ツィトローネという少女を見た『救国の艦隊』の面々の第一印象は、この女性は果たして本当にあの指揮官の妹なのだろうか?という困惑で埋め尽くされていた。
例え血縁関係があったとしても性格は後天的に身につくもの。姉妹であっても性格が似ていないという事例は珍しくはなく、グラーフ、ヒッパー、シュペー、ガスコーニュにも性格が自身と全く違う姉妹が存在しているのだが、だとしてもこの兄妹に関してはあまりにも違いすぎるのだ。
成る程、確かに見た目は似ていると言えるだろう。茶髪の指揮官と亜麻色の髪をした妹は顔立ちも体格もそれなりに似ており、兄妹としての共通項は多い。
しかし、それ以外はどうだろう。例えば、兄である指揮官の方は基本的に物静かで温厚で誰にでも優しく接するという好青年を演じているが、自身の命をゴミ同然だと思っている卑屈さや、会話の端々から常に情報を集めようとする癖などジャン・バールが例えた『蛇の様な油断のならない男』という単語にピッタリと当てはまる部分が多分にある。
一方ツィトローネはと言えば快活で社交的であり、裏表の無い人間だ。初対面のシュペーに握手を求めたかと思えばぶんぶんとその手を振っていたし、他の皆に対しても気さくに接していた。
情熱の国サディアに若くして嫁いだ影響からなのか、兄を反面教師として育ったのかは不明だが、とにかく彼女は基本的に善良で明るい人格をしている様に見える。善良な性格なれど必要であれば幾らでも嘘や言い訳を多用できる兄とは大違いであり、どこまでも真っ直ぐで直情的だ。
「はい、という訳で…イェーイ!第一回鉄血女子会の開催でーす!!」
だとしてもだ。兄が部屋に戻るや否や兄の部下であるkansen達に声をかけて部屋に集まるや否や女子会の開幕を宣言。そして呆気に取られる彼女達の前で何処からか取り出したクラッカーを打ち鳴らす目の前の少女は本当にあの『ヴァイスクレー・ヘルブスト』の妹なのだろうか?
「えっと、あの、どういう状況なんですかこれ?」
困惑するシュペーの言葉は当然の疑問だった。いきなり呼び出されたかと思えば、突然女子会を始めようと言われて困惑しないkansenはいないだろう。
皆困惑した顔であり、ヒッパーも彼女が客人でなければ「はぁ!?アンタ何考えてるの!?」の口に出して居ただろうし、ガスコーニュも目に見えてオロオロとした目で特に親しいシュペーに助けを求めている。余裕があるのは我が物顔でマイペースにコーヒーを口にしているグラーフただ一人だ。
「んー?まぁそうですねー妹の立場からしたらこんな美人さん方四人に囲まれて多分まだ童貞であろう兄さんは不甲斐なさすぎますからね!色々と問い詰めて聞いてあげねばなるまい…!って考えてる所もありますけど、普段の兄さんの様子なんかを皆さんのお話を聞きながら知りたいなーって思ってまして」
ニコニコと邪気のない笑顔を浮かべながらもズバズバと言いたい事を言うツィトローネの姿にkansen達は唖然としてしまう。
実の所『救国の艦隊』事キール第三基地防衛部隊の面々の性格はどちらかといえば物静かな性格の面々ばかりだ。
大人しいシュペーと無口なグラーフは勿論、一番苛烈な性格をしているヒッパーですら必要でなければ無言で趣味のガーデニングに精を出している様な穏やかな趣味の持ち主であり、感情モジュールがブレイクした直後のガスコーニュも基本的には好奇心は旺盛で子供っぽい所もあるが人の迷惑にならないように他者を気遣える極めて良い子だ。少なくとも女子会開幕を宣言した目の前の16歳の少女とは正反対の性質を持っている。
「えぇと、つまり……兄さんが何を考えているのか知りたいと……?」
指揮官に恋をしているシュペーは少しだけ恥ずかしそうにしながらも、ツィトローネの言葉を要約すると、少女は満面の笑みでサムズアップをしながら肯定の言葉を返す。
「シュペーさんの言うとおりですね!勿論軍規に触れる事はノーコメントでも構いませんし、皆さんと仲良く女子会したいなーって想いもありますから!ほら私って14歳の頃にサディアに嫁いでるんであんまりそう言う機会も無くて憧れてたんですよね〜♪」
ニコニコ顔で語るツィトローネであるが「14歳!?」とヒッパーとガスコーニュは彼女の発言に頬を引き攣らせて驚いている。そんな二人を無視したままツィトローネは満面の笑みで皆に問いかけた。
「まあ私は兄さんと違って割とストレートな方なんで聞きますけどね?ぶっちゃけこの中で兄さん好きな人とかいます?」
瞬間世界が凍りついた。
ジャブですら無い全力火の玉ストレート過ぎる質問に対する皆の反応は余りにも分かり易すぎたのだ。
ヒッパーは少しだけビクリと体を震わせ、グラーフはそれまでマイペースで飲んでいたコーヒーのカップを持つ手がカタカタと震えている。シュペーは何かを言いたげな表情でツィトローネを見つめ、最も嘘が苦手なガスコーニュは「な、なんで知って…!?」と呟きながら顔を真っ赤に染め上げている。
百戦錬磨、ロイヤルネイビーとの戦いで英雄的活躍を見せたkansen達が16歳の小娘にここまで翻弄されるとは誰が予想できただろうか?
