「それでは……お前は何も話せない、情報を吐くつもりは微塵もないと」
「はい。祖国と陛下を裏切る事は私には出来ませんから」
「元から期待はしていないのだから別にいい……それに、お前が情報を『知らない』のではなく、『話すことが出来ない』と知れただけでこちらの収穫だ」
塵一つない清潔感のある個室。ベッドにシャワー、クローゼットにトイレなど人間が生活するのに不自由を感じさせないこの部屋で我は椅子に座りつつも目の前の部屋の主である捕虜、軽巡キュラソーに話しかける。
やはりと思っていたがロイヤル所属のkansenの忠誠心は本物だ。二週間程前に行われた海戦にてこちらの降伏勧告を受諾して捕虜になった五隻のkansen達。その中の一人が目の前のメイド服に身を包んだ彼女なのだが、三十分ほど会話をしてもロイヤルの機密についての情報は一切漏らさない。
とはいえキュラソーとは会話が成立しただけでマシなのだろう。真っ先に尋問を行った戦艦デューク・オブ・ヨークは我が部屋に入るや否や完全黙秘を貫いたのだから。
尋問の成果は芳しくない、唯一の成果である漁船での潜入も、中立国ユトランドとの共同調査の結果、海戦当日カテガット海峡とバルト海の領海付近で不可解な漁船が数隻存在していたと判明したが、こちらが調査しようとしたときには姿も形もない。
恐らく証拠隠滅の為に既に沈んでいるのだろう、結果的に元から親鉄血に近いユトランド政府は我らレッドアクシズ寄りに近づいたものの、決定的なロイヤルが中立国の海域を無断で突破したとされる証拠を発見することは出来なかった。
「本当に申し訳ございませんグラーフ・ツェッペリン様。捕虜としてここまで親切な待遇を受け、協力出来ないのは私も心苦しいのですが……」
「我らはハーグ条約に則って捕虜を適切に扱うのみ。感謝をするならあの海戦で全ての責任を背負ってロイヤルネイビーである事を明かしたイーグルと……ハーグ条約を遵守しろと命令した我らの指揮官にすれば良い」
キュラソーは居心地の悪そうに椅子から立ち上がり深々と頭を下げて謝罪するも、謝罪で何かが変わる訳ではない。
一瞬『無断でこちらの領海に潜入し、停戦勧告を無視してこちらに砲撃を加えたお前たちロイヤルとは違い』と話しかけたが、敢えて捕虜をネチネチと挑発する趣味など我にはない。
我にその趣味は無いとはいえ捕虜から情報を得る手段は多岐に渡る。それこそハーグ条約では捕虜の扱いに関して様々な取り決めが成されたものの、kansenが人ではないと言い切れば守る必要も無いのだから『苦痛を伴う下衆同然の所業によって』情報を抜き取る事も可能ではある。
尤も仮に我らの指揮官に『そう言う趣味』があるのなら、我は指揮権を剥奪した上で自分の目が節穴同然であった事に嘆いていただろうが、少なくても彼が一般的に善人とされる性格であるべき事が改めて理解出来て幸いと言えよう。
捕虜が自らの境遇に感謝するとまで言い出すレベルの待遇に関しては、やり過ぎではないか?と思わなくも無いが。
「さて……尋問はこれで終了だ。次の尋問は三日後の正午に行う。最後に自身の待遇について何か要望などはあるか?」
「でしたら……鉄血の新聞の差し入れ、及びラジオやテレビをこの部屋に設置して頂きたいという要望は流石に厳しいでしょうね」
「当たり前だ」
流石に少し呆れつつキュラソーに見るも、鼻から微塵も期待していなかったのだろう。申し訳ございませんと謝罪をするがショックを受けている様子はない。
捕虜に国内だけではなく国外、特にロイヤルの情報を伝えることは不可能だ。仮にロイヤルの戦況が有利となり反抗される危険性も、ロイヤルが絶望的な戦況となって自暴自棄な行動を取られてしまう恐れもあるのだから。
「そうですか……それではもしロイヤル本国との交渉の際に、捕虜の情報を向こうに伝える事が出来るのであれば、妹に私は無事で心配しないで下さいと一言伝えて頂けませんか?」
「……難しいが上には伝えておこう。とはいえそちらからすれば、世界に混沌と破滅を引き起こす悪の鉄血公国の発言を真に受けるのだろうか?仮にお前の妹が捕虜になり、鉄血からそんな情報が伝えられて素直に鵜呑みに出来るのだろうか?」
「……脅された、もしくは偽造であると不安になるでしょうね」
