魔法少女リリカルなのは~未来を変える者~   作:A,I,R

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まずはお詫びを。長い間更新せず申し訳ありませんでした。

ちょっと事故にあったり、その影響で色々とやばくなったりで執筆する時間がなかなかとれず、ここまで更新が遅れました。

久しぶりに執筆したので下手な描写がさらに下手になっているかと思いますが、よろしくお願いします。


第13話「それぞれの休日 -sideN-」

<現在時刻0500(マルゴーマルマル)、起きる時間です>

「……ん」

 

 夏の足音が確実に近づいていることを感じさせるように、朝方にもかかわらず過ごしやすい暖かさがあった。これがじきに暑苦しくなるのだと思うと四季の変化は不思議である。ベッドから起き上がり、目を覚ますために体を少し動かす。その際に窓の外に目をやると、外が薄っすらと明るくなっていた。「ずいぶん日の出が早くなったなあ」とポツリともらしながら体を動かす。

 

「よし、おはよう。シャイニングハート」

<おはようございます>

 

 今日もゆうきの朝が始まる。

 

「今日のメニューは何だっけ?」

<今日は思念誘導を練習を主にやった後、あの魔法の練習をします>

「ん? あの魔法を?」

<はい。マスターの技量ならばできると思います>

「そう言われたら頑張るしかないね!」

 

 着替えを済ませながら最近、日課となってきた魔法練習のメニューを聞く。エクスなどの強敵対策として考えた魔法の練習が組み込まれたことでさらにやる気が出る。やる気のほかにも、気持ちもより強くあった。昨日はたまたますずかが意思を残していたからよかったが、ジュエルシードに取り込まれていたら死んでいただろう。それは何故かと聞かれたら弱いからだ。もっと自分を守れる力を、なのはを、周りを守れる力を得なければならない。そういう思いがあったからだ。

 

「なのは、ユーノ、おはよう」

 

 支度が済んだところで、部屋にいるなのはとユーノへ念話で語りかける。

 

「おはようゆうき」

「おはよう、ユーノ」

 

 昨日人間だと分かったユーノ。が行動を共にしやすいようにとゆうきと2人で話し合い、フェレット状態で生活してもらうことに。

 

「なのはは?」

「下にはいないよ」

 

 返事がないので下で作業中かと思ったが、そうなると

 

 

「もしかして、まだ寝てるのかな?」

<レイジングハートへ通信しますか?>

「お願い」

 

 気の利く愛機に感謝しつつ、ゆうきは首を傾げる。なのはがまっすぐ――悪く言えば頑固――であるのはゆうきが一番理解している。そのなのはが練習の時間に起きていないということは非常に珍しかった。さらによく考えれば、昨晩もおかしい。夕食を食べずに寝てしまうし(疲れていたという可能性もあるが)、帰りは1人で帰ってしまうし、変なことだらけだった。

 

<なんでしょうか?>

<ゆうき、回線が開けました>

「ん、ありがとう」

 

 と、考え事をしているうちにレイジングハートとの回線が開けたらしいのでそっちに集中することに。

 

「ねえ、なのはは起きてる?」

<いえ、寝ています。どうやらまだ疲れが残っているようです>

「そうなんだ……なら起きたら、今日はゆっくり休んでいてって伝えて」

<了解しました>

「よろしくね」

 

 なのはへの言伝を頼んで回線を閉じる。と、今になって気付いたことがあった。

 

「あれ? 僕の呼び方変わった?」

<はい、変えてみましたが、駄目でしょうか?>

「全然。そっちの方が仲良くなったって気がするよ」

<では、これからマスターからゆうきに呼び方を変えますね>

「うん」

 

 こちらを気遣い、導いてくれる愛機。その愛機に頼もしさを感じながら、早く見合うだけの使い手にならなくてはと、より一層気を引き締める。

 

<では、そろそろ行きましょう。彼女を待たせるわけには行きませんからね>

「そうだね、ちょっと急ごうか」

 

 そう言い部屋を出たのだった。

 

 

 

 

 

<これでいいんですね>

「……うん。ありがとう、レイジングハート」

 

 ゆうきが階段を下りていく音を聞きレイジングハートはなのはに尋ねる。そう、なのははあの時起きていた。レイジングハートに頼んで嘘を伝えてもらったのだ。

 

<どうしたんですか?>

「ちょっとね……」

 

 昨日生まれた感情は、一夜明けても未だに整理できずにいた。全容を言葉にすることはできない。ただ、ゆうきが遠くに行ってしまったように感じられた。

 