「わ、私が、その……め、主(メートル)の事が好きというのは……うぅ…」
「落ち着きなさいガスコーニュ。ほらハンカチでも食べて」
「ヒッパーよ、お前が一番気が動転しているのではないか?」
グラーフの指摘通り、今この場で一番混乱しているのはツンデレ金髪まな板テンプレート事ヒッパーなのだろう。あまりの事にいっそ冷静さすら感じさせる声音でガスコーニュの口にハンカチを押し込もうとするヒッパーの手をグラーフは嘆息しながら離そうとする。
「……いやー、思ってるよりモテてるんですねウチの兄さん」
指揮官の妹を名乗るツィトローネの爆弾発言を喰らったkansen達は暫くの間呆気に取られていたが、最初に我に帰ったのはやはりと言うべきか、シュペーだった。
彼女は少しだけ恥ずかしそうな表情を浮かべながらも、今逃げては駄目だと覚悟を決めた様子でゆっくりと口を開く。
「うん……その、好きだよ?ヴァイスの事は───」
「まあ兄さんがモテるというのは割と悪い気分ではないですけど、あの兄さんですからね。あの人そういうのにはめっぽう苦手なタイプですから自分押さないし……押すなら押す、でやった方が色々効果は高いですよ!何がとは言いませんが!それと私は重婚とか本人達が納得済みなら全く気にしない派です!!!なんでこういう発言したかとかは気にしないでほしいですけどね!!!」
だが、そんなシュペーの勇気ある一言は捲し立てられる様に放たれたツィトローネの言葉に遮られてしまった。ヒャッハー我慢できねぇ!女子会ですよ女子会!とテンションが上がっているのか少女はグイグイと話を進めて行く。
指揮官がこの場にいれば無言で妹を張り倒した挙句、ちょっとこのアホと話があると部屋に消えていった筈だろうが、生憎指揮官は今自室で日課の夜のデザートタイム中であり、ハイテンションのまま暴走を続けるツィトローネを止めるものは誰もいない。
「そのだな……少し尋ねても構わないか?」
むふー!と言いたい事を言い切った満足気なツィトローネに向かい、コーヒーを飲み切ったグラーフが静かに口を開く。
「はーい、なんでしょう?」
「……何故、そこまで兄を強く推してくるのだ?自身の結婚の際に兄がサポートしてくれたからか?それとも別の理由なのか?」
少しだけ緊張した面持ちで問いかけたグラーフに対し、ツィトローネはニコニコとした笑顔を崩さずに答える。
「あの兄さんですし本人からは手出ししないのは想定内ですけど……なんというか、皆さんからもこのままだとそういう気配を感じないので!余り感じないので!!!多少は推してかないといかないかなっと!何というかこのままぬるま湯みたいな関係のままダラダラと過ごしていく未来が見えたので!」
その言動は失礼であると捉える人もいるだろう。勝手に自身が彼女の兄の事を好きだと思う前提で会話をしてくる妹は側から見ると無礼な事この上ない。しかし、明確に異性としての好意を持っているシュペーとガスコーニュは勿論、未だに迷いつつあるグラーフとヒッパーも彼女の言葉に耳を傾けて黙り込む。
シュペーとガスコーニュは確かに指揮官に告白したが、彼の心の整理がつくまで幾らでも待つと覚悟を決めて居た。グラーフは自身が指揮官に対して異性として見ているのか戦友として見ているのか分からないとペーターに漏らしており、ツンデレなヒッパーが指揮官に告白する可能性も低いだろう。
そう、女性陣は全員恋愛面では受け身な構えであり、指揮官本人もヴェネトも加えた自身の周囲の恋愛事情を理解しているからこそ、自分を愛していると伝えてくれた皆にどう答えるべきか悩んでいるのだ。その姿を見た既婚者ツィトローネはこう思ってしまった。
『きっちりとした答えを出さずに十年後くらいになっても結婚せずに、セフレみたいな関係になって爛れた生活を送って……それはそれで愛の形の一つかもしれないけどそんなの絶対に駄目よ!!』
簡単に言えば恋愛には奥手な面々を見て、彼女は完全にお節介焼きモードに入ってしまった。全ては婚約を許されずに苦しい時に助けてくれた兄へのお返しと、差はあれど自身の兄に明確に好意を抱いてくれている彼女達への恩返しの為に彼女の暴走は止まる事を知らない。
「それにですね……真面目な話、妹としてはまあ、兄さんにはもっと幸せの道を掴んで欲しい訳ですよ……ほら、兄さんって性格と言うか自己評価と認識、大分アレじゃないですか?」
ツィトローネの言葉に付き合いの短いガスコーニュ以外の面々は思い当たる節があるのか黙り込み、その様子を見るだけで自身の兄の自己評価の低さは過去から現在に至るまでなにも変わっていない事にツィトローネは気がついてしまう。