「先に言っておくが手紙の類いも暗号の可能性もあって不可能。とは言えロイヤルにお前達の写真は既に送っているのだから生存している事は既に伝わっているはずだ」
「少しだけ安心しました。とはいえ鉄血の方々に私達は好待遇されているというのに、妹や他のロイヤルメイドは信じずに鉄血公国を非難すると思いますし……本当に、本当に重ね重ねお詫び申し上げます」
ため息をつきながらキュラソーは片手を目に当てつつ天井を見上げる。やはりロイヤル国内での鉄血の扱いはその様なものなのかと新たに情報を会得したのは収穫ではあるが、仮にシュペー辺りがロイヤルの捕虜になり
『こっちは元気にしてるから安心してね。ロイヤルは捕虜には優しくしてくれて不自由もなく過ごせているから、心配しなくても良いから』
なんて姉のドイッチュラントに伝えても、間違いなく彼女は信じずにシュペーが脅されてる!虐められているわ!!と半狂乱に陥るだろう。どれだけ誠実に対応して証拠を用意しようが、戦争中の敵国の扱いなんて何処も同じなのだから。
「……メイドが世話を、それも交戦中の鉄血公国の皆様のお世話になるだなんて皮肉ですね」
「我も戦場以外でロイヤルとまともに会話をする事になるとは思わなかったがな」
我がこの世界に生を受けたのは開戦直後であり、鉄血がアズールレーンに所属してロイヤルと共にセイレーンと戦っていた時代に関しては知識以外は存在しない。
だからこそ今まで我にとってロイヤルはセイレーンと同じく排除すべき敵でしかなく、こうしてロイヤルのkansenと話すなんて過去の我にとっては想像も出来なかった。
「……お互い平和を求めてるのにどうしてセイレーンではなく国家同士、陣営同士、kansen同士で殺し合ってるんでしょうね、私達」
「平和を求める気持ちは同じなのだろう。しかし、我らとお前達はイデオロギーや思想もそれぞれ違う。道を違えたのだ、アズールレーンとレッドアクシズ、そして鉄血とロイヤルは」
とはいえ平和を求めつつも、その平和な時代をなんであるか知る事もない兵器である我が、そんな事口走るなんて説得力もカケラもない皮肉以外の何者でもない事なのだが。
人の形をした兵器である我らkansenは生まれた頃より情緒や身体が成熟した段階で生を受けるが、人間と同じく換算するのであればビスマルクは勿論のこと、我はシュペーやヒッパーどころか幼い駆逐艦より年下の存在。故に我は知らないのだ。
鉄血とロイヤルが手に取り合い協力していた時代も。
鉄血がレッドアクシズの結成を宣言しアズールレーンに宣戦布告を行った瞬間も。
陣営代表であるビスマルクが何を思って、何を見て宣戦布告を行ったのかと言う事実も。
何よりも産まれた頃より戦争が行われていた我にとって、平和で戦争のない世界は夢幻の夢や、物語の上のものでしかないのだから。
二週間ほど前に鉄血領海にて行われたバルト海海戦と後に呼称される事になった海戦の後、我らキール第三基地は五隻のロイヤルの捕虜を引き取る事になった
「……話はわかったけれどもとりあえず、の処置としてそちらで捕縛しておいて貰えないかしら?少ししたらこっちの預かりになるとは思うから」
ビスマルク曰く現在本部はロイヤルへの対応のお陰で人員を割く余裕もなく、他の基地も平時ならまだしもセイレーンへの対応に追われつつ、二四時間体制で捕虜を監視する事は困難。
そこで労働力としてマンジュウが多数存在する試験的な基地である、このキール第三基地に白羽の矢がたったのだ。自分達で五人も捕虜にしたのだから、自分達で責任を持って世話をしろという徹夜で寝不足気味らしいビスマルクの意思も少し感じられるが……
未だに捕虜が情報を吐かない以上、何故彼らが機密であり宣戦布告の後に誕生した我のフルネームを知っていたのかは不明。つまり本部にもスパイが入り込んでいる可能性がある以上、本部に捕虜を抑留しない事によるロイヤルへのスパイ活動への妨害も兼ねていた。
そして捕虜の待遇は実質的に我と指揮官に一任される事になったのだが……その待遇は捕虜とは思えず、むしろゲストと変わらない待遇となっている。
独房ではなく我が使用している部屋と同じく設備の整った清潔な部屋。好みに合わせて注文可能な食事に、娯楽の本や紅茶や菓子類といった嗜好品の数々も自由に支給され。
