魔法少女リリカルなのは~未来を変える者~   作:A,I,R

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第7話「紅月の宴 第3幕空の光」

 紅の月の下で行われる2つの閃光による舞。その舞の果てにある結末とは。それを知る者はいない。

 

 高町なのはは分からなかった。どうしてこんな事になっているのか。自分とゆうきが魔法という非日常に身を置いたとしても、アリサとすずかの日常には些細な影響しか与えない筈、それどころかその日常を守る事に繋がる筈だった。なのに、現実は非常でアリサとすずかはジュエルシードによって非日常に身を落とし、すずかはゆうきを殺めてしまっている。どこで選択を間違えたのか、それも分からなかった。リセットボタンがあるとするならば今すぐ押したかった。だが現実にリセットボタンはない。

 高町なのはは分からなかった。すずかがゆうきを好きだと言った瞬間に胸の奥底で生まれたもやもやの正体を。ゆうきが倒れた際には消えていたがそれが何であるのか少なくともあの時までは経験した事のないものだった。

 他にも分からない事は多くあった。そもそも何故自分が魔法を使えるのか。何故、アリサとすずかがジュエルシードを手にしているのか。何故、ゆうきは反応できなかったのか。何故、何故と分からない事は数えきれない。そんな中、分かる事が1つある。それは自分しかすずかを止められない事だった。

 

「レイジングハート!」

<ディバインシューター>

 

 なのはの声に応え、レイジングハートは魔力弾を生成する。魔法を使い始めてから全く日が経っていない。その為に魔法の発動のほとんどをレイジングハートに頼っている。逆に言えば魔法の発動を頼るほどなのははレイジングハートの事を信頼しているという事になる。それを理解しているレイジングハートは自身のできる限りの範囲でその信頼に応えようとする。流される形にならない魔力という力を魔法という形のある力へと変換する。

 2つの想いが込められた魔力弾はすずかへと放たれる。ゆらゆらと不規則に進む弾は計5つ、それをなのはは思念操作していく。それをそれぞれ方向をバラバラにして操作しているのだからなのはの才能は異常と呼んでもいいくらいであった。

 

「無駄だよ」

 

 だが、それはその一言で全て無意味になる。異なる方向から迫る筈の魔力弾はすずかに当たる直前で謎の爆発をする。巻き起こった煙が宙に拡散して視界がクリアになるとそこには真紅の槍を右手に持っているすずかがいた。それがただの真紅の槍であればよかった。だが、その槍を見た途端、嫌な汗が一気に吹き出る。なのははその槍で何をしでかしたか理解する。あの槍こそゆうきの命を刈り取ったものだと。

 

「それでゆうき君を……!」

「ふふふ、そうよ。元友達の情けでゆうき君と同じ得物で殺してあげる!」

 

 すずかが人ならざるスピードでなのはに肉迫する。だが、幾ら早くとも反応できる範囲であり、更には真正面から突っ込んできた為に回避は可能であった。紙一重ながらすずかの突きをかわし、レイジングハートを振るう。

 

「っ!!」

 

 すずかが驚愕の声を上げながらも、咄嗟に槍を戻し、柄で受け止める。槍の柄と杖がぶつかり激しい火花が散る。

 

「私の姿が見えるの……!?」

「? 見えるよ、はっきりと」

 

 槍という得物の性質上触れ合うぐらい近い間合いは苦手な距離である。距離を離す為に槍を基点として、鉄棒の逆上がりの様に回転し、なのはに蹴りを放つ。

 

「!!」

<プロテクション>

 

 咄嗟でなのはの判断は間に合わないが、優秀な相棒がそれを補助する。張られた防御バリアで蹴りを防ぐが吸血鬼となったすずかの力は人外と呼べるものであり、防御したのにも関わらず力に負けて5、6メートル吹き飛ぶ。

 

「く……」

<大丈夫ですか、マスター>

「このぐらい大丈夫!」

<近接戦はマスターに不利です! 距離を離して戦いましょう>

「うん……」

 

 レイジングハートの助言に従い、すずかに注意しながら距離を離す。それに対しすずかは

 

「おもしろい……」

 

 邪悪に口元を歪めていた。右腕を大きく引き構える姿はまるでその手に持つ槍を投げるかのようだった。構えた槍には膨大な魔力が込められ、先程の2倍くらいの大きさになる。

 

「轟け流星……グングニル!」

 

 その槍を放った。

 

「な、投げてきた!」

 

 なのはの声は驚きがあったが行動は冷静で、槍の軌道から逃れる。その事に安堵するなのはだが

 

 

<高エネルギー反応! 衝撃に備えてください!!>

「え?」

 

 レイジングハートの警告の直後投げられた槍の込められた魔力が炸裂した。炸裂した魔力の範囲は槍を起点とし、半径5メートルにも及ぶ。範囲内では炸裂した魔力が叩きつけられるように襲う。投げてきた槍がまさか炸裂するとは思わなかったなのははその効果範囲内は入ってしまっていた。

 

「く……ううう……」

 