彼女にとって兄であるヴァイスの存在は家族の中でも最も大きい大切な存在だと断言出来るほどに大きく、物心ついた時から慕っていた。しかし同時に家族だからこそ、兄の自己評価の低さと生命への執着心の薄さには気が付いていた。
指揮官としての適正を認められ、軍に入ればきっと自己認識にも変化が生じて少しでも自分第一の人生を歩むようになってくれるはず。その期待を持って兄が軍の門を叩く事を喜んだ妹であったが、シュペー達の反応を見る限り兄の自己評価の低さなどといった悪癖は決して治ってはいなかったと嫌でも感じ取れてしまい、ため息を吐いてしまう。
どこまでも他者や軍に尽くす事は出来ても、その根底の余りにも低い自己評価の低さは、指揮官が自身の命を軽視する理由となっている。
いつかは吹けば飛ぶような落ち葉の様に、躊躇いなく自身の命を犠牲にしてでも兄は目標を達成しようとするだろう。それを知っているからこそ、ツィトローネは早死にしかねない指揮官の妹として彼を見捨てる事は出来なかった。
「だから私、決めたんです。このままじゃいけない、このままだと本当に取り返しがつかない事になる……そんな予感がしたからこそ、もしこの中に兄さんと共に歩んでくれる人が居るのなら……兄さんのクビキとなって支えてくれる人が居たら、私は応援します」
頭を下げたツィトローネの言葉を聞き、シュペー達は静かに顔を見合わせる。ガスコーニュは指揮官の自己評価の低さを知らずに黙り込み、シュペーは改めて思い知らされた愛する人を本当に自分は支える事は出来るのか?という不安で胸が押しつぶされそうになり、グラーフの表情からは感情が読み取れない。
「はぁ……ツィトローネさん、いやもういいわ。ツィトローネって呼ばせて貰うわね」
沈黙が辺りを包み込む中、真っ先に口を開いたのは意外な事にヒッパー。指揮官への恋心などは公言せず、常に勉学に励む指揮官の横で支え続けた一人の少女。
「先に行って置くけど私はヴァイスの事は異性として見てはいない。そりゃ向こうが告白すれば少しは考えるかも知れないけどね?私とヴァイスはアンタが言う甘々な関係じゃないわ。シュペーとガスコーニュはアイツの事が好きみたいだけど」
シュペーとガスコーニュは突きつけられた言葉に頬を染めるが、それを無視してヒッパーは指揮官の妹の目をじっと見る。軍人としてでもなく、恋人としてでもない。その目はヴァイスクレー・ヘルブストという人物を認め、戦友として支えようとする揺るぎない意志に満ちていた。
「ただね、あのアホがもし勝手に死のうとするのなら私は殴ってでも止める。あのバカが次勝手な行動を取ったら私が首輪を付けてでも止めてやる。アンタは私達に兄の恋人になってクビキになって欲しいとかいってるけど、そんな関係にならなくても私達はあのバカが死なないように一緒に戦う。それだけよ」
「…………」
「何か言いたい事でもあるの?」
ヒッパーの言葉に何も答えられず、無言を貫くツィトローネ。そんな彼女の様子に眉を潜めながらヒッパーは問いかけると、彼女は俯きながらも小さく呟く。
「……ありがとうございます。これからも、無茶しがちな兄ですが……あの人は私にとっては大切な兄さんなんです……どうか、よろしくお願いします」
深々と頭を下げるツィトローネの姿にヒッパーは満足げに鼻を鳴らすと、彼女の肩に手を置いて優しく語り掛ける。
「任せなさい、何があっても絶対にあのバカの命は守って見せる。だからアンタも馬鹿みたいな事は考えずにさっさと寝なさい」
家族を想う気持ち、それは誰であっても変わらない。ヒッパーにとってはオイゲン達は大切な家族であり、目の前の少女も常に兄が次の瞬間、死亡通知届と化してもおかしくはない戦場に身を置いてしまう事を憂いている。
だからこそ、彼女は指揮官の妹に対して約束をする。兄であるヴァイスを必ず守ると。
そんな二人の様子をシュペーとガスコーニュは微笑みながら眺め、グラーフは腕を組みつつ二人の会話を聞いている。ツィトローネは安心した、自身の兄はこんなに優しい女性達に見守れていると、彼女達ならばきっと兄の首を絞めてでも生かしてくれるだろうと。この人達が兄の傍に居てくれれば、きっと大丈夫だとようやく安心できたのであった。
「えっ、嫌です」
だが、それはそれとしてだ。感動的な空気が一瞬で霧散した。
「はぁ!?ちょっとアンタねぇ!!」
「確かに兄さんが無茶をすればヒッパーさん達が縛ってでも止めてくれると安心しました。ですけど!!妹としては兄さんと皆さんの関係がすこぶる気になります!」
この女は0か100のスイッチしか存在しないのか?とヒッパーは頬を引き攣らせるが、一度こうなってしまえばフリーダムシスター無双の開幕だ。
