鉄血の旗の元に《完結》   作:kiakia

82 / 144
 今回のお話はいつもとは違い別のダイス作品の鉄血編のお話がモデル(つまりこのお話も某所におけるダイスによって作られました)となっており、またその作品をまとめ上げ、某所で掲載されていた二次創作『アズールレーン外伝 Red Axis : Fafner in the Iron-Blood』様の影響を受けつつ、作り上げられた三次創作となっております。ご了承下さいませ。



番外編 十八話 罪

 鉄血公国は同胞意識や仲間意識の高い国で有名ではあるが、近年の鉄血海軍は数年程までに行われた陣営代表であるビスマルクの改革によって国民の福利厚生に関しては共産主義国家である北方連合以上であると称される事もある。

 

 セイレーンの襲撃によって故郷を滅ぼされたものには手厚い支援が用意され、孤児や浮浪者は鉄血国内には今も存在するものの、前者は孤児院が国中に存在しており、後者は就職斡旋や軍による炊き出しなど弱者へのセーフティネットに関しては世界一の国と言えるだろう。

 

 その為、他のエウロパ大陸国家と比較してもかなり税金こそ高いものの、鉄血国民であれば飢える事はない。鉄血国民であれば例え家を失っても国が用意してくれると戦時下であっても国民は信じていた。

 

 

 国民の衣食住を補償する為に鉄血公国は文字通り身を切るレベルで財源に負担をかけており、その為鉄血公国の軍需大臣であり元銀行マンであるヒャルマル・シャハト大臣は毎日のように発狂寸前であると国民の多くは同情の目を向けている程である。

 

 公王家の優れた資産運用や胃薬を1ダース程飲みながら働くシャハト大臣の優秀な手腕もあって鉄血公国は常に軍拡と公共福祉の両立が可能ではあるが、仮に福祉さえ捨て去れば一説によれば現在の1.5倍以上の海軍力を保有し、ロイヤルネイビー相手に真正面から決戦を挑む事すら可能(実際には大言壮語でありロイヤルネイビーが植民地に戦力が分散しているという希望的観測ありきだが)とされていた。

 

 

 しかし、ビスマルクは国家防衛の為の予算を惜しむ事は決してないものの、軍拡よりも優先すべきは国民の生活であり、国民の最低限の生活の保障と社会福祉の充実は将来的な鉄血公国の繁栄に不可欠であると後援者であるバーデン宰相を説得し、決して国民が飢える事のない社会の実現に成功する。

 

 また、軍人のプライバシーの保護や第三者機関によるマスコミの検閲や統制に関しても徹底しており、ロイヤル王国などは『独裁主義によって報道の自由も存在しない野蛮な軍事国家』と非難するが、それでも実際に働く鉄血軍人からすれば真面目に働くものが報われ、能力のあるものが出世出来、プライバシーの自由が保障される最高の環境であると誇っているのだからこれに関しては国民意識の違いとしか言いようがないだろう。

 

 

 ビスマルクの改革によって餓死するものは鉄血からは消え去り、浮浪者は新たな職場を斡旋され、戦争を引き起こした大罪人としてアズールレーン各国、特にロイヤル王国では悪化羅刹の様な扱いを受けているが、鉄血国民の多くからは絶大な支持を受けていたのだ。

 

 カリスマ性や美貌だけではなく明日を、未来を。たった3年程で、それが当たり前の様に笑顔で迎えられる社会を実現させた彼女が、自然と国民の支持を得たのは当然と言えるだろう。

 

 

 しかし、国民は知らなかった。何故ビスマルクがここまで社会的弱者の救済を掲げていたのか。何故軍人である彼女がそこまで国民の生活を気にかけるのか。その理由を知るものは極一部しかおらず、その極一部の人間もビスマルクの過去について語る事は滅多になかった。

 

 

 

 

 これは、そんなビスマルクの過去の物語。

 

 

 

 

 

 善意の行動の結果、忠実な一人の少年の心を壊す事になった彼女の贖罪の物語。今でも彼女は悪夢を見る、あの愚かな選択をしてしまった最悪の一日の出来事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 

 1936年某日。

 

 

 目の下に隠し切れないクマを残しつつビスマルクはキール海軍本部に併設された軍病院の廊下を走っていた。歩みを進めるごとに激務による不眠と疲れが身体を蝕むが、構うものかと彼女は進んでいく。夕焼け色に染まった廊下を走るその姿を見た看護婦や看護師たちは驚きの声を上げつつも、尋常ではない陣営代表の様子を見て道を譲るのであった。

 

 

 先日行われた人類種の敵セイレーンとの海戦。それまでとは比べ物にならない規模のセイレーンによる大侵攻は、この鉄血海軍の総本山たるキール港を街ごと地獄の業火で焼き払いかねない程の物量であり、本来であればこの病院も崩壊し、有象無象の瓦礫の仲間入りを果たしていたはずだろう。