<マスターの義姉弟、ゆうきに関することですか?>

「多分……」

 

 いつもの元気のいいはきはきとした声など嘘のように、沈んだ声音で答える。それだけでもなのはがどれだけ悩んでいるか理解できる。

 

<私でよろしければ相談にのりましょうか>

「お願い……」

 

 普段の、辛いこと、悲しいことを抱え込む癖があるなのはであったなら断ったであろう。だが、今はそれができないほどに参っていた。

 

<マスターがゆうきと知り合ったきっかけってなんですか?>

 

 AIであるが故に直接的な解決はできない。それでも話すことで楽になるかもしれない。そう考え、レイジングハートはなのはから話を引き出していく。

 

「私がね、ゆうき君と初めて会ったのは、とても小さい頃なんだ」

 

 そう言い、なのはは語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 父である士郎が仕事で大怪我を負い、入院した。小さく幼かったなのはには全部は理解できなかった。ただ、周りの変化は感じ取れた。母の桃子は病院と翠屋の往復、兄恭也と姉美由希はある程度大きかったため、母の手伝い。必然的になのはは一人ぼっちだった。

 

 それを美由希を気にしてくれたことが幾度もあった。だが、幼くも賢くあったなのはは自分が我慢することが最良だと感じ、「だいじょうぶ、おにいちゃんをてつだって」と断っていた。だが、その心は独りぼっちの寂しさに涙を流していた。

 

 それが2、3ヶ月続いた頃、転機が訪れた。

 

「はじめまして、きみがなのはちゃん?」

 

 部屋に見知らぬ子が入ってきた。しかもその子は自分の名前を知っている。自分は相手の名前を知らないのに。

 

「あなたのなまえなに?]

「ぼくはゆうきだよ。なのはちゃん」

「ゆうき……くん?」

「うん、ぼくはきみとあそぶためにきたんだ」

 

 差し出された手を右手で掴んだ時、なのはは孤独の闇から救い出された。

 

 ゆうきの母である優子は桃子の妹で、姉の危機に家族全員でとんできたのだ。優子と夫のキースは翠屋の手伝いをし、ゆうきはなのはと遊ぶことになったのだ。

 

 そこからの状況の変化は激しかった。翠屋は優子とキースが手伝うことで回転率が上がり、安定する。それにより恭也と美由希も家にいるように。

 最初の頃はゆうきに対し、遠慮がちだったなのはだったが、ゆうきの明るさと優しさによってすぐに仲良くなった。最終的にはゆうきが離れるのを嫌がるほどにゆうきになついた。

 

士郎が回復してからも関係は続く。なのはの家の近くに引っ越してきたゆうき達。それによって毎日ゆうきと遊ぶ。なのはにとってあの毎日は今も忘れられない。あの毎日続けばよかったらと思っていた。だが、士郎が突然大怪我を負ったのと同じく2度目の転機は突然やって来た。

 

 ゆうきの両親が亡くなったのだ。

 

「ねえ、ゆうきくん」

「……………」

 

 目の前で両親を亡くしたゆうきはショックからか自意識を失ってしまった。高町家の皆は、よく気に掛けてくれた。特に桃子となのはは付きっきりの形でゆうきの世話をした。だが、ゆうきの自意識が戻ることはない。ただ言われたことを行う、まるで人形の様な存在へと成り果ててしまった。

 

「きょうね、とってもおもしろいことがあったんだよ」

 

 それでもなのはは声をかけ続ける。効果があるかないかなどなのはには分からない。ただ、自分を孤独の闇から救い出してくれたあの笑顔をもう一度みたい。その願いのまま行動していた

 

「だからね、ゆうきくんもいっしょにあそぼ?」

 

 なのははゆうきの垂れている手を握り優しく語りかける。だが、それでも反応はない。

 

「ねえ、ゆうきくん……おねがい……」

 

 なのはの頬を伝う滴。今までゆうきが戻ることを信じていた。だが、それも限界に達しようとしていた。

 

「おねがい……」

 

 そう心から祈った時、握っている手が一瞬、人の温もり以上の温かさを宿る。その直後、頭に何かが乗っかる。目を開けると、手が乗っていた。ゆうきの手が

 

「ごめんね、僕のために泣いてくれて」

「ゆうきくん……?」

「そうだよ、なのは」

 

 それが、なのはが記憶しているゆうきとの出会いだった。

 

「それからゆうき君は高町の苗字になってね」

 

 それからなのはは順番にゆうきの思い出を語っていく。きっかけだけを聞かれたのを忘れたかのようにうれしいこと、楽しかったこと、面白かったこと、ゆうきとの思い出を全て語っていく。レイジングハートはそれをただ無言で聞く。まるで主が溜めていたものを全て吐き出すのを待っているかのように。

