュウのケーキをやけ食いしてやる。
そう心に秘めつつ最終的に爆撃機を半数ヒッパーとシュペーの援護に回しながら、目的を果たす為に指揮艦は再び海を駆け巡るのであった。
用語解説
・高度な柔軟性を
アニメ銀河英雄伝説に於けるアンドリュー・フォーク准将のドクトリン。 余りに丸投……余りにもこの高度な戦法を繰り返してしまえば、優しいシュペーにすら不信感を与えて見捨てられ兼ねない為に、この戦闘が終われば指揮官も基地の運営の傍ら勉強を行う予定だそうな。
まさにゴールデンバウム王朝最高の名将、自由惑星同盟に最も被害を与えた漢と呼ばれたフォーク准将だからこそ許された教義なのだろう。
要するに行き当たりばったりという事である。
メタ的に言えばゲーム内に於いて戦闘をオートにしつつ、敵の砲弾や弾幕は手動操作で避けるといった所だろうか?
・ロイヤルのkansen
メタ的に言えば今回登場するロイヤルのkansen5名はダイススレにおいて完全にランダムに決められた面々であり、ヘタをするとこの面子に陣営代表の陛下や摂政のフッド、計画艦のネプチューンやモナークが参加しかねない可能性も存在していた
・既にシュペーとヒッパーによって大型艦の数は半数以下
何故ロイヤルが苦戦していた相手にヒッパーとシュペーがここまで無双しているのかと言えば鉄血の最新鋭艤装による効果もあるとはいえ一番の点はロイヤルの五人によって数がかなり減らされていた点も大きい。
仮に本来ロイヤルが撃破しなければ指揮官達は露払いとして時間稼ぐ役割が与えられていたが、図らずもロイヤルが露払い以上の奮戦をしたお陰でヒッパーとシュペーはある程度余裕を待って敵と交戦が可能であり、グラーフも時間を稼いで艦載機を多く発艦して全ロイヤルkansenの撃破ではなく足止めに徹しているおかげで役目を果たす事に成功しており、本来であればここまで活躍する事も不可能であった。
・ヴァイスクレー・ヘルブスト
指揮官の本名、名前の由来や他の設定はステータスの意味などは、また後日語るとしてダイススレのキャラクリエイトにおける初期ステータスをここに記載する(とはいえ本来で有るのなら全てフレーバーに過ぎないのだが……本来であれば)
指揮能力25
冷静さ76
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上層部からの好感度93
体力31
運10
そして、ダイスの目まぐるしい展開により指揮官は運が10では有るが悪運は90と呼ばれる事になる、今回に話に関しては言えば
運10、着任当日にアラートが鳴り響きまともに準備も行えずにいきなり戦場に。更にロイヤルまで戦場に介入して三つ巴の戦闘に
悪運90、???
悪運に関しては次回記述するとしよう。
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