 

 セイレーンは人類種全ての敵である殺戮機械であり、陣営問わず多くの生命体の命を奪ってきた。しかし、キールはkansen達こそ重症を負ったものも存在するが戦死者はなく、民間人の死者も出ず、防衛には成功したと言えるだろう。ビスマルクが目の下にクマをつけているのも、その後始末が原因であり、仮にこの町が焼き払われていれば彼女はそれどころの話ではない地獄の様な日を送っていたはずだ。

 

 

 そう、鉄血は救われたのだ。全てはパトロールを行なっていた本部直属の遊撃艦隊である第二遊撃艦隊が早期にセイレーンの大軍団を発見した上で遅滞戦闘を行い、本部の部隊が出撃するまでの貴重な時間を稼いだからだ。もし、これがなければ今頃鉄血の街は火の海だっただろう。

 

 だがその代償は大きく、遅滞戦闘を行った四人のkansenは全員大破、中破判定を受けあと少し本隊の出撃が遅れていれば、全員海の底にその骸を晒していたであろう。彼女達が必死になって死を恐れずに殺戮機械の大艦隊を相手にたった四人のkansenが時間を稼いだ事で、本隊は間に合い、そして鉄血海軍の主力艦隊は少なくない打撃を受けたものの辛うじてセイレーンを退ける事に成功する。

 

 

 しかし、この勝利が鉄血にとって喜ばしい結果になるかと言われれば、それは違うと言わざるを得ないだろう。今回の勝利で得た物はあまりにも少なく、また失ったものも大きい。ビスマルクがとある病室のドアの前に立ち尽くすと、深い深呼吸の後、扉を開ける。

 

 

 部屋の中にはベッドの上で包帯まみれとなり、うめき声を今も漏らす幼い少年の姿が彼女の視界に入り、思わずビスマルクは絶句してしまう。しかし、少年はビスマルクの姿を見るなり、ハッと緊張した様子で慌てて敬礼を行おうとするも、包帯塗れの身体では上手く出来ずに苦悶の表情を浮かべる。

 

 

 

「……無理に起き上がらなくていいわ。そのまま横になっていて」

 

「ビスマルク様、申し訳ございません……!」

 

 

 

 少年は恥ずべき表情を浮かべて敬愛する上官に心からの謝罪の言葉を述べるが、何故彼が私に謝る必要が?とビスマルクは拳を握りしめながら自身の不甲斐なさを身を震わせる。

 

 少年はまるでミイラの様に包帯で全身を覆われているが、その左目は……永遠に光を失っており、眼球を無理やりくり抜いた影響なのか窪みだけが残り、眼窩の奥の闇だけを覗かせていた。

 

 

 

「この様な不埒な格好でお出迎えしてしまい、誠に申し訳ございません……!敬礼すら出来ず、この様な惨めな姿を貴女に見せる事になるだなんて……!」

 

 

 

 悔しさと自身への不甲斐なさで少年は唇を噛み締める。片目を失っても、全身包帯塗れとなって苦悶の声を上げていても敬愛するビスマルクの前では軍人として恥ずべき姿は見せたくなかったと苦悶する少年であるが、彼はまだ10歳という幼い年齢であり、その事実がビスマルクの胸に深く突き刺さる。

 

 

「……貴方は、貴方達の艦隊は良くやってくれたわ。貴方達が時間を稼いでくれたお陰でセイレーンの大艦隊を撃破する事に成功した。私は貴方を誇り高い軍人だと思う。だから、そんな風に自分を責めるのは止めなさい」

 

「ビスマルク様……」

 

 

 肩を震わせる少年は微塵も自身の心配をしていない事にビスマルクは嫌でも気がついてしまう。彼は最早出会った当初の子供らしさは完全に消え去り、何処までも模範的で、何処までも真面目で……そして、何処までも自身を軍の歯車である存在に変貌を遂げていたのだ。

 

 その事実が、彼女の心を深くえぐり取り、その心の傷口からは鮮血が溢れ出す。

 

 

(これが……こんな子供を私は……!)

 

 

 内心の感情の昂りを必死に抑え込む様にして彼女は手を強く握りしめる。そうしなければ叫びそうになってしまうから、そうしなければ目の前の少年に涙を見せてしまいそうになるから。心をナイフでズタズタにされながらも、せめて彼を不安にさせまいとビスマルクは震える声で言葉を紡ぐ。

 

 

「……今日はもう休みなさい。明日になったらまた来るわ。それと、私が此処に来た事は誰にも言わないようにね?」

 

「はい……かしこまりました」

 

 

 少年は素直にビスマルクの言葉に従い最後にもう一度帰ろうとするビスマルクに謝罪の言葉を口にすると、そのまま静かに目を閉じる。

 

 

 

 

「クソっ……何が、何が陣営代表なのよ……私は……!!」

 

 

 

 