 

「で、ユーノ君と出会って、レイジングハートとも出会ったんだ」

 

 全てを語ったなのは。現実の時間では30分にも満たない時間だった。

 

<……今の話から、ある1つの結論が生まれました>

 

 その短い時間の中、レイジングハートはある1つの答えを出していた。

 

「本当!?」

<ですが、これはあくまで機械的に判断しただけです。私には感情がないので間違っている可能性が大いにあります>

「……私に教えて。私だけじゃ何にも分からないから」

<……分かりました>

 

 主の頼みにレイジングハートは静かに答える。

 

<マスター、彼方はゆうきに恋愛感情を抱いています>

 

 そして結論も静かに告げた。

 

 

 

 

 

 

「れれれ、恋愛感情!?」

<はい>

「あ、あの隙とか、藍してるとかの故意!?」

<全て字が違うのですが……>

 

 あまりの驚きに好き、愛している、恋の全ての漢字を間違える始末。それだけなのはにとって予想外だったと言える。自分でも驚いているのが分かったのか、深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとすると共に、自分の気持ちを確認してみる。

 

 ゆうきと過ごす毎日に幸せを感じる自分がいる。

 

 何かがあった時、ゆうきに注目せずにはいられない自分がいる。

 

 何かがあった時、ゆうきの反応を見ずにはいられない自分がいる。

 

 ああ、確かに。確かにそうなのだろう。

 

「ゆうき君のことが好きなんだ……」

 

 自分はゆうきことが好きなのだ。そうなのはの中で納得できたと共に、昨夜から抱いていた感情が分かった。なのはは知らずに恋をし、、失恋したのだった。

 

「でも、もうだめだね……」

 

 ゆうきはすずかと付き合っている。つまり、ゆうきはすずかのことが好き。そしてすずかもゆうきのことが好きである。相愛関係となった自分は完璧に恋に破れたのだ。

 

<マスター、諦めるのはまだ早いかと>

「え……?」

<まず、彼の年齢、性別から考えて恋愛感情を持っているとは考え難いと思われます>

 

レイジングハートが静かに状況を伝える。

 

<また彼の性格上、押しに弱い点が上げられます>

「押しって?」

<彼は優しく、賢い男子であることはご存知だと思います>

「う、うん」

<その彼が月村すずかに告白されたら、どうなると思いますか?>

 

 レイジングハートの言葉に従い想像してみる。

 

 もし言う通り、ゆうきが恋愛感情を持っていない時にすずかが告白してきたらどうだろう? ゆうきならば断るだろう。恋愛感情がないとはいえ中途半端な気持ちで応えてはならないと思うはずだからだ。そこで断られた時にすずかがお試しで付き合ってみないかと言われたとすると、優しいゆうきのことだからそれを受け入れるだろう。

 

 そこでゆうきの昨日の言葉を思い出してみると、付き合うとは言ったがすずかのことが好きだとは言っていない。

 

 そうこれならば全てが重なる。

 

「ゆうき君なら、断ったとしてもすずかちゃんが言い出せば付き合う」

<その通りです>

「でも……これはあくまで推測だよ?」

 

 そう、これはあくまでレイジングハートとなのはの推測に過ぎない。もしかしたら、ゆうきとすずかは本当に付き合っているかもしれない。

 

「付き合ってるかもしれないよ」

<……マスター、可能性が0でない限り、諦めるべきではありません>

 

 普段は無機質に聞こえるレイジングハートの声に感情があるかのように聞こえる。まるで親が励ましてくれているかのような優しい声だった。

 

 そして、その声は普段のなのはを目覚めさせるのに十分な力を持っていた。

 

「そう……だよね。まだ諦めるには早いよね!」

<はい>

「どうせ1度諦めた恋ならとことんやっちゃうよ!」

<その意気です>

 

 と、意気込むがあることに気づく。

 

「私かすずかちゃんのどちらかしか叶わない」

 

そう、なのはかすずか、どちらかが恋に破れなければならなかった。

 

<その件なら私に任せてください。いい方法があります>

「本当!」

<はい。では今からその方法をお話します>

 

 

 

 

 

 

 

 空を舞う缶。手元から投げられた缶は、放物線を描きながら空を昇り、落ちる。そこに向かって光の球体が一直線にぶつかっていき、弾かれる。しかし、ただ弾いたわけではない。缶の下を叩き、きれいに上に打ち上げていた。打ち上げられた缶は再び放物線を描き、また落ちていくところで打ち上げられる。その繰り返しである。その途中、新たな缶が宙を舞う。その缶も、最初の缶と同様に描いては弾かれの繰り返しだった。それが10個出来上がった時