「そんな訳で皆さんの対兄さんの今までとか聞かせてもらっても構いませんかねっ!ふふふ!ここだけの秘密ですから!ね!兄さんに例え恋してないとしても少しくらいは気にしてたりするんじゃないですかー?ほら、どうなんですか?教えてくださいよぉ〜♪」
「はっ倒すわよアンタ!?」
「分かりました、兄さんは昔から交渉するなら交渉材料を用意しろって言ってましたからね!もし兄さんといい感じになった出来事を話してくれるなら兄さんの恥ずかしい話とか、兄さんについて聞きたい事とか何でも話しちゃいますよ!」
「乗った」
「肯定、話します」
「わ、私も…!」
「いや待って!アンタら何考えてるのよ!?」
ヒッパーは一瞬で掌を返して話そうとする面々に抗議の声を送るも、皆は指揮官の過去について気になるのか興味深い様子だ。グラーフはあくまで面白いから参加しているだけなのだが、ガスコーニュとシュペーのコンビはその熱意が肌から伝わってくる。
「ふむ、なら我から行くしかないか……とは言っても、こちらもさほど言えるほどではないのだがな…」
「構いませんよ、私が聞きたいので!」
ギャーギャーと文句を言う常識人のヒッパーを無視して口を開いたのはグラーフだ。シュペーとガスコーニュはツィトローネに何を話すべきか、何を聞くべきか?と悩んでいる様子であり、指揮官に関しては現状明確に恋愛感情を示してはいないグラーフが語るのが妥当だろう。
指揮官となって間もない頃にデートに行った事。
サディアで二人で夜にワインを飲み交わせた事。
サディアでの戦勝記念パーティーで彼が男性陣の群れから連れ出してくれた事。
二回目のデートで彼に香水をプレゼントされて独占欲を感じられた事。
グラーフが話せば話す程シュペーとガスコーニュは二人がそこまで進んでいた関係だったのか?と少しだけ目を丸くする。特に独占欲が感じられた場面ではキャーキャーと黄色い声を上げるツィトローネを尻目にモヤモヤとした表情を浮かべていた。
そして、ヒッパーの目は死んでいた。
「うーん、割とそういうのは薄いはずの兄さんからデートやら誘われてる訳ですし割といい感情は出てるとは思うんですけど…もうちょい攻めません?」
「ほう、攻めるとは?」
「相手が兄さんですし、いきなりキスみたいな過激なそういうのはダメでしょうし……いきなり接触を増やしすぎると逆に怪しまれて逃げられかねません。グラーフさんが兄さんに恋愛感情を持っている前提で話しますけど、もし付き合いたいなーと思った時は、まずは手を繋いだりとか軽い接触とか増やして行ってそこから色々応じてやってみるといいかもしれません!」
ただ話を聞いて黄色い声を上げるだけではなく既婚者として自身が行った経験からアドバイスを送る。
「ふむ、なるほど。手を繋ぐというのは確かに良い案だ。とはいえ正直に言えば我は君の兄に関しての恋愛感情の有無はまだ分からないのだが……」
「分からない、分からないですかぁ…!ふふっ、期待しておきます!グラーフさんがもし兄さんと付き合いたいなーと思った時には参考にして下さいくださいね!」
「あぁ、来るべき日がくるかどうかは分からないが頭の片隅に覚えておこう」
くくっと笑みを浮かべるグラーフが手を差し伸ばせばツィトローネはハイテンションのまま握手に応じてブンブンと手を振り回す。
グラーフの発する威圧感などをものともせずに笑みを浮かべる彼女を見て、シュペーもそのコミュ力の高さを羨ましく思いながら、何故ヒッパーの目が死んでいるのかを理解した彼女は気を使うようにヒッパーの肩を優しく撫でた。
「あれ?ヒッパーさんどうかしました?」
「……ごめん、ちょっと色々あってね?ヒッパーちゃん慰めるから私も無しでいいかな。ガスコーニュちゃんお願い出来ない?」
「了解。主(メートル)の妹さんにガスコーニュと主(メートル)との関係を話します……ちょっと恥ずかしい、ですけど」
「はい!次のガスコーニュさん!お願いしますね!」
目が死んでいるヒッパーの背中をシュペーがポンポンと叩きつつ、ガスコーニュが語り始める。とは言えつい先月感情モジュールがブレイクした彼女が話す出会いは端的に言えば……
「……ひ、一目惚れとか…なのかなぁ…でもなんか違う気もするなぁ…」
感情モジュールに関してなどの言葉は濁しつつ語ったガスコーニュの内容はそうとしか言いようのないものだ。
海外出張していた指揮官に興味を持って観察しているとジェラートを奢られてしばらく話す。その結果彼への興味と愛情が満ちてきて最終的に国外からここまでついてきたなど他にどう表せばいいのだろうか?