 そして、ビスマルクは廊下の壁を殴りつける。血が滲む程に強く、何度も、何度も。痛みなど感じない、ただ怒りの感情のままに彼女は壁を打ち付ける。そうしないと耐えられなかったのだ。

 

 自分は、陣営代表という立場でありながら、一人の少年の心を完全に壊してしまった事を。あの日、自分が無理矢理にでも孤児院に向かわせていれば、彼は子供らしい表情を今も見せていた筈だ。しかし、キューブ適正があり、指揮官としての才覚があるからと自分は彼の志願書にサインをしてしまった。

 

 

 その結果、生み出されたのが自分の眼球を失っても上官に礼儀を尽くせない事を謝罪する軍人だ。

 

 

「ああ……ああぁ……!」

 

 

 声にならない悲鳴を上げる。どうして、こうなったのか。何故自分ではなく、彼だったのか。何故自分ではなく彼が光を失う事になったのだ?後悔が彼女の心を蝕んでいく。嗚咽混じりの今まで彼の異常性を気がつかないフリをしていた自分に殺意すら湧き、ただビスマルクは後悔という名の蛇が自身の心と身体を締め上げる感覚に身を震わせ続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激務の最中ビスマルクは僅かな時間を使って指揮官や、彼の元で戦うkansenやクルー達に当時の状況を聞き出してみれば、それはもう壮絶な物だと誰もが口を揃えて答えた。鉄血にとっては大禍を未然に防ぐことができた華々しい勝利であった、その裏では傷だらけとなりながらも戦い続けた狼達が自身の命を賭け金として決死の覚悟で食らいついていたのだ。

 

 

 kansen達の多くは指揮官程では無いが、生体艤装はボロボロで弾薬も底を突きかけていた。しかし、圧倒的な物量を誇る殺戮機械相手に、本体到着の最後の瞬間まで時間を稼ぐ事に成功をしたのは間違いなく指揮官の決死の覚悟故のものだろうと彼らは振り返る。

 

 

 

 

「通信越しから大きな衝撃とガラスの割れる音が聞こえましたが、その瞬間の凍った空気は今も忘れられません……」

 

 

 

 グナイゼナウは沈痛な表情でビスマルクに語る。敵セイレーンの過剰なまでの砲撃は当時、現在程高いシールド性能を持っていない指揮艦に何度も直撃し、やがてシールドは破壊され、爆音が鳴り響いた途端、一瞬にして指揮艦の装甲は砕け散り司令室は酷い状況に陥ったという。

 

 

「咄嗟に指揮官はクルーの皆を守ろうとしたのでしょう。両手を広げて自身が盾になったおかげで割れたガラスを全てその身に受けてしまい……通信越しからも分かりましたよ。クルーと悲鳴と全身血だらけ、ガラス片で傷だらけの指揮官の姿を……!」

 

 

 

 思い出すだけでも辛かったのだろう。グナイゼナウの瞳からはポロリと涙が零れ落ち、それを慌てて拭う。一瞬の通信の空白の後に訪れた状況はまさに地獄としか言いようがなかった。

 

 

 クルーの殆どは軽症で済んだ代わりに、太ももや腕に至るまで全身がガラス片で切り裂かれており、更に運悪く頭上から降り注いだガラスの破片が眼帯ごと左目に突き刺さってしまい、最早艦隊の代表である彼は戦える様な状況ではなかった。それでも、指揮官は服の袖に噛みつきながら大きなガラス片を素手で抜き出し、最後に左の眼球ごとガラス片を抜き取ると、叫ぶ様に指揮を継続したのだ。

 

 

 

 

───うるさい!!怪我くらいで寝ていられるか!!

 

 

 

───我々が撤退すれば奴らはキールの街を焼き払うだろう。何としてでも時間を稼ぐ必要がある!そんな事は子供にだってわかる事だろう!

 

 

 

───シャルン・ホルストぉ!!!アイツらを殺せぇ……!!

 

 

 

 

 血だらけで左の眼球を失いながらも指揮を継続するその姿正は修羅の如く。10歳の少年とは思えない精神力と胆力、そして有無を言わせない威圧感により彼らは本体が終結するまでの残り12分もの間戦い続けた。クルー達は後に鬼気迫った小柄な指揮官に恐怖すら感じたと口にしており、仮に重桜出身者が彼の姿を例えるのであれば護国の鬼と例えたのは確実だろう。

 

 

 永遠よりも長く感じる12分間、指揮官は正気を失ってもおかしく無い程の激痛を壁に寄りかかりながら耐えて戦い続け、最後は本隊に『これより撤退を開始する』と、か細い声で通信を終えた後に全ての力を使い果たしたかの様に気絶してしまう。

 

 

 その後、集中治療室で彼は処置を受け、幸い山場は乗りこえ、全身包帯まみれになりながらも命を取り止める事に成功したが……自身が抉り取った左目は二度と戻らなかったのだ。

 

 