労働の必要もなく申請さえすれば基地の庭のジョギングや他の捕虜と会話も可能と、捕虜どころか、一般兵士以上の待遇である事は間違いなく、そこいらのホテルと比べても全く大差がない程の高待遇となっている。
とはいえ労働力として働くマンジュウは機密であり、これを見た以上余計に彼女たちをおいそれとロイヤル本国に返せなくなったが、それは敢えて言うまい。
その理由は全て我の指揮官、ヴァイスクレー・ヘルブスト指揮官のせいだ。
彼曰く捕虜の艤装は取り上げられて現在クラップ社や鉄血の兵器実験場送りとなっており、捕虜が逃亡を図ろうにも、陸路や海路から逃げる事も難しく、常にマンジュウたちが電気銃を構えて警戒してるので脱走の成功の確率も低い。
「それなら捕虜も脱走なんて真似も考えないだろうし、俺もイーグルに丁重に捕虜は扱うって約束したからね。仮に彼女たちを捕虜返還したときにロイヤルが捕虜虐待なんて一言も言えないくらいの待遇にしておけば、鉄血で誰かが捕虜になった時にロイヤルも面子として捕虜を丁重にもてなしてくれるさ」
この基地には独房も勿論存在していたが、それを無視して空き部屋に捕虜達を与える事を我らに伝えながらココアを口にする。
好待遇なのはその説明で我らも納得した。しかし申請すれば捕虜同士での会話や、禁止区画を除けばジョギングすら可能なのはいくらなんでもやり過ぎではないか?
素手で暴走する生体艤装を押さえ込んで屈服させたローンといった例外を除けば、艤装を身につけ無ければ我らkansenは身体能力は人間とほぼ変わらないものの、シュペー、ヒッパー、そして我は護身術の訓練を受けている為、ナイフでも持ち出されない限りは捕虜に遅れを取る事はまず無いだろう。
しかし指揮官は別だ。彼のプロフィールでは最低限泳ぐ事は可能とは書かれていたが身体能力は寧ろ軍人としては優れているわけではなく、仮に二〜三名の捕虜が結託すればすぐに無力化されかねない。我と同じくヒッパーは余りに不用心過ぎる、シュペーも指揮官に何かあったらと心配すると彼は心配してくれてありがとうと前置きしながらも。
「一人の捕虜が暴走して俺に危害を加えれば、残り四人の待遇は悪くなると考えれば彼女達は恐らく俺を傷つけないよ。
まぁ……仮に彼女たちが結託して自分を捕まえて皆を脅せば、その時は悪いけど俺ごと捕虜を撃って無力化してくれ」
流石にそう発言した時はもっと自分の立場を考えろだの、撃たれる前提で堂々とするなとシュペーとヒッパーが説教したが、最終的にイーグルとの約束を破る訳にはいかないと、こうして捕虜達にはある程度の自由が与えられる事が決定した。
指揮官が着任し、二週間程になるが共にデスクワークや演習、海域パトロールと共に過ごした結果、流石の我も彼の能力や人格もある程度なら理解した。
能力面に置いては先日演習にて完全に彼に指揮を任せて戦闘をした時は……ヒッパーは言うまでもなく、流石のシュペーも指揮官も頑張っているから以上のフォローは何も出来なかった。
頭に浮かび上がるのはビスマルクの失格ではないが微妙という発言。パニックこそ起こさないのだが、彼に指揮を完全に任せてしまうと動きをまとめ切れていない。我らの命を優先するにしても余りにも慎重になり、それが相手に付け込まれてしまい先日の演習では敗北判定。ヒッパーは鍛え直すと指揮官の耳を引き摺り定期的に彼を鍛えているようだ。
それまでは前回の海戦の様に大まかな指揮を彼が行い、我らがそれを元に行動、そして指揮官が常に情報をこちらに伝えると言うスタンスで戦う事になるだろう。
性格面に関しては根は間違いなく善良でありお人好し扱いされても仕方がない性格。新米指揮官にありがちな功名心や野心や出世願望はそれ程なく、自分の役目を果たすことを優先する。
しかし、バルト海海戦の用に必要であれば自身が率先して囮になる事を躊躇せずに行う事はあまり誉められたものではないだろう。
捕虜の待遇についてシュペーとヒッパーに説教された出来事を見る限り、彼は自己肯定感が低く、自分の命を余りにも安く見過ぎている節がある
そして……突発的でこちらも予想できない行動を取るという事実。