「だ、ダメでしょうか?メートルの妹さん…」
「ダメとかじゃないですし…まあ、恋自体は本物っぽい感じはしますし…」
とはいえツィトローネからみたガスコーニュは明らかに自身の兄に恋愛感情を持っているとしか言いようがない女の子だ。やや小難しい言葉を話すが内面の幼なさは隠しきれず、指揮官を本当に信頼して恋をしている初々しい乙女心はツィトローネから見ても可愛らしい。
「…嬉しいです、ありがとうございます……」
「うわ可愛い……!」
照れ臭そうに微笑むガスコーニュの表情は恋する少女そのもので、彼女の感情の発露は素直にツィトローネの心を揺さぶった。
「恋に国境なんてありませんからね!まあ、私としては行動的ですし恋自体も嘘とかじゃないようなのでヨシ!実際国際結婚をした身としては大変な事もありましたけど今の私は幸せですし!応援してきます!ガンガングイグイ行って下さいね!そのまま頑張ってくださいね!」
「……はい!頑張らせていただきます…!」
なお当たり前だがツィトローネはガスコーニュが特別計画艦である事も、リシュリューとジャン・バールの妹である最高機密を知るはずもない。致命的な擦れ違いや何かの齟齬をツィトローネも感じていたがまぁいいか!と楽天的な彼女はヨシ!と受け流すのであった。
「あのー……それでお二方はそろそろ大丈夫なのでしょうか?ヒッパーさん凄い顔してますけど無理に話さなくても…?」
こうして二人の話を聞いて兄さんも隅には置けないわね!と笑顔となっているツィトローネであったが、戦線を離れていた二人の姿を、正確にはヒッパーの姿を見た瞬間思わず凍りついてしまう。先程までとは打って変わり今にも首を吊って死にそうな顔となるヒッパーに気を遣おうとするツィトローネであったが。
「……ふん!いいわよ!聞きたきゃ聞かせてあげるわよ!でも後悔しないでよね!!!」
まるで吹っ切れたかのようにヒッパーは拳を握りしめて何かに耐えるように叫び出す。
そしてヒッパーは語り出した。
着任早々指揮官に事故で胸を弄られた事。
初めてのデートはロイヤルのスパイに邪魔をされた事。
二回目のデートはロイヤルのスパイのお陰で銃撃されて危うく死にかけた事。
以上だ。
そう、ヒッパーは確かに指揮官と普段から自主勉強に付き合う事や謹慎中に落ち込む指揮官の元に向かうなどその関係は決して悪くはない。
しかし、彼女が指揮官との関係を思い返すとどうしてもインパクトの強い出来事がこの三つであり、デートを二度もスパイコンビに結果的に台無しにされた事を彼女は忘れる事が出来なかった。
「………その、ウチの兄さんが本当に!!本当に申し訳ございませんでした!!」
自身の兄の運の悪さはツィトローネも把握していたが、まさかヒッパーを巻き込んでしまうとは思ってもいなかったのだ。そんな彼女にヒッパーは肩に手を置きつつ口を開く。
「いいのよ……アンタが謝る必要なんてないんだから……」
「でも……でもぉ……!」
涙目になるツィトローネは後悔していた。まさか兄のせいで二度も敵国のスパイにデートを邪魔され、挙げ句の果てに命を狙われるなど洒落に出来る状況を超えている。残りの三人がグラーフすらも気まずそうに視線を逸らす中。しかし、ヒッパーは全てを首を振って否定した。
「スパイに銃撃された事はヴァイスだけが悪いってことでもないし、あなたが謝ることじゃないってぇの。こっちは軍人なんだから覚悟くらいは決めてるわ。だからほら、顔を上げなさい。可愛い顔が台無しよ?」
ヒッパーはデートを台無しにされたとはいえスパイを捕まえようと提案した指揮官を止められなかった事もあってか彼を責める気持ちは微塵もなかった。寧ろ今まで抱えていた感情をこうして誰かに話せた事でいっそ気が楽になったと微笑む程だ。
「あの……えっと、私も話さないとダメ?」
一方でシュペーはこの流れで自分が指揮官とどんな事をしていたのかを話す事に躊躇いの表情を見せていたのだが、ツィトローネが口を開く前にふんっ!とヒッパーの怒りに満ちた声が届く。
「当然よ!後はシュペーだけなんだからちゃんと話しなさい!アンタがヴァイスの事を愛してるだなんてグラーフも私も知ってるんだからさっさとツィトローネに話しなさいってぇの!!」
それは一種のヤケに近かった。ツィトローネ本人は無理矢理聞く必要ないと口に出そうとしたが、ヒッパーはそれを許さない。自分も恥ずかしい思いをしてデートの失敗談を語ったのだからお前も話せと言わんばかりに睨み付ける。
「うぅ……分かった……話すね……」