「左目だけで済んで幸いでした」

 

 

 ビスマルクの想いなど知らない様子の指揮官は自身の失った左目のあった場所に軽く手を添えると、彼女に向かって言い放つ。

 

 

「弱視で元々あってないような左目ですので、失っても惜しくはありません。クルーやkansenの皆は無事と聞きましたが一刻も早く軍務に復帰できるように致します。どうかご心配なく」

 

 

 そう言って彼はそのまま執務室から立ち去ろうとする。その背を見てビスマルクは思わず声をかけてしまう。

 

 

 

「貴方がそこまでして戦う理由って何かしら? 」

 

 

 

 その問いに対して少年は少し考えるそぶりを見せると、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

「貴女の為です。あの日、私は貴女に命を救われました。だからこそ私の命は自身を救ってくれた鉄血海軍、そしてビスマルク様に捧げます。この身が朽ち果てるまで……いや、魂だけになってもお仕えさせていただきたいと思います」

 

 

 その言葉に嘘偽りは無いのだろう。真っ直ぐに自分を見つめてくる視線を見れば純粋さすら感じられるその瞳にビスマルクは直視出来なくなってしまう。

 

 

「でなければ私に存在価値などありません。貴女の役に立てなければ、私には生きる価値や意味など無いのですから」

 

「そんな事……!」

 

 

 

 普段の冷静さをかなぐり捨てて否定の言葉を口にしようとするビスマルクであるが、少年は何処までも純粋な瞳で、心からの言葉を述べる。その姿は狂っているとしか言いようがなく、ビスマルクは悲しみと共に恐怖すら感じてしまう。

 

 

「貴女はあの日、ボロ布に包まって命が尽きようとしていた私を救ってくれました。だからこそ貴女に私は忠誠を誓いましょう、例え貴女が私を拒絶しても構わない。私の命はあの日、貴女に救われた瞬間から鉄血海軍と貴女の為に尽くそうと決めたのですから。それが私の戦う理由であり、生きる意味であり、存在価値であり……誰でも無い自身が選択した人生なのです」

 

 盲目的かつ、狂信的なまでの忠誠心を向ける少年に、ビスマルクは今でもどう答えればよかったのだろうか?と後悔に苛まれる。

 

 

 貴方の命は貴方のものだと言っても彼はビスマルクに忠誠を尽くし続けるだろう。

 

 もっと大切なものを見つけなさいと口にしても、故郷を失い家族に見捨てられた少年に、他に守りたいと思えるものは存在しない。

 

 

 彼を慰める為の言葉なんて最早存在しないのだ。彼の行動原理は全て鉄血とビスマルクへの忠誠と献身である。そんな彼に他の選択肢を与える事は最早不可能に近い。ならばせめて、彼が少しでも生きやすい環境を作ってやるのが自身の役目なのだろうと彼女は考え始めていた。

 

 

(それでも……それでも、私は)

 

 

 目の前で自分を崇拝するかのように見つめる小さな指揮官に報いる為には、一体何をすればいいのかとビスマルクは思考を巡らせる。

 

 

「……貴方の、忠誠は受け取ったわ。だからこそ、せめて貴方の忠誠に報いる為に退院後、改めて勲章を授与する機会を用意させてもらうとしましょう。貴方はあの戦いによって大きな貢献をしてくれた、そう『私の役に立てた』。ならばその功績を軍として讃える必要があるのだから」

 

 

 勲章の授与。それが目の前の少年に報いる為にビスマルクが導き出した答えの一つだ。彼の心を変えることが不可能であれば、せめて軍人としての栄誉ある立場を与えてやりたいと思ったのだ。

 

 その言葉に少年は驚いた表情を浮かべると、直ぐに嬉しそうな笑みを顔に浮かべる。まるで神に認められた神官のように喜ぶ姿は狂気じみたものであり、その笑顔を見たビスマルクは内心冷や汗を流す。

 

 

「ありがとうございます。ビスマルク様の期待に応えるべく、これからも精進いたします。これからも、必ずや貴女に勝利を捧げて見せますから」

 

 

 

 努力が報われた。ビスマルク様に役に立ったと伝えられた。その言葉の価値は少年にとっては何物にも代え難いもので、この日を境に彼はより一層、彼女に対する敬愛を深めていき、ビスマルクは授与式の場をセッティングしながらも、一人の少年の人生を狂わせてしまった罪悪感と悲しみで胸が張り裂けそうになる。

 

 

 それでも、孤児であり後ろ盾のない指揮官にとって勲章というものは尊敬を集めるだけでなく、目に見える功績だからこそきっと彼の未来の選択肢を増やしてくれるはず。今はまだ軍の歯車として生きる事を望む指揮官であるが、この勲章が将来、彼の未来を明るくする事を望みビスマルクは用意を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──しかし彼女は……その選択が、あんな悲劇を呼ぶ事になろうとはこの時は、誰も知るよしはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 式典当日、海軍の施設ではなくキール市街の広場を貸し切って行われる事になった授与式は軍人だけでなく、各種マスコミや一般市民まで詰めかけており、集まった観衆達は主役の登場を待ち望んでいた。