 

「凄い……凄いよゆうき君」

 

 少女の驚きの声が上がった。その声の主はすずかだった。昨夜、すずかから魔法訓練を見学したいとメールが来たのだった。なのはにも確認したかったのだがすでに寝てしまっていたため、確認できなかったが断る理由もないはずと考え了承した。

 

「いや、本当に凄いよゆうき」

 

その上達ぶりは学校で正式に魔法を習ったユーノですら舌を巻くほどである。

 

「あ、ありがとう……」

 

2人に誉められ、照れるているようだが、魔力弾の動きには乱れがない。

 

「ゆうきくーん」

 

と、そこになのはがやってくる。

 

「なのは! もういいの?」

「うん!」

「おはようなのはちゃん」

「おはよう、すずかちゃん」

 

笑顔で挨拶をする2人。だが、和やかになるはずの空気はまるで何かの勝負をしているかのように張りつめる。

 

「……すずかちゃん、ちょっとお話しない?」

「いいよ。ちょうど私もしたいと思ってたんだ」

「じゃあ、ゆうき君とユーノ君はちょっと待ててね」

 

なのはとすずかは笑顔でその場を離れていく。

 

「ねえ、ゆうきなんかやった?」

「……いや。ユーノは?」

「僕も何もやってないよ」

「「じゃあなんであんなに怖いんだ」」

 

2人の笑顔に恐怖を感じた男子2人。

 

<では、ちょうどいいのでお二人にお話したいことがあります>

「どうしたのシャイニングハート」

<これから起こることへの対策についてです>

 

 

 

 

 

 

 

 緑豊かな自然溢れるその場所は普段ならば、鳥などの動物が賑わっていた。そう普段ならば。

 

「…………」

「…………」

 

 無言で歩く2人から放たれる雰囲気を危険と判断したのか、近くの動物は次々逃げていく。

 

「ここら辺でいいかな」

 

 少し開けた場所に出たところで立ち止まり、すずかを真っ直ぐ見据える。

 

「……すずかちゃん、私はゆうき君のことが好きなの」

「うん、知ってたよ」

 

 なのはが今朝ようやく気付いた想いをあっさりと知っていたと話す、すずか。どうしてと聞きたかったが今はそれよりも重要なことがある。

 

「だけど、ゆうき君は私と付き合ってるよ」

「それはゆうき君もすずかちゃんのことが好きだから?」

「……違うよ。でも絶対に振りむかせてみせる」

 

 レイジングハートの予測は当たっていた。これで前提条件はクリアされた。だが、勝負はこれからと、気を引き締めすずかを見据える。互いが互いに見据え、そこには笑みはなく、真剣な眼差しを向けていた。普段は仲がよく、親友と言ってもいいだろう2人。だが、恋に友情はなく、2人は親友でなくただの蹴落とすべき敵(ライバル)。そうすずかは思っていた。

 

 その考えは間違いではない。本来ならばなのはもそう考えたはずだった。だが、なのはそうは思わない。なぜならレイジングハートによってそうならなくてもよい道が示されていた。

 

「ねえ、すずかちゃん」

「……何かな?」

「もし、どちらも幸せになれる方法があるって言ったらどうする?」

「どういうこと?」

 

 恋にどちらも幸せになるという選択肢はありえない。選ばれるのは常に1人である。それが当たり前であり、小学生のすずかにも理解できることだ。だが、なのはがそうではないといったのだから信じられない。

 

「今はまだ話せない。もしかしたらダメになるかもしれないから」

「じゃあ、今はどうするの?」

「ダメになった時を考えて正々堂々恋の勝負」

 

 なのはの話はとても魅力的だった。すずかは恋に負けるつもりはないが、相手は親友にして、一番ゆうきの近くにいるなのはだ。負ける可能性は大いにある。だが、それよりもどちらも幸せになるという話しはとても魅力的だった。できることならどちらも幸せになりたかった。その理想が叶う手段がある。ならばそれに乗らない手はない。

 

「分かった。いいよなのはちゃん」

 

 すずかが笑顔でなのはに向けて本当の笑顔を見せる。それに伴いなのはも笑顔になる。

 

「じゃあ、上手くいったら話すね」

「でも、上手くいかなかった時と今は……」

「「正々堂々勝負!」」

 

 真の笑顔と共に握手を交わす2人。恋の勝負は今、始まった。

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