しかし、ヒッパーはこの判断を後悔する。確かにシュペーが指揮官に恋をしている事はヒッパーは知っていたが、彼女の口から出る言葉はそれはもう……甘かった。
「指揮官の事を知りたいって思って部屋に行ったけど、サディア式コーヒーを飲ませて貰ってたくさん話をしてね。ツィトローネさんの事もそこで知ったんだ」
二人きりになって親睦を深める為に指揮官の部屋でコーヒーを飲みながら昔話をした事。
「色々と悩んでるから膝枕をしてあげたけど髪の毛がスッゴイ柔らかくて…」
サディアで疲れている指揮官を膝枕してあげて、彼が兵器としてではなく常に自分達を女の子として見てくれる事に嬉しくなり、指揮官を守りたいと決意した事。
「お互いにダンスは下手だけど手を取り合って下手なりに見よう見まねで……その時に義腕を外せば良いって言われたからこうして今ではずっと外すようになってね?多分あの時に指揮官に恋しちゃった、のかな?って」
パーティで二人きりで指揮官とダンスした事。兵器としての存在意義を常に自覚する為に身につけていた義腕を外すきっかけ。そして恋心の自覚。
「指輪を明石さんから貰ってたんだけど、ヴァイスってその指輪をビスマルクさんに返そうとしてたから…」
明石からもらった指輪をシュペーに渡せと言われて彼への愛おしさが胸から溢れてでしまい、どうしようもないくらい彼に恋をしていると自覚した事。更に指揮官にもいつか好きになってくれる人が見つかるかもしれないと誤魔化した事。
「クリスマスプレゼントには初めてマロングラッセを使ってね?お菓子作りは初めてだけどヴァイスに食べて欲しかったから……意味は伝わってないけど」
クリスマスプレゼントの時に愛の証とも呼べる意味合いを持つマロングラッセを送った事。
「ガスコーニュちゃんの後に直ぐにヴァイスの事が好きだと告白して……あの時は部屋で一人で足バタバタさせてたなぁ」
そして、ヴィシアで指揮官に告白して。彼が答えを出すまでガスコーニュと共に待つと話し合った事。
最も初々しく、最も砂糖菓子のように甘々で、とろけてしまうような甘い思い出をシュペーは語っていく。最初は恥ずかしそうにしていたシュペーであるが、純情な乙女である彼女の秘めたる想いはどんどんと饒舌となり語られていく。
「………ぐえっ………」
「グッド!!グッドです!もう文句の付け所のないくらいシュペーさんは頑張ってますしその調子で兄さんをよろしくお願いしますと言いたい所何ですけど……ヒッパーさん……?」
その結果、途中まではどうにか話しが聞けていたものの。自分とは大違いの甘いエピソードのオンパレードに耐えられなくなったヒッパーは腕を枕にして潰れた魚のような声を出す。
もしこの場にオイゲンがいたのであれば「姉さん……」と自分の事の様に号泣しながら確実に慰めていたのは確実だろう。それ程までに沈んだ表情を浮かべるヒッパーであったが、やがて心配するグラーフ達に向かってこう呟いた。
「許さん……許さんぞロイヤル……!!」
それは世界の全てを憎むかの如く、怒りに満ちた表情であった。
「許さん……絶対に許さないわ……ロイヤル……!」
「ヒッパー……?」
「えっ、ちょっとヒッパーさん!?なんですかいきなり立ち上がって……?」
突然のヒッパーの行動にグラーフ達は困惑の声を上げるが、憎悪と狂気に飲まれた一人の少女はそんな事はお構いなしに勢いよく立ち上がる。
「そうよ……あれも、これも!大体ロイヤルが悪いのよ!大体何がスパイなのよ!バッカじゃないの!!!そんなんのせいで2回もデート中止とかほんとに認められるかってえのぉ!!!」
アドミラル・ヒッパーは激怒した。必ずかの邪智暴虐な女王に報復と裁きの鉄槌によって叩き潰さなかればならないと激怒したのだ。
思えば全てロイヤルのせいだ、ロイヤルによる奇襲爆撃によって結果的に二度も死にかけ、レス島では危うく殺されかけ、ロイヤルによるスパイ活動によって二度もピンポイントにデートを台無しにされた。
グラーフは結果論ではあるがイーグル達が既に本部預かりとなっている事をビスマルクに感謝する。出なければ消火斧を片手に十三日な金曜日の如く捕虜の部屋へと向かうヒッパーを見る羽目になった可能性が高いのだから。
「よくも私をここまでコケにしたわねぇ…!!殺してやる……殺してやるぞクイーン・エリザベスぅぅ!!!」
こうして憎悪に飲まれた一人の少女の呪詛の叫びを攻めるものはいなかった。全員、ガスコーニュは『これが……憎悪……?』とローンに匹敵かそれ以上の本気の殺意に怯え始め、特にシュペーは気まずそうな表情を浮かべつつ暫くの間、落ち着くまではヒッパーのマジギレを受け流すのであった……