 

 

 シャルンホルストやゲオルク・ティーレの様に指揮官の元で戦うkansen達は指揮官の傷も回復していないという事もあり、万が一の備えてもう少し小規模な授与式にした方が良いのではないか?と苦言していたが、今回の授与式は内外に鉄血の力を知らしめる為に未曾有の大禍を防いだ若き指揮官の成果を誇示し、軍内の士気高揚の為という側面もあり、こうして広場で行われる事になったのだ。

 

 

 松葉杖を片手に軍服姿の指揮官は、多くの視線が自身に向けられる事に慣れておらず、悪意ではなく善意の視線、嫌悪や敵意ではなく尊敬や敬意の籠った多くの人々の視線ではあるが、何処か居心地の悪そうな表情で俯いていた。

 

 

「大丈夫ですか?指揮官?」

 

 

 

 彼の横に座る眼鏡を掛けた知的な美女であるグナイゼナウは、心配そうな表情で気をかけるが、指揮官は問題ないと短く呟くと、黙って受勲者の席に座って待つ。秘書として指揮官を支えるグナイゼナウは少し困った表情を浮かべながらも、それ以上は何も言わずに彼と同じく大人しく待機していた。

 

 暫くすると壇上に進行役を務める海軍士官が現れ、まずは受勲者である指揮官の紹介を行う。事前に用意されていた紙を見ながら読み上げられる紹介を聞きながら、指揮官は小さくため息をつく。するとグナイゼナウは彼の小さな手の上に自身の手を重ねてみせる。

 

 

「大丈夫です。貴方ならきっと上手くいきますよ」

 

「……すまないなグナイゼナウ。出来る限り事前に調べたが、私はこの様な式に参加した事はない。ビスマルク様の企画して下さった式典を台無しにしない為、何かあれば私のフォローをして欲しい」

 

 

 

 その言葉にグナイゼナウは少しだけ驚きつつも勿論ですと頷いた。出会った当初は教科書から現れた模範的な軍人としか言いようがなかった堅物の少年が初めて戦闘以外の場面で自分に頼ってくれた。その事実にグナイゼナウは喜びつつ、決して目の前の少年が人の心がない人形ではない事に安心する。

 

 そんな二人のやり取りを横目に、壇上に立つ進行役はビスマルクに役目を譲り、指揮官を称えつつ彼を壇上に招き入れる。ぎこちなく立ち上がりながら壇上に上がる指揮官は緊張した面持ちで軍服ではなくドレスの様な正装に身を包んだビスマルクに向き合うと万雷の拍手と共にビスマルクは指揮官に囁く。

 

 

 

「貴方があの戦いで時間を稼いでくれなければ、きっとこの街は瓦礫の山と化していたはずよ。あの時の孤児がここまで立派に成長してくれた……貴方は私の誇りよ、アードラー・プロイセン。これからも、鉄血海軍に尽くしなさい」

 

 

 

 その言葉を聞いた指揮官の顔に一瞬、喜悦の表情が浮かぶが直ぐに元の表情に戻ると彼は胸に手を当てて頭を下げる。

 

 

「はい。貴女に忠誠を誓います。ビスマルク様の為に、必ずや勝利を捧げて見せましょう」

 

「よろしい。……さあ、この勲章を受け取りなさい。あなたと、あなたを慕う皆のために。プロイセン指揮官。我が同胞の為に鉄血の力とならん事を、その言葉を忘れずにこれからも頑張りなさい」

 

 

 十字架を象った黒い勲章、二級十字章を指揮官の胸元にビスマルクは付けると拍手は尽きる事なく鳴り響く。指揮官は人生の絶頂だと感じていた。敬愛するビスマルクに私の誇りと褒められ、この拍手全てが自身に向けられている。あの時親に捨てられた少年はもういない、自分は鉄血軍人として認められたのだ。

 

 敬礼と共に指揮官が立ち去った後も式典はつつがなく進行していく。セイレーン大戦で死亡した英霊達に黙祷を捧げ、これからのレッドアクシズの未来の展望を示しつつ、最後は軍楽隊の演奏が響き渡る。

 

 こうして夕刻に式典は終了し、市民の多くが家路に着く中指揮官達は立食会に参加する為に本部に向かおうとするが……もしも、あと数十分。指揮官達が本部に早く向かっていれば悲劇は起こらなかった筈だろう。

 

 

 しかし、時に運命の女神はサディストな一面を見せる事がある。まるでサイコロの目が全て悪い方向に向かうかの様に、あるいは最初から最後まで全てが悪い方向に転がるかの様に、或いは神が悪意をもって運命を操作したかの様に、指揮官達の悲劇は始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 参列者が順に退場していくなか、見物者と貴賓席を区切る柵のあたりで騒動が起きているようだった。