ロイヤルのkansenを五隻、それも騎士長の妹である要人すらも新人指揮官が説得して捕虜にしたという事実に上層部では彼を評価しており、一気に彼の名は広がり上層部の覚えもよくなった。それはそうだろう、完全に策略と弁舌によってロイヤルを屈服させたのだから。
しかし、先の戦闘において援軍を待つまでは間違いなく彼の頭脳によるものだがロイヤルへの降伏勧告は間違いなく突発的な行動だろう。
故に彼は面白い。
思えば普段は大人しいシュペーがあそこまで指揮官に気を使うのも、気に入らない人物には視界にすら入れずに冷淡になるヒッパーが親身になって気にかけるのも珍しい。
当初は磨けば光るとプロフィールを見て直感で彼を推薦したのだが、偶然が何度も重なったとは言え大戦果を挙げたのも事実。あの時は直感を信じて戯れで賭けを行ったが、もしかするとこの雛鳥は中々の掘り出し物かも知れないな、ビスマルクよ。
「お疲れ様かな?グラーフ」
そうして尋問を終えて今回の結果をまとめる為に自室に向かう途中、渦中の人物が私に話しかけてきた。
黒を基調にした鉄血の軍服と帽子に身を包み、胸元には鉄血の国家鷲章ライヒスアドラーが付けられている。何らかの茶色い紙袋を両手で持ちながら、少し申し訳なさそうな様子でこちらを伺い、温厚そうな印象を与える茶髪の青年士官。
ヴァイスクレー・ヘルブスト。
我が推薦したキューブ適正を持つ指揮官であり、このキール第三基地の責任者でもある存在。そして我らを指揮してバルト海海戦を勝ち抜いた上層部期待のホープの新人指揮官だ。
「むっ、卿か……その紙袋は?」
「ちょっと捕虜に差し入れしつつ情報を貰おうかなって思ってね、ビスマルクさんに尋問の許可を貰ったしグラーフばかりに尋問してもらうのも悪いと思って」
原則として指揮官の個人情報は機密でありロイヤルの人員は勿論、捕虜に関しても顏出しは許されていない。故に捕虜の移送も彼は顔を見せない様に気を使い、基地に捕虜を固まる以上尋問も彼ではなく我らkansenが行うことになっていた。
『ごめん私はパス。私の性格じゃ駆け引きとか無理。どうやっても捕虜に威圧しか与える結果にならないっての』
『ごめんね私もパスかな……上手く情報を引き出すなんて無理だと思う』
とはいえヒッパーとシュペーは共に自分の性格上尋問の自信はないと拒否しており……結果的に仕事の合間を縫って我が尋問を担当していたが指揮官の事だ。ビスマルクに直接通信を行なって我らの負担を減らそうとしたのだろう。
「それと……ごめんな、グラーフ」
「何を謝罪している?卿の謝罪に関しては我には複数心当たりがあるのだが?」
「いや、まぁ……あー……うん」
唐突に紙袋を脇に置いて軽く我に頭を下げる指揮官、一瞬面をくらい重々しい場を和ませようと軽口で少し冗談を言えば、指揮官は苦い顔になる。
「冗談だ。それにしても何故謝罪を?」
「実際、グラーフに負担をかけ続けてるのは事実だからね……自分のせいで捕虜を五隻も引き取る事になって捕虜の書類とか報告会議とか、尋問とか含めて全てグラーフ任せだから、ね」
自分が情けないよと言いながら再び我に謝罪をする指揮官。確かに我は鉄血の幹部であり権限は彼より上ではある。しかしこの基地、そしてこの艦隊では彼が我の上司であり責任者なのだ。
だと言うのに指揮官はなんら躊躇いもなく我に謝罪する。自己肯定感が低いとは予想していたが、それ以上に人に負担をかける事に罪悪感を覚える性格なのだろう。
思えば腰も低く、自己肯定感も低く、自らへの自信もない彼は堂々と指揮下のkansenを導くリーダーシップが必要である指揮官向けの性格ではないかも知れない。
しかし……
「そんな事、卿は気にするな。我は鉄血の幹部として、当たり前の仕事をしているだけだ。寧ろも自分は鉄血に貢献したと自信を持って卿は誇れ。着任当日に五隻のkansenを捕虜にしてセイレーンを退けたのは恐らく古今東西卿くらいなのだから」
その姿は、その優しさは人間としては……産まれもっての兵器である自身と比べると少しだけ、眩しかった。
「ありがとうグラーフ……じゃあ今からイーグルの部屋にでも行って尋問してくるよ。まだイーグルの尋問は行っていないだろう?」
「そうだが……その紙袋の中身がなんであれ捕虜に『そう言う事』は」
「んっ?そう言う事って?」