「えっと…落ち着きました?ヒッパーさん」
「…ごめん、ちょっと吐き出したくなっちゃって」
「いいんです…いいんですよ…」
しばらくしてから、ようやく落ち着いたヒッパーはちゃんと冷静さも取り戻していた。しかし、先程の暴走っぷりは相当なものであったらしく、シュペーからは心配されていた。ガスコーニュは未だにグラーフの胸に顔を埋めて無言で震えており、彼女からしたらトラウマものの光景だっただろう。
「……とりあえず、何があるなら今日の見返りとして答えますけど…皆さんから何かありますか?これで足りるかはわかりませんが…まあ色々聞いてしまいましたからね。で、出来る限りは答えますよ!」
場の空気を変えようとツィトローネは明るく振る舞う。すると怯えていたガスコーニュは一瞬ピクリと身体を震わせるとグラーフの胸から顔を話し、ツィトローネと向き合う。まるで西洋人形の様に整った外見であるガスコーニュに見つめられ、同性だというのに思わず照れてしまうツィトローネであるが、やがてガスコーニュは口を開く。
「質問。持続的接触の初回時の痛みなどについて、回答を求む」
「あっ、初SEXの事ですか?それはもう私の場合は沢山あの人に愛撫されてましたけど、いざ自分の膣内にアレが入る時は結構と言うかかなり痛──」
無論あまりにも教育に悪くてガスコーニュの質問は途中で鉄血艦隊の皆に止められてしまう。ガスコーニュとしては非処女である16歳の少女の実体験も交えた生々しい話は非常に興味深かったらしいのだが……好奇心旺盛なガスコーニュの今の姿をジャン・バールが見れば十中八九指揮官を殴りに向かったのは確実であろう。
「えっ、じゃあ14歳の時に本当にサディアに?」
「行っちゃったんですよね〜、熱いラブレターから始まってデートも何度かしましたけど告白したのは私なんですよ。年齢の都合上結婚式はつい最近行いましたけど、兄さんにも来て欲しかったなぁ……」
代わりに現在はツィトローネが14歳の頃に当時16歳だった旦那に出会い、そしてどの様にしてサディアに嫁いだのかという話が行われていた。兄が愛国心から軍の門を叩いた中、恋と愛に生きる妹の恋物語。それは下手な恋愛小説よりも実体験だからこそ鮮明で、ドラマチックであった。
「へぇ……それで、どうなったんだ?」
「勿論父さんと母さんは猛反対でしたよ。二人とも戦争中のこのご時世に海外に嫁ぐなんて言語道断だって言って。当時は兄さんと旦那しか味方がいなかったですけどね……それでも国際結婚した事に後悔はしてませんし.今の私は幸せです!」
「情報取得。押しかけ女房……駆け落ち……もしかしてこういうのは割と普通なの…?」
「いや普通じゃないわよガスコーニュ!?ジャン・バールが泣くわよ!?」
素直で純真無垢なガスコーニュの教育に悪い言葉がどんどんと飛び出し、もしかしていっそ指揮官と結ばれる為ならば強硬手段をとって鉄血に籠城するのも手段の一つでは?という考えが彼女の頭の中に選択肢の一つとして加わり。
「……私もこれくらいの積極性は持つべきなのかな…?」
そう、破天荒なツィトローネの言葉にシュペーが何やら恐ろしい事を呟く中、こうして既婚者であるツィトローネの恋愛トークを中心とした女子会は夜が明けるまで続くのであった。
そして翌日。基地の門にて迎えの車に乗り込もうと寝不足気味なツィトローネは兄に別れを告げる際に。
「あっ、そうだ兄さん」
「んっ?」
「………その、なんかあったらごめんね?」
「おい待て、なんだその間と発言は!!おいマイシスター!?」
「うん、何かあったら私が悪いと思っといてね!そんじゃ!兄さん!また会いにくるからね!」
「ちょっと待て!えっ何したのアイツ…!?ローネ!おいツィトローネェ!?」
兄の質問に答える事なく、笑顔で手を振りながら車の中に入っていくツィトローネ。こうして嵐の様にやってきた妹はキール第三基地を後にして別れを告げる。
願わくば次に会う時は、あの四人の中から誰か指揮官の横に恋人や妻として立っているのだろうか?そんな未来を予想してツィトローネは『五人』の女性達にエールを送る。
(シュペーさん、ガスコーニュさん、グラーフさん、ヒッパーさん。そして……もう分かりやすいくらい兄さん大好きオーラが出ていたヴェネトさん!私は全員私は応援してますからね!ヴァイス兄さんも色々と大変かも知れないけど……頑張って!)