 

 

「……―』! 離して! あの子に会わせて!……」

 

 

 どうやら見物客の一人が興奮した様子で乱入しようとしているらしい。警備の軍人達は取り押さえようとするが、尋常ではない様子で暴れる老婆に困り果てた様子であり、指揮官は興味本位で近づいてしまったのだ。警備に参加していた一員の中には指揮官の部下であるレーベもいる為に事情を聞こうとするのはある意味当然と言えるだろう。

 

 

「指揮官くるんじゃねぇ!!下がれ!!」

 

 

 しかし、レーベは殺気立った様子で叫び指揮官を止めようとする。彼女は指揮官の孤児である過去を知っていた。だからこそ老婆と指揮官が顔を合わせてしまえば取り返しのつかない事態を招くと瞬時に察したが……全てが遅かった。

 

 

 人の垣根をこじ開けるこのように進む老婆は憲兵達ほ手を振り解きながら指揮官に視線を向ける。指揮官はその姿を見た瞬間……絶句してしまった。

 

 

 

 

 

 何故。

 

 

 

 どうして。

 

 

 

 どうして、貴女が。

 

 

 

「お母……さん……?」

 

 

 

 たった三年という月日はあまりにも長かった。記憶よりもやつれており、着ている衣服もみすぼらしいもので目の前の母親がどの様な生活を送っているのかが容易に想像できた。

 

 

 だが、目の前の女性は確かに自分の母親なのだと指揮官は確信していた。記憶よりも老けてはいるが、会場の警備を掻い潜り現れた実母は指揮官に向かって必死に求めるかの様に声をかける。

 

 

 

「ねえ、あなた『──』よね、そうでしょ!? ねえ!」

 

 

 もう何年もの間、呼ばれていなかった本当の名前。軍人として生きる事を決意してから捨て去ったその名を叫ぶ実母を見て指揮官の身体は震え出す。様々な感情が溢れ出し、言葉を紡ぐ事すら出来ずただ立ち尽くし、震え、眼前の光景を現実として受け入れる事が出来なかったのだ。

 

 

「『──』! 助けて頂戴! ねぇ──〝家族〟でしょ?」

 

「いい加減にしろよ!」

 

 

 場の空気を一瞬で凍りつかせる程に激昂したレーベの怒号が響き渡る。周囲の人物は時が止まったかの様に黙り込み、産まれて初めて本気で激怒する彼女に視線を向けた。怒気を孕み、今すぐ目の前の老婆を殺しかねない程の剣幕に周囲は息を飲む。

 

 

「アンタは!!事情がどうあれ、指揮官を見捨てたんだ!!そんなアンタが今更のこのこ現れて家族面してんじゃねぇ……!」

 

 

 老婆は小学生程に小柄なレーベの怒りの形相に何も言えず、うつむいたまま「『──』、『──』……」と呟いている。それを聞いてレーベは吐き捨てるように言う。

 

 

「今のこいつは別の名前があんだよ……なぁ、頼むから消えてくれ!もう二度と『アンタが捨てた』子供の前に姿を現さないでくれよ……っ!!」

 

 

 その言葉に老婆は涙を浮かべて俯くと抵抗する素振りをみせず、意気消沈した様子で憲兵隊に連れられていくが、指揮官は放心した様子でその姿を見つめていたが、やがて、胸元に手をやり、激しい呼吸。繰り返す、死にかけの魚が陸に打ち上げられたかの様に何度も、何度も激しい息をしながら俯く指揮官の様子に気がついたグナイゼナウの悲鳴が響く。

 

 

 

「指揮官……!?」

 

 

「はぁ……はぁ…がぁ!…おえ、おぇぇ…!!」

 

 

 

 

 吐瀉物と共に胃の内容物を吐き出しながら指揮官は倒れ込む。それを見かねたグナイゼナウはすぐに駆け寄り、精神的なショックが余りにも強すぎた指揮官は吐瀉物を周囲に吐き散らし、過呼吸で喘ぎながらやがてプツンと糸が切れた人形の様に倒れ込む。

 

 

 意識を失う寸前、指揮官の脳裏には情報と感情の奔流によって焼き付けられた記憶がフラッシュバックしていく。それはかつての指揮官が体験した辛い出来事の記憶。それはかつての自分が体験した悲しい思い出。

 

 

 

 

 自分は捨てられた。目の前の母親は自分を捨てた。何故、 どうして? 分からない何故、今現れた?分からない何も言えなかった、出来なかった、近寄れなかった、声をかけられなかったどうすれば良かったんだビスマルク様から頂いた勲章がゲロ塗れだ申し訳ございませんビスマルク様折角の式典の最後にこんな醜態を何故かお母さんはこんな所になぜレーベはあんなに激怒したんだ何故このタイミングで誰が悪い誰も悪くないだれのせいで何故セイレーンはわからない分からナイ分かラナイボクハ……ワタシハ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……!!」