えっ?と頭にクエスチョンマークを浮かべながら彼は私に問いかける、元からその可能性は除外していたが彼が捕虜に危害を加える事はまず無いだろう。
「いや、何でもない。ただ念には念をいれて護衛に饅頭を連れて行け、卿に何かあれば困るのは我らだ……それにシュペーもヒッパーも悲しむ」
「うん、そのつもり。グラーフは悲しんでくれるのかな?」
「悲しみながら捕虜に拘束された卿ごとスツーカで爆撃した後、死亡届にサインをするつもりだが?」
「笑えない冗談……冗談だよね?ま、まぁそうならない事を願っているよ。じゃあ改めてお疲れ様、明日もよろしく!」
紙袋を持ちながら再び指揮官は捕虜のいる部屋に向かって歩き出す。やはりこの指揮官は少し自分に自信がない、だからこそ自分を犠牲にする作戦も躊躇なく行えるのだろう。
しかし……見ていて危なかしいが不愉快ではない。思えばヒッパーが危なっかしいと彼にべったりなのは、彼が今のままでは早死にすると放って置けないと親鳥のように母性でも感じているのかも知れないな。
終わりの見えない落とし所が見えない戦争に現れた期待の雛鳥。危惧の通りに早死にするか、或いは……まぁあんなに面白い彼を早死にさせるつもりなど微塵もないが。
我は正直に言えばこの世界……いや、我自身に何よりも絶望をしている。
kansenは多かれ少なかれキューブに記録されている記録情報を元に具現化された存在だ。これを我らは艦歴と呼ぶがほぼ艦歴を覚えていないkansenもいれば、自身が体験した記録ではないと理解しつつも性格に影響を与えるレベルの者も存在している。
その殆どは前者に当たり、ふとした瞬間思い出す者も存在するらしいがその多くは艦歴を気にせず、思い出さずに平和に過ごしている。
しかし、どうやら我は後者であったらしい。
我の艦歴の記録の多くを占めるものは虚無と絶望。
頭に過ぎるのは期待をされ、必要とされて産み出されたものの、一度も海戦に参加する事無く武装を剥ぎ取られて川に放置されたらしい記録。
それは自身の記憶ではない。そもそも我はセイレーン戦もバルト海海戦の結果kansenとの戦いも既に経験をしており、艦歴と我は違うのだと頭の中では理解している。
それでも我には常に絶望と虚無、そして諦感が我の胸中を支配しており、いっそ世界なんて、鉄血もロイヤルも全てが滅んでしまえばいいと憎悪や憎しみを感じてしまう程だ。
しかし……つい最近、正確にはあの日ビスマルクと共に指揮官のプロフィールを見てからと言うもの、そんな憎悪が少し薄れていった事を自覚する。
彼なら我をこの憎悪から救ってくれるかも知れない……なんて事を無意識に考えているのか?
なんて柄にもない感傷的な感情にになった事に少し驚きつつも……もし彼が我を救ってくれるのであれば。
「まぁ……それはそれで良い、か」
今は見守ろう、彼がどんな道を歩むのか。そしてその果ての先に我はどんな未来を掴むのか……少しだけ期待をしても良いのかも知れないな。
・『知らない』のではなく、『話すことが出来ない』
尋問の結果グラーフはキュラソーが基地攻撃についてなにも知らなかったのではなく、知ってはいるが王家の戦士である立場上話す事は不可能であると理解する。つまり、旗艦であるイーグルや騎士であるデューク・オブ・ヨーク以外もこの一連の特務について知っていたという情報の入手に成功した。
・グラーフ・ツェッペリン
鉄血公国唯一の空母でありビスマルクの右腕として手腕を振るう幹部のkansen指揮官を基地代表に抜擢したのも彼女であり、非常時は指揮権の剥奪も可能な権限を持つ。
史実では完成する事の無かった未成艦ではあるのだが、アズールレーンおけるイベントの時系列では最初期とも言える「黒鉄の楽章、誓いの海」にて既にビスマルクがグラーフ・ツェッペリンの名前を口に出している事から、既にその時期には彼女は誕生しており、鉄血の幹部の一人として責務を担っていたとされる。
ダイススレに置いては指揮官への初期印象はダイスの結果上限100で換算すると83と高評価であり、彼が基地司令として指揮官を選んだことから物語は動き出す。
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