今日も鉄血艦隊は平和であった。
・女子会
女子会の内容も全てダイスで決まっているのですが、ダイスの暴走の結果指揮官の妹事ツィトローネが暴走し、当時のダイススレを見ていた人々からはフリーダムシスター無双と呼ばれる事に。14歳で嫁ぎ、現在16歳の行動力の化身である指揮官の妹からのアドバイスはある意味どんな戦いによる経験よりもシュペー達に大きな影響を与えたと言えるでしょう。
・ヒッパーは不遇
本作でのヒッパーはダイスの女神の導きとはいえ鉄血艦隊のメンバーの中では不遇と言えるでしょう。グラーフやシュペーがよく指揮官との絆を深めるなか彼女との個別イベントは少なく、それでいてデートイベントが二回も結果的にロイヤルによって台無しにされる事になってしまったヒッパー。よく考えるとヒッパーとデートしておきながらよし捕まえるぞと即座に無力化を選択しようとした指揮官の方が悪いと言えなくはないのですが今回の女子会によって、皆が指揮官と良い思いをする中自分は大体ロイヤルに邪魔をされているなと自覚したヒッパーは。
dice1d10=9 (9)
1~3.…ちょっと兄さんにはヒッパーさんを労るように言っておきますね…
4~6.…その、本当にごめんなさい…
7~9.許さん…許さんぞロイヤル…!←確定
10.*おおっと*
よく考えたら全部ロイヤルが悪い!!殺してやる…殺してやるぞクイーン・エリザベス!!と陛下への怒りのボルテージが一気にMAXとなる事に。もし戦場で二人が相対する事になれば陛下に「死ねぇぇぇ!!」と個人的な怒りの感情を秘めながらその彼女に肉薄するでしょう。ただでさえ大変な状況だというのにヒッパーから怨みを持たれる事になった陛下の明日は何処に。
ちなみにヒッパーはこんな事を言っていますが指揮官からすれば心が折れそうになった謹慎期間中にヒッパーが慰めてくれた出来事をちゃんと覚えており、彼女に感謝しても仕切れないほどに重い感情を向けているのは秘密です。
・オブザーバーについて
次回は各国から会談のために鉄血に集うオブザーバーについてのお話に。ここでネタバレとなりますが各国のオブザーバーの面々のダイスの結果を最後に載せましょう。(ヴィシアはヴィシア編にてガスコーニュが確定したので割愛)
重桜
dice1d10=2 (2)
1~3.赤城+加賀←確定
4~6.三笠
7~8.扶桑型二人
9.陸奥+なんか保護者
10.長門ご本人
北方連合
dice1d10=5 (5)
1~3.アヴローラ
4~6.チャパエフ←確定
7~8.ガングート
9~10.ロシアさん
サディア帝国
dice1d10=6 (6)
1~3.ザラ
4~5.カブール
6~7.チェザーレ←確定
8~9.リットリオ
10もぎとってきた総旗艦様
自由アイリス
dice1d10=5 (5)
1~3.ジャンヌ
4~6.ベアルン←確定
7~9.枢機卿ご本人
10.しゃんぱんぬ…
ユニオン
dice1d10=9 (9)
1~2レンジャー先生
3~4.ブルックリン
5.まさ子
6~7.欧州への移動用資金120円ちゃん(サラトガ)
8~9.クリーブランド←確定
10.まさかのエンプラさん
重桜は赤城と加賀
北方連合はチャパエフ
自由アイリスはベアルン
ユニオンはクリーブランド
そしてサディア帝国ではリットリオがどうにか姉を説得した結果チェザーレが派遣される事に
彼女達は一度鉄血に滞在しつつ、ロイヤルと鉄血の会談の際にオブザーバーとして参加する予定なのですが……次回からはそんなオブザーバーを巡るお話に。ビスマルクの胃を痛めずに無事会談の日を迎える事ができるのでしょうか?
指揮官の後世の評価はどうなる?
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戦争を終わらせた立役者
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サディアを救った救国の英雄
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ロイヤル最大の敵
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女の子に手を出しまくりの色を好む英雄