 

 

 深夜、悪夢によって目が覚めたビスマルクはタンクトップ姿で片手を頭にやりながら、あの最悪の一日を思い出してしまう。もう何度も、あの日の出来事は悪夢として見ているが、その度に彼女はこうしてうなされながら目を覚ますのだ。

 

 舌打ちをしながら水を喉元に流し込む。そして忘れる事も出来ない罪悪感は再び蛇の様に彼女の心を蝕み始める。ベッドサイドに置かれた時計を見る。時刻は午前3時、普段の彼女であればまだ寝ている時間だが、眠気は全く無い。それどころか妙に頭が冴えて眠れる気がしなかった。

 

 

 ビスマルクはあの日、式典を終えた直後に指揮官が倒れたと聞いて直ぐに駆けつけたのだが、病室でグナイゼナウ達に囲まれた指揮官はまるで人形の様に虚ろな瞳をしていた。その時の事を思い出す度にビスマルクは吐き気を覚える。悲しみすらも感じなくなった虚無の表情を浮かべた指揮官は、最早心が壊れた幽鬼の様に今にも壊れそうな姿であった。

 

 

 

 お前のせいだと怒りに満ちた目で激昂したシャルン・ホルストに首元を掴まれた。お前が国益を重視し大々的に広場で授与式なんて行ったからこんな悲劇が起きたんだと震えるシャルン・ホルストにビスマルクは何も言えなかった。

 

 

 グナイゼナウはやめなさい!!と姉を引き剥がし、こんな事態誰も予想出来るはずがなかった。ビスマルクが本気で悪意を持って指揮官を蔑めようとしたと姉さんは思っているんですか!?と肩を掴み、シャルン・ホルストが項垂れる中ビスマルクは何も言えなかった。

 

 

 レーベは俺のせいだと部屋の隅で泣きじゃくりながら謝り続けていた。あの時指揮官の目の前であんな言葉をかけるべきじゃなかった、俺が指揮官をこんな風にしたんだと膝を抱きしめて泣くレーベを見てビスマルクは何も言えなかった。

 

 

 ティーレはただ無言で虚な瞳の指揮官の手を握りしめていた。いつもは無表情なティーレであるが、彼女の瞳には深い悲しみで彩られている中、ビスマルクは何も言えなかった。

 

 

 指揮官は何も言わなかった。親に捨てられたショックから立ち直り、その弱った心を鉄血軍人としての自負とビスマルクへの忠誠心で再構築していた彼の心は人生の絶頂と共に迎えた絶望によって修復不可能な程に粉微塵に砕けさり、ビスマルクは何も言えなかった。

 

 

 ビスマルクは確かに紛れもない善意によって指揮官に勲章を授与しようとしたが、その裏では国益とプロパガンダを全く考えなかった訳ではない。その事実が今でもビスマルクを苦しめる。同時に心が壊れた彼を見て、彼女は理解する。自身の選択の結果目の前の指揮官のような人間を自分は何人も生み出す羽目になったのだと。

 

 

 もしも、ビスマルクがレッドアクシズを結成しなければ、アズールレーンに所属するロイヤルネイビーの援軍により指揮官の故郷が焼き払われる事もなかったのかもしれない。

 

 もしも、ビスマルクがレッドアクシズを結成した結果アズールレーン各国より経済制裁を受けなければ、指揮官の母親は彼を捨てる事もなかったのかも知れない。

 

 たら、ればの想定ならいくらでもできる。逆のパターンによってビスマルクが動かなければセイレーンの忠告通り鉄血はロイヤルによって蹂躙される未来もあり得ただろう。しかし、そんな想定は何の意味も持たない。どれだけ後悔しても指揮官の心の傷は癒える事はなく、そして国内では指揮官以上に悲劇的な人生を歩んでいる、レッドアクシズの結成によって間接的被害を受けた社会的弱者がいくらでも居るのだから。

 

 

 ビスマルクは指揮官が倒れてから、彼が目覚めた時に何を言えば良いのかを考えた。謝罪の言葉? いや違う、それは指揮官にとって何の価値も無い言葉だ。ならば彼はどんな言葉を欲しがる? ビスマルクは考えた。考えて、考えて、答えはでなかった。だからこそビスマルクは決断したのだ。

 

 

 

 

 

 

 言葉ではなく行動で示そうと。

 

 

 

 

 

 

 もう二度と、指揮官の様な存在が生まれない社会を作ろうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は自身の生命活動全てをこの3年間、アズールレーンやロイヤルへの敵対行動ではなく、ただひたすら国内改革を必死に主導していたのだ。飢える人がいるのならパンを与えよう。住む場所が無いのであれば提供しよう。仕事が無いのであれば公共事業で雇用を生み出そう。生きる意味がないと言う人がいれば、その人に新しい目的を与えるためにあらゆる手段を用いようと。