 プロテクションを展開した上からでも伝わる威力。それに伴い魔力がごっそり削られる。実際時間では数秒であるが、なのはには数分にも感じられた炸裂は終息していく。

 

<大丈夫ですか!>

「だ、大丈夫だよ。流石に連続しては来ないよね……?」

「残念♪ 連続してできるよ」

 

 すずかの言葉通り、次々と魔力が込められた槍が投げられては炸裂していく。なのは何とかかわしてしくが投げられる量が多く次第に避けきれなくなる。

 

「ど、どうしよう!」

<避けきれないなら、撃ち落としましょう!>

「なるほど! なら」

<はい。ディバインシューター>

 

 レイジングハートのアイディアを使い、魔力弾で槍の炸裂を誘発させていく。また炸裂させた事で、他に飛んでくる槍を誘発させていく。それによりなのはとすずかの視界を塞いでいく。

 

「今なら……行くよ、レイジングハート!」

<シューティングモード>

 

 なのはの声に応え、レイジングハートが形態を変える。砲撃を放つのに適する形へと変わる。変わったレイジングハートをすずかにいるであろう方向へと向ける。

 

「ディバイン……「見いつけた」」

 

 あろう事かその炸裂していく中を突っ込んできたのだった。ディバインバスターは高威力であるものの、発射まで時間が掛かってしまう。その隙を狙われた形になった。すずかの手には槍ではなく、真紅の剣が握られており、今まさに振り下ろそうとしていた。

 

「レイジングハート!」

<ラウンドシールド>

 

 発動を緊急中断、なのはの強い守りという意思に応え、新たな魔法ラウンドシールドを発動させる。ラウンドシールドはプロテクションに比べ効果範囲が狭く、一方向のみしか防ぐ事はできない。だが、防御力の点ではプロテクションの上をいく。

 振り下ろされる剣と盾が衝突する。強固な盾は人外の力で振り下ろされる一撃すらも耐える。

 

「へえ……これに耐えるんだ」

「このぐらい!」

「なら……これならどう?」

 

 すずかは盾で防がれている剣を支えている腕を右腕だけにする。離した左腕を高く振り上げる。その手には真紅の剣が握られる。それを見た瞬間、すずかが何をしようと理解した。そして、それすらすずかは予想していたのか口元を禍々しく歪め、その手の剣を振り下ろした。2倍になる衝撃。それでも何とか耐える。

 

「これもなんだ」

「くう……」

「どこまで耐えられるかテストね♪」

 

 右腕を振り上げ振り下ろす。次に左腕を振り上げ振り下ろす。右左、右左とひたすら繰り返す。それに従い次々振り下ろされる剣。度重なる攻撃に強固な盾も次第に亀裂と、盾を維持する為に削られる魔力から生じる痛みが走っていく。

 

<マスター、このままでは!>

「分かってる、けど……!」

 

 何か対策を打ち出したい。だが、すずかはそんな暇は与えてはくれない。次第に大きくなる亀裂。そして

 

「これで、お終い!」

 

 すずかの一撃が強固な盾を破り、なのはに襲い掛かる。防衛本能の反射によりレイジングハートで防ぐが、人外の力をまともに受けきれるわけなく、下に吹き飛ばされる。

 

「かはっ!」

 

 吹き飛ばされ地面に強く叩きつけられたなのははその衝撃で肺の中の空気が吐き出される。いかにバリアジャケットがあろとも、地面に叩きつけられ痛みは抑える事はできない。あまりの衝撃と痛みで視界が霞んですらいた。それと共に心が折れていくのを感じた。立ち上がらなければならない。しかし、身体が、心の大部分がそれを拒否する。

 

「なのはちゃん、中々楽しかったよ」

 

 近くに降りたすずかが一歩一歩と近づいてくる。それに伴ってなのはの心が絶望と諦めの色に染まっていく。未だ体に力が入らず立ち上がれない。立ち上がろうとする意志さえ呑み込まれていく。もう間に合わない、無理だ、勝てないと。

 

<マスター!>

「ごめんね……レイジングハート」

 

 自分に最後まで付き合ってくれたレイジングハートに涙を流しながら謝る。霞む視界で空を仰ぎ見る。そこには変わらず真紅の月があった。真紅に輝く月の光が降り注ぎ、傍にある雲を照らしている。

 

「あれ……?」

 

 と、ここで疑問に思う。雲など近くにあっただろうか。そしてその雲が次第に大きくなっているのは涙と消耗で霞んでいる視界のせいだろうか。そう疑問に思った時、雲が光を放った。

 

「きゃ!」

「ちっ!」

 

 宙を切り裂く雷。その雷はまるですずかの行く手を塞ぐ様に降り注ぐ。すずかは舌打ちをしながら距離を取る。なのはは雷に救われた形になった。

 と、ここで考える。あまりもタイミング、落下位置共に良すぎる。自然とは考えにくい。そして、僅かに雷の中に感じる魔力。その魔力はなのはは知っていた。

 と、空を切り、地面に降り立つ音が聞こえる。その人物は

 

「遅くなってごめんね」

 

 黒衣の魔法少女、フェイト・テスタロッサだった。  

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