 

 マスコミの統制や軍内部の信賞必罰制度の強化、プライバシーの保護の徹底や待遇面の改善などその諸改革には多くの苦労と光と影があった。それでも、もう二度と、彼の様な不幸な人生を歩む者がない様に不眠不休で取り組み、皮肉にもそれはビスマルクという個人の絶大な支持にも繋がったのだ。

 

 鉄血の人々は言うだろう。ビスマルクはこの国を豊かにした最高のリーダーだと。しかし、彼女は納得出来なかった。アードラー・プロイセンはいわば彼女の罪の象徴であると同時に、どんな理由であれ、鉄血を救う為にレッドアクシズを作り上げ、世界を混乱させた自身の罪を自覚させたのだ。

 

 

 

 自分は酔っていた、祖国を救う為の悲劇のヒロインになろうと無意識にその境遇に興奮していたのだ。しかし、その結果生まれたのがアードラー・プロイセンという全てを失った少年であり、彼の後ろにはビスマルクのせいで不幸になった人々の姿を何人もビスマルクは幻視してしまう。

 

 もう止まれないのだ。ビスマルクという女性は多くの人間を間接的に不幸にしてしまった。その償いをしなければならない。でなければ彼女には生きていく資格は無いと彼女はもがき続ける。

 

 彼女は誓った。例えこの身が朽ち果てるまで鉄血に尽くそうと。自分は幸せを願ってはいけない。自分が願うものは祖国の安寧と鉄血に生きる人々の幸せのみ。バーデン宰相は自身の幸せを考えろと彼女を指摘したが、最早ビスマルクは自身が幸福になる事は許されない、許されるはずもないと断言しているのだ。

 

 

 

 

 

 艦隊メンバーとの慰めもあって、復帰した指揮官は今もビスマルクに絶対服従を誓い忠誠を誓っている。彼は恨まなかった、精神崩壊して戦線復帰出来なかった数ヶ月の日々を土下座で詫び、指揮官を続けさせて欲しいと口にする。恨まなかった。怒らなかった。蔑まなかった。彼のビスマルクへの忠誠は決して揺らぐ事はない。

 

 

 今の彼はグナイゼナウ達とケッコンする事で家族の様な関係を作り上げる事に成功したが、それでも時折トラウマによって突然震え出す事もあり、決してその心は癒されてはいない。

 

 何の罪のない少年の人生を狂わせた。この国は罪のない少年を痛めつけた。そんな彼にいまさら手を差し伸べて我々を盲信しろなんて都合のいいことは言えないというのに、彼は心の傷を抱えつつもビスマルクを信じ続ける。それがビスマルクの罪悪感を刺激してしまい、彼女の無茶な自身を検体とした人体実験や激務に繋がるのであった。

 

 

 セイレーンはかつて彼女はこの戦争で死ぬ可能性が高いと言っていたが、最早ビスマルクは自身の命になんら執着をしていなかった。ある意味ではビスマルクとヘルブスト指揮官は似たもの同士と言えるだろう。先天的に自身の命に執着を持っていない彼とは違い、後天的なビスマルクは罪悪感と義務感によって自身の命を犠牲にしてでも、この国の全てを救うつもりなのだから。

 

 

 我が同胞の為に鉄血の力とならん事を。ヤルタ会談まであと数週間。だが、彼女が生み出した戦火の炎は未だに爛々と彼女の罪と共に燃え続けているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ビスマルクは今もプロイセン指揮官の人生を狂わせた事を後悔しており、そして彼を向き合う事でこの戦争を始めた結果どれ程多くの人々が不幸になったのか?を自覚してしまい、それが本編の鉄血海軍の充実振りや同胞意識の高さ、そして自身をモルモットとしか見えていないような彼女の無茶な実験へと繋がるのでした。この前日談ともいえるエピソードにはもう少しだけ続きがあるのですが、それはまた後に語らせて頂きましょう。



 少なくとも今は指揮官は心に深い傷は残ってはいますが、新たな『家族』と共に少しだけ淫らであるものの、幸せに暮らしていますし、ビスマルクへの忠誠に変わりはありません。しかし、ビスマルクが自身を許す事は決してないでしょう。最低でも彼女が起こしたこの戦争を終わらせるまでは。

 こうして第五部 ヴィシア編のお話は終了。次回以降は最終章となる『英雄』編が開始します。ヤルタ会談やロイヤルとの交渉だけではなく、指揮官を取り巻く人間ドラマ。少しずつ物語は収束に向かう中、果たして国際情勢はどう動くのか。そして指揮官の悪運の行方は……


 コメント、評価、感想をお待ちしております。

指揮官の後世の評価はどうなる?

  • 戦争を終わらせた立役者
  • サディアを救った救国の英雄
  • ロイヤル最大の敵
  • 女の子に手を出しまくりの色を好む英雄